My life as a cat
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2009年07月29日(水) Love Me Do

夏休み。パースにいる。こちらの季節は冬といえども天気に恵まれれば日中は暖かい。ゆっくりビーチを散歩して、カフェで休憩。午後は公園でうたたね。気まぐれに目を開けて読書。仕事とバドミントンと人間関係に忙殺され続けて、やっと心身ともに休ませる時間ができた。

夜は若さゆえに料理の腕の頼りないサマンサが弟のジュリアンのためにせっせと何かを拵える懸命な背中を見守りつつ、ジュリアンの学校の課題に感想をあげたりしている。親元を離れて暮らすこの兄弟は無邪気にピッツァをほおばりながらも二人の健康を案じるお母さんの言いつけどおり食後のサプリメントをしっかり摂っている。

アレックスは、君はいい加減Move onするべきだとでも言うように、突然ある男性を連れてきた。家もあるし、教養もあるし、経済的にも安定してるよ、などと言って。穏やかな良い青年だった。相手はわたしを気に入ったらしい。食事をご馳走になったお礼にわたしの和食ディナーに招待した。彼がわたしのタイプだったらどんなに物事が簡単なことだろう。良い友達にはなれそうだ。

カフェでオーダーしたコーヒーを待っていると店員のお姉さんがBGMに合わせてご機嫌に歌っている。

Love love me do,
You know I love you,
I'll always be true,
So please, love me do

新しい恋でも見つけたのかい?と聞きたくなるくらいハッピーな顔で。わたしもハッピーになれるかと一緒に口ずさんでもみた。そんな気がしてきたぞ。のってきたところで、
"Here you go, sweetheart!"
と温かいカプチーノを手渡された。


2009年07月20日(月) 33歳のはじまり

Happy birthday to me。朝からコソコソしていた同僚が帰り道、follow meと猫のみぞ知りような奥の細道にわたしを誘う。小道を一列になってこつこつと歩く。シダの門を抜けるとピンク色の壁のフレンチレストランが現れた。愉快な夜のはじまりはじまり。

ワインで乾杯。食べて、飲んで、笑う。おなかが落ち着いたところでケーキが運ばれてきてバースデーソングの合唱。特別にプレゼントを用意しなかったことを侘びるインディアンガイを"キスをくれたら許すわっ"と頬を差し出してからかうと顔を真っ赤にして逃げの体制。代わりにチャイニーズボーイが頬にチュッとしてくれた。

誰にも知られずひとりでひっそりと年をとっていくのかな、なんてさびしい思いはどこかに吹き飛んだ。これからどんどん幸運が舞い込むような予感をくれる素敵な33歳のスタートの日となった。


2009年07月19日(日) 梅雨明け

忙しい一週間をまとめて。

土曜
インディアン・ガイの家でタイ料理パーティ。祖母の庭で適当にすくすく育った半野生のようなグリーン・チリを摘んで、ペーストから手作り。生のコリアンダーに紫玉ねぎ、しょうが、にんにく、グリーンチリ、クミンシード全部をすり鉢でスリスリスリスリ。。。。額に汗を浮かべながら10分くらいかかる。スローフードを崇拝しつつ頭の片隅にフードプロセッサーがあれば。。。という妄想が走る。グリーンカレーに春雨サラダ、空芯菜の炒め物、あとはインディアン・ガイが作った名もなきスパイシーな炒め物が並んだ。

日曜
いつからこんな飲んでは適当に泊めてもらうというヘンテコな関係になったのか。インディアン・ガイの家で目覚める。周囲はにやにやと探りを入れてくるが、まったくプラトニックだ。帰り際に名残惜しくハグをするだけ、それ以上進む勇気も気力も情熱もお互いに持っていないに違いない。駅まで送ろうか、と言ってくれたが断った。二日酔いの鉛のように重たい体を引き摺って外に出ると、日差しが強い。もう梅雨明けか。夏が来るのにわたしはさびしい。

火曜
インディアン・ガイと揉め事。みんなで楽しくもんじゃ焼きをつつきながら小さなテレビにしがみついてボクシング観戦をしている最中キレて泣いて、その場をしらけさせる。驚いた彼は必死に謝って、わたしも許したものの、心がぼろぼろになってしまって、夜寝つけなかった。慰めてくれる人などいらないからせめて放っておいて欲しい。わたしはしばらく女友達と平穏なだけの日々に浸っていたい。

木曜
仲良しの同僚マリちゃんとその友達と飲みに行く。マリちゃんが舎弟と呼んでいつも連れまわしてる男の子をはじめて紹介してもらう。なんとも可愛らしい弟タイプの男の子でおねえさんはすっかり楽しくなって夜遅くまでウーロン茶で騒いだ。女3人のガールズトークは尽きることなく、舎弟君は眠たい目をこすりながら力なく相槌だけうっていた。

