月に舞う桜
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2014年10月12日(日) |
【10/12】XJAPAN MSGライブビューイング |
現地時間10月11日(日本時間10月12日の朝9時)、XJAPAN念願のNY・Madison Square Garden(以下MSG)公演が幕を開けた。 NYから遠く離れた日本の地で、私はこの記念すべきライブをライブビューイングで観た。ライブから1ヶ月以上経ってこれを書いているので、忘れているところも多いけれど、覚えている限りのことをなるべく書き残しておきたい。
私は正直、MSGというのがどんなところなのか、よく知らない。「ロックの聖地」とか、「多くのロックミュージシャンがこの場所でライブすることを目指している」とか、いろいろ聞くけれど、あまりピンと来ていなかった。 ただ一つ分かっていたことは、XJAPANのメンバーが長年夢見てきたライブが、いま、やっと実現するということだった。それがどんな小さな場所であれ大きな場所であれ、彼らの夢が叶うのだという事実だけで、私にとっては心震える感動的な出来事だ。
セットリストは、横浜アリーナ公演と同じだった。 Miracleが流れる中、まさに奇跡だと思った。 一筋縄じゃいかない多くのトラブルや悲しみがあって、それでも前に突き進んで、彼らは今、MSGのステージに立とうとしている。 ライブビューイングではあるけれど、私はその奇跡の瞬間に立ち会えるのだ。NYで行われるライブを日本の映画館でリアルタイムで観ることができる。何ていい時代を生きているのだろう。私は、この時代に生まれたことに感謝した。
やっと夢が叶うんだね。おめでとう。 ここまで辿り着いて、本当に良かった。 私は、早くも目を潤ませていた。
光を浴びて、ドラムセットのうしろにYOSHIKIが姿を現した。 その表情は、心なしか横浜アリーナのときよりも緊張しているように見えた。 いくらYOSHIKIとは言え、これだけの大舞台、緊張するのも無理はない。それとも、そう見えたのは、親のような気持になっていた私自身がちょっぴり緊張していたからなのかな。
ステージから客席に向かって、一本の花道が伸びていた。 JADEが始まると、その花道の両脇に炎が上がった。演出も、気合が入っている。 5人の表情やパフォーマンスには、横浜アリーナのときよりもさらに気迫がこもっていた。初めからエンジン全開という感じだ。 Toshlは、頬に入れているシャドウがいつもより少し濃い気がした。 HEATHの髪型は、左側がいつも以上に盛られて(跳ねて?)いて、右側に絡めたエクステは赤かった。その赤いエクステは、「HIDEと一緒にステージに立っている」というHEATHの気持ちの表れのように思えた。
客席の最前列にはYOSHIKIコスさんとToshlコスさんがいた。少し後方には、HIDEコスの人も。それから、Toshlの似顔絵と「HAPPY BIRTHDAY」という言葉を書いたお手製っぽい丸いうちわを振っている人たちが数名いた。現地時間で言うと前日、日本時間で言うと2日前の10月10日は、Toshlの49歳の誕生日だった。
Rusty Nailでは、横浜アリーナのときみたいに、サビでToshlがマイクを客席に向ける。日本語の歌詞だけど、外国の人たちも大勢歌ってくれていたのが嬉しい。 Silent Jealousyの出だしのアカペラは、やはり今回も圧巻だった。私は目を閉じて、その歌声を全身で浴びた。映画館の高品質な音響設備で聴く、大音量のSilent Jealousyのアカペラ。天から降り注ぐ贈り物だ。
Toshlが「We'll play our new song」と紹介して、Beneath The Skinを演奏。この曲は洋楽っぽいから、NYの会場に合っていると思う。MCがすべて英語なので、聴いているうちにボーっとしてしまうことも多かったけど、Beneath The Skinの曲紹介のとき、新しいアルバムにも収録予定……みたいなことを言っていた気がする。アルバムって、いつ出るのかなあ。10年後かなあ。
PATAとHEATHのソロ対決(いや、対決じゃないって!)、DRAIN、SUGIZOバイオリンソロから紅を経て、HEROへ。 一回だけ、サビ練習を行う。私は、横浜アリーナから数えて3日目にして、ようやくHEROのサビを歌えるようになった。 HEROのフルコーラスを初めて聴いたのは、6月のYOSHIKIのクラシックコンサートだった。そのときは、しっとりしたバラードで、ケイティという女性のボーカリストが歌った。横浜アリーナの1日目は、ケイティが歌うのとは全く違うXバージョンの曲調を堪能しつつも、ライブ後に脳内再生されるHEROのボーカルは、まだToshlじゃなくてケイティだった。横浜アリーナ2日目で、Toshlが歌うHEROが馴染んできた。そして、MSGでやっとサビを歌えるように。何だか、自分の中でのHEROのプチ歴史を感じる。
