2024年07月29日(月) |
「死ね、クソババア!」と言った息子が55歳になって帰ってきました / 保坂 祐希 |
75歳の晴恵は両親が遺した鎌倉の家に一人暮らし。 息子達彦は「死ね、クソババア!」と捨て台詞を残して家を出て以来、ほとんど音信不通。だが、終活を意識し始めた晴恵の元に、55歳になった達彦が、離婚すると言って突然帰ってきた…。
私は主人公の晴恵が羨ましい。
乳飲み子の息子を連れて着の身着のままで帰ってきたとき、両親が健在で受け入れてくれたこと
75歳で余命宣告を受けたこと
小学校からの気の置けない友達が近所にいること
物語としては 晴恵がどんな死に方をするのか分からないまま終わってしまった
2024年07月25日(木) |
月と散文 / 又吉 直樹 |
ドブの底を這うような歳月を越えて芸人として世に出て10年と少し。 芥川賞受賞、相方の渡米、コロナ渦・・・。 その間に、様々な出来事が起こった。
いろんなものが失くなってしまった日常だけれどなにがあるのだろうか。
あの頃、夢に見た年相応の暮らしは なにが変わってなにが変わらないのか。 実体験と、内側で爆ぜる感覚と感情を時折、青春を引き摺りながら描く。
センチメンタルが生み出す爆発力、ナイーブがもたらす激情。
やや欠けた月でも満月ということにして、詩を詠むことくらいは許したい。 そこに満月を見た時と同じような興奮があれば、嘘も嘘ではなくなる。 ただ私は、そうしようとした狡い感情を書く方が性には合っているけれど。
諸事情であるサプリメントを解約することにした。
販売元に電話して解約を伝えて、最後に「よろしければ解約理由をお聞かせいただけませんでしょうか」と尋ねられた。 私は用意していた返答の「本人が死去しましたのでもう必要が無くなりましたので。私は妹です」、と伝えた。
はい、嘘をつきました。
なぜ?
私には希死念慮があって、毎日死にたいと思ってるのに実行出来ないから、口にすればひょっとして現実になるかもしれないと、そんな浅はかな考えから生まれた嘘。 いくら自分のことと言ってもひんしゅくをかうような嘘はつかないほうがいいと思うので、見ず知らずの人についた嘘。
願わくば私の死が現実になりますようにという歪んだ思い。
それでも電話を切った後、一時間くらい心臓がバクバクしてた。
いくら希死念慮があってもやっぱり死ぬのは怖いんかな。。。
2024年07月19日(金) |
幸せの入り口屋いらっしゃいませ / 西亀 真 |
あっ、私、目が見えなくなったこと忘れていました。
47歳で目が見えなくなりました。でも今は、見えていた時より幸せだと断言できます−。盲目のセラピスト・西亀真による、心眼幸福論。目が見えなくなる過程と、見えなくなってからの気づき、学びを素直に綴る。
網膜色素変性症
全国47都道府県「ひとり旅」 挑戦に充ちた、ニューヨーク「ひとり旅」
2024年07月12日(金) |
赤と青とエスキース / 青山 美智子 |
メルボルンの若手画家が描いた一枚の「エスキース(絵画)」。 日本へ渡って30数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいき…。 仕掛けに満ちた書き下ろし連作短篇集。
一年未満の交換留学生としてメルボルンへ行った立花茜(レイ)は 円城寺蒼(ブー)と期限限定で付き合うことにした。
第1章で期限限定の付き合いにしたから、レイが帰国してまぁ、何かで縁は繋いでいくとは思っていたけれど、第4章の最後でなぞ解きしてくれた、面白い。
物語の中心にある一枚の絵画。 ジャック・ジャクソンが描いた「エスキース」というタイトルの水彩画。 若い女性を描いたもので、赤い服を着て青い鳥のブローチをつけていた。
見たいなぁ!!
壁にかかった一枚の絵の前に、わたしは立つ。
その絵は、多くを語り出す。わたしだけにわかる言葉で。 わたしは愛しいその姿と向き合い、ほほえみかける。
ああ、いい絵だ。
2024年07月07日(日) |
蟹工船・党生活者 / 小林 多喜二 |
蟹工船
党生活者
満州事変直後に毒ガスマスクやパラシュートを作る軍需工場内の共産党細胞の活動と、その中心となる「私」という人物を取り上げ、反戦と解放の運動のため個人生活が残らなくなった共産主義者の人間像が鮮明に描かれている。
「党生活者」が、プロレタリア文学の記念碑的な作品としての意義をもっているのは、天皇制権力の弾圧下で、帝国主義戦争に反対し、日本人民の解放のために戦う大衆闘争と結びついた工場細胞の活動を描き、共産主義的人間像の典型を、日本文学ではじめて描くことができたことにある。
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