My life as a cat
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2011年09月25日(日) "愛"とは。。。

3連休に突入する前夜、適当に社内から集められた"気楽に飲みましょう会"のメンバーと飲みに行った。さぞかしお勉強が出来たのだろう地味な男の子達ばかりで、出会いもない、あってももてそうにもない感じだけれど、彼らといるとその懸命さや誠実さが、日本の男の子も捨てたもんじゃないなと思わせてくれる。不倫や浮気を黙認しながらも体裁よく結婚生活を維持していく文化は受け入れがたいけれど、そんなこととは無縁に生きていく人々が目立たないだけで本当は沢山いるのだ。

連休初日の夜は何度かパーティーで顔を合わせて意気投合した同僚と飲みに行った。海外生活や離婚も経験している彼女は、突き抜けて脱線したような話題からどこまでも重い話題もこなせる人で、"女の迫力"のようなものがあり、社内の噂話と合コンにあけくれている他の女の子達とは全く一線を画していて、とても印象深い夜となった。中でも、じーんと胸に響いたのは彼女が仕事を通じて参加したセミナーの話。本来は又聞きで一般公開している日記に書くものではないのだろうけれど、この日記はわたしの人生のメモ帳だからそう理解して欲しい。講演したのはある大手企業の重役。彼は結婚して次々と3人の子供に恵まれたものの、下の二人は重度の障害児だった。あくせくと働き、病院に通わせる忙しい毎日の繰り返しの中で、奥さんも精神を病んでしまい、自殺未遂を繰り返すようになる。家族は壊れて行き、やがては健康だった一番上の娘まで自殺未遂をしてしまう。その中で彼はなんとか家族を建て直そうと奮闘する。もちろん残業なんてしていられない(ここが仕事術の登場でセミナーの趣旨となるのだろう)。彼の努力はやがて少しずつ実りはじめた。世の男性が当たり前と思っているような"奥さんが夕飯を作って待っていてくれること"も彼にとっては特別で、そんな日は涙がでるくらい嬉しいのだという。"離婚を考えたことはないのか"という質問に対する彼の答えにわたしは胸を打たれた。

「結婚生活に何が起きようともその人を選んだのは自分なのだから、一切の責任は自分にある。"愛”とは責任だ。」

責任を負えないならそれは愛ではないのかもしれない。離婚の理由を相手に押し付ける人は幼稚だ。それもこれも自分の選択なのだから自己責任なのだろう。

わたしも彼女も愛を模索中。語らいあってあっというまに夜が更けていったけれど、さて、わたしのひとつの愛の責任が家で待っている。この愛によってわたしは時間の自由を沢山失くしたけれど、玄関のドアを開けて、そこにおなかを見せてゴロゴロと喉を鳴らされれば、もうそんな不便は全て吹き飛んでしまう。


2011年09月18日(日) Chase me around?

久々に会えると嬉々として銀座まで出かけたのに、友人から聞かされた近況にどんよりと気持ちが沈んだ。どうして逞しく働いて、自分を美しく保つことも怠らず、良い出会いを求めてアクティブに暮らしていた彼女が、30代の後半の若さと成熟の間のような魅力に溢れる時を、ふと魔が指したように妻子持ちの男性に捧げてしまうのか。しかも関係が始まってからすぐに子供が生まれたという。子供などそっちのけで仕事が終わると彼女に会いにくる男、子供が嫌いなその妻、わたしは生まれたてのその子のことを思って、それでも彼女を責める権利もなく、ただただ胸がズキズキと痛んだ。男女の仲は誰だってこうなりたくてなるわけじゃないのだろうけれど、子供を育てるのは絶対に負わなければならない親の使命だ。それを怠って真っ直ぐ自分の元にやってくる無責任な男のどこがいいのだろうか。そう口から出掛かっていた。

みんなわたしと同じ普通の人々なのに、どうして普通のシンプルな幸せをつかめないのか。"普通"だから既にだめなのか。"普通"の親の愛情すらもらえない子供はどうなってしまうのか。どんよりとした気持ちのまま、夕方、男友達と六本木で落ち合った。ミッドタウンの正面口にいつも元気でハッピーで天真爛漫な彼が走ってやってくるのを見たら、安堵のあまり泣き出してしまいそうになった。バッグヤードへ廻り、芝生に腰をおろして、風があったせいで澄み渡った夕空にぽつりぽつりと星が現れて、夜の六本木に次々と灯りが浮かび上がっていくのを見守ってから、わたしの要求でパブに移動した。呑んで昼間のことを忘れてしまいたかった。ソルティードッグの粗塩にしびれながら、こんな話になった。彼が先日パーティへ行くと、そこに二人の若い日本人の女の子がいて、好きな男には簡単にモノにならないようにじらして逃げて追いかけさせるのがいいのだというようなことを話していたのだが、自分にはそこにどんなメリットがあるのかさっぱり意味が解らないというのだ。