Born To Be Freeで本編は終了。 アンコールその1は、YOSHIKIのピアノソロから。 YOSHIKIはピアノの鍵盤に付いている何か(汗?)が気になったようで、スタッフにタオルを要求して、自分で拭いていた。「スタッフ、事前に確認して拭いておこうよ!」と思ったけど、タオルで一生懸命拭いているYOSHIKIが何かかわいくて、貴重な姿が見られたのは嬉しい。 ピアノソロでは、白鳥の湖と即興に加えて、何かのハリウッド映画のテーマ曲(たぶんゴッドファーザーだと思う)を弾いた。
ドラムソロが始まるとき、後方の大型スクリーンには大きな天使の翼が映し出された。ドラムの椅子にYOSHIKIが立つと、ちょうど体が翼の間に位置して、YOSHIKIが翼を広げた天使に見える演出だった。 ドラムを叩き始めてしばらくすると、ドラムセットが台ごと上がっていった。そして、花道の先端まで移動していく。東京ドームではおなじみだけど、久しぶりに見る大掛かりな光景だ。
ドラムソロの次はForever Loveで、Toshlが歌う中、YOSHIKIが息を整えながらドラムからステージのピアノまで歩いて行く。 それから、I.V.の前にYOSHIKIが「We are!」を繰り返して、散々煽ってからマイクを渡したいのにToshlの姿が見えなくて、「Where is Toshl?」と困った顔できょろきょろしていたのは迷子の子供みたいでかわいかった。 I.V.を始めるためにYOSHIKIがドラムセットの階段を上がろうとするのだけど、コルセットを忘れていて、スタッフがコルセットを持って慌てて追いかける。そんな様子もライブビューイングだとしっかり見えていて、「スタッフの方々、本当にご苦労様です」と感謝の念が湧く。
Xのときは、花道の上に赤や白の大量の紙吹雪が舞った。もう本当に、降り積もるくらいに大量の。Xの途中、YOSHIKIが花道の上に寝転がると、体に紙吹雪がくっついていた。
花道に積もった紙吹雪は、メンバーがいったん引き揚げてアンコールその2を待つ間にスタッフが掃いて片づけていた。 アンコールその2の最初で、YOSHIKIはアメリカ合衆国の国歌を弾いた。譜面台に楽譜を置いて、それをじっと見ながら、まるで子供の発表会みたいに一生懸命弾いていた。YOSHIKIならアメリカ国歌くらい簡単に弾けそうなものだけど、弾き慣れない曲はやっぱり大変なのだろうか。何にせよ、楽譜をしっかり見て弾く姿からは、NYというよそ様の土地で、その地の人たちの国歌に敬意を表して大切に扱おうとする姿勢が見て取れた。
ピアノを弾いた後、YOSHIKIが「昨日はToshlの誕生日だったんだよ」と英語で言った。 (MSG公演は現地時間10月11日、前日の10月10日はToshlの49歳の誕生日だった) SUGIZOのバイオリンの伴奏に合わせて、皆でハッピーバースデイを歌った。照れたように、小さくお辞儀をするToshlくん。
ART OF LIFEのピアノソロの場面では、何とピアノが台ごと上がっていった。これには度肝を抜かれた。YOSHIKIもさすがにちょっと心配だったのか、ときどき後ろを振り返って高さを確認するようなそぶりを見せていた。
5人の圧巻のART OF LIFEでライブが終了し、YOSHIKIが花道を全速力で走って行って、客席にダイブした。 いかつい顔のガードマンのおじさんが、慌てて駆け寄る。お客さんの中でもみくちゃになっているYOSHIKIを早く花道へ引き上げなくちゃならないし、かと言って、無理にYOSHIKIの体を引っ張るわけにもいかないし……という感じで、困った様子。すみません、YOSHIKIがお世話かけます。
ライブ終了後、他のメンバーがステージや花道を歩き回って客席に手を振ったりしているときでも、いつもならステージ上の階段に座って静かに見守っていることが多いPATA。でも、この日は自ら花道に出て行って、落ちている紅い薔薇を客席に投げたりしていた。その姿が、とても印象的だった。
横浜アリーナでもやっていたけど、YOSHIKIがToshlをおんぶして、ぐるぐる回って、Toshlが落ちそうになって、二人で笑う。 5人で手を繋いで万歳して、PATAとHEATHとSUGIZOが退場した後も、ToshlとYOSHIKIはステージに残って、2人並んで深々とお辞儀をしていた。
私が行った映画館は、ショッピングモールの中にある。 この日は日曜日で、建物の外に出ると、家族連れやカップルや友達グループがたくさん行き交っていた。ついさっきまでXJAPANのMSG公演のライブビューイングが行われていたなんて、たぶん知る筈もない人たち。 私は、Xのロゴ入りリストバンドを付けた左手を高々と掲げて叫びたかった。
私はね、XJAPANっていう、どうしようもなくバカでエネルギッシュで途方もなく危なかしくて厄介で唯一無二の魅力的なバンドのファンを、20年もやってるの。飽きもせず、バカみたいに、いつもやきもきさせられて、自ら進んで奴らに人生狂わされて支えられて救われて、そうやって生きてきたの。それが、私の誇りなんだ! そして、たった今、NYのMSGっていう「ロックの聖地」なんて言われている場所で行われた彼らのライブを、スクリーンで観てきたの。 私は、XJAPANという存在を、心から誇りに思ってるよ!
