2021年02月25日(木) |
鎮魂ハルの生涯 / 古川 貞二郎 |
著者は、村山、橋本、小渕、森、小泉の各内閣で8年7ヶ月の長きにわたり、官房副長官を務め、「官僚中の官僚」とも呼ばれた人。
立身出世を遂げたいま、思い出すのはふるさとの四季、そしてふるさとにあった母。自分の仕事の都合で、母を郷里・佐賀から切り離してしまったのではないか。職務最優先は当然であるが、そのときどき、もっと別の方途があったのではないか。思慮に富み、親思いの方が長く「官僚のトップ」であってよかった。去来する深い思念を平明達意の文でつづった物語。
ひと昔前の家を守り、義両親に仕え夫・子供のためにただひたすら生きた人、たぶんどこにでもいた母の物語。
2021年02月13日(土) |
紅子 / 北原 真理 |
1944年満州。馬賊の城塞に、関東軍の偵察機が突っ込んでくる。冷徹な首領、黄尚炎たちは、パイロットが絶世の美女であることに驚く。その女、吉永紅子は、子供たちを救出したいがために、荒くれ男たちのいるこの谷へ女一人で飛び込んできたという。尚炎は、この女は肝が据わっているのではなく、馬鹿なのだと呆れる。関東軍特務機関の黒磯国芳少佐は、吉永紅子が嫌いだ。甘粕正彦に可愛がられ、やりたい放題する紅子を憎いとさえ思っている。無茶で破天荒な女に翻弄される、馬賊の頭領と関東軍将校。一方、甘粕が隠匿する金塊を狙う輩たち。
黄尚炎も紅子も黒磯少佐もみんな優しい。 フィクションというけれど、これは映画にでもしたら面白いだろうなと思う。
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