キスをして、腕を回して、 足を絡めて、抱き合って、 あなたの顎に、あたしのおでこ。 あたしの腰に、あなたの肘。 寒いから、寒いから、 そうやって、抱き合って過ごして、 当然の結果だね。
ちょっと前、喧嘩をしかけていた時。 というよりも、あたしが不満を抱えていた時。 華の指があたしの身体の中を掻き回すと、 いつも痛みが伴っていた。 爪が引っかかるから、という理由でゴムを使っていても、 いつも痛みがあった。 前はそんな場所、痛むこともなかったのに。 どうしたんだろう、と不思議に思っていた。 それが。 華があたしに約束をしてくれてたから、 今日も風邪っぴきの華は、あたしを抱いた。 これって気持ちの違い? やっぱり女の感度って言うのは、感情に比例するものらしい。
恋愛は必要不可欠なのか。 あたしはイエスと答えるけれど。 恋をしなきゃ生きていけないのではなくて、 鏡のように向き合える相手が欲しい、ってことかな。 ジリジリするような焦りはもう嫌だし、 現状が、たぶん一番の幸せなのかな、と思った。 周りの話を聞いて、だけれど。 華はあたしを甘やかす。 生きていく上で、甘えを許してくれる。 面倒くさがりのあたしは、ほっとけば食事すら忘れるし、 睡眠だって、ついうっかり忘れる。 まるで母親のように叱ってくる華の存在は、 時として鬱陶しくも感じたりするけど、 きっとあたしにとっては必要なことなんだ。 生きていく上で、あたしはあんまりにも考え無しだから。 人生において、というと大きなことに思えるけれど、 結局、自分にとって必要なんだよね。 苦言も諫言も、耳を塞がずに聞きます。 まあ、そんなことを改めて考えてみて、 明日の仕事を乗り切れば、華と一緒のお休みだとか、 そろそろ新品のオモチャも使えるかな、とかウキウキしたり。 単純なのね。 昨日まで、あんなに茫然としていたのに。 考えることすら億劫で、面倒で、何もかも投げ出したかったのに、 華の手が、あたしを宥めてくれたから。
話し合い、をしました。 既にメールでも華の気持ちは知っていた。 華はあたしの望みを受け入れてくれる、って。 あたしが離れていくことは許せない、って。 ただし、売り言葉に買い言葉として、 正直、ショックだったねぇ。 それがどうしても引っかかってしまって、 あたしは不貞寝で話し合いを延ばす。 結局は、あたしの欲求に答えてくれることになった。 あたしは科せられた一言がどうしても重くて、 それと同じくして、もう一つの条件を付けた。 あたしがあなたに抱かれるたびにその一言を思い出すように、 あなたにも同等のものをあげよう。 あなたはいつもそれを思い出して、怯えていればいい。 そうして、 お願いだから、 泣きながらパニックになってしまったぐらいの、あたしの、 あたしの苦しみを忘れないで。 その代わりに、あたしは時間も感情もあなたにあげよう。 あなたが自由になれる日まで、待つことにしよう。 あなたが「唯一」だと信じて疑わないこの恋を、 あたしはずっと叶え続けよう。 積年の夢、です。
精神病とかそういうのではないけれど。 むしろ病名があったらいいぐらいだけど。 あれ、病名はあるのかな。でもそんなことどうでもいい。 同性を愛する、欲情する相手として選ぶ時点で、 いわゆるマイノリティですら、今は割と一般とされている。 精神病としても認識されるぐらい。 だってカムアウトした相手のほとんどは、 「性同一性障害?」と聞いてくるぐらいだもの。 いや、あたし、普通に職場でもスカート履いてるし、髪も長いけど。 だから主に質問は、あたしではなく、 会ったこともない華に向けられている。 あたしは慣れてしまったもので、笑顔で首を振って返す。 まあ、その辺りはいいとして、だ。 