金曜
40代後半独身女性の同僚とちょっと怪しい仲の既婚上司と3人で飲みに行く。毎度のことだが、暗に
「結婚できたけど、あえてしなかった。」
という強がりのような自慢話を延々聞かされる。本当にそんなに結婚に興味がなかったなら聞いてもないのに、そんな話をしょっちゅう持ち出してくるのだろうか。彼女の天敵はいつも同年代の既婚で子持ちの無邪気でハッピーな奥さんだ。既婚の男に近付いてぺろりと舌を出して、若い女の子達に浮気をしない男などいないと諭すところに侘しい男遍歴が滲み出ている。バブルの時代を引き摺っているから、男は貢がせるものといって憚らない。けれど、貢いだって彼女からは何もでてこないからやっぱり男は貢がない。だから家もないし車は普通の1300なんだろう。いつも若いころ男にお金をもらった話などを誇らしげに20歳そこそこの若い女の子達にリピートするのだが、現代っ子の彼女達は逞しく自立していて傍から男に何か買ってもらいたいなどとは思っていないから鼻で笑われているだけなのに気付きもしない。既婚上司はもう奥さんとは平穏に何十年も一緒にいるから、どんなでも真新しい女にちょっと興味があるのかな。

帰りの電車の中で自分に誓った。わたしだって結婚できるかわからない。彼女のようなさびしいおばさんになってひとりぼっちの老後を恐れて日々を送るようになるのかもしれない。それでも若い子達に痛いおばさんだと言われるような女性にはなりますまい。外見は衰えても、心だけはずっと健やかに保っていたい。


2009年07月09日(木) Lost in translation

仕事が忙しいのに、夕方は定時にあがってバドミントンがしたい。仕方がないので早朝に出勤して貯めに貯めた仕事の片付けにかかっていた。だだっ広いオフィスで自分のデスクのところだけ電気をつけて、大した食欲もないのに義務のようにコンビニで買ってきたおにぎりを口に運びながらPCに向かっていた。

ふと背後で声がした。

「おはようございます。」

振り返ると、アメリカに転勤したはずのAさんがピシッとスーツを着て立っていた。すらりと背が高く、しゃべってみても頭のきれる好青年。初めて見た時、心がとろけそうになったのだが、すぐにアメリカに転勤が決まってがっかりさせられた。それがまだ数ヶ月しかたっていないのにここにいる。一週間だけ帰ってきたのだという。時差ぼけで眠れないので早く来たのか。オフィスが新しくなっていて、右も左もわからないというので案内してさしあげた。早起きは三文の徳。わびしい気持ちになる早朝出勤は一瞬にしてバラ色となった。

それからは、あちらも片付けなければならない仕事がたんまりとあるようでわたしと同等、朝も夜も時間外労働に追われていた。たまに息抜きにお喋りをしてまた仕事に戻る。これが独身同士ならば、同じ時間に終わればちょっと食事をして帰ろうということにでもなるのかもしれないが、あちらは既婚者、どんなに会話がはずんでも、さようなら、また明日、と言うしかない。もっとも誘われたら誘われたで、既婚の分際で!と興ざめするのだろうが。

楽しい一週間はあっというまに過ぎ去り、戦友のような情も沸きはじめた最後の日。帰り際にバイバイを言おうと思ったのに、会議に借り出されていない。仕方なくあきらめて、バドミントンへ行った。真剣に汗を流して、みんなでわいわいもんじゃ焼きを食べていい気分で駅のホームで騒いでいたら、プラットホームの一番先端のほうにAさんを見つけた。なんという偶然なのか。近寄っていってやっとバイバイを言うことができた。

「3年後に戻ってきて、またあなたがいてくれたらいいなぁ。」

なんて言葉でまたわたしの心を溶かして去っていった。


2009年07月01日(水) 夜食への道中

仕事帰り、たまにはゆっくりとウインドウショッピングでもしようと、自宅駅を乗り過ごして少し遠出。隣の席の若い娘もまたちょこちょこと着いてきた。小柄な骨組みにたっぷりと脂肪がのったぷくぷくした体型で食べることが大好き。恋愛がしたいなどとうっとりしてみても、おなかがすくと何か食べ物の話をしようと言う。綿菓子の雲の上に寝そべっておいしいもののことだけ考えていればいいような彼女との時間が近頃何よりもわたしを癒している。

買い物をして夕飯に手打ちうどんも食べた。腹ごなしに少し遠いインディアン・ガイの家に歩いて遊びに行こうということになった。夜道をてくてく歩いて向かう。が、途中にチャイニーズ・ガイの家があり、
「ビールあるよ!」
と言われたが最後。彼女の足が一歩も動けなくなってしまった。
「やっぱり今日はインディアンハウスには行きたくない。もう疲れたもん。ここでビールを飲もう。」
しかし片やカレーを用意して待ってるのでなんとか説得して向かう。またてくてくと歩くこと20分。インディアン・ガイの家に到着。きりりと冷えたコロナにレモンを絞って手渡され、咽喉を潤した彼女は、
「やっぱりインディアンハウスに来てよかった。チャイニーズハウスのビールはいつも冷えてないもんね。」
とゲンキンで、出されたチキン・カレーをもりもりと平らげた。ベジタリアンカレーもいつもは用意してくれるのだが、わたしは寝しなに飲食できないので遠慮してコーヒーだけもらった。

浅黒くて図体のでかいインディアン・ガイとぷくぷくで色白で小柄のジャパニーズ・ガールが、
おいしいでしょ?うん、前よりおいしくなった。
などと頷きあいながら仲良くカレーをほおばる光景は愛らしかった。次回はインド風マッシュポテトを作ってくれるというので、もう少し早い時間におなかを空かせて行こう。楽しみ!


Michelina |MAIL