俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
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目次
 

 

それにしても面白い顔ですこと - 2007年04月04日(水)

ユースケ・サンタマリア氏の顔、
あおりでは素朴で鈍く飾らない田舎の犬。
俯瞰では上品で鋭く聡い都会の猫。
横顔は止まっては駆け出す疲れた馬。
右からは冷えて孤独な陰の寂しさ。
左からは温まって人懐かしい日なたの笑顔。
こんなに顔面内で分業していてよく統一されてる。まさしく神の創り給うた稀なる造作の人です。心から誉めています。念のため。

というわけで、今までのユースケ氏の演じた役の中で、振り返って私のお気に入りベスト10を勝手に。基準は「性格が好みなので、その役のままで、私の傍に実在してもらいたい度」

1 藤島ハル(アルジャーノンに花束を)
2 堂々一(今週、妻が浮気します)
3 広瀬光太郎(お見合い結婚)
4 大森トオル(ウェディングプランナー)
5 松本欧太郎(あなたの隣に誰かいる)
6 真下正義(踊る大捜査線・交渉人真下正義)
7 秋庭智彦(ホームドラマ!)
8 花村大介(花村大介)
9 本間慎平(川〜いつか海へ)
10 酒井正和(酒井家のしあわせ)

次は、傍に実在しなくてもいいけどたまに会いたい人
高城太郎(俺は鰯)、中嶋敬太(眠れる森)、辻清志(愛と青春の宝塚)、太吉(怪談百物語・うば捨て山)、山本ヒロシ(ホテルサンライズHND) など。 


(予定が無くて、子供は実家という、今日までが、私の春休みだったから、たて続けの更新しました。あとは、6月の映画「キサラギ」までしばしのお別れ)


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「今週、妻が浮気します」その4 第9〜11話 還ってきた - 2007年04月03日(火)

ユースケ・サンタマリア氏主演のドラマの中で私の好きな作品第2位に躍り出たかもしれない。(このドラマに出ている全てのレギュラー役者さんの演技がどれも大好きだ。どの人の絡みも、ずっと観ていたい。音楽も、もうぴったり。タイトルの崩れ落ちていく階段も楽しい、ビデオで早送りすると階段駆け登る人が後に下がっていくように見えるのが面白い。でも止まない雨が無いように、終わらない連ドラは無いんだよね)

(夫婦のラブストーリーには何度か大事な節目が訪れるけど、それが恩師の葬儀だったり、後輩の結婚式だったりするのが、夫婦っぽくて何かいいなあ)

平和な日々の中では、二人は背中をぴったりつけて、それを意識せずに互いに外を向いていた。自分一人では転んでしまうことなど忘れて。

雨降って地固まりかけ、出合った頃を思い出す。
旅館の部屋で背中を向けて、離れた布団の中で「星、綺麗だったな」の言葉をかけるのがやっとの時も。かき回されていた心が沈殿して落ち着いてきたような雰囲気だった。
自分も悪かったと素直に思えるところまでやって来た。妻の誕生日に、きちんと謝れる。やっぱり妻を好きなんだということが確認できる。

でも五感ではまだ「浮気」の事実が許せない。あの頃の自分に戻れない。そんな自分自身も哀しい。

9 苦悩は、なくなったように思えても消えさるものではない。(シェークスピア)

苦悩の末、ついにハジメ自身の口から「別れてください」と言うに到ったあの泣きじゃくり方を観ていると、もう何ともやりきれない辛さ。
相手を好きだからこそ、苦しませたくないから互いに別れるという道。
別れるけど、相手の幸せを願ってやまないという、
その、
全ての切ない感情を表現したシーンで、ユースケ氏は目も口も肩も体全部がその「気持ち」を緻密に伝えてくれてたように思う。多分、その気持ちそのものに心身まるごと「成ってしまう」ことが可能な人なんだろう。
けれどどこかそんな自分を客観してるもう一人の自分が居るような雰囲気で、哀しいながらもホッと笑顔が浮かぶような感じだった、ユースケ氏は。

10 今が最悪だ、と言える間は最悪ではない。(シェークスピア)

その寄りかかっていた背中は、実はどんなに温かくかけがえの無い背中だったのか、無くなってみると分かる。
でも相手を大切に思うからこそ、頑張って一人で立ってみる。
離れることで相手への尊敬の念が浮き彫りになってくる。
その思いが自分にも磨きをかけていく。仕事にもそれが生きてくる。

そうして離れて感覚を研ぎ澄ませて残ったものが本当のシンプルな愛情で、以前の「好き」より、もっと精錬してパワーアップした「好き」が勝ち残り、浮気相手の影なんかもう超えてしまって。
で、ようやく、還ってきた。

11 少しの悲しみもない純粋な幸福なんて、めったにあるものではない。(ハイネ)

