My life as a cat DiaryINDEX|past|will
チーズケーキを焼いた。タルト生地には砕いたくるみとごま油をほんの少し、甘みはてんさい糖でかなり控えめに。フォークが刺さりにくいくらいの濃厚なチーズケーキのできあがり。くるみがほんのり香ばしくて、てんさい糖が奥行きのあるいい味をだしている。レモンとオレンジ果汁も入れたのでしつこ過ぎる感じもない。読書の合間にほんのちょっと甘い物をつまむ幸せが出来た。
昼下がりにだらだらとフリーマントルを散歩していたらマーティンがお腹が空いたというのでイタリアン・レストランに入った。これといった会話もなくマーティンは黙々とパスタやスープを貪り、わたしはぼんやろコーヒーを飲んでいた。ふと横のテーブルをみると日本人の女の子3人とレオナルド・ディカプリオのような幼い顔をしたオージー青年の4人でテーブルを囲んでいたのだがどうも雰囲気がおかしい。手持ち無沙汰だったわたしは無意識にボーっと彼らのやりとりをみてしまった。どうやら1人の女の子のみが流暢な英語を話せてあとの2人はあまり話せない様子。これで英語が流暢なコとオージー青年が2人だけで盛り上がっているなんていうのは陥り易いパターンだけれどどうもそんな感じではなかった。みんなとコミュニケーションを取りたいオージー青年はランダムにみんなに話しかけるのにも関わらず、英語の出来ない二人は反応も鈍くひたすら食べ物を口に運び、英語の流暢な女の子はこの2人にお構いなく、青年だけにまっすぐ視線を向けて話していた。ふと流暢なコがレストルームに立つと急に残された2人の女の子が元気になり、つたないながらも愛想よく英語を話し始めた。青年はほっとした顔つきで束の間3人の間にリラックスした空気が流れた。ふとあるこちらにいる年配の駐在員夫婦が「日本人って自分より英語ができる人の前では英語喋りたがらないのよ。でも相手が自分より英語がヘタだってわかると急に元気に喋りだすの」と言っていたのを思い出し、まさにこういう感じなのかな。とりあえず、ひたすら気の良さそうな青年、おつかれさま。
今夜はまったりとDVD鑑賞。ジム・ジャームッシュ監督の"Ghost Dog 〜The way of SAMURAI"を観た。本で読んだ武士道を忠実に歩こうとする殺し屋のブラックガイ"Ghost Dog"。とあるビルの屋上を住家とし、彼への依頼は伝書鳩が運んでくる。ストーリーはありふれた殺し屋のお話なのだけれど、ジムジャー・ムッシュ映画独特の登場人物のテンポやユーモアが散りばめられている。例えば英語しか話せないGhost Dogの一番の友達はフランス語しか話せないアイスクリーム屋の男。二人はお互いに相手の言葉を理解していないのに心で通じ合っていて、偶然にも会話が噛みあっていたりする。一見淡々としたスローな展開の中でクスクスとなんとも言えない笑いがこみ上げてくるような、魅力的な映画だった。
ミケの一番仲良しの友達は道路を挟んで向かいの家に住んでいるマーブル君。夕方彼女がごはんを食べ終える頃にチリリンと鈴を鳴らしながらお迎えにやってきて2匹で仲良く家の前とか屋根の上で遊んでいる。が、よく見ているとこの2匹は対等ではなく主従関係にあり、どうやらミケが女王さまのようだ。例えばマーブル君が気持ち良さそうに砂の上に寝転がっているところをミケが追い立ててどかして、そこに自分が同じように寝転がっていたりする。(なんて意地悪なんだ!)そしてなんと言ってもミケが道路を渡ってあちらに行くことはなく、必ずマーブル君が道路を渡るという危険をおかして会いにくるのだ。昨日の話に引き続き、欧米猫社会でもメスネコ強し!なんだろうか。
