あなたに綺麗な傷をあげる
生涯、忘れられないように


けんかした。
2006年10月31日(火)



なるべく触らないようにしていたの。
出来るだけキスもしないように。




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それは華に限るけれど。





何もしない、セックスはナシ。
繰り返しながら、あたしに触れる手。
キスを拒んで首を振り続けても、捕らえられて、食いつかれる。
キャミソールの下から滑り込んできた熱い掌は、ゆっくり腰を撫で回す。
喉元、首筋、鎖骨。歯形が刻まれる。

華は耳元近くで繰り返す。
「セックスはしないから」
どうして、なんて聞き返す余裕はあたしにはなくて。でも、本当に最後までしないことも分かっているから。





とうとうキレた。あたしが。
「帰る」と言い出した途端に、打ち捨てられた子犬みたいな顔をして、俯いて。今度は「ごめん」と繰り返す華。





ねぇ、そこで膝を抱えて凹んでいるんなら、さっさとあたしを抱いてみせれば?
セックスしないって言ったのも、聞いてみたら、特に理由なんかもなかったみたいで、頭が痛くなる。あたしの我慢は何だったわけ? もう最近、ずいぶんとちゃんとしてない気がするんだけど。

セックスレスが理由で離婚したあたしのことを、あなたは誰よりも分かっていたんじゃないの? あの時、誰よりもあたしの話を聞いていたんじゃないの?

その上、華ときたら、
「しないって言った手前、したいとは言えなくて」
なんてしょんぼりと言うものだから。
本当に、この子はバカじゃないかと思ってしまった。











下らないけんかだよね。
分かってる。
空回っちゃっただけだよね、お互いが。

けんかの時には、いつもあたしの方が強い。
あたしが、口ごもる華の言葉を引きずり出す。

だから、今日も結局は、あたしが苦労をするんだよ。
言いたくもないことを言って。
聞きたくもない言葉を聞いて。
最終的には、抱きしめてあげるんだ。




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でも、泣いている状態で相手をするのも、何となく不思議で。
あたしの中のサディスティックな部分に、少し火がついたのも事実。





華。分かってるの、華。
あたしが怒ることはあるけれど。
結論としてね、あなたは、何があってもあたしに愛されていることに確信を持っていて。それだけは揺らいだりしないで。
いつか、あたしがあなたのそばを離れるようなことがあっても。
変わらず愛しているのだと、あたしには分かっているんだから。

こんなに愛した人を、憎めるはずもないんだよ。
それだけは、一生変わらないことなんだ。



華。
あたしが、世界で一番愛している、大事なあなた。




ささやかな悪戯。
2006年10月30日(月)


昨日、髪の毛を切ってきた。
今日、歯医者に行ってきた。
明日、華に会いに行く。



ハロウィンだから、魔女みたいな格好して、華を仕事場まで迎えに行く。

「Trick or treat.って言ってくれる?」

華がそんなメールをしてきた。

「あたしはtrickしか言わないよ」

あたしは電話口で笑った。



だってお菓子ぐらいじゃ諦めきれないもの。
悪戯公認なんて、そんな素敵な日に、小悪魔のいちごさんが引き下がると思って?

でも生憎と、明日は何にも出来ない。
当分、何もない。
あたしがオンナノコの日であることは、あんまり関係ない。
華の肩にいる蜘蛛が、治りかけの皮膚の上で藻掻いているせいだ。
早く治らないかな……。





あたしの胸の蝶は、蝶子夫人、と呼ばれている。
華の肩の蜘蛛は、ジャック、と呼んでいる。
何でも名前を付けたがるあたしの命名。
二人が結ばれる日はいつなのかな。それが、あたしと華の傷痕が治った日で間違いはないのだけれど。






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そんな時のあなたは、とっても意地悪で、すごくすごく楽しいベッドになるって言うのに。

悔しい。





好きなもの。嫌いなもの。
2006年10月28日(土)