目下のあたしの病気は、不安病でしょう。 性欲が強いとは自覚してたけど、これはちょっと違う、と最近気付いた。 欲求がないわけでもないけれど、 華に言ったら嫉妬されるだろうけれど、 あたしは昔から、初めて男を受け入れた時から、ずっと。 ずっと、自分の中の喪失感に喘いでいた。 どうして女なんかに生まれたんだろう。 どうして女の身体には埋められない穴があるんだろう。 これはあたしだけなのか。 あたしだけの悩みなのか。 少なくとも、あたしの周りでは、いない。 喪失感に喘いで、苦しくて喚いて、 あたしはそれを華にぶつけた。 いっそのこと、浮気でもしてしまえたら楽なのかもしれないけれど。 初めて。 ここにきて、初めて、帰ろうかと思い浮かんだ。 明日が話し合い。
あたしはしてますけど。 つい最近、職場で聞いた台詞。しかも二人から。 一人は一つ上のオネーサン。 もう一人はちょっととぼけた学生バイトの男の子。 いっそ二人でどうぞ? と思うけど、 ……組み合わせ的に無理だよね。 さて、本気の恋とはなんでしょう。 あたしはしている、と書いたけど、 それがどんなものであるかは、正直説明ができない。 いわばこれは、パラドクスのようなものでしか理解できない。 本気の恋がどんなものか、それは落ちてないから見えるもの。 少し語りが入るなァ。 本気の恋の真っ最中の人には、それどころじゃないだろうし。 何よりも、その形を説明することはできないと思う。 自分の感情をきちんと言葉にするのは、とてもとても難しいもの。 ただ。 あたしの主観ですが。 相手は同性ですが。 それでも恋ですが。 本気と言われるものは、人生そのもののような気がする、のですよ。 つまりは時間をかけるもの。 一夜の恋とかでも、本気は本気だろうけど、 一番根性がいるのは、継続していくことだから。 喧嘩三昧のあたしが言う台詞じゃないなァ……ははは。 継続してます、うちは。 今のところ、二年と五ヶ月。日付はぴったりなので、まるまるそれだけ。 遠距離であったり。 その距離を埋めるために、無謀な挑戦もしたし。 修羅場もあったし。 一度、別れて。やり直して。 でもやっぱり喧嘩しながら、一緒に生きてる。 本気っていうのは、生活する中に持ち込む、っていう覚悟もいるのね。 あたしはそれを華から教わった。 でもまぁ、26歳だからこそ、なのかも。 学生さんの恋愛とは、やっぱり違うからね。 時間の作り方も、取り組み方も、スタンスも。 結局は何のことだと言いますと。 惚気だったりする、これが結論。 あたしはあの子が大好きなのです。
仕事の話、ですが。 ちょっとだけ迷ってます。いや、しがない派遣なのだけれど。 人手もないし、あんまり好きな場所じゃないけど、 でも苦手な派遣さんはもうすぐ辞めるっぽいし……。 とまあ、言い訳がましく並べてみても、 結局は「残ってよ」と望まれるのが嬉しい、に尽きる。 誰かに認められるのは、嬉しい。 でもそれが、本当の意味での戦力かどうかは微妙だけれど。 もう少しあるので、華とも相談。 あたしが体調を崩して心配をかけるのは華だからね。 一人前の年齢なのに、情けないなぁ。 もう少しだけ、考えよう。 気が弱いんじゃなくて、愛情だと思いたい。
愛しい、とそれだけを感じられたら、 あたしはもう少しまともな人間になれると思う。 撫でてくれる手とか。 笑った顔とか。 ちょっと目を細めた、困った時の表情とか。 あたしを呼ぶ時の唇の動きとか。 そう言うものだけを愛していられたら、いいのに。 あたしは。 あたしは。 はぁ。 心が狭いのです。 イライラしているのを、自分で分かっていて、 ここは止めるべきだって気付くのに、 それをコントロールできなくて。 分かってる。 悪いのは、きっとあたしだ。 喧嘩したわけでもないのに、 沈んでいくものがある。 抱き合って眠るベッドは温かいのに。 どこか擦れ違ってしまうのは、あたしのポジションが悪い。 見えない不幸が、少し痛い。 まだ、教育途中。
