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2009年08月07日(金) |
Thanks for tonight |
先日知り合ったばかりのJに帰るまでに一度と食事に誘われた。両親がヨーロピアンで今でも仲良し(つまりそういう家庭で育った)というところに少し期待は持てたものの、当人はオージー、それだけでさほど男性としての興味がなかった。あちらはパースに越してきたばかりで右も左もわからないのでわたしがアレンジする。オージーだしそんなものだろうと、"パブで一杯やる?"と提案してみたら、意外にも"何か食べよう"という答えだった。それでは無難にと和食にした。昼間にバドミントンをしてそのままかけつけたからパーカーにスニーカーという色気もなにもない格好で、初めて食事をする相手の為に全くお洒落をしなかったことに少し戸惑いながら待ち合わせ場所に立っていると、あちらもシャツとスニーカーで現れて、気が合ったようでなんだか嬉しかった。
ゆっくりゆっくり食事を摂りながら沢山話した。早寝早起き、まじめな働きぶりで酒も飲まない、煙草も吸わない、ギターとジャングル探検をこよなく愛する言葉使いが慎重で丁寧な人だった。レストランをでてもまだ話し足りず、Victoria parkまでドライブしてカフェに入った。朝まで話していられそうなほどもりあがってしまったけれど、わたしは明日帰国するからそうもいかなかった。
家まで送ってもらって車の中で握手をして別れた。家に入るとアレックスの姿がない。どこかでそれなりの楽しい金曜の夜を過しているのだろう。サマンサとジュリアンも見えない。静まり返った夜の家の中でさっき別れたばかりのJがもうすでに恋しいような気がした。顔を洗っているとメールがきた。今夜は楽しかったとか、明日君が去っていくなんて信じられないとか。本当に。もう少しだけ深入りしてみたい相手だった。楽しかった時間の余韻に少し胸をざわめかせながらベッドに入った。
ハリソンとNorth bridgeに新しくできたベトナミーズレストランへ行ってみた。William StreetにもJames Streetにも新しいレストランがたくさんオープンして、咳き込んで買い物に行ったら、持っていきなっ、とトローチをぽいっとバッグに入れてくれた八百屋のおじさんも、いつも店の前でタバコをふかして一見ヤクザのようだけれど、わたしを見るとにっこり手をふってくれるシェフも姿を消して、顔見知りを見つけることが困難になった。
ペースト状にしたドリアンが乗った食後のチェーは最高。おなかを満たしたらLate night shoppingへ。日本に持って帰るべき食料をゆっくり吟味。Bounty Chocolateに、Kettle Chips、Almond Biscotti、nuts and dry fruits mix、Brazil nuts、Espresso、、、、本当はもっともっと持って帰りたいものがたくさんあるけど、リミットがあるのでこのくらいにしておく。
帰りの車の中、オージーのハリソンに質問してみる。
「オージー男性とは付き合わないほうがいいよ、と日本人女性はよく言うけれど、どう思う?」
「賛成だね。違い過ぎるよ。良くも悪くもオージーはイージーゴーイングだからちゃんと働かないとか、去ったらあっさり諦めるとか、そんな問題がでてくるよ。」
ハリソンは真っ直ぐ自分を愛してくれる新しいGFの写真をたくさん集める代わりに自分が追って追ってやっと束の間手に入れたEXの写真を大事に大事にキープしている。それを彼女に見つかって泣かれたなどと話していた。同じ度量で愛せないのは仕方がなくても、それを相手に悟らせてしまうなんて、なんて酷なことだろう。男女関係は持てそうにないが、ハリソンのような気楽な男友達は貴重だ。聞かない限りわたしに何のアドバイスもしない。人は人とさほど興味がないのか遠慮してるのかはわからないが。日本行きのわたしのカートに米を入れたり、マヨを入れたり(笑)、他愛ないジョークばかりの時間に心底ほっとする。
お気に入りのミニスカートを履いて、お気に入りのカフェへ。絶品ウォールナッツカラメルタルトとカプチーノをオーダー。10ドル**と言われて小銭を探っていると、いつもはちっともかまってくれないちょいとラティーノの血をひいたような白人ハンサムオーナーが、わたしのぷっくら脚を一瞥して10ドルでいいと言ってくれた(笑)。
バスに乗ったらアジア人顔のバスドライバーが話しかけてきた。
"Where are you from?"