本当はそんなふうに叫びたくて、でも口には出せないから、空を仰いで心の中で思いっ切り叫んだ。
2014年10月03日(金) |
【10/1】XJAPAN 横浜アリーナライブ2日目(2) |
Born To Be Freeのあとメンバー全員が退場し、しばし待つ。 1日目と同じく、それほど長く待たされた感覚はなく、YOSHIKIが登場した。 YOSHIKIのピアノソロ(即興→白鳥の湖→unfinished)を経て、ドラムソロへ。ドラムセットの中、YOSHIKIの両脇に置かれたキーボードは1日目と違って調子が良く、YOSHIKIはピアノとドラムを行き来する必要がなく、ドラムの合間にキーボードをガンガン弾いていた。
ドラムソロの次はForever Love、そしてI.V.へ。 I.V.の前、YOSHIKIがかすれた声をもろともせず何度も「We are!」と叫んでいた。その間、Toshlがドラムを叩く。 お色直ししたSUGIZOの衣装は、全身トゲトゲしていて、触ったら痛そう。
Xのとき、映画館も数名がXジャンプしていた。 間奏でのメンバー紹介は、HIDEとTAIJIも入れて7人。2008年の復活ライブ以降、Toshlによるメンバー紹介がしばらくはHIDEを含めた6人分で、2010年の日産スタジアムライブからはTAIJIも加えていて、だんだんメンバー紹介の時間配分が厳しくなっている印象。頑張れ、Toshlくん!
Xのあと再びアンコール待ちの時間を経て、YOSHIKIとToshlの2人だけが登場した。 YOSHIKIがピアノでDAHLIAを弾いたけれど、この日はToshlは歌わず、流れで「戦場のメリークリスマス」を少しだけ弾いてくれた。なぜ、そのチョイス? それから、2人が何やらごにょごにょと内緒話をしたあと、YOSHIKIがSay Anythingを弾いてToshlがマイクを客席に向けるので、歌う。あの内緒話は「Say Anythingでもやる?」「そうだね」ってところだろうか。
YOSHIKIがステージ上の階段に腰かけたので、Toshlも隣に座る。
YOSHIKI「どう、Toshl、久しぶりのコンサートは」
Toshl「えっ、こういう時間なの?」
客席のあちこちから歓声が上がっているから、Toshlの声が聞こえなかったようで、YOSHIKIは「何?」という感じに体をToshlに傾ける。
Toshl「こういう、二人きりの時間なの?」
YOSHIKI、やっぱり聞こえず、耳の遠いおじいちゃんみたいに、Toshlの口元に耳を寄せる。
Toshl「仲良しこよしの時間なの?」
ヤバい、そのセリフに萌えて、鼻血出そうだ! でも、肝心のYOSHIKIは聞き取れておらず、Toshlの顔をじっと見ている。
Toshl「どんだけ耳が遠いの?」
しびれを切らしたToshlは、マイクを通してそう言ってから、マイクなしで(おそらく同じセリフを)YOSHIKIに語りかけた。
YOSHIKI「近くにいると、遠くに響いて聞こえないんだよね。(俺の声)聞こた?」
Toshl「ってか、何言ってるか全然分かんない。英語のほうがうまいんじゃない?」
YOSHIKI「昔さ、メンバーミーティングやるじゃん。俺がいっぱい喋って、5分くらいしてから、HIDEが『YOSHIKI、何言ってるか全然分かんない』って。俺が散々喋ってから。それ、5分前に言ってよって。お母さんに……」
Toshl「お母さん?」
YOSHIKI「うん。お母さんに『もっとゆっくり話しなさい』って」
こういう会話を、1本のマイクを交互に使ってやるわけですよ。リラックスして、下らない内容を仲良さげに話す、すみれ組さんたち。ニヤニヤしちゃうよ、まったく。
YOSHIKI「日本でやったのって4年前だよね。そのあと、どこ行ったっけ?」
Toshlが首を振る。Toshlはマイクを持っていなかったけど、WOWOWでToshlの口元を観たら「覚えてない」って言っていた。覚えてないんかいっ!