たまには自分を見つめてみなきゃ。





好きなもの。

自分の部屋。
くまのぬいぐるみ。
小説。
小さなアクセサリー。
勤めているお店のお菓子。
梨と桃。
ごろごろする時間。
西洋史。
海。
蝶。
バイク。
帽子。
セブンスター。

セックス。

華。

たぶん、自分。










嫌いなもの。

節足動物。
埃。
オバサン。
子供。
林檎とパイナップル。
仕事。
ジェットコースターとお化け屋敷。

家族。

きっと自分。






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お願い、断らないで。
2006年10月26日(木)


あたしの胸の蝶は羽化寸前。
皮膚が引きつって、飛び立つのを構えているよう。
華の蜘蛛は生まれたて。
柔らかい皮膚の上で震えている。



そんな状態だから、一週間ぶりのお休みなのに、何もできない。何もしない。いくら華に強請っても、何一つくれない。

ねぇ、忘れちゃうよ。
あたし、忘れっぽいんだよ。
全部を愛してくれないと、愛したことすら忘れるよ。
一週間も会わなければ、あなたのことも忘れるよ。




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身を捩って、蝶を踊らせ。
視線を捕らえて、引き込もうとする。
それなのに、華は指一本触れない。
出かけよう、と言って支度を始める。





ねぇ、華。こっち見て。お願い、どこか見ないで。華。ねぇ、あたしを忘れないで。忘れさせないで。一人で置いていかないで。愛することを、愛されることを。刻んで。こっち見て。華、お願い。お願い。お願いだから。
あたしのことを、誰よりも欲しがっていてよ。





拗ねたあたしが不貞寝すると、ご機嫌取りのキスが降ってくる。
いつまでも拗ねていると、華が苦笑いをして、ようやくお相手をしてくれる。あたしの蝶を弄びにかかる。





華、あたしは。
ううん、あなたは、本当に、今、しあわせなの?



こんなあたしで、いいの?
我が儘で自分勝手で、傲慢なあたし。
そんなものを、貴方の腕は抱きしめてくれるの? それは義務ではなく?




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こんなことを言ったら、あなたは怒るかな。
それとも、また悲しい顔をするのかな。




蜘蛛と蝶。
2006年10月25日(水)


今日、華の墨入れに付き合ってきた。
夕方からの予約。
本当ならあたしは仕事なんだけど、拝み倒して変わってもらった。だって、一生に一度しか彫らないんだもん。見ていたい。一番最初に見つめたい、って思って。

行き道では時間があったから、ラーメンを食べて。

それから彫り師さんのところへ。
墨入れはすぐに始まった。華の左肩に、黒い蜘蛛。掌大。
上腕部は、胸よりも痛くないという。
それでも、肩や、柔らかい皮膚へと針が刺さると、華が苦しそうに眉根を寄せる。
それを、ずっと見つめていた。

あたしの時とは体勢が違うから、手は繋げなかったけれど。
きっと繋がせてもらえなかったけれど。





華の左腕から肩にかけて。
張り付いたような、黒い蜘蛛。
あたしの左の胸、心臓より上。
羽根を休める、黒い蝶。





ようやく揃った。





それにしても、華に黒い蜘蛛はよく似合う。
オトコマエ度が4割り増し。
華は不服そうに「ずいぶんと割合がでけぇ…」と呟いていたけれど。

でも、本当に。
本当に華の蜘蛛は綺麗。細い線と、漆黒の体が、たまらなく色気がある。
触れたいのに、触れるのが怖いほど。

どうして、だろう。
その傷痕が、たまらなく愛しいの。






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いつもあたしがベッドの上でしがみつく左腕。
いつもあたしが必死で噛み付く左腕。



眩暈が、した。




勢いも必要です。
2006年10月23日(月)


火曜の逢い引きが中止になった。
…………いいケドさ。
向こうの同居人が、最近帰りが早いらしく、会いに行っても10分ぐらいで帰る羽目になりそうなので、止めただけ。

怒ってないよ。
でも、気にしてないと言ったら嘘になる。
以前よりも、ジリジリとする苛立ちは消えたけれど。



あなたのことが、とてもとても好きなんだけど、「待っていて欲しい」と明確に言われたことで、抜け落ちたものもあった。
情熱というもの、かな。
たぶん、そういう感情。
胸の奥を痛めるような焦燥感が、少しずつ消えていった。
これは、良いことなのか、悪いことなのか。
成長したというのなら、良いことなのかもしれない。




