2019年05月25日(土) |
砂上 / 桜木 柴乃 |
ミオ(母) 柊令央(私・主人公) 美利(妹・本当は15歳で産んだ娘)
この三人が登場人物。
令央は10年連れ添った夫の浮気で離婚して、母のいる実家に戻り、幼馴染が経営するビストロに勤めて、女三人が登場する小説を書いて投稿する生活をしていた。 いつもボツになっていたが、母が急死してすぐにある編集者から会いたいと連絡があり、原稿を書き直すことになった。
書き直したものはまたも改稿を言われ、母を主人公にすることで、妹として育つことになった娘を取り上げてくれた授産婦に会うため、浜松へと出向き、そこで知らなかった母の若い頃のことを知った。
かなり冷徹な女性編集者のおかげで、初稿4000部という出版にたどりつくことができた。 いつかものを書く仕事をしたいという夢がかなったことになる。
なかなかに面白い物語で、新人作家と編集者とのやり取りは、実際こんなものだろう、という思いもして読み手としては楽しめた。
2019年05月16日(木) |
花だより / 高田 郁 |
みおつくし料理帖特別巻
〇花だより 女料理人、澪が大阪に帰った後の「つるや」のお話。 店主種市が今生の別れかもしれぬと、大阪へ行くことを決意する。 用意万端調えて出発するも、小田原の宿場でぎっくり腰になり敢え無く引き返す。
〇涼風あり 町人と武士との身分の差を超えて一緒になるはずだった御膳奉行・小野寺数馬とその妻、乙緒との暮らしぶり。
〇秋燕 あさひ太夫の名を捨てて、生家の再建を果たした野江。
〇月の船を漕ぐ 今でいうコレラで患者を救えなかった夫・源斉の落ち込みに心を痛める澪。 夫の好物というか、子供の頃からの馴染の味噌をつくって夫婦の危機を乗り越えていく。
沢山読ませてもらった「みおつくし料理帖」のシリーズ完結版。 これで最後とか。 惜しいけれど仕方ない。
2019年05月07日(火) |
白い夏の墓標 / 帚木 蓬生 |
昭和58年に初版が出ていて、私が読んだのは14刷。 それだけでもすごいのだが、内容がミステリーのようでもあり、現代に通じるような医療のテーマ。 遺伝子組み換えとか、主人公黒田(死亡している・・・?)が足を踏み入れてしまった米国の微生物研究所を、『逆さまの医療』という表現で書いている。
パリで開かれた肝炎ウィルス国際会議に出席した佐伯教授は、アメリカ陸軍微生物研究所のベルナールと名乗る見知らぬ老紳士の訪問を受けた。かつて仙台で机を並べ、その後アメリカ留学中に事故死した親友黒田が、実はフランスで自殺したことを告げられたのだ。細菌学者となっていた黒田の墓へ行くため、佐伯は真夏のパリから残雪のピレネーへ向かう。
そして黒田の死の真相を知る。
登場人物は結果、みんないい人なのだ。 そんな人物描写がすごく上手い。
この作者は医師という肩書をもちながら、こんなスゴイ小説を書かれる。 読みごたえがあって、中盤からは一気読み。
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