YOSHIKI「覚えてるよ。went to Los Angeles,went to Oakland,went to Seattle……」
このあと、YOSHIKIは「went to」を繰り返して、北米、ヨーロッパ、南米、東南アジアと、見事に全ツアーの全公演を列挙したんである。東南アジアツアーの最終公演であるバンコクまで言い終えたときは、客席から歓声と拍手が起きた。全部覚えてるなんて、さすがYOSHIKI! Toshlも見習ってもらわないと。ってか、Toshlはその前に歌詞を覚え……(以下略)。
YOSHIKI「そして、ついに!」
YOSHIKIはそこまで言って、Toshlにマイクを渡した。 ところがToshlくん、「ついに?」と真顔でYOSHIKIに聞き返した。
YOSHIKI「ついに日本に帰ってきたぜ、でしょ!」
YOSHIKIに言われて、はっと気づくToshlくん。
YOSHIKI「ついに!」
Toshl「ついに日本に帰ってきたぜーーーっ!!」
仕切り直しで、叫ぶToshlくん。
Toshl「そして、いよいよこれから……」
YOSHIKIにマイクを渡す。が、今度はYOSHIKIが「え?」と首をかしげている。ヤバい、YOSHIKI、素だよ、素! おいおい、大丈夫か、このオッサンたち。 ToshlがYOSHIKIに耳打ち。で、YOSHIKIが「あ、そうか!」と膝を打つ。
Toshl「ちょっと待って! テレビ、一回消して! 映画館も回線切って! いまのは、なし!」
Take2……いや、Take3か。
Toshl「ついに日本に帰ってきたぜーーーっ!! いよいよこれから!」
YOSHIKI「マディソン・スクエア・ガーデンに行ってくるぜーーーっ!!」
やっと完結した。 この2人のコントは本当に面白すぎる。萌える。
そのあと、たぶん、客席から「東京ドームでもやって!」っていう声が上がったんだと思う。それに答えるYOSHIKI。
YOSHIKI「東京ドーム? やりたいよね。でも、やらせてくれるかなあ。皆がジャンプするから……まあ、俺がジャンプさせてるんだけど。皆が署名してくれたら、やらせてくれるかも」
Toshlが、何事かをYOSHIKIに向かって言う。
YOSHIKI「何? 署名はどこに送ればいいのかって? さすがToshl、言う事が現実的だね。送り先はいろいろあるじゃん。Toshlのフェイスブックとかさ、YOSHIKIのフェイスブックとかさ、SUGIZOのツイッターとかさ、PATAの家とか、HEATHが行く飲み屋とか」
PATAの家! よし、署名はPATAの家に送りつけよう!
ここまでのほのぼのとした笑いの空気から一転、YOSHIKIが真面目な表情で語り始めた。
YOSHIKI「X……XJAPANは、本当にいろんなことがあって、今こうして、ToshlとPATAとHEATHとSUGIZOと、そして皆と、ここにいられることが本当に夢みたいです。4年前の日産スタジアムのコンサートで、俺たちはXJAPANという翼を持って、皆が風になってくれるから、俺たちはその風に乗って世界に羽ばたいて行ける……と言ったと思います。XJAPANという翼はボロボロだけど、傷だらけだけど、皆がこうやって応援してくれる限り、前に進んでいくので、これからもよろしくお願いします」
涙を流しながら、かすれた声で、YOSHIKIは関わっている人たち全員に向かってお礼を述べた。
YOSHIKI「今回のコンサートを実現してくれたエージェント、プロモーターの方たち、アメリカからたくさん来てくれた照明さんや裏方さん、本当に多くのスタッフの方たち、ありがとうございます。そして何より、こうして集まってくれたファンの皆、今日はここに来れなかったけど映画館で観てくれている人たち、それから、覚悟を決めて、テレビの前で……WOWOWで観てくれている人たち、本当にありがとうございます」
YOSHIKIは「ありがとう」と「よろしくお願いします」を繰り返して、頭を下げた。それが、彼の偽らざる気持ちなのだろう。
PATAとHEATHとSUGIZOも登場して、ENDLESS RAINを演奏した。 1日目のENDLESS RAINではステージに立ちつくしたまま歌えなくなってしまったToshlだけど、この日はしっかり歌えていた。それが、何より安心した。 以前のライブでは、正直、ENDLESS RAINを聴くのも歌うのもちょっと飽きちゃったなあと感じていたけれど、この日は純粋に感慨深くて、私も心から一緒に歌えた。
自分でも、不思議に思う。何でこんなにも、Toshlの声に魅了されるんだろう。 Toshlより歌がうまくてToshlより安定感のあるボーカリストは、たぶんたくさんいる。でも、Toshl以上に私の心に響くボーカリストは、いない。 何でだろう。何でかな。 ずっとずっと、幸せに歌っていてね。そして、もしも歌えなくなったとしても、生きていてくれればそれだけでいいよ。
