身体が重かったのが、一番の理由かなと思う。 炎天下に放置された4時間で、死にかけた。 更に休憩30分の後に、再び(ほぼ)屋外へ放置。 仕事だからね。なんて言ってもさ。 最近とみに弱ってるあたしには、ぶっ倒れるための条件としては揃いすぎてたということで。 案の定、ギブアップしました……。 たぶん熱中症の初期症状。 クラクラする頭を抱えていたら、エロ坊主(妻子持ち)に、 「可愛い顔をするねー」 と言われた。 こっちは苦しんでるんですけどっ!!! とは言い返せずに「死にそうでーす」と答えた。 職業僧侶に誉められても嬉しくないね。 というよりも、可愛いだなんて嬉しくない。 外面に騙されるなんて、坊さん、まだまだだよ、人生は。 そんなあたしが、仕事が片付いたので早上がりをして。 帰宅途中に真っ先に思ったことはと言えば。 「したい……」に尽きる。 何がと言われれば、他愛もないお遊戯なんだけど。 調子が悪いという口実で休みの華を呼び出して、 第一声に「したい」と言えば、断るはずないと分かっているから。 でも、まだ許さないよ。 セックスしたから恋人だなんて思わないように。 疲れてるだけなんだから。 神経の糸を切りたくなっただけ。 それだけ。 あなたの指が恋しいだなんて、絶対に言ってあげない。 ねぇ、華。あなたになんて、優しくしてあげない。 我が儘をぶつけて、文句を言って。 優しいことなんて、何にもしてあげない。 傷ついた顔ばかりしていたあなたが、 困ったように、嬉しそうに笑う顔を浮かべているのを、 あたしは黙って見ているだけなの。 理由なんていらないの。 あたしはただ、セックスがしたかったの。 その時にあなたがいただけなの。 例え、あたしの身体を作ったのが、あなたの手だったとしても、 言ってあげない。大事なことなんて。 とりあえず、仕事で低迷していた体力を使い果たしたので、 明日の屋外に耐えれるように、早く寝よう。
お別れをしてから一週間とちょっと。 その間に、華に無理矢理抱かれたりとか。 キスされたりとか、触られたりとか。 拒絶したいのにできないのは、あたしがまだあなたを好きでいるからで。 それがしんどいから、今日、距離を置こうと話をした。 華はあたしに優しい。 全てを許してる。 それが、あたしには辛い。 優しいのは嬉しい。でも、怖いから優しくしてくれる。 あたしが怒るのが、泣くのが、壊れるのが、 怖いから。 さんざん泣いて、泣いて、別れることを承諾させて。 でも華はあたしのそばにいたいと言った。 あたしは、そばにいれば拒絶できない自分を知っているから。 電話口で、華を責めた。 冷たい言葉と冷たい声で。 あたしは誰にだって足を開くのだと。 あなたにそれを責める権利はないのだと。 そんなことを繰り返した。 華は泣いて、縋るような声を出していたけど、 あたしの言葉に、ようやくキレた。 我が儘だと言われた。 ずっと我慢してきた。 あたしを壊すのが嫌だから、プライドも押し殺して、 何もかもを飲み込んできたのだと、 ようやく口にした。 対等に、なった。 あたしはきっと、酷いことを言い返されているのに、 嬉しくて、泣いた。 華が何かを押し殺して、あたしのために演技をしていることを感じていたから。 優しくすることで、あたしの我が儘を許し、許容し、 幸福を願うことで、 自分の何かを犠牲にしていたことを、知っていたから。 対等になった。 あたしが遠く離れても、幸せでいるのならいいなんて、 嘘くさい優しさをかなぐり捨てて、 華が怒る。 「こんなにも好きになった相手が他の奴に抱かれるなんて、そんなの耐えられるか。他の奴を好きになるなんて、そんなの許せるか。そんなの認められないから、絶対に許さない」 強がるなんて許さない。 あなたにはそんなことを許さない。 泣いて喚くあなたを抱きしめながら、あたしは。 あたしはいつだって、自分の傲慢さを思い知っていた。 この子が離れていく日が来たら、 あたしは自分を壊してでも引き止める、ってこと。 もう何を話したか、朧になるほど長く話をしたけど、 ねぇ、華。 あなたが好きだよ。 大好きだよ。 あなたが誰かを愛するなんて、あたしは絶対に許さないよ。 遠く離れたとしても、大きな傷跡を残してから行くよ。 一生ものの傷跡にするよ。 「もう一度付き合って」 「いや」 「そんなの知らない。もう一度付き合う」 「いやだ」 そんな押し問答を繰り返して、あたしたちは。 恋人ごっこのような日々を、やり直すの。 あたしがいつ、OKを出すかなんてわからない。 あなたを見極めない限りはわからない。 もしかしたら、そのまま突き放すかも知れない。 わからないけど。 デートの約束は嬉しい。 あたしはそんな些細なことも嬉しい。 何があったかと、言葉で説明するのは難しい。
現在も継続中です。 華と恋人を止めました。 あたしから言い出しました。 一つの嘘が、あたしの心を裂きました。 裂けた傷からは、溜まりに溜まっていた黒い血が溢れたのです。 それは治しようもなく、痛くて、苦しくて。 あたしは逃げることに決めました。 でも、まだ逃げている、とは言えないかも知れない、現状。 あたしは相変わらず華の傍にいる。 恋人として、もう何も求めないだけ。 それがときどきすごく苦しいけど。 でも、華を置いて逃げるなんて。 今のあたしには、まだ出来ない。出来るはずがない。 華は相変わらずあたしのことを大事にしてくれて。 恋人に戻りたいと言ってくれている。 あたしは。 捨てていくぐらいなら、捨てられる方が良い。 その世界を捨てるという痛みを、あたしは二度と味わいたくない。 残された華のことを想うのが辛い。 自分勝手だけれど。 それでもまだ、あなたを愛しいと思う、気持ちがある。 自分が弱い、と思い知る現状がある。 逃げてるのは心だけ。 痛い痛いと泣く心だけ。 だって。 あたし、もう死にたくないよ。 死ぬほどの苦しい朝なんて、もう嫌なんだよ。 好きかと問われたら好きと答えます。 一緒に生きていけるかと言われたら。 あたしはきっと、無理だと、答えます。
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