2024年01月31日(水) |
家事か地獄か / 稲垣 えみ子 |
最期まですっくと生き抜く唯一の選択
エリートだった著者が会社を辞めて収入がなくなりお金に取って代わる人生の必須アイテムは家事!? という。 実体験をもとに、自分のことは自分でという家事をすることで最低限のお金でラクに豊かに暮らす方法を紹介したもの。
掃除機も洗濯機も冷蔵庫さえ手放して身軽に生きる、そしてそれが家事時短につながるという目からウロコの生活実践術。
食事は一汁一菜 洗濯はタライでこまめに手洗い 掃除はほうきと雑巾
買うこと着飾ることが生きがいだった洋服も9割方処分するという、思い切った断捨離。 お見事というしかない。
ひとつ・・・・質問?? 扇風機は? エアコンは? 昨今のあの猛暑をどう乗り切られたのだろうか? 冷たいむぎ茶飲みたくなかった?
巻末にちゃぶ台の写真があったけれど、冬は・・・こたつもなしですか?
著者自らの取材旅行による紀行文と小説との二本立て。
四万十川流域で生きる人々の取材旅行は良かった。 夜這いの話・川舟・ツガニ・ウナギ・満蒙開拓団・キシツツジ・アカメ漁・落鮎再解禁漁などなど。
無名の新劇女優、千代岡華子は演出家・三井によって大役に抜擢された。公演終了後、三井は「君のために戯曲を書く」と約束する。若く才能豊かな演出家に惹かれた華子は、その言葉を信じて待ち続けたが、やがて哀しい真実を知る。そして傷つき帰った故郷には、華子を温かく見守り続ける男がいた…。四国・四万十川の豊かな自然を背景に、物語とノンフィクションを融合させた意欲作。
2024年01月22日(月) |
流星ひとつ / 沢木 耕太郎 |
突然 引退を発表した藤圭子を1977年の秋のひと夜にインタビューした。 子ども時代のこと、歌手になったきっかけや前川清とのこと、自分の曲への感想や想いなど。 そして、年末の最後のコンサートまでさまざまな所でインタビューしたものをまとめたもの。
沢木自身もジャーナリズムの世界から離れたいという共通した思いがあった まとめたものには、藤圭子が「流星ひとつ」というタイトルのコメントもつけていたが、藤圭子の純粋な魂に触れて、逡巡した結果 刊行しないことにした。
が、 数年後、新宿のマンションから投身自殺したニュースで、インタビューしていたものを見直した
藤圭子の離婚した宇多田氏のコメントや、宇多田ヒカルの了解も得て、『流星ひとつ』という本ができた。
2024年01月18日(木) |
風の港 / 村山 早紀 |
人生はいつも旅の途中 世界に続く扉のあるところ、空港に降り立ち、飛び立つまでのひととき、旅人たちの人生の交錯を綴った物語
空港は素敵な場所で、誰もがずっといたくなる。けれどここを訪れるのは、誰もが旅の途中、人生の途中なんです。永遠にいられる場所ではない。
人間どんなに実力があっても、良い風に恵まれなくて、にっちもさっちもいかなくなるときがある。そんなときは風を待っていてもいいんですよ、きっと。静かに、諦めずに。良い風が吹くその日まで。
おとなになるとーーいまの生活が大切なのとは別の想いで、旅から旅の生活に憧れる心もある。どこかに根付かず、大切なものを持たず、そう、トランクひとつだけ提げて、風の吹くまま気の向くままに、ひとりでどこかへ行けたらと、思うことはあるものだ。
混沌とした頭で、生きている間は、生きようと思った。体が勝手に生きるのだから。
シリアで生まれた少女は、アメリカでダニエルと綾子夫婦の養子となり、アイと名づけられる。両親の深い愛に包まれながらも、その環境をただ恵まれたものとして受け入れることができず、アイは孤立感を深めていく。その後、日本へ移住したアイは、高校の入学式の翌日、数学教師の「この世界にアイは存在しません。」という言葉に、強い衝撃を受けアイの胸に居座り続ける。
アテネというあだ名の教師が話したのは i × i = −1 という虚数・実数ではないという複素数の話
2017年本屋大賞ノミネートされた物語
2024年01月10日(水) |
心淋し川 / 西條 奈加 |
【第164回直木賞受賞作】
「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」 江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。 青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。 裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったが――(「はじめましょ」)ほか全六話。 生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。
2024年01月07日(日) |
ファントム・ピークス / 北林 一光 |
半年ほど前に長野県安曇野の山中で行方不明になっていた三井周平の妻である杳子の頭蓋骨が発見された。遭難したと思われる二の沢から遠く離れた本沢で遺体が発見されたことに周平は疑問を抱く。 周平は杳子に何があったのかを探るために、彼女が消息を絶った場所に通い詰めるが、答えを見いだせないでいた。 しばらくの後、近くの渓流沿いで写真を撮っていた木谷茜という女子大生が行方不明になる。続いて、近くの山道で新井深雪という主婦と、その娘の千尋が行方不明になる。
いったいこの自然豊かな山で何が起きているのか?
本州には生息していないはずのヒグマの登場には驚かされたが、里に下りてきて人間を襲うシーンは本当に怖かった。 人間のエゴを表現した素晴らしい小説。
残念なことに作者は、次回作を書き進めるさなか、癌を発症して2006年11月に他界されている。 行年45歳。
2024年01月03日(水) |
アナベル・リイ / 小池 真理子 |
突然死した若い妻(杉千佳代)が 夫(飯沼)に近づいた女性に亡霊となって悪さをする。
富永多恵子(バーのママ・でもこの人は過去形 悶死??)
小菅順子(雑誌社のマネージャー・ホームから落ちて?れき死)
L(交通事故)
しかし、千佳代が唯一の友達と言って、多恵子亡き後に結婚した主人公である悦子には 亡霊となって姿は見せても悪さはしない。 むしろ、浮気をした飯沼とLの命は奪ったのだ。
悦子が信じてもらえなくても記録として書き残すという形で物語が生まれた。
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