2021年03月26日(金) |
死刑囚メグミ / 石井 光太 |
多額の借金を抱える看護師の小河恵はキャバクラでも働くなど返済のため奔走していたが、同僚の看護師・鹿沼好江に誘われて“社長”のホームパーティーに行き、“社長”に借金の肩代わりをしてもらった。 イラン人・トニーから求愛され、好江たちと豪華な海外旅行を繰り返すなど生活が一変した。 恵は、好江がマレーシア=成田間で“荷物”を運ぶバイトをしていることを知り、好江の不在時に彼女の息子・純の面倒をみるようになる。 好江が覚せい剤密輸の現行犯でつかまり、純を引き取りたいと思いお金の工面のため密輸に加わりクアラルンプールの空港で逮捕されてしまい、死刑判決がでた。 恵の小学校時代の同級生・東亜新聞の記者東木幸介が真相究明のため奮闘する。
東北の小さな町出身の恵まれない日本人女性が、アメリカ同時多発テロ以降の国際犯罪組織に巻き込まれ、異国で死刑判決を受けたという、実話があったというが。
2021年03月16日(火) |
涙をなくした君に / 藤野 恵美 |
父親の支配下で育ち、やがて両親の離婚という家庭崩壊に至った経験を持つ橙子は、テニスインストラクターの夫や小学一年生の息子に怒りをぶつけそうになり、そのたび父親に自分を重ねてしまう。 父親を嫌いながらも見捨てることができない自分にも苛立つ。橙子が臨床心理士と言う職業を選んだのは、消えないいびつな自分の心を理性で受け止めるためなのだろうか。そして再婚した母親や父と完全に接触を絶った妹の身勝手さに腹が立った。 そんな中、父に肺がんの診断が下され通いの家政婦が看病とさらには看取ってもくれた。 家政婦と再婚した父が亡くなったことでようやく燈子と妹は呪縛から逃れるのだ。
私も自分が一番偉いと思っている父と愚痴ばかりの母とにうんざりしていた。 でもこの小説の場合、理解ある夫とタイミングよく家政婦が登場することで介護からは解放されているのだ。 確かに苦しかっただろうけれど結果良ければすべて良しなのだ。 それにしても燈子の息子小学一年生の蓮くんは可愛いなぁ。
2021年03月10日(水) |
流砂 / 黒井 千次 |
70代の息子と90代の父親。 老いた息子は父の記した奇妙な報告書を見つけた。 それは戦前、思想検事だった父親が、「思想犯の保護を巡って」自己の所信を開陳した報告書だった。
父は何者だったのか?
息子は父の過去にあえて向き合い、己の来し方の輪郭を確かめようとしはじめる……。
私的には 思想検事=特高ということで怖い、恐ろしいイメージしかないのだが結局のところ詳しい記述はなかった。 何気に静かな物語。
2021年03月02日(火) |
変半身(KAWARIMI) / 村田 沙耶香 |
〇変半身(原案=松井周 村田 紗耶香)
主人公「陸」と、その友人である「花蓮」と「高城」が暮らす離島の村では、遥か昔「ポーポー様」と「ポピ族」が存在したという伝説が残されている。
奇祭り。
何が何だかよう分からん。 「コンビニ人間」を書いた作者だから面白い話かと思ったけれど、よう分からんというのが正直な気持ち。
〇満潮 夢精をした妻と、潮を吹きたい夫。
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