なんとゆーか、それに関して喧嘩をしました。 あたしが悪いんだけど。 あたしの病気が悪いんだけど。 悪いんだけど……。 このまま、年と共に低下してくれないかなぁ、と思ったり。 セックス無しでも生きていけるようになれたらなぁ、と思ったり。 事実、ここ数日は「したい!」という衝動もなくて。 いや、あったけど、スルーできる感じだったし。 そうしたら、平和なのになぁ、って。 喧嘩のたびに「別れる?」って聞くあたしは。 酷いやつだなぁ、と思うのです。 無欲になりたい。 自分に関して。 周りに関して。 心がもっと穏やかであればいい。 自分に対して。 あなたに対して。 だって喧嘩の翌日は、こんなにも頭が痛い。 そもそもの価値観の違いだね、きっと。 今は、少し、怖いかも。
日常がおとなしい。 良いこと、なんですけどね。 昨日から、華と一緒に寝てる。 蜜月リターン。 というか、まあ、少しだけ夜の時間が空くようになったから。 期間限定。今度は短い。 だからといって、濃厚な夜の生活があるわけでもない。 お互い、仕事がありますからねぇ。 貪り合ってるだけで生きていけたら幸せ。 でも、人としてダメだから。 冬には嬉しい、華の体温。 汗ばむほどの毛布の隙間で、くっついたまま。 夜中に寝苦しくて離れたりはするけど。 体温だけは、確かにあるから、嬉しい。 気をつけなきゃ。
バイクでお迎えに行ったら、 アレルギーで片眼が腫れてるとかで元気が無くて。 まあ、でも、ね。 おかえりなさい、なのですよ。 で、何でか二人乗りをしながら、おかしな話をしてた。 会話の発端を覚えてないんだけど、 妙な方向に……。あれ、なんでだろ。 どこをどう突っ込めと……? ごめんなさい、あたしにしては珍しく、軽く引いた。 いいんだけど、趣味だからいいんだけど。 リアルにお付き合いはできませんよ? そんな話を聞いて、思い出したことが一つ。 ああ、ソレがツボなのね。 …………もう何も言うまい。
元気がない、のです。 生理のせいか。 寒波のせいか。 仕事場のせいか。 それとも華が遠く離れているせいか。 たぶん、全部だ。 ままならないことが多いのを、新年早々、実感するなんて。 幸先、悪い、ですね。 早く治ればいい。
華とのんびり過ごしました。寝正月。 昨夜、日付が変わる少し前にファミレスで待ち合わせて、たらたらと年越しをし。 その後、華がドライブを希望したので、メットを取りにマンションに戻り。 それから小さいけれど、ふるーい神社に行ってきた。 縁結びで有名な神社なんだけどね。 真面目にお願いしてるあたしの横で、華と言えば、 「いちごは何をお願いしたの?」 「言わない方が叶いそうだから、言わない。華は?」 「いちごの顔見てて、願い事するの忘れてた」 「アホ」 ……本末転倒というか。 このひとは病気だ。 そして、朝になって改めて会って。 花咲蟹とか、北海道のぷりぷりコーンとか、そういうの食べて。 京風雑煮を作って食べて。 女の子の日で調子の悪いあたしと、華とで、寝て過ごした。 昨日のうちに、年納めセックスはしたし、 今朝も今朝で姫始めをしたし。 というか、姫始めの直後に月のものが来たというミラクル。 そこは喜ぶところじゃありません。 明後日から華は帰省する。 明後日の仕事明けのまま、直行でバスに乗るというので、 明日の朝にちょこっと会ってから、5日まで会えない。 久し振りに、会えない日々。
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