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胸の蝶にかさぶたができ始めている。
これがつるりと剥ける頃、黒蝶は羽化をする。
あたしの胸に刻んだ、25歳の自分自身。
この時間を決して忘れないための、深い傷痕。
この先、どんなに幸福でも、不幸でも、この時間があたしに与えてくれたものを忘れないため。
傲慢な自分への戒め。
孤独癖のある自分への慰め。

華、あなたの肩に刻まれるしるしは、何のためなの?
聞きたい。
聞けない。






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水曜日の、華の彫りの日には同行できそうな雰囲気。
木曜日は、二人で出かける。

お願いだよ、華。
あたしの嫌いな冬が来る前に、ちゃんと温めて。




切り刻んで、抱いて。
2006年10月22日(日)


あなたに殺されてみたい、と痛烈に思う時がある。
華、あなたの手で、息の根を止められたい。





日曜日の慌ただしい中で、華からメールには愚痴が羅列されていた。
華は、自分で「不向き」だという接客業をやっている。
今日はとりわけ忙しい日。
「もう限界」
タイトルを見た瞬間、「きたな」と思った。
けれど、それをあたしに吐き出すことで、華が少しでも楽になるのなら、いくらでも。同じだけ、あたしも愚痴を聞いてもらってるし。
でも、ね。
あんまりしんどそうなあなたは見ていられないの。

一年前は、愚痴なんて話してくれなかった。
見ているのが辛い現状でも、見せてくれるだけ、進歩。

あたしに話すことで、何か救われるものはあるのかな。
ねぇ、華。





火曜には仕事が終わった後に、会いに行くから。
だから、もう少し。
「がんばれ」なんて言いたくないけど。
もう少し、待っててね。




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これが半月続くと思うと、ちょっと憂鬱。




舞い踊る。
2006年10月20日(金)


あたしの蝶のタトゥーが安定するまで。
来週になって入れる、華の蜘蛛のタトゥーが安定するまで。
セックスはなしの約束をした。

ちょうど、あたしのナカも怪我したみたいで、少し痛かったので、ついでにそっちもしばらくお休みできる。

そんな約束をしたのは、つい先日のことなのに。




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蝶が舞うのが見たいんだって。
別に意図的にやってるわけじゃないのに。
禁欲中のあたしには、いい迷惑です。








胸に蝶を刻んだ。
2006年10月19日(木)


お休みの日。
大阪まで出かけて、タトゥーを入れてきた。
本当は華も早く入れたかったみたいだけど、時間的に一人しか入れられないと言うことで、あたしの粘り勝ち。
まあ、もともとはデザインの相談だけで行ったからね。


実質二時間弱。
左の胸の上に、黒い蝶を刻んできた。


痛みはもちろん、とてもあった。
華の手を握らせてもらって、あたしは唇を噛んで堪えた。
たまらない。
焼きごてを皮膚の上に這わされているような気分。
華がいなければ、あたしはきっと、我慢できなかったと思う。
緩やかに切り刻まれる感覚。

痛みも少しはましになる段階になったら、もう痛覚も麻痺してきて、何が何だかわからなくなってて。
室内のテレビで再放送していた、「Dr.コトー」を聞いていた。
天井を見ていた。
華の手の、握りかえしてくる強さを味わっていた。





あたしの左胸の黒蝶。

そして、来週には、華が左肩に黒い蜘蛛を入れる。

蝶と蜘蛛。
捕食される生き物と、捕食者。
あたしたちの関係には相応しいでしょう?
こうして、互いに綺麗な傷を見せ合って、一生過ごしていくんだ。






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あなたの手に追われて。
踊らされて。

楽しみだよ。




アレルギーの恐怖。
2006年10月16日(月)


