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48歳、実家暮らし、未だにお母さんの作ったごはんを食べてるキモい男と言われてきた会社の同僚がめでたく結婚することになった。彼女いない歴48年で結婚相談所へ行き、そこで出会った人と即結婚を決めてしまった。あまりにもの展開の早さに周囲は呆気にとられていたのだが、考える隙も与えず、今度は結婚式の招待状が配られ始めた。わたしは一度彼と香港へ旅行に行ったくらいの仲で招待状は来なかったのだが、彼と同年代の男性陣は受け取ったようだ。ところが、その男性陣達の半分くらいが欠席するという。結婚とは縁遠い世捨て人ばかりで、結婚式などどういう意味を持つのか全く解らないのだろう。わたしも風変りな世捨て人で、彼らの気持ちも解らなくもない。でも48年でたった一度の他人の晴れ舞台、見守ってあげてもいいんじゃないかと心配にも思う。日本の結婚式に思うことは、呼ばれるほうの負担がとても大きいということだ。「結婚式が続いて今月はお金がない」、なんてセリフは誰でも聞いたことがあるだろう。時は21世紀。もうこんな習わしは廃止すればいいのに、と思う。ささやかな日常にこそ価値があると知る若い世代はどんどんこういうことに興味がなくなっていくのではないか。プレゼントを買って押しかけて、シャンペン開けて踊り明かす、これが結婚式だったらいくらでも行きたいけど、ご祝儀は友人がいくらで、上司がいくらで・・・なんてやってると憂鬱になってくる。
8月とは思えない涼しい一日。久々にパンを焼いた。フムスを作ったので、ターキッシュブレッド(オーストラリアのカフェではそう呼ばれている)を焼いた。アツアツをオリーブオイルとバルサミコヴィネガーに浸して食べる。どんなシンプルなパンでも自家製の焼きたてに勝るものなし。
朝Marseilleを出発して飛行機の発つフランス南東部の街Lyon(リヨン)へTGVで移動する。所要時間3時間程。価格は€20程度。この間の車窓からの景色は特筆すべきものがなく、読書に没頭した。
リヨンは″LYON PART DIEU(リヨンパールデュウ)″″LYON PERRACHE(リヨンペラーシュ)″というふたつの主要駅があって、空港や他の都市へのアクセスの利便性をとるなら前者、観光主要スポットへのアクセスなら後者という選んで下車する。わたしはもちろん前者。とはいえ交通網も発達していてふたつの駅の間は簡単に行き来できるので、大きな問題ではない。
小雨の降るリヨンに降り立った。リヨンパールデュウ駅から徒歩3分の無表情なチェーンのビジネスホテルに荷を降ろして街に出た。
リヨンのメトロで一日フリーパスを買った。€5ほど。自動販売機で簡単に買えるのだが、コインかカードしか受け付けないので、カードのないわたしはどこかでコインを作ってこなければならなかった。
まずは地図を入手するのにOffice de tourismeへ向かう。マルセイユと打って変わって人々の肌色が薄くて、クリーンで治安の良い静かで平和な街といった印象を受けた。
Art streetにあるLe Street Artという小さなハンバーガー屋さんでランチを食べた。ネットで写真を見て絶対食べたいと予約してきた。若いフランス人の青年ふたりが立ち上げたお店でふたりとも旅が好きなようで英語を流暢に話した。
「君が3週間前に日本から予約を入れてきたとき、正直オレ達は″ショック″を受けたよ。だってこんな小さなハンバーガー屋に予約入れる客なんて今までいなかったから」
「だって、HPから簡単にメッセージ送れたし、東京ではちょっと人気がある店なら並ぶ羽目になるんだもん。予約入れるにこしたことないじゃない」
小麦粉と野菜の本当の素材の味しかしないフランス人の作るホームメイドベジバーガー、とても美味しかった。食後のカフェをサービスしてくれた。
本日のパンチライン。Like it!(親指)
歩いてローヌ川へ。小雨が降っていてうすら寒い。マルセイユで陽気な太陽に照らされた直後なだけに心が萎えてきた。観光スポットもチェックしてきたのだが、ただぼんやり街を散策するにとどまった。人々は都会的でバッグをギュッと握りしめて常に気をはらなくてもいいような雰囲気で、落ち着く。でも、何かしっくりこない場所というのはあるものだね。
リヨンにはこれといった大きな感動がなかった。
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空港へはRhone expressという東京でいうNarita expressのようなのがリヨンパールデュウ駅から出ているのだが、これを使うと国際線が発つサン・テグジュペリ空港までまっすぐで30分。料金が€15でツーリスト感覚からするとそう高くもないと感じる。しかし!地元の人はこれは使わずトラムとバスを乗り継いて€3.8で空港まで行くのが一般的だというではないか。バスとトラムの乗り継ぎを1回で所要時間は40分。10分しか変わらない(こういうところも成田エクスプレスのようだ)。地元民の道を選んだ。