「逃げ惑うものを追いかけたくなるのは動物の本能で、それで、追って追ってやっと捕まえた時に達成感から自信を得たりする感覚が男の人は好きだからじゃない。」

と答えるとまだ腑に落ちないという顔をしていたが、ぽつりぽつりと、

「僕はセトルダウンしたいから、走って走ってつかまえなきゃいけないミステリアスな女の子は欲しくないよ。」

と呟いていた。日本に何年いてもなかなか本音と建前文化は彼の体に染み入らず、どこまでいっても欧米人なのだ。しかし、わたしはこの違いをより深く理解して体感するにつれ、欧米型の直球な男女関係の気持ちよさにはまってしまった。一見円満な夫婦がいて、夫は浮気に走り、妻は夫の稼いでくるお金だけを当てにして虚しさを買い物などで凌いでいるようなことが珍しくないこの国の風習は気味が悪い。

少しアルコールがまわって気も紛れたところで、六本木ヒルズを案内してもらった。考え抜かれた照明に浮かび上がる建築は迷宮のようで美しかった。やかましい六本木は嫌いだと言ったので、彼なりに歩く路地や場所を選んでくれたのだろう。この人といると本当にあらゆる意味で安心してしまう。生粋のニューヨーカーで六本木在住なんて派手な匂いのするデスクリプションでありながら、決して良識を失わず謙虚だ。

「君の友達がどうであれ、この社会がどうであれ、君はしっかりとした選択ができる人だからどんな荒涼とした地でも幸せを掴める人だと思う。」

別れ際に励ますように彼がくれた言葉をぎゅっと握り締めて家路についた。


2011年09月17日(土) サヨナライツカ

やっと連休に入った。仕事も落ち着いてきたから、気持ちに余裕を持ってこの連休はゆっくり女友達とランチをしたり読書に耽る予定。ダミアンとは別れてしまった。はじめから将来を見据えて付き合うことができないだろうとお互いに思っていたけれど、ほんの微かな希望を握り締めて一緒にいた。本当に繊細で気の優しい良い青年だったし、クロエちゃんと暮らし始めてからは、わたしが夕飯を作っている間にクロエちゃんのトイレの掃除までしてくれたりして、そんな時、この人は結婚して子供が出来たら一緒に子育てをしてくれるような良い旦那さんになるだろうと思った。お互いにちくりちくりと思い悩んで苦しんできた。だから別れた夜はひととおり苦い涙を流したら、心がすっと軽くなったような気がした。

その数日後、6年前に別れた人からひらりとメールが届いた。わたし達の猫が元気だということと、別れてから後悔や反省も沢山しているのだということが書かれていた。わたしにだって後悔や反省が沢山ある。どちらが悪かったというわけではない。そういう巡り合わせだったのだろう。ただわたし達に出来ることはそれをしっかり胸に刻んでこれからの人生に生かすことだけだ。

しみじみ思う。わたしがひとつだけ誇れることは、誠実な人々とひたむきに恋愛してきたことだ。ひたむきに取り組んできたことは、たとえ成就しなくても自分の心に充実した感情を実らせる。だから何度失恋しても、もう恋愛なんてうんざりだとかそんな風に思わない。誰かをたまらなく愛おしいと思う気持ちも、不在の寂しさも全て宝物として胸に積み重ねていきたい。

とはいえ、すぐにまたどっぷりと恋愛したいなどという気分ではないな。先日、月の綺麗な夜に男友達が美味しいワインを用意して、彼のルーフトップバルコニーに招待してくれた。目の前を流れる川には屋形船が浮かび、賑やかな宴の声が聞こえてくる。月は正面のビル郡の間に、頭上には星が浮かんで、なんとも贅沢な気分だ。わたしはどちらかといえば、男として彼に興味を感じているけれど、あちらはわたしが自分と似過ぎていて恐いと言う。確かに似過ぎていて男同士のように気持ちが通じ合えてしまうので、男女として成立しそうにない。しかし、しばらくはこんな自由気ままの独身貴族(わたしはオールドメイドというのか?)を謳歌するのも悪くない。

たまたま手に取った辻仁成の「マダムと奥様」というエッセイに書かれていたこんな言葉が今のわたしの胸に響いた。

−まぁ、将来のことはわかりません。何が起こるのか人生というものは予測がつかないからこそ、同時に豊かなわけでもありますし。つねに、心の中に「サヨナライツカ」を持って生きることが私メは大事だと思うのです。「サヨナライツカ」を持つことによって、人は欲にしがみつかなくなります。その思いが実は「サヨナライツカ」という小説を生んだのでございます。相手にしがみついて生きると愛は腐りますのでね。家族の成員すべてが生き生きと独立して生きることが、そしてある種の緊張感を切実に感じながら生きることが何よりも大事なのでございますな。

この人を見ていると人間はいつからでも何度でもやり直せるとつくづく思う。2度の離婚でボロボロに傷ついたというようなことをどこかに書いていたけれど、それでもひたむきに生きる人にはまた優しく光が注がれる。3度目の結婚で繊細に尖った感情がじわりじわりと解けていくように幸せな日々慈しんで、同時にあれこれと学んでいるようだ。結婚して7年経って、夫に「よく出来た女だ」と言わせる中山美穂さんもすごい。一瞬で男を虜にしてしまうような人もいるけれど、わたしは噛めば噛むほど味が出るようなこんな女の人に憧れる。

さてと、近頃、女友達がこぞって恋愛話に色めきたっているから、しばらくは聞き役に徹することにしよう。


Michelina |MAIL