くしゃみ連発。鼻はズルズル。
目は痒くて、ゴロゴロする。
挙げ句に喘息の発作まで。死にそう。



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接触はなくとも、掃除してないという理由だけ。
てか、掃除しろって言ったのにィ!
「大丈夫でしょ」とか言われて連れて行かれて、大打撃を受けた。

うぅー、しんどかった。

帰りは予定よりもかなり早めてもらった。
耐えられないと部屋を飛び出したあたしを、華はうちまで送ってくれた。



自分が大丈夫だから、相手も大丈夫なんて。
そんな気安い傲慢さを、持ったりしないでよ、華。
あたしの警告を聞いてよ、華。
苦しくて、苦しくて、たまらなかったんだよ。



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都合の良い愛玩人形になってもいいんだけど。
あいにくと、あたしのカラダはあたしのものだから、仕方ない。
だから、お願い。

あたしの言葉を聞き流したりしないでよ。
あなただけは、絶対に。




独り遊びもままならないの。
2006年10月15日(日)



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あまりにも華の愛撫に慣れていたのか。
それとも、華がスペシャルなのか。
どっちとも判断が付かない秋の夜長。

眠れぬ夜の独り遊びは、いつもちょっと情けない。
でも、もう十年ぐらいの癖。
オンナノコは性欲ないなんて思われるのが心外なあたしは、男を知る前から、そうして遊んできた。
それがこのカラダを作り上げた要因の一つでもあるけれど。
華が必要以上に虐めたがる、このカラダを。

手慣れた自分の愛撫が物足りない。
もっと違う何かが欲しい。



これを渇望というのかしら。



でも、華が欲しいが思う反面で、きっと、あたしはどんな相手にも感じるのだと分かっている。
そういう風に出来ている。

華が少し寂しそうに、
「誰にだって、そうやって、鳴いてやれるんだよね?」
呟いていたのを、あたしはまだ、覚えているもの。
あたしは小さく頷いただけだった。

一人がいなければ気安いあたしの遊び方は、昔の華と良く似ている。
けれど、一人が出来てしまうと、絞り込んでしまうのが、あたしの性格。
もうきっと、華以外と寝ることはない、と言い切れるのに。
どうして、あんなに悲しい顔をさせてしまったんだろう。





秋の夜長に自身を慰めながら、あたしは、悲しくなっていた。

もう華の愛撫じゃなければ、感じなくなっていればいいのに。
試す術がないから、証明も出来ない。





気を取り直さなきゃ。
あたしは、こういう生き物だ。





そう言えば、来週の華との約束。


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あたしは左の胸に。
華は左の腕に。
モチーフは違うけど、対になるようなもので。

一生、あなたを愛するしるしをいれるの。






縁側の猫。
2006年10月12日(木)


曇り空の朝方から、ゆっくりと太陽が顔を出す午後。
休みの日の二人は猫みたいに転がる。





裸になって触れ合う。
肌と肌を擦りつける。
女の子の肌はとっても柔らかくて気持ちよくて、あたしは、華と出会ったばかりの頃から、こうして裸で抱き合うのが大好きだった。



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華が、裸の腕であたしを抱きしめて、眠たそうに欠伸を一つ。
あたしもつられて、眠そうな目をする。
合図はキス。
二人で一緒に眠りに落ちる。墜落という感じで。





コンビニで、豪勢な朝ご飯を買って食べた。
お菓子を半分こした。
買い物に出かけて、華が篭を持って付いてきてくれた。
閉店間際のお菓子屋で、最後の一個の赤飯を買った。
お店のひとが、お饅頭を一つずつおまけしてくれた。





今日は良い日だね。
誰かのおかげで、そう思える。

あぁ、最近のあたし、調子が良いかも。

来週の休みには独りだから、髪をストレートにしてこよう。




カレーとセックス。
2006年10月11日(水)