トラムの出発地は同じ。スーツケースを持った人々はみんなRhone expressの乗り場にいたが、わたしは地元の会社員やら学生やらに交じってT3のトラムに乗った。朝7時くらいだが、車内は空いていて、スーツケースは邪魔にならずに済んだ。トラムで30分。″Meyzieu Z.i.″という駅で下車。バス停までは徒歩2分くらい。バスもトラムも平日なら15分〜20分間隔でやってくるので、不慣れでも1時間〜1時間半くらいみておけば空港に辿り着けるでしょう。また現在はトラムとバスは別会社が運営しているが、今年の9月以降はトラムの会社がバスも運営するらしい(とトラムの運営会社の人が言っていた)。
バス停にてたまたま話した若い男の子は日本人だった。リヨンの大学で勉強している留学生で、夏休みの間帰省するのだという。彼とお喋りしながら空港まで行き、チェックインも済ませて、一緒に朝食を食べることにした。学生の彼がパンや飲み物の価格をきっちりとチェックしているのを見て思いついた。パンとカフェを頼んで、レジで″わたしに払わせて欲しい″と申し出た。とても恐縮していたが、結局支払わせてもらうことができた。わたしは彼に奢りたかった。というのも、自分が学生の時や若い頃、旅の途中で会った大人にあれこれ奢ってもらったからだ。その人達に奢り返すことは出来ない。彼に朝食を奢ったことで、社会に何かを返還できたような良い気持ちになれた。留学生活の話を聞けてとても楽しかった。英語とフランス語のメンタリティの違いについて話していて、彼が言った言葉がとても印象的だった。
「オレはフランス語の"Tu me manques"って表現がすごい好きなんだぁ。英語では″I miss you"で主語が自分だけど、フランス語ではこれを直訳すれば″あなたがわたしを寂しくさせる″なんだよ。相手ありきで理由があるのがいいな」
フランス語にはこういう″相手と自分の間″というのが明示される表現が多い。
彼とは同じルフトハンザ航空でフランクフルトまで行き、そこで成田行きと大阪行きの便で別れた。
これにてこの旅行記はおしまい。
2015年08月01日(土) |
ジャック・マイヨールの海 |
ノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院の丘の上に立って街を一望し、″ここに住みたい″と胸を膨らませて、またプチトランに乗ってビューポートまで戻って来た。午後4時。一番の稼ぎ時という季節でも港にずらりと並んだカフェの半分くらいは店を閉めている。中に人の気配のない店が多い。なぜだろうか。
ビューポートから海を正面に見て左手側をずっと海岸伝いに歩いた。海水浴場ではライフガードではなく警察が監視をしていた。
このカフェで軽く夕飯を食べることにした。海に隣接したカフェやレストランは値の張る高級店も多いようだが、メニューや価格はちゃんと入り口に掲示されているので安心だ。
いつかこの海岸線をドライブした時に、海に面したカフェに立ち寄りたいと思った。こんなところでカフェの一杯でも飲めたらさぞかし素敵だろう。しかし、ハンドルを握っていたボーイフレンドは土地に不慣れでここまで来ただけで十分ストレスのようだったし、すぐにパーキングなど見つけられそうになかったからそれは夢に終わった。
人生の中で見た小さな夢は沢山あるが、あの時果たせなかったひとつの夢が今叶った。
夕飯には早いせいだろう。ほとんど客のいないカフェには海風のざわめきしか聞こえない。テラス席に腰かけて、通り過ぎるヨットや隣の高級レストランの前で岩の上から波の荒い海に飛び込んで遊ぶ地元の少年達を眺めていた。
マルセイユの出身で"Le Grand Bleu"の主役のモデルとなったフリーダイバーのジャック・マイヨールは南房総へやってきて、自分の故郷と似ていると言ったそうだ。彼はそこに別荘を買い、ダイビングを楽しんでいたという。わたしもこの街にはなぜか故郷に帰ってきたような親しみを感じる。海も風の質もここのほうが大分ダイナミックだけれど、ダイビングが趣味であり生活であった父が子供の頃よく連れて行ってくれた南房総の海には似た風景が沢山ある。
ジャック・マイヨールもこの少年達のようにこの海で遊んでいたのだろうか、と思いを馳せながら眺めていた。
タコのサラダを食べた。茹でたタコにバジルソース、レモン、塩・胡椒。それだけのシンプルなもの。こういうの好きだな。
最高に眺めの良い窓
サラダとカフェで€15くらいだったかな。
カフェを出て、もっともっと歩いていく。海に背を向けて両手を挙げている女神のような石像がある。何かの戦争記念碑のようだが、フランス語で解らなかった。
この辺りで街まで引き返すことにした。歩いて30分〜40分くらいかな。
西陽に染まるビューポート
夕暮れ時のビューポートはあらゆるパフォーマーがいて賑わっている。水際にはそれぞれの時間を楽しむ人々が。
夜の9時。愉快なのはビューポートの周辺のみで、ちょっと裏通りに入ればたちまち不穏な雰囲気が漂ってくる。ホテルまでの道を足早に歩き、無事辿り着いた。ホテルの窓を開け放つとなんとも良い風が入ってくる。しかし、部屋は2階で下の通りには目つきの怪しい男達がうろついている。仕方なく窓をしっかり閉めて空調の風に頼って寝た。
治安面での悪評高きマルセイユ。これといって何も起きなかったが、裏通りには気味の悪い男達がうようよといて、用もないのに遠くから奇声をあげて呼び止めてきたりする。そういう類ののんびりと通りを歩けないという雰囲気は感じた。だが、明るい海岸沿いの表通りは、その裏通りの暗さと不気味さをすっかり忘れてしまうほどの魅力に溢れていた。