ENDLESS RAINが終わったとき、いろんな想い全部ひっくるめて、「あー、良かった」と思った。
SUGIZOのバイオリンが繋いで、ART OF LIFEへ。 5人が全身全霊で歌って弾いて叩いて、1日目と同じように、Toshlの、魂の奥底から絞り出すような「in my life〜!」で幕を閉じた。
曲が終わった瞬間、YOSHIKIがドラムの後ろで仰向けになった姿がスクリーンに映し出された。疲れ切って、肩で息をして、でも、その顔にはやり切った充実感がみなぎっていた。 それから、YOSHIKIが立ち上がって白いシャツを羽織ろうとするんだけど、袖も裾も長いもんだからうまく着れなくて、ステージ上の階段に腰かけていたPATAがそんなYOSHIKIを見かねて駆け寄り、シャツを着せてあげた。そして、二人でがっちり握手。その姿が、微笑ましかった。PATAは、ここぞっていうときにものすごく深いやさしさを見せてくれるから、好き。
メンバーそれぞれ、思い思いに客席に手を振ったりペットボトルを投げたりして、そのあと5人で客席に背を向けて並び、客席も込みでの写真撮影。
2日間、いいライブを見せてくれて、ありがとう。 どうか、くれぐれも体に気を付けて、MSGに行ってらっしゃい!
2014年10月02日(木) |
【10/1】XJAPAN 横浜アリーナライブ2日目(1) |
XJAPAN横浜アリーナ2daysの2日目はチケットが取れなかったので、ライブビューイングで観た。
2日目なこともあって気持ちがわりと落ち着いていたからか、号泣せずに純粋に楽しむことができた。 生には生の、ライブビューイングにはライブビューイングの良さがある。 ライブビューイングには、ライブ会場で体感できるほどの臨場感や感動はないけれど、音がクリアに聴こえるし(そのかわり、横アリの客席の歓声もやけに大きく聞こえた)、映画館の大きなスクリーンだと細かいところまでよく見えるのが嬉しい。 例えば、YOSHIKIがSilent Jealousyのイントロをピアノで弾いているとき、Toshlがベルトのバックルをつかんで上に引っ張り、ズボンの中にシャツを押し込んでいるのとか。 例えば、ENDLESS RAINの途中、ギターを弾いていないときでもPATAが足でリズムを取っている姿とか。 例えば、SUGIZO側のステージ袖で、機材の隣にミニチュアhideちゃんいるのとか。
他に、よく見えるがゆえに気になったこと↓
・メンバーの足元にセットリストが張ってあって、それがちょくちょく映るのでセットリストが丸分かり。「あ、次の曲も昨日と一緒だな」って前もって見えちゃったら、ワクワク感がちょっとしぼむ。黒地に蛍光色の字なので、書いてあることが判別しやすい。
・Toshlの足元にあるモニター(モニターって言うのかな……たまにToshlが片足乗せるところ)に、歌詞が流れている。Toshlは英語詞だと特に歌詞をガン見している節があったが、どこを見てるんだろう…とずっと疑問だった。あそこに流れてたのか! と、ようやくすっきりした。いつだったか、Toshl本人が「曲はすぐ覚えられるけど、歌詞を覚えるのは苦手」と言っていたっけ。
・Toshlの手袋が中途半端すぎて、めっちゃ気になる。人差し指から小指までの4本と手の甲は全部覆われているけど、親指と手の平は剥き出し。マイクを握る手が映るたびに、「なに、このデザイン! 中途半端すぎない?」って、心の中で突っ込まずにはいられなかった。
セットリストは1日目と同じだった。 JADEのあとかRusty Nailのあと、Toshlが「会いたかったぜ〜!」に続いて「横アリ浜ーナ!」と叫んだ。ときどきおかしなことを言いだすToshlくん、好きです。前日以上に気合が入っているかもしれない。 Silent Jealousyの出だしのアカペラは、1日目よりもさらに迫力と伸びがあった。映画館の音響で聴くSilent Jealousyのアカペラは、最強だ。足元から至福の波がぐわぁーっと上がってくる。
Silent Jealousyのあと、MC。
Toshl「今日は、映画館で観てる奴もいるんだぜー! 映画館!!」
私のいた映画館でも歓声が上がったが、画面を通して横浜アリーナの大きな歓声が聞こえた。
Toshl「お前らじゃない!」
すかさず、横浜アリーナ客席に突っ込を入れるToshl。
Toshl「それから、お茶の間で! WOWOWで観てる奴もいる! 楽して観てる奴!」
いや、決して楽はしていないと思うよ!