以前、ある欧米人の友達と「ストレス」についての話をしていた。わたしが「日本人ってストレスがたまってると思うよ。電車には痴漢とかいるしさっ。欧米で同じように電車が混んでても日本ほど痴漢とかでないんじゃないかって気がするんだ」などと言ったら「Sure.そんなこと欧米人女性にやったら絶対蹴り入れられて殺されるよ。恐くて絶対出来ないよ」と返された。
今日も晴天。パースの初夏。観光客や地元の家族連れで賑わうキングス・パークへ繰り出した。写真を撮りながらゆっくりと散歩。展望台からシティを見下ろすとわたしが5月にここを去った時にはまだなかった巨大なコンベンションセンターが見えた。パースの時間はゆっくりゆっくり流れているように見えていたのに、今回5ヶ月ぶりに帰ってきてみたらあまりにも色々なものが変わっていた。ここの不動産ブームはめざましい。シドニーよりはるかに田舎なのにリアルエステートエージェンシーの数は3倍だと言われている。毎週ポストにはリアルエステートエージェンシーの発行する新聞が入っているし、何よりもここの人々は土地の話が大好き。マーティンの会社や何かのパーティなどでも人々は寄れば集まれば土地の話に花を咲かせる。これからどんどん色々なものが変わっていってしまうのだろうかと思うと淋しい。わたしにとって東京が感興をそがれる場所ならパースは心の拠のような場所なのだ。
ちょうど一年前くらいにテレビで見た軽いヨガをダイエットのため風呂上りに5分くらい真似てやっていた。それが驚くべきことに1日たったの5分時間を割いているだけなのに、みるみると効果が現れ、お腹が空くのが早くなり(代謝が上がったと思われる)体が軽くなって、親にも「少し痩せた?」と言われた。それからすっかり信者になって、時間があったらじっくりやってみようと思っていた。そしてつい1週間前くらいに日本で買ってきた「YOGA」という雑誌を見てあれこれ色々なポーズを覚え始めた。やっぱりヨガは素晴らしい。体の不調がないので妙に気分が良いし、ダイエット効果もすごいし、寝つきも良い。2週間前に普通に履いていたスカートが早くも落ちてくるようになった。食事制限もしていないので体重が減っているかどうかはわからないけれど、体は変化しているのがわかる。ヨガをはじめると心身共に健康になり自然と魚や肉、スパイシーフードやお菓子などを自然に受けつけなくなるという。わたしはすでに動物性のものは殆ど食べないしあまり食べたいとも思わないのでかなり健康なのかもしれない。
昨夜、熱いシャワーを浴びた後に家の前のレンガに腰掛けてぼーーっと星を眺めていたのが災いして喉が痛い。何度も塩水でうがいして夕方にはよくなったものの「食事」という気分ではない。喉をつるっと通る甘い物が食べたいなっと初めてクリームブリュレなるものを作ってみた。ボールに材料を放り込んでミックスしていたらマーティンが帰ってきた。
パン作りの合間を縫って一人ぼっちの静まり返った部屋でひっそり大崎善生の「パイロットフィッシュ」という小説を読んだ。
朝一番でイミグレーションオフィスへビザを受け取りに行った。とっくに取得できていたものの、東京で受け取らずに、今回まだ有効だったETA(簡易電子VISA)で入国したのだった。既に2度も空港のイミグレでやっつけられているわたしとしてはできることなら来たくない。フレンドリーな雰囲気とは言い難い男性と向かい合い、パスポートを渡すとオンラインをチェックしはじめた。パスポートにシールをピッと貼ってもらうだけだと思いつつも何か突っ込まれるのでは?と心臓がばくばくした。あまり彼を睨んではいけないと適当に目をそらしながらたまに表情を盗み見るとなんだか眉間に皺を寄せてちょっと険しい顔をしている。そして画面を見つめたまま長いこと固まっている。えー何か?Do you suspect me?と心の中で彼に訴えかけた。わたし達は一言も言葉を交わさず沈黙のままだった。