日本人だと答えると嬉しそうに自分も日本人だと言う。ベトナム人や中国人ドライバーはよく見かけるけれど、日本人は珍しい。
「日本では会社員をしていましたけど、この国の豊かさに惚れて1989年に移住してきたんですよ。それがここ4,5年の中国のマイニングブームなんかで町が急激に変化しましたよね。新しい住宅が立ち並んで、土地も食べ物も高い。昔はオーストラリアでプール付の家に住むなんて珍しいことじゃありませんでしたけど、今じゃ、そんなの夢ですよ。もう住みやすい町なんかじゃありませんよ。」
などと話していた。同感だ。わたしもはじめて移り住んだ頃のこの町が好きだった。もっともっと地に埋まって土を被ったポテトのように垢抜けなくて、何もかもがこの町で始まってこの町で完結するようなシンプルさがあった。部屋を借りるにも家賃は今の半額だった。今では、インテリアマガジンから飛び出したような垢抜けた家がぎっしりと立ち並び、シティはクレーンだらけ。裸足で出歩く人も見かけなくなった。この町の懐が豊かになるのに反して、豊かな時間の流れが失われていくのがさびしい。しみじみそんな思いを共有しながら、
"またいつか会いましょう"
とペコリお辞儀をしてバスを降りた。
夕暮れ時のバスの中、飲食はダメだというステッカーがそこらじゅうに貼られているというのに、ドライバーがパリパリ、ポリポリと白い煎餅のようなものをぷくぷくした太い指でしっかり握り締めて、あまりにもハッピーな表情で齧り続けていた。客はみんな空腹を堪えて家路についているというのにな。
夜にアレックスと彼のアフリカンの同僚エディとディナーに出かけた。
「ガールフレンドできた?」
わざとかまをかけてみる。
「残念ながらシングルなんだ。君のような綺麗な女性を探してるところなんだ。」
アフリカ男の典型的ハンティング技にアレックスはただにやにやと見守っている。
「クリスチャンは嘘ついちゃいけないんだよ。」
と言ったらやっと白状しはじめた。写真を見せてとねだると、顔を赤らめて財布から小さな証明写真を取り出した。おでこの妙に広い小太りのブラックガールだった。エディよりは幾分肌の色が明るい。
「い、色白ね。」
そこを褒めるしかなかったが、彼らにはそれは最大の褒め言葉らしい。大切そうに財布にしまってあったように見受けられたその写真は、残酷にも愛だの恋だの彼が語ると全てまやかしのように聞こえるロマンス話に夢中になったエディが無造作に置いた熱い皿の下敷きとなっていた。
2009年08月02日(日) |
I'm feeling great! |
北に160km、ひたすら車を走らせてLancelinへ。リゾート開発などされていない何もない静かな町と、どこまでも広大なコバルトブルーの海を一望して、大人が考えることはただひとつか。
"Beer?"
ボトルショップに駆け込んで、たんまり調達したら木陰に席をとってそれぞれの時間を過す。波打ち際の犬と必死で遊んでいると野生のイルカが寄ってきた。一度触れてみたいと近づくものの届きそうで届かない。わたしの心を弄ぶように近づいてきて追いかけると忽然と姿を消す。忘れた頃にふらりとまた姿を見せる。
家に帰ってわたしの夢物語をみんなに話して聞かせる。Lancelinに家を建ててね、黒いラブラドールと毎日ビーチで遊んでね、庭で野菜を育てて暮らすの。アレックスがひとこと。
"だから、アイツと結婚すれば。。。。it's not just a dream"
先日のガイである。そういえばアイツは今日一度もビーチへ降りてこなかったな。水が怖いのか、泳げないのか、ビーチが嫌いなのか。
"アイツよりも犬のほうが楽しい"
と切り捨てたら、みんなが憐れみの苦笑いを浮かべていた。