Beneath The Skinは、聴くの2回目にしてようやく曲の全体がつかめた感じ。たぶん、聴けば聞くほど私の中で存在感が増して、お気に入りになりそうな予感がした。 PATAとHEATHのソロ対決(対決じゃない!)のあと、DRAINは映画館だと1日目以上にhideの声がはっきり聞こえた。サビで、Toshlはマイクを客席に向けるでもなく、わざと歌わなかったり歌い方を崩したりしていた。それはhideの声を私たちにしっかり届けるためだったのだろうと、私はここでやっと気づいたのだった。 ちなみに、WOWOWの放送では曲名が表示されるのだけど、録画をあとで観てみたら、DRAIN<2015>という表記になっていた。もしや、来年アルバムが出る予定で、そこに収録されるとか!?
SUGIZOのバイオリンソロから紅へ続く。やはり、紅はほとんど客席が歌う(苦笑)。
紅のあと、ToshlがYOSHIKIにマイクを渡した。YOSHIKIははにかんだように「元気?」と投げかけて、1日目と同じように、配布されているリストバンドに言及した。
Toshl「次の曲は?」
YOSHIKI「HERO」
YOSHIKIの声がかすれて聞き取りづらいので、Toshlが「え?」と聞き返す。
YOSHIKI「HERO……」
またもや、いじわるそうに「ん?」と聞き返すToshl。
YOSHIKI「ひぃろぉ」
YOSHIKI、声がかすれている上に笑っちゃって、喋るのつらそうだ。
YOSHIKI「昨日さ、Toshlの代わりにさ……We are!をやるとToshlってすごく声を使うのね。Toshlの喉を守るために俺がWe are!をやりまくったら、俺の声が枯れちゃった。でも、俺ボーカルじゃないから声枯れてもいいか」
頷くToshl。 いや、ボーカルじゃなくても声枯れたらつらいからね! うんうん、って頷いてる場合じゃないよ!
で、HEROのサビを練習するわけですが、
Toshl「映画館もやるんだよ! WOWOW! 茶の間! やるんだよ?」
映画館と茶の間に向かって念押し。私たちを忘れずにいてくれて、嬉しいっす。
YOSHIKIのピアノ伴奏に乗せて、Toshlがサビを歌う。Toshl自身が「今のは正しい見本」と言うだけあって、本気モードの歌いっぷりだった。 この日は、練習は1回だけで本番へ。 本番では、私が歌詞を覚えていないところに限って、歌詞を表示している会場の大スクリーンが映画館の画面に映らず、あやふやなまま終わって不完全燃焼だった。このときばかりは、Toshlが映っても「今はToshlじゃない!」と思った。「Toshlはいいから、歌詞を映して!」と。
Born To Be Freeのあと、メンバーが退場するときにToshlが「バイバイ!」と言って手を振った。 そうか、1日目は「Born To Be Freeのあとの待ち時間はただのインターバルで、Xまでが本編でENDLESS RAINからがアンコール」と思っていたけど、実は本編はBorn To Be Freeで終わっていて、アンコールが2本立てなんだな。
(続く)
2014年10月01日(水) |
【9/30】XJAPAN 横浜アリーナライブ1日目(2) |
Born To Be Freeが終わると全員退場し、いったん暗転。 客席でウエーブや「We are X!!」をやっていると、しばらくしてYOSHIKIが登場した。客席に赤いバラを投げ、ピアノへ。 今回のピアノソロは、即興→白鳥の湖→unfinished という流れだった。unfinishedは歌も聴きたいなあ。Xのバラード曲では1,2を争うくらい好き。 続いて、ドラムソロ。東京ドームのときみたいに、台ごと上がったりはせず。 ドラムソロは、あんまりやり過ぎると倒れるんじゃないかと冷や冷やするけど、そんなことはお構いなしに、いつも通り全身全霊を込めて、後半に進むにつれてパワーアップしていく。 途中、ドラムの両脇に置いてある小さなキーボードを弾いていたけれど、キーボードに不具合でもあったのか、ピアノに駆け寄るYOSHIKI。「エリーゼのために」を弾いてドラムへ戻り、また一心不乱に叩く。かと思えば、すぐにピアノへ移って、今度は「月光」(だったと思う)をほんの少しだけ弾いた。そしてまた、ドラムへ。 このときの「エリーゼのために」と「月光」は、優雅なクラシックではなく、ドラムの延長という感じで「狂気」を感じさせる音色だった。 ドラムとピアノを行ったり来たりするYOSHIKI。がむしゃら、むちゃくちゃである。 最後の一打とともに、ステージから火花が上がった。