後輩の結婚披露宴のスピーチで、最初は体裁を整えようと無難な言葉を並べてアセアセしていたが、
次第に本音を吐露せずにいられなくなり。「・・・やりなおしたい。」
この言葉の背景にある濃い思い。涙をぐっと堰き止めるダムのように堪えてとどまりながらあの絶妙な抑揚のつけ方で言い切り、口角を微妙に上げて、暫くの間合い。ホントに、うまいっ。
知らず知らずにあらゆる人々の背中を押してきたハジメも、今みんなの友情に背中を押され、
陶子に向き合って、
「帰ろう」の言葉で。歩き疲れていながらも幸福感に包まれた落ち着いた表情っていうのか。
二人一緒にそこに帰ってきた。長い道程を経て、一皮も二皮も向けて成長して帰還してきた。
その何か歴史と到達感も感じられるような、でもあったかい風情だった。

プロポーズ回想場面の若い無邪気なキスシーンと比較すると、その性質の違いがよく分かる。
試練の末にパワーアップして誰にも負けない「好き」の証でたどり着いたキスだから、
それは互いに本当に愛しいことを確かめるような、すっごく大事なキスのしぐさである。
ユースケ氏のキスシーンとしては、「アル花」のエリナ先生とのシーンと同じくらい、見ていて嬉しい。で今回、その嬉しさの正体が改めて再確認できた。
キスする前にちょっとこう、「今から行きますが宜しいですか?」という、念押しの頷き動作があるのだ。それがとっても謙虚な感じがして、彼女を大事に思っている感じがして、それが演出としても、彼のキャラクターに似つかわしいと思う。





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「今週、妻が浮気します」その3 第4〜8話 男という名の人間だもの - 2007年04月02日(月)

4 ひどく憎んでいる限り、まだいくらか愛しているのである。(デズウリエール婦人)
5 憎しみは、その心を抱く者にはね返ってくる。(ベートーヴェン)
6 ゼウスでさえも、いったん起こったことを取り消すことはできない。(アガトン)

ホテルの部屋での春木とのやりとり。煮えくり返る心をぐっと抑えつつ、レッドマンボウ握り締め、ここは冷静にと、背水の陣な感じがよく出ている。
春木の立派さに気圧されそうだけど、陶子の前で、負け感を懸命に払拭しようと闘う。言葉の一つ一つへの反応がいちいちリアルで。
観ていると、「もし私がこの立場なら、この気分になるだろうな」と正確にシミュレーションさせられているよう。
おそらくユースケ氏自身、人の気持ちを推し量るのがうまいというよりもう、本当に実際藤井フミヤのことを「妻に手を出した憎っくきヤツ」と思って怒っているのでは。

ハジメは陶子を取り戻したくて行動したのに、武装しすぎて、裏目に裏目に出てしまう。
妻への、そして浮気男への、憎しみや悔しさで一杯で。
負けたとか、勝ちたいとかばかりが先立てば、本当に大切な事に気づくことは難しい。
転職しようとしていた(それはハジメの勘違いだったが)玉子を引き止めるには、あれほどストレートに思いをぶつけられたのに、夫婦のこととなると何かが邪魔をして、一段上がるポジションを取ってしまい、妻の元に降りて行くことができない。

そんなハジメも、そして陶子も、まだ自分自身を内省する方向には向かえていない。怒りやら復讐心やら何やらで、目が眩まされている。
いつもは出さないような高さの声荒げて叫ぶし。
浮気相手に対する妙な気おくれとか、震えながらも思い知らせてやる携帯電話の場面とか。
ユースケ氏の演技も更に複雑な感情に揺れて複雑さを増し、男子ならではのイヤな部分・素直じゃない面もガンガン出る。出るけど、ここが試練のしどころだ。
(が、春木夫妻の買い物姿を見ながらバナナ握りつぶしたあと、スーパー店員に見せる苦し紛れの笑顔が何ともいえないバナナ味だった。なお、そんな悔しいのに、仕事は仕事、結局玉子たちの努力を無駄にしたりせずに編集者としての仕事を全うしたことは偉かったし)

後輩の結婚話や、春木の奥さんの言葉などを通じて、彼の心も少しずつ変わっていく。
紛失した結婚指輪をあんなに必死で探したり。見つかって嬉しそうに薬指に嵌めたり。
自分でも忘れていた過去のシッパイ(浮気じゃん!)に彼なりにけじめをつけるハジメの姿からは、陶子のことを本当に大切に思っていることがよく分かる。
タノウエという元カノ(?)の、女全開アタックを、無下にはかわせない、でも困惑しながらも必死で耐え切ろうとする。なるべくタノウエのセクシースタイルを正視しないように頑張っているあたりもケナゲだった。
その、優柔不断さと真面目さの同居が、魅力でもあり、欠点でもあるという難しい役回り。妻を守るための手段としての仕事に入れ込む余り、妻を苛立たせるという、皮肉な立場。(この山口さやかのラストは潔くて格好良かった)

