読書記録

2021年01月28日(木) 約束された移動 / 小川 洋子


 ちょっとヨーロッパを想像させる不思議な6つの短編集。


〇約束された移動
ホテルの客室係の私はハリウッド俳優のBがチェックアウトしたロイヤルスイートの清掃担当になった。

〇ダイアナとバーバラ
バーバラは市民病院の一階ロビーで案内係をしていた。雑誌のグラビアを頼りにダイアナの衣装を手作りしていた。

〇元迷子係の黒目
”ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹”
その末の妹は駅前のデパートの迷子係をしていて、迷子を見つけるのが上手だった。

〇寄生
勇気を出して彼女にプロポーズしようとしていた日に、駅前のロータリーで僕のことを息子だと言って
腕にしがみついてきた老女がいた。

〇黒子羊
村で唯一の託児所『子羊の園』のはじまりは、大風の吹いたとある夜だった。

〇巨人の接待
地域語しか話さない巨人が来日するにあたって通訳の急な食中毒で私にその仕事が任された。


どれも独特なな世界のお話。





2021年01月19日(火) 荒城に白百合ありて / 須賀 しのぶ


 会津藩江戸上屋敷に住む美少女鏡子と薩摩藩士で昌平黌で学ぶ岡元伊織は安政大地震の夜出会った。恋ではなく、互いが魂の活きていないうつろな器・醒めた人間であることを知って惹かれ合う。が、互いの気持ちは伏せるというか気が付かない。

鏡子は会津の上士・森名家に嫁ぎ、戊辰戦争で征討軍参謀の伊織は会津攻撃に参加する。夫が戦死した鏡子は幼い息子を逃がし、残る女が自害して家を焼く寸前、伊織からの手紙が届いて会いに行く。しかし伊織は裏切りを疑う薩摩藩士に切られてしまう。

題名からして戊辰戦争で伊織がいるのを知りながら美しくお城で戦うのだと思っていたが・・・あっけない最後だった。



2021年01月08日(金) 余白の春 / 瀬戸内 寂聴

 


 以前 金子文子の『なにが私をかうさせたか』という自伝を読んでいた。

天皇暗殺という大逆事件も警察による陰謀だったのか。
文子は刑務所で自害し、朴烈は戦後も北朝鮮で生存しているというのだが。


これは韓国で映画になっている。
弁護士が撮影したといわれる文子と朴烈の刑務所での写真がそのまま映画のポスターになっている。
朴烈を演じた俳優のドラマはいくつか見ている。
うまいキャストだなぁと思う。



2021年01月02日(土) 善医の罪 / 久坂部 羊

 
 この小説は2002年に発覚した「川崎協同病院事件」をモデルにした実話小説。

主治医が善意で行った尊厳死を、 3年後に麻酔科医が悪意をもって院長に内部告発し、彼女をやめさせるよう強要した。
また、主治医に感謝していた遺族が、賠償金が得られるとわかるや豹変した。
100%患者さんのことを思ってした医療行為なのに、人間関係と金銭 の
からみで、主治医が殺人医師として訴追され、懲役3年執行猶予5年という有罪判決が下された。

私が感じたのは普段から余命治療を望んでいなかった患者がリビングウィルを残していたならまた展開も変わったのではないかと。

それにしても安楽死の何処がいけないのだろうかと、私は強く思うのだ。
人間は必ず死ぬ、どんなに名医であっても救えない命はある。
誰だって穏やかな死を迎えたいはずだ、それなのに。。。



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