ドラムソロをやり切ったYOSHIKIが呼吸を整える中、ToshlがForever Loveを歌い始めた。激しいドラムソロのあとにバラードを持ってくる。立て続けにドラムを叩かなくてもいいようにという、YOSHIKIの体を考慮してのセットリストだとは思うけれど、この流れはまさにXJAPANの二面性を象徴している。 途中からBGMが入ったものの、1番はほぼToshlのアカペラ状態だった。にぎやかな音を排除して、感情のこもったボーカルを堪能できる「Toshlくんタイム」(←個人的に命名)。今回はこの「Toshlくんタイム」が何度かあって嬉しい限り。 1番が終わると、YOSHIKIがピアノを弾き、PATA、HEATH、SUGIZOもステージ上の階段に腰かけてギターやベースをつま弾いた。 ステージ後方の大きなスクリーンには、昔の写真が映し出された。 HIDEもTAIJIもたくさん写っている中、私が一番印象的だったのは、髪を逆立てていた頃のToshlとHIDEが仲良さそうに肩を並べている写真だ。写真の中の二人の笑顔を見て、安心した。 Forever Loveの間奏中、Toshlは客席に背を向け、スクリーンに映し出された自分たちの写真を見つめていた。 ねえ、HIDEはさ、きっと全部許してくれているよ。だから、Toshlくん、もうHIDEに対して責任や引け目を感じたりしないでさ、胸張って行こうよ。いつも私たちに「胸張れ!」って言ってるの、貴方なんだから。
Forever Loveに続けて、YOSHIKIがI.V.を弾いた。 恒例になっている、客席も巻き込んでのサビの繰り返し。 何度か続けていると、YOSHIKIはピアノをやめてToshlからマイクを受け取り、「We are!!」と叫びだした。 YOSHIKIが何度も「We are!!」を繰り返している間、Toshlがドラムを叩いていた。YOSHIKIがマイクを握って叫ぶときはToshlがよくドラムを叩くけど、ドラム、練習してるのかな。それとも、YOSHIKIを見ていれば叩けるようになるんだろうか。
体の奥底からほとばしるように、「We are!!」と叫ぶYOSHIKI。I.V.のサビは放っておいて、全力で「X!!」と答える私たち。
YOSHIKI「全然聞こえねーんだよ!」
YOSHIKI「HIDEにも、TAIJIにも聞かせろーっ!!」
この日、私が最も号泣したのは、YOSHIKIが「We are!!」と叫んでいるときだった。 これまでのいろいろな苦難を思い出して、「今ここにこうして再び彼らのライブに立ち会えていることは、何という奇跡だろう」と感慨深くて……なんてことは後から振り返って思うことだ。そのときは、自分が何で泣いているのかよく分からなかった。 かなしいとか嬉しいとか、溢れ出す感情がいったい何なのかは分からない。ただひたすらむせび泣いてしまい、YOSHIKIの叫びにも碌に応えることができなかった。
I.V.を聴くと、復活のときを思い出す。あの当時、嬉しかった。でも、手放しでは喜べなかった。 今は、手放しで喜べる。
だから、泣いているのかな、私。
I.V.の次のXでも、Toshlは弾けていた。Toshlだけじゃない。がむしゃらに、嬉しそうにドラムを叩くYOSHIKI。曲の終わりの方で、ステージ前方に出てきて3人並んで弾くPATAとHEATHとSUGIZO。そして、Xジャンプする客席。 今回はステージがちょっと見づらい二階席で残念だったけれど、客席が一体になってXジャンプしているのを眺めることができたのは、高い位置にいたからこそだ。そういう意味では、まんざら悪くもない。
Xのあと、アンコール待ちのとき、配布されているリストバンドが客席中で黄緑色にキラキラ光り始めた。近くの席からは「きれーい」という声が漏れ聞こえた。YOSHIKIが言ってた「何か起こる」って、これだったのか。
アンコールは、くつろいだ雰囲気で始まった。 YOSHIKIがピアノでScarlet Love SongとDAHLIAを少しだけ弾いて、DAHLIAはToshlがサビを歌ってくれた。DAHLIAもいいけど、Scarlet Love Songが聴きたかった。まだ生で歌を聴いたことがないんだもの。
DAHLIAを歌い終えたToshlが、ピアノの椅子に座っているYOSHIKIの隣に腰かけた。 YOSHIKIがマイクを奪って、
YOSHIKI「これ、俺の椅子」
Toshlがすかさずマイクを奪い返して
Toshl「これ、僕のマイク」
Toshlくんに一本! って言うか、お前ら幼稚園児かよっ! 「これ、僕のマイク」ってToshlの言い方がめっちゃかわいくて、萌えた。
YOSHIKI「どう? Toshl、久しぶりのこういう場……Xのコンサートは」
Toshl「YOSHIKIはどう? 久しぶりのXのコンサートは」
ToshlはYOSHIKIの問いかけに答えないで、オウム返しに聞き返した。 YOSHIKIもその問いに答えず、他のメンバーに同じ質問をして回った。
SUGIZO「行き当たりばったり」
PATA「どうもこうもねーよ!」
HEATH「なかなかいい感じに仕上がってますねー」
YOSHIKI「相変わらず、みんな言うことがバラバラだなあ」
PATAの「どうもこうもねーよ!」は、間違いなく今回の2daysの迷言第一位でしょう、うん!