パースから50kmくらい離れたChitteringという場所へドライブがてらワインを買いに行った。代わり映えのない葡萄畑、牧場、森かどれかのような景色の中一時間ほど走る。途中日本ではまず見かけなくなった無人の八百屋(代金は箱に入れていく)のようなものもあり、まだ他人を全て疑わなくても済むのどかさを感じる。マーティンが惚れたワインを作っている所は観光客向けではなく本当にただのワイナリーでシティのボトルショップよりも断然安く手に入る。いくつかテイスティングしたけれど、WAワインはどれもちょっと普通のよりも強い。白ワインを購入し、作ってきたおにぎりやパスタやを広げて、木陰でランチ。広大な自然に囲まれて昼からワインとは贅沢な生活だ。
和書を扱う古本屋さんへ行ってみた。通りに面したビルの2階にありやんわり陽射しが差し込むこの本屋は日本人の憩いの場のような雰囲気でソファで本を読む男の子達や単にお茶を飲みに着たというような感じの人達が集っていた。結構な量の本があるけれど、あまり知っている作家のものがないと思っていると「王様のブランチ」に出演している筑摩書房のテッチャンをもっと細くしたような雰囲気のオーナーが現れ「あなたくらいの世代じゃ知ってる作家もいないでしょうね。古いものばかり集めているんですよ」と言って「この辺ならどうかな」などと説明してくれた。あれこれ手にとっていると背後で日本から来て間もないような人にこちらで長々生活しているような口ぶりの女性が日本とこちらの違いを話していた。「こちらでは"個性"はカッコイイと見なされるんです。人と違う服装をしていること、人と違う意見を持つこと。日本では逆でしょう?ヘタに個性を持つと"変人"だと白い目で見られたりするから。だからみんなと同じブランドのバックを持っていればそれで安心するんです」云々。なんだか激しく同感。子供の頃、人と違った物を持っていたり、みんなと違う意見を主張する子はいじめれる対照だったし、大人になってからもそんな柵を見ることもあった。それに比べたら多民族が共生してるここではまず「違うことが当たり前」とされているので日本ではちょっと人に言いにくい趣味や趣向、意志を持っている人間には住みやすいところなのかもしれない。
朝起きたらもうマーティンはいなくて空はどんよりで冬のように寒かった。日本の家と比べる妙にだだっ広い間取りの白壁の部屋が余計寒さを感じさせる。熱いコーヒーを飲みながら友達に長々とメールを書いた。そうだ、今更だけれど、英文メールはWordで書いてからメールソフトに貼り付けて送ると便利だ。メールが長くなると沢山スペルをミスるわたしにとって自動でスペルチェックしてくれるなんてありがたい。"いいね、これ!"と時代遅れの感嘆をした。
夕飯時、知人のチャイニーズ系オージーの男の子の話になった。
砂漠と隣り合わせのパースの春は朝晩冷え込むものの日中は天気が良くて気持ちが良い。シティのそばで働いているマーティンが通勤する車に乗ってシティで落としてもらった。久々に見る朝のパースの風景。宮崎駿がアニメの中で描くオーストラリアの光は幻想ではなくリアルなのだ。空も光と影のコントラストも絵の具で描かれているように鮮明。この町は特別な観光名所に行かなくても町そのものが見所なのだ。住んでいると麻痺してしまうけれど、東京のくすんだ空と比べてみるとまだ世界の早い動向を無視して存在しているようなこの町は宝石だと思ってしまう。夕飯の野菜を買い出して正午頃に家に戻った。早起きすると一日が長くて得した気分。今日の夕飯はカリカリに焼いたベジ餃子と玄米をミックスしたごはん、セロリとチーズのサラダとキノコとあげの味噌汁。
