読書記録

2023年09月27日(水) 70代で死ぬ人、80代でも元気な人 / 和田 秀樹

 高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている著者の生の声。


 70歳を過ぎると、「周りに心配かけてはいけない」「迷惑になってはいけない」など遠慮しがちになりますがその必要はありません。70代はむしろ、奔放なくらい自由に生きたほうがいいと思っています。
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80代の後半になれば、どんな人でも筋肉の衰えを自覚しますし、半数の人に認知症の症状が現れます。そうなってしまうと、もう身体の頑張りは利かなくなります。
しかし70代を自由奔放に過ごした人なら、80代になっても知的好奇心を失うことなく、多彩な人間関係を保つことができます。


 たしかに、老化というのは、毎日一万歩くとか筋トレをするといった習慣で防げるかもしれません。ですが、それよりも大事なのは生活の中にさまざまな変化を持ち込み、「今日はあの店でランチを食べよう」「美味しい珈琲豆を買ってきて久しぶりに自分で淹れてみるか」など、自由に思いついたことを実行していく暮らしのほうが、はるかに老化の予防になるような気がします。ノルマを課して運動するより楽しく暮らせます。












2023年09月24日(日) 蟻の棲み家 / 望月 諒子

 平等が建前の社会に埋れた、理不尽な「階級」。底辺から抜け出すため、男は何を為したのか――。二人の女が別の場所で、銃で撃たれ死亡しているのが発見された。どちらも、身体を売り怠惰な生活を送る母親だった。マスコミが被害者への同情を声高に語る中、フリーの記者・木部美智子は地道に事件を追い続けるが……。格差に美談で蓋する社会と、そこから必死に這い上がろうとする男・吉沢末男。


なかなかに読み応えのある面白い物語。
最後のどんでん返しというか真犯人に驚いた。

あてにならない母に代わって妹を育てる。
自分の力で高校を卒業して、母の借金も返済する。高校教師のおかげで就職できても、会社で盗難があれば否応なく疑われる。
結局のところ 底辺にいる人間は這い上がれない。


寡黙であるというのは忍耐がいることだ。反論も同意も全てを腹に溜めておかないといけないのだから。















2023年09月20日(水) 八月の母 / 早見 和真

 
愛媛県伊予市。越智エリカは海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と願っていた。しかしその機会が訪れようとするたび、スナックを経営する母・美智子が目の前に立ち塞がった。そして、自らも予期せず最愛の娘を授かる

生まれた娘は陽向(はるな)

陽向も成長するにつけ いつか出て行きたいと思うようになる
そんな陽向を何かにつけ気遣ってくれた紘子が死んでいくのに見て見ぬふりをした

うだるような暑さだった八月。あの日、あの団地の一室で何が起きたのか。執着、嫉妬、怒り、焦り……。人間の内に秘められた負の感情が一気にむき出しになっていく。強烈な愛と憎しみで結ばれた母と娘の長く狂おしい物語


男はあんまり登場しない物語
陽向の父親とか エリカが10年も服役した理由とか ??? な部分も多くて 毒親とか親ガチャとかよく言われるが そんな言葉では表せない物語













2023年09月16日(土) ロスト・ケア / 葉真中 顕


 作品情報
戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奧に響く痛ましい叫び――悔い改めろ! 介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味……。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る! 全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。



私は確たる優勢思考ではないが、安楽死を強く希望するので寝たきり老人を排除するアリだと思ってる。
私ならむしろ殺してもらいたい。
し波宗典のしたことは死ぬこともできない老人にとっては救いでしかない。
家族による永い年月の在宅介護は地獄だから。


映画化されてたようだが 約2時間の映画鑑賞は今の私にはしんどい















2023年09月12日(火) かげふみ / 朽木 祥


 夏休み、広島のおばあちゃんの家ですごすことになった小5の拓海
雨の日に図書室のある児童館に行くと、三つ編みの女の子と出会った。雨が降らないと現れないその子は「影(かげ)を見つける話」をさがしていると言い…。原爆(げんばく)が落ちた1945年8月6日の朝と現在とをつなぐ、ひとりの女の子と男の子の物語。



広島に住む子どもの目線からみえる戦争の悲惨・悲劇。



2023年09月08日(金) 八月の光 / 朽木 祥



  失われた声に耳をすませて



 7万人もの命を一瞬にして奪った「光」。
原爆投下によって人々のかけがえのない日常は、どう奪われたのか。ヒロシマを生きた人々の「魂の記録」ともいうべき7つの物語を収録する


 石の記憶
 雛の顔 
 銀杏のお重
 水の緘黙
 八重ねえちゃん
 三つ目の橋
 カンナ あなたへの手紙


どれも つましく生きてた人々の物語
あの日、あの時一瞬にして世界が変わってしまった、そこに確かに存在した人たち










2023年09月04日(月) ハンチバッグ / 市川 沙央

 両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす。

自らを「ハンチバック(せむし)の怪物」と呼ぶ彼女の生の確認作業であり魂の叫び。

釈華は生まれ変わったら高級娼婦になりたいといい、したいことは妊娠と中絶だと。

ある日 仕事が丁寧という男性の田中に入浴介助を受けた。
田中は釈華のSNSを見ていて 収益金を全額寄付することも知っていた。

結局のところ人は他人がうらやましくて当事者にか分からないことがあるのだ。



薄い軽い本なのに、内容はとても重たい。












2023年09月01日(金) 母という病 / 岡田 尊司


 母という病は、単に親子関係の問題ではない。
それが重要なのは、母親との関係がしっくりいかないということが、決して、母親との関係だけに留まらず、人生全体を左右する問題だからだ。


 一般的な話になるが、母親は自分が幸せだったときの子どもには、愛情を感じやすい。
逆に、自分が不幸せで、つらいときにできた子どもには、愛情を感じにくい。
子どもの父親への愛情も、子どもへの愛情に移し出される。関係が不安定になってからできた子どもに、母親も愛情をもちにくい。

 それは一時的なことに思われるかもしれないが、そうではない。母親と子どもの絆が安定したものかどうかは、幼いうちのかかわりによってほぼ決まってしまうからだ。後では取り戻しようがないくらい大きな影響を及ぼす。

 母親との絆は、いつでも育まれるわけではない。生まれてから一歳半までの限られた時間しか、安定した絆は形成されないのだ。




母親との関係が大切なことはよく分かったが、子どもは母親だけのものではない。
母親の安定した精神力は夫というパートナーとの関係が大きな影響を与えるとおもう。
望まぬ妊娠やワンオペ、さらには経済的不安な状況であれば子どもに十分な愛情を注げない。
もっとそのへんを深堀りしてほしかった。

現代人は大なり小なり、ほとんどの人が母という病にかかっていると思うのが。











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