結局、ToshlはYOSHIKIの問いにはっきり答えずじまいだった。 今回のライブに対する思いは、簡単には言葉にできなかったのかもしれない。
YOSHIKIが改まった表情と声で、言った。
YOSHIKI「そうですね……Toshlも、自分も、PATAもHEATHもSUGIZOも、皆いろいろな想いを持って、このステージに立っています」
「Toshlも、自分も……」と、Toshlの名前を一番に挙げたところに、YOSHIKIの想いを感じた。
YOSHIKIは、Toshlに対して責任を感じているのではないかと思う。15〜20年前、Toshlを疲弊させた原因は自分にあるんじゃないかと、感じているように思えてならない。Toshlも確かに苦しんできた。でも、YOSHIKIだってToshlのことでたくさん思い悩んで、苦しんで、自責の念に駆られたこともあったのではないか。
もう、いいんだよ。苦しむ必要も、自分を責める必要もない。 いま、ここに、XJAPANのメンバーとしてともにステージに立っている事実、それがすべてだ。
しんみりした雰囲気で、ENDLESS RAINが始まった。 Toshlは、出だしの「I'm walking in the rain」だけ歌って、その先を歌えなくなってしまった。 マイクを客席に向けるでもなく胸の前で握ったまま、その場にじっと立ち尽くしていた。 ときどき歌おうと試みるけれど、声が詰まってどうしても歌にならない。喉がしんどいんじゃなくて、泣いていて、無理に歌えば涙声になってもっと泣いてしまいそうだった。 ニコニコ顔でマイクを向けてきたら、「いやいや、お前が歌えよ!」って心の中で突っ込む。 でも、立ち尽くすToshlの姿を見ていたら、「もう、いいよ。大丈夫だから」って抱きしめたくなった。
貴方が歌えないときは、私たちが歌えばいい。 だから、何も心配しないで。 大丈夫、貴方はちゃんと生きて帰ってきた。もう、大丈夫だから。
Toshlの代わりに、心の底から精一杯歌いたかった。 だけど、不覚にもENDLESS RAINの歌詞をところどころ忘れてしまっていて、おまけに、大声で歌ったら私まで涙声になりそうで、うまく歌えなかった。
ENDLESS RAINのあと、SUGIZOのバイオリンソロを挟んでART OF LIFEへ。 YOSHIKIがピアノを弾いているとき、スクリーンでは紅い薔薇の花びらが舞っていた。 そして、5人渾身のART OF LIFE。 最後の「in my life〜!」は、Toshlが残っている力をすべて振り絞って、体の底から放つ魂の叫びだった。
たっぷり3時間のライブだった。 4年前の日産スタジアムは、いちいち間があって、ちょっと間延びしている感が否めなかったけれど、今回はインターバルがあまりなく、アンコールの待ち時間も短かった。 セットリストも攻撃的だし、メンバーの気迫を感じられた。個人的には、Toshlが楽しそうに歌っていたのが嬉しかった。ただ、客席に歌わせる頻度がちょっと気になるけれど。 今回の横浜アリーナ・ライブはMSGの前哨戦と銘打ってあるけれど、前哨戦なんて言う生易しい雰囲気はどこにもなく、かなり良い出来だったと思う。 Toshlがどの曲でも初めにタイトルを叫んでいたのは、MSGを意識しての試みかな。
かなりお腹いっぱいなライブだったけれど、ほんの少し何か物足りないなあと思っていて、それはTearsを聴いていないからだ!と気づいたのは、最後の最後にSEでTearsが流れているときだった。 でも、まだまだ道は続いて行くんだ。いつか、またの機会にTearsは聴けるよね。
ライブの途中だったか最後だったか、ステージから客席にちょっとだけ伸びている花道(と呼べないくらい短い場所)にToshlが出てきたとき、確実に2回は目が合った!……と言い張っておく。
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