それなのに一方で、陶子の本音告白に対してあんなピントのずれたことしか言えな夫は、まだまだまだまだだ。男ならではの無神経さに思わず、観ていて「いるいる、そういうことを男って言いそう!」と叫びたくなる。けれどハジメ目線で観てみれば、それがごく普通の反応なんだなあと、許したくもなってしまう演技の自然さはさすが。
もしくは、あのときハジメは「陶子が自分に対して不満を持っていたことって、もっと何かこう、男としてすごくアレなことかと思っていたけど、そんなことで良かったのか・・・」という、意外な驚きを、つい口にしてしまったのかもしれない。馬鹿だが。

7 男にとって愛は生活の一部だが、女にとって愛はその全部である。(バイロン)

で、どんなに夫婦仲が険悪になっても、ハジメも陶子も、親として息子を思う気持ちはしっかり強いのが、観ていて救われる。
実はもうハジメも、陶子に帰って来て欲しいのではないだろうか?朝、轟が包丁でネギを刻む音に「陶子っ」と跳ね起きていた様子など。
チカラ君が行方不明になって、「私のせいで・・・」と泣き崩れる陶子の肩を抱き起こす様子など。
父性愛がしみじみするのは、駆けつけた病院のベットで、寝ているチカラ君に「ごめん。ごめん」と潤んだ声で語っているシーン。この涙声と目の熱っぽさ加減がちょうど良い。本当にユースケ氏の子供かと思わされた。
一方、このときの陶子にも、思わずもらい泣きしてしまった。本当に石田ゆり子の息子と思ってしまった。

Q&Aサイトで、陶子の書き込みとは知らずシリアスな質問に返信するシーン、
流れるユースケ氏の声が静かで重くって、傷の深さを知らされる。

8 過去にこだわる者は未来を失う。(チャーチル) 



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「今週、妻が浮気します」その2 第1〜3話 酸素吸えなくなる - 2007年04月01日(日)

1 安心 それが人間の最も身近な敵である。(シェイクスピア)
2 災いは一人では歩いてこない。大挙して押し寄せてくる。(ハムレット)
3 結婚とは、いかなる羅針盤もかつて航路を発見したことのない荒海だ。(ハイネ)

編集者のデスクとしてポジティブで体当たりな仕事ぶり、家に帰れば可愛い妻子との円満な家庭、全てが順調、充実そのもの。
と信じ切って疑わなかった幸福が、まずは徹底してハジメの目線で描写されている。(あとで陶子の目線で見返してみれば、実はところどころに幸せ夫婦の擦れ違いや綻びが散見されるんだけど)
そこに降って湧いた、思ってもみなかった疑惑。それは不安、恐怖、焦り、怒りとなって段々大きくなり、加速度的に彼を追いかけてくる。

このドラマの役者さんの演技全てが素敵だが、ここではやはりユースケ氏の、
忘れられない絵を回想させてください。

彼は愛する妻子の為ならば、外ではなりふり構わず、みっともなくとも、土下座でも何でもできるのだが、彼の心の夫婦愛は、妻の目前に表現しなくとも彼女に理解されていると信じて疑っていなかった。
妻は夫の本当の苦労を知らない(し、夫も妻の本当の苦労を知らずにいる)。
お互いに、取り繕っている妙な壁を、夫婦自身が自覚していない。

※なりふり構わないみっともない姿を晒し切る演技に、まったく躊躇のカケラも見られないユースケ氏の、逆にそれが色気となる格好良さ
土下座の場面は勿論、警察の取調室で「(妻に報告するのだけは)勘弁してください!」と頭を机に打ち付けるあたりにも。

※何か感情を「抑えよう抑えよう」としている表情のうまさ
陶子と一緒にカフェに居た男のことを轟たちから聞かされている場面、必死で抑えてるところ。
帰宅後、陶子との会話から何か訊き出したいと思う心を包み隠しながら平常心を装っている声など。

けれどここで一番気づかされたのは、ユースケ氏の、
様々な感情に圧迫されているような息遣い。(セリフや動作に息が乗ったり止まったりする連動の仕方)
それは日ごとに肥大していく、妻の浮気の疑いが確信に変わることだったり、
とにかくいつも何かにどんどん押し潰され焦らされ、息苦しくなっていく感情が、
手に取るようにその気持ちが観客に分かるような表情と共に、
しかも、その疲労困憊ぶりが、ちょっと苦笑まで誘うような程で。
観ているといつのまにか、どこで吸ってどこで吐くかまでユースケ氏に同調してしまう。
それほどリアルに視聴者をハジメに乗り移らせるほど、ハジメがユースケ氏に乗り移って酸欠になっているようなのだ。
ホテルロビーのソファに息を潜め身を隠している時など、ほとんどまともに酸素も取り入れられてない。
チェックインのためフロントに向かう妻と男を目の当たりにしたときの激昂、それを辛うじて堪えて、そのあとのショック状態、など。
こっちは、観たあとで思わず外の空気を吸いに行かざるを得なかったくらい。



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