何かが、胸の中にある。 澱んだ水のように。 癒されない、何か。 きっと。 あの人の話を聞いたからだ。 あたしが、此処にいるために、 こんなに苦しむのは、おかしいって。 手段は幾らでもあるって。 分かってる。 知ってる。 でも見ない振りをしていた。 動かない、ことと、動けない、ことは、違う。 あたしを愛する、ことと、あたしを我慢させる、ことは、違う。 責めたくない。 でも、責めずにはいられない。 あたしはいつまで待てばいい? 本当に、あたしのそばにきてくれるの? その日を待って、息を殺していることが、 あたしにとって良いことなの? 解放されたい、と思うのは、 薄紅色の桜が咲いたせい、なのかもしれない。 咲いて、散りたい。
春、だからなのか。 それとも、一つの山を越えたのか。 あなたに、会いたいと思う。 切羽詰まった焦燥ではなく、 ほんのりと、灯りがともるように。 あなたに会いたくなる。 そんな瞬間がある。 きっと、一番の理由は、 華が「夏になったら引っ越そう」って言ってくれたから。 大きめの部屋を借りて、 華の持っているたくさんの本を、少しずつでも運ぶんだって。 あたしの目の前に、ようやく現実が見えてきた。 一緒に暮らせる日が、来るのだという、実感。 そう思ったら、あたしの焦燥は、 不安の裏返しなのだと、気付いた。 一方的に頼るだけの存在にならないようにしたいけど、 嬉しかった。 目に見える未来は、あたしに、 もう少し我慢しておけるだけの、強さをくれる。
早く、早くあなたに会わなくちゃ。 下降していく一方の情熱を。 鎮火していくばかりの恋情を。 穏やかに、緩やかに消えていこうとしている愛を。 押し止めるために。 あなたに会って、抱きしめなくちゃ。 その声で、その言葉を聞かなくちゃ。 現実が遠ざかりそうになる、予感。 沈黙が安堵にすら思える部屋で。 ときおり、切ない恋愛のメロディが響く。 もう返す言葉も億劫で。 あたしは、あなたを繋ぐ機械までも放り出す。 あなたに会わなくちゃ。 あなたを抱きしめなくちゃ。 あなたの温度を感じなくちゃ。 早く、早く、一刻も早く。 あなたを忘れないように。 早く、取り戻さなきゃ。 あたしの情熱は凍えて、死んでしまう。
きっと、あたしと華は、うまくいかない。 うまくいかせようと努力すれば出来るけれど、 好きなだけでは、うまくいかない。 性格の違いだとか、 好みだとか、 神経質になるポイントが違ってたりとか。 そりゃ、もちろん育った環境も何もかも違うから、 噛み合わないのは仕方ない。 でも、致命的に噛み合わない時、 あたしはいろんなことを諦めて、黙る。 気遣いというの? どうしたら相手が喜ぶかってことを、 あの子は気付かない。 あたしは意図して、あの子の嫌なことをしたりもするけど、 それは本当に、意図してやってることだから。 性格悪いのね。 でも、あの子は気付かずにそれをやる。 何度、嫌だと繰り返しても、忘れる。 あたしは諦めて、黙る。 うまくいきっこない。 距離がある今でも、こんなにも、分からない。 それは、つまり人を愛する感性の違い、なのかな。 それとも、やっぱりあたしたちは、合わないの、だろうか。
帰省とかいろいろ。 人生についてもいろいろ。 お財布の中身についてもいろいろ。 そんなものがのし掛かって、ちょっと息も絶え絶えになっていた。 その上、風邪をひいてしまって、ダウン。 でも、ようやく少し浮上、かな。 がんばって生きてます。 そう言えば、先週ぐらい?
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