こちらの普通の会社はフレックス制を実施しているところが多いようだ。が、これがもう「とにかく週40時間働けばOK」のようなものになっているらしい。朝、マーティンが家をでるのがあまりにも遅いので(10:30)聞いてみたら、同僚達はみんな来る時間が様々で、朝6時に来て15時に退社する家族持ちのお父さんや彼のような夜中にゲームに興じて朝おそ〜く来るような人間もいるようだ。スーツ来たお父さんが3時頃帰宅なんてちょっと日本では考えられない。しかし、残業をしないこの国と日本が大差なく発展を遂げているのは何故だろう?日本社会の動きは丁寧で良いところもありつつ、一方で合理性に欠けているような気がしている。
昨日はマーティンの誕生日だったのだけれど、疲れていて何もしなかったので今夜はちょっと張り切って夕飯を作ることにした。
しとしと雨の中、成田空港で妹に見送られパースへ出発。今回はマレーシア航空を利用。が、このフライトスケジュールはかなりハード。覚悟して乗り込んだ。マレーシア航空は新しい機体ならばシートが広い、そして機内食が比較的美味しい。が、今回はかなり運が悪かった。まず成田−クアラルンプール間は新しい機体でシートが広い上にガラガラに空いていたのはよかったものの、リクエストしたベジタリアンミールは笑ってしまうぐらいすごかった。野菜をボイルしただけで味付けなし、そして普通の食事についているサイドディッシュもなかった。ヘルシーすぎるし、これじゃぁおなかが満たされない。隣の人を覗いてみると魚にパスタにサイドディッシュ3つくらい。空腹で涎がでそうだった。もうこうなったら飲んでやる!と赤ワインを飲んで寝てしまった。物音に目を覚ますと、また軽食を配っている。卵サンドに鮭おにぎりにチョコレートやクラッカー。あーやっとお腹を満たせそうだと思っていたらわたしには違うものを持ってきた。エーー全然違うじゃん、、、。また小さなパンにキュウリとトマトを挟んだだけのサンドイッチとバナナ。なんだかヒドイ。チョコレートとかクラッカーとか、せめて梅おにぎりとかくれないのかなぁ。もうふて腐れてまたワインを飲んで寝た。
明日パースへ発つ。午前中は部屋を見回して忘れ物がないかチェック。和書、下着、パスポート、ビザ、これさえあればあとはどうにかなるかな。パースへの持ち物よりも日本でやり残したことのほうが気がかりだ。色々な手続きも仕事にかまけて結局おろそかになってしまっているし、支払いし忘れたものはないかななどとあれこれ思いをめぐらせたけれど、いざ考えると思い浮かばない。
パースの友ユウカちゃんと半年振りに東京で再会。家も近かったのに、お互いに忙しくて会うタイミングを逃していた。またパースでのんびり会えるからいいやとも思っていたのに、BFとうまくいっていないのでパースに帰れないかもという彼女からのメールを読んで、急遽会うことになった。日本で会うのは初めて。夕方丸ビルで待ち合わせをした。再会してみるとお互いにパースにいるときよりもちょっと服装が都会的だった。金曜の東京はどこのレストランもスムースに着席できず、有楽町まで歩いてようやく落ち着いた。彼女は単に肉が嫌いなベジタリアンなので彼女との食事は安心。サラダや春巻きをつついて日本酒を飲みながら、半年間に起こった色々なことを話した。パースでの生活から続いている色々な事情を話してスムースに飲み込んでもらえるのはやはりパースで知り合った人間で、そうでなければ話してもなかなか解かってもらえない。この半年間はわたしにとってはとても目まぐるしく波乱に満ちていて誰かに聞いてもらいたかったけれど、わかってもらえそうな相手がいなかった。なので彼女を目の前にしたら一揆に溢れてきてしまった。彼女も同じだったようだ。パースにいた時よりも断然口数が多く、感情的だった。日本を去る前に日本で起きたあらゆることを吐き出してしまい、体から毒素が抜けたような気分になった。
Michelina
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