「満腹にならないと性欲も湧かないの」

なんて口癖のあたし。
今夜は華のおうちへお出掛け。
仕事が終わって、電車を乗り継いで。降りた駅には華が待っている。
まるで忠犬みたいな顔して。

そのまま華に攫われて、カレーとセックスの誘惑に負けて。
仕事帰りの草臥れた身体を、ささやかなお遊びに酷使する。

撮ってもらっていたDVDと、華の作ったカレー。
終われば手を引かれて、華専用の小さな寝室。
小さな布団の端に座って、強請るような視線を見下ろす。

ここで抱き合うのは、二度目だね。
見慣れない天井が、少し怖い。





手繰り寄せられるような、指先。

舌。

濡れる、揺らされる、抉り上げられて、食べ尽くされる。

必死に声を噛み殺していると、笑った顔が見えた。

ああ、もう……悔しい。





華はこういう時には狡いと思う。
忠犬みたいな顔をして、ときどき、すごく凛々しくなる。
可愛い華が大好きだけど、そうして、顔色を変えるのが、切なくて、胸が痛い。
笑った後に、苦しそうに、歪める、唇。
どうしても混ざり合えない生き物である、現実。






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出来れば、シーツの波間の上で。
互いの裸の体を絡めたままで。
溺れて、溺れて。





きっと華は怒るよね。
あなたの好きなあたしと言えば、笑って、鳴いて、愛している姿だもんね。

でも。
携帯のメモリーにひっそりと残された、あたしの残骸たち。
シーツの上の淫らな姿も。
あたしにとっては、死体と変わらないんだけどなぁ。




朝と夜に、キスを。
2006年10月08日(日)


朝には目覚めのキスと、目が覚める程の愛撫を。
夜にはおやすみのキスと、腰の抜けるような快楽を。

一日で、たくさんもらった。
こんな日は、そう簡単に眠れない。



地元から幼馴染みが遊びに来ていた。昨日と一昨日。
二人で華の仕事場へとランチを食べに行く。




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ともあれ、お安くランチを済ませて、楽しくお散歩していたんだけど。
どうやら、風邪をひきかけている様子のあたし。
人混みのせいかな。





それでも、今朝は華が抱いてくれた。
寝ぼけたあたしを、優しく優しく。
真綿で包まれるみたいな、華のやり方。

互いの仕事が終わって、宵宮のお祭りを見て、時間があるから、二人きり。
夜にも、また抱いてくれて。

華の愛し方は、「抱く」というのが一番合う。
抱きかかえる、抱きしめる、そんな愛し方をしてくれる。
そんな風だから、あたしは、嬉しいのと物足りないのと、色々な想いがいっぱいに膨らんで、もっともっとと強請ってしまう。

知らずに揺れる、淫乱なカラダ。
こんな風に育ててくれたのは、あたしの肌の上を通り過ぎていった何人かの男たち。
今更、その味も匂いも思い出すこともなければ、懐かしく感じることもないけれど、こうやって、自分の歴史を感じている。
華、あなたはいつも妬くけれど、これがあたしなんだから。




ねぇ、キスをして。何万回も、数え切れないくらい。
あたしはあなたにあげられるものは少ないけれど、同じだけのキスを返してあげられる。




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お返しは、限りなく変わらぬ愛を捧げましょう。




雨の日のベッド。
2006年10月05日(木)


華と一緒にお休み。
予定なんて何もない。
どこに行くかも、何をするかも、決めてない。
ただ二人だけの休日。
雨で良かった。



抱き合って、眠って。
起きて、ごはんを作って、食べて。
また抱き合って、眠って。
コンビニに行く以外は、何もしない。
愛し合う以外に、何もしない。

日常に草臥れた気持ちに、まるで雨が染みこむみたいなキスを。
優しい優しいキスと愛撫を。
あたしの小振りな乳房にすがって笑う、あなたの額にもキスを。

やんわりと、でも確実な愛撫で、飽きることなくあたしを抱く。
雨の匂いのする部屋で、あなたは笑って、笑って。
あたしは溺れながら、藻掻いて、泣いて。

いつか、このひとはあたしの体に飽きるんじゃないかと思ってた。
でも、いつも変わらない。
それは二人の間に物理的な距離があるせいなのかな。
それとも、女同士だから?
何一つ、確実な繋がりを持てない関係は、永遠に恋愛のままでいられるのかな。例えば、結婚なんて有り得ないし、子供なんて出来るはずもない。社会的な形式とも、人間的な成果とも無縁。
ただ、心と体でしか、寄り添っていられないから。





