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はぁ、あっという間に働き出して1ヶ月が経った。忙しかったが、海外の客がぼちぼちホリデーに入っているので少し落ち着いてきた。あちらは優雅でよろしいと呟きながら空腹しのぎの煎餅を齧り夜な夜な仕事に明け暮れていたら、これまた優雅なガイジンから久々のメールが。アレックスが突然日本にやってくるという。また宿を探したり、どたばたしはじめた。まったく予定のなかった冬休みはひっくり返ったように忙しくなりそう。
今日はバドミントン大会があった。ショートパンツで出場すると宣言したら有名になってしまい、悩殺技で勝てるだろうと期待の星であったが、とんでもない。プロのプレイヤーみたいなフットワークのお兄ちゃん達がでてきて、32歳のナマ脚には目もくれず、こてんぱんにやっつけられて、体中アザだらけになった。しかも筋肉痛がやってくるのは3日後ときた。懲りずに、
「次回はスコート履いてきます。」
と宣言し、ボスを困惑させた。
ランチはバインミー。軽くトーストしたバゲットにマヨを塗って、にんじんと大根の膾、スライスしたきゅうり、チョップしたコリアンダーをたっぷり、ニョクマムをふったオムレツを挟んだ。サイドにはオージーのシェフのおじさんに教わったウェッジポテトを。このポテトは揚げていない。多めの油でフライパンで焼けばいい。レシピはもったいぶってシークレットにしておこう :)罪悪感を感じるほどの強いコーヒーに甘ったるいコンデンスミルクが入った小悪魔テイストのヴェトナミーズコーヒーも淹れて。
ハノイに到着した日も肌寒くシトシトと雨が降っていたっけ。外のバイクの喧騒と裏腹にゆったり時間が流れるとハノイのカフェの午後の時間を思いながら、久々にゆっくりと本を広げた。
2008年11月15日(土) |
My kind of place |
昨日、わたしの前任者が花束を抱えてすっきり顔で去っていった。仕事は難しく、がんばり屋さんほど気を病んで辞めてしまうらしい。といえども、新しいことばかりで面白い。男性が圧倒的に多いが、仕事に対してはサムライ、女の子に対してはイングリッシュジェントルマンになるという大変好ましい人々で、人間関係に心乱されることなく、仕事に集中できる。やっと自分の安住の職場に落ち着いた気分だ。
靴底を直しに近所のリペアショップに行くと、いつものおじさんがいない。"いつものおじさん"は全く商売気なく、わたしの古いけど、手入れの行き届いた美しい靴を見て、
「新しいの買ったほうがいいんじゃないのぉ?」
とあっさり一蹴したのだが、後任者もちゃんとその魂を受け継いだらしい。同じことを言ってくれた。しかも、
「3日かかるよ。」
は?靴底に3日?100事くらい文句を言ってやろうと体内のエネルギーを脳に集めて荒い呼吸をしていたら、中から別のちびっこいおじさんがにょろにょろとでてきて、靴を手に取り、
「30分!」
と訂正する。どうしたら3日が30分に変わるのかよくわからないが、30分待って戻ったら、ちゃんと出来てた。
夕方、元々魚屋だったスーパーに行くと、殻付きの牡蠣が売っていた。父の大好物なのでたまにはご馳走してあげようと思ったが、どうやって殻を開けるのか。近くにいた店員に聞くと妙に詳しく説明してくれた。ツボがあるらしい。開け方を習ったところで袋に詰めていると、色んな人がどうやって開けるのかと聞いてくる。お兄さんの説明をオウムの如くリピートすると、ふむふむとみんな感心して聞いている。レジに並んでいたらまた背後の女性に同じことを聞かれる。家に帰りまた家族に説明。もう牡蠣のことなら任せてください!
レモン汁を垂らし、父が音をたてて啜る。妹が病床に臥して以来、血圧があがり、共倒れのようになっていた母もその音につられ、ひとつ奪い取るようにしてツルリと飲み込み、ウマイ!!と叫ぶ。牡蠣を挟んで両親はとてもハッピーな顔でビールを飲んだ。数ヶ月ぶりにこの家に魂が戻ったようで、それは何よりもわたし自身を満足させたのでした。
甘酒でことこと煮るカノウユミコさんのレシピで作ってみた。甘酒ってすごい。みりんと酒の役目を両方果たしつつ、野菜だけの料理をこってりにしてコクをだしてくれる。わたしは甘い料理が苦手なので、酒粕を買って、溶かして、2つまみくらいのてんさい糖を加えて甘さを控えた。すき焼きという料理自体が好物ではないけど(溶いた卵に入れて食べるというのもちょっと気味の悪い料理だといつも思っていた)、普通にごはんのすすむ味だった。
久々にマーヴとあれやこれやと喋った。オバマはハーフなのにやはり、一度ブラックが混じるとブラックと定義されるようになるのかとか、見た目と裏腹に中身は大分白っぽいとか、口はラッパー並だが、やはり黒さが足りない、本物のラッパーみたいなのがでてきたらアメリカも面白くなるとか(ムリだろ!)、無茶句茶話で盛り上がりました。マーヴは期待されてるほど変わらないんじゃないか、などと言っていたが、わたしには少なくとも普通というのかまともな人間に見えるがね。それでもまだ"白"とか"黒"というカラーにあまりにもセンシティブなのがあの国が未だ頑なに保守的なことをものがたり、アメリカという国の心がひとつになる日は遠いのかもしれないと思わせる。
新しい職場の雰囲気くらいはつかめたかな。まだPCのセットアップも完了していなくて(この会社、なぜか自分でやらされるのよ)、席もないから、予防注射一本打たれて、名前も聞いたことのないような国に送られていく勇敢な戦士のような技術部のおじさま方の島の端にちょっこり座って、ちゃっかりお土産を頬張ってます。一緒にスタートした女の子はオーストラリア仕込みなので、何かと話が通じやすく、帰り道あぁだ、こうだと喋って発散できるのが嬉しい。ボスはたいへん頭の良い方のようで、小難しいことを飲み込みの悪いわたしでも理解できるように教えてくれるので、なんとか着いていけている。
仕事をはじめたら、日本にどっしり腰をおろしたような気になった。マーヴとはまだ毎日電話で話しているものの、離れた時間が長くなるにつれて、現実味が薄れて、いつかまたどこかに移り住む日が来るのかもしれないなどという落ち着かない思いはひいてしまった。何もない薄暗い小道を走る会社の帰りのバスの車窓からパッと光って目をひいたヘアサロンへ飛び込み、髪を切ることにした。辺鄙な場所のせいか、若い女の子が3人、暇を持て余してお喋りに興じていたけれど、わたしを見るや否や取り巻いて大歓迎してくれた。肩につくくらいにばっさり切り落としたらことさらスッキリした。4000円払って勢いよくヘアサロンを飛び出し、頭を振ると仄かに空気に溶けだすシャンプーの香りに悦んで、足取り軽く家路に着いた。