2018年06月24日(日) |
おらおらでひとりいぐも/若竹 千佐子 |
主人公、桃子さん、74歳でひとり暮らし。
体の中にしみ込んだ過去の自分というか 内面から勝手に湧きあがってくる東北弁の声で語られる玄冬小説。
子供は息子と娘と二人いるが疎遠状態。 仲睦まじい夫婦だったようで、夫の周造さんのことがしきりに思われる。 連れ合いに先立たれて友達もいないとなるとこんなものか。
老いを生きるというか、高齢者は多かれ少なかれ自分の世界の中で生きているが、桃子さんも然り。
有難くもない高齢化社会のあちこちにあるだろう現実の世界。
2018年06月16日(土) |
一夜官女/司馬 遼太郎 |
戦国時代の主に女性達を描いた短編集。
〇 一夜官女 「一夜官女」は大阪野里住吉神社で今も行われてる神事。 実家に里帰りする途中でちょっと冒険の若妻。
〇雨おんな 戦場を前に女とちぎると、よい武運がつくという。 ふたりのおとこを相手にした出雲の歩き巫女おなん。 宇喜多中納言(秀家)の家来稲目左馬蔵。 もう一人は福島左衛門大夫の家来、尾花京兵。
〇女は遊べ物語 浪費家の妻のその浪費のために一心に戦功を立てようとする七蔵がコミカルで面白い。 (現代でもこういう夫婦いるんだろうな・・亭主の尻をたたくというか、妻の機嫌が良ければ家庭は平和ということ))
〇京の剣客 吉岡兄弟と武蔵の話で、これは吉川英治というか通説の「武蔵」と全然違うのだ。
〇伊賀の四鬼 音羽ノ城戸 柘植ノ四貫目 湯舟ノ耳成 岩尾ノ愛染明王 音羽と柘植はもう亡くなっていて、実際は湯舟と岩尾の物語。 相討ちでござる。
〇侍大将の胸毛 藤堂高虎の家臣であった渡辺勘兵衛を描いた物語。 大阪夏の陣も、豊臣の崩壊や真田丸だけではなく、馳せ参じた武士、それぞれに物語があるんだなぁ。
あとがきに無芸で無趣味の著者がひまさえあればねころんでいて、 いずれも気楽に書いたものだという。 それでもこんなに面白いのはさすがに巨匠でありまする。
2018年06月12日(火) |
112日間のママ/清水 健 |
読売テレビのキャスターだった清水健さんの家族の記録。
濃密だったけれどわずか1年9カ月の結婚生活。 妊娠して分かった乳がん。 進行性のがんで、延命につながる治療は赤ちゃんをあきらめること。 でも奈緒さんはママになることを選ばれた。 そして タイトルにもなった112日間のママ。
闘病中、辛いとか痛いとか一言も口にされなかったようで、若くして亡くなる運命だったとしても何と強いことか。 旦那さんと生まれてくれた我が子への愛で満ち溢れておられたのだろう。
奈緒は
いつも
笑顔だった
2018年06月08日(金) |
ディア・ペイジェント/南 杏子 |
ストーカーのようなモンスター患者にターゲットにされた主人公の女医千晶。 でもこれは最後のほうで、ライバル病院が仕組んだ嫌がらせだったのだが。
元銀行マンである「患者様」一辺倒の事務長。 私は患者の立場でしかないけれど、『患者様』という呼び方には虫唾が走る。 そして救急患者を受け入れる地域病院というか当直の医師の厳しさが重苦しいほど伝わってくる。 だけど 10年くらい前に尿管結石で夜に緊急外来を受けた病院の医師は誠意が感じられなかったなぁ。
まぁ入院したら医師の大変さを身をもって知るだけに、外来で気に入らなかったら病院を変えれば済むことではあるが、医師は患者を選べない。
誠心誠意、患者と向き合っている医師もいるだろうけれど、患者は自分