愛しいと思うことを、ずっとずっと続けてられたら、あたしたちはきっと幸せなんだ。
それが何よりも難しいことだとは分かってる。





あたしの体を丹念に愛してくれる、その時間の作り方が好きだよ。
執拗な愛撫も、からかうみたいなキスと、笑顔も。
全部全部、好きだよ。




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時折、フェティシズムを垣間見せる華の性向。
あたしはそれに、毎度毎度、お付き合いをする。
それは日によって異なりはするけれど。




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サディステックな愛情。
パラフィリアにも近い。



その全てを受け入れてしまうあたしだから、華は飽きずにあたしを抱くのかな。
そんなことを、ふと、思う。





雨の日のベッドは、快楽と、嗜虐と、物思いが交錯する。




男性器が欲しい。
2006年10月04日(水)


あたしの空洞を埋めるためではなく。
愛しいひとの空洞を埋めるため。

あなたにあれば、なんて一瞬でも思わない。
むしろ、ないからこそ、安心する。
あれは野蛮な凶器。
あたしには、そうとしか見えないから。

だから、あたしが欲しいのは、小振りな性器。
あなたを痛めつけることのない、軟らかい肉。
その空洞に蓋をする程度の、小さな小さな。
一つの生き物になりたいからこそ、そんなことを望んでしまう。




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明日は久しぶりのお休み。
予定は何もない。
華と二人で、のんびりする。

お昼は、あたしの手料理ね。
衣替えと掃除をしよう。
まるで二人暮らしみたいに、何気ないことをしよう。



そして。
あたしの空洞はあなたの指先で埋めて。
あなたの空洞は、あたしの、心の肉で埋めて。
抱きしめるの。




ああ、あたしがおとこだったらなんて思わないけれど。
あなたに埋まる肉があったら、良かったのに。




会いに行くよ。
2006年10月02日(月)


今日は、華が予定よりも早く仕事を終えて帰った。
あたしは遅番で、帰る頃には8時になる。
それでも会いたくて、会いたくてたまらなくて、華の家へと向かった。

あたしにしては珍しい。

華の家には、華以外の気配があって。
アレルギー体質のあたしには辛い動物がいて。
あたしの入り込めない世界が、嫌で嫌で、ぶち壊したくなる。
だから、あまり近寄らないんだけれど。

今日の華は生理痛でちょっとしんどそう。



華は一人であたしを待っていた。
同居人はもちろん不在。

あたしは、華用のふとんで、一緒に転がる。
くしゃみが止まらない。
それでも抱き合って。

毎朝5時半の逢瀬は、いつも寝ぼけ眼だから、ちゃんと目が覚めている時に会えるのが嬉しい。
5年の期限を与えられて、あたしは、死ぬほど苦しいのだけれど、何とかやっていけると思えた。
華に会えない日々が続けば、どんな場所でも会える。
どんなに嫌な世界でも、抱き合える。
それが、何よりの救いなんだ。






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そんなつもりもなかったのに、少しだけ遊んで。
抱き合って。
キスをして。
くしゃみをしながら、夜道を一人、歩いて帰る。



夜風が気持ちいい。
心が晴れる。
まだあたしはここにいられる。




壊れかけたもの。
2006年10月01日(日)

携帯電話が壊れかけた。
慌てて機種変更へ行ったけれど、MiniSDの使えない機種にしてしまった。
これじゃあ、華の写真を移せないよ。
旅行の写真もたくさんたくさんあったのに。
その上、充電器は前のままで使えると言われたのに、使えなくて。
明日、ちょっと憤りを込めてもう一度行かなくちゃ。
ちゃんとデータ移行もしてもらおう。



そんなことがあって、少しご機嫌斜めなあたし。
華も調子が良くない。
こんな時は早く寝てしまうに限るんだけれど、今日は何だか眠くない。




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早く明日になればいい。



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