2021年04月30日(金) |
エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント |
作 ケイト・ペニントン
訳 柳井 薫
児童文学の分類。
仕立て職人を父に持つ十三歳のメアリーは、刺繍が得意。花や鳥など、自然の美しさを布に刺していくメアリーの腕は、かなりのものだった。父が仕えるシドニー卿のもとにウォルター・ローリーが訪れた。シドニー卿の妻子がエリザベス女王を訪問するのに同行しようというのだ。そして、その際に身に着けるマントを作るのは、メアリーと父の仕事になった。しかしある夜、メアリーは、カトリック派の数人の男が、女王の暗殺を計画している話を偶然聞いてしまった。そのうえ、そこに来合わせた父が殺されるところまで目撃してしまう…。 父を殺めた執事への怒りを秘めて 女王を救おうとメアリーの機転と知恵の物語。 十三歳恐るべし。
実際にあったことらしいが、映画を見ているようで面白かった。
2021年04月23日(金) |
一緒にお墓に入ろう / 江上 剛 |
墓じまいや、妻と愛人との間で四苦八苦する東大卒のメガバンク常務の主人公が、面白い。 笑える話ではないのだが、母が亡くなり、義母と同じ墓には入らないと宣言する妻。対して、一緒の墓に入ってもいいという愛人。 妻と愛人の言葉でフラフラ振り回され、あげく浮気が頭取にもバレてしまう。 身から出た錆とはいえ、最終的に妻と愛人とが同じ墓に入るというちょっと無理な展開。
お墓のマンションのような今の日本のお墓事情は、よく分かった。
墓じまいに閉眼供養や開眼供養、何と面倒なことか。
弟の納骨で思ったことだが、あの重たい石碑の下に入れられてしまう、というのが何だかイヤだ。 死んだあとはもっと自由でいたい。 さしずめ散骨か樹木葬だな。
2021年04月16日(金) |
天穹の船 / 篠 綾子 |
黒船来航の翌年、この国を次々と災厄が襲った。 異人憎しの声が高まる中、伊豆国戸田村の船大工・平蔵は、難破したおろしあ人の船の造船世話係補佐役を命じられる。 平蔵もまた彼らを忌避していたが、おろしあの人々の温かい心に触れ、次第にその考えを改めていく。 だがその一方で、異人を斬って攘夷を成そうとする志士たちが、暗躍し始めていた。 そこには、二十年前に生き別れになった平蔵の幼なじみ・士郎の姿があった。 交わらぬ道を歩まざるを得なくなった二人の男。
平蔵と士郎が入れ替わってたこと、二人の父である伊左次が生きていたこと、 どんでん返しではないけれど なかなかに面白い筋書きだった。
2021年04月06日(火) |
海峡に立つ / 許 永中 |
泥と血の我が半生
「闇社会の帝王」と言われた戦後最大のフィクサー・許永中の自叙伝。
イトマン事件、石橋産業事件で逮捕されるなど、数多くの経済事件でその名が取り沙汰されてきた本人が、自身の半生を初めて綴った。
日本と韓国を股にかけ、極道から巨大商社、銀行、テレビ局まで、縦横無尽に駆け抜けた許は、そのとき何と戦い、何を願っていたのか。
大阪の朝鮮部落で過ごした幼少期の原風景、日本が狂乱したバブル時代に自ら関わった事件の表と裏、政財界から暴力団までを貫くその人脈、2年間のかくれんぼと言う逃走生活、そして日韓の未来への願い……を綴る。
母と姉とが苦労して捻出してくれた大学入学の費用を裏切る中退。 子供の頃からの様々なやんちゃ、本人の自伝ではあるけれど、妻や母の苦労話もたくさん盛り込んでほしかった。 反社会の人たちとどこで誰に会ったとか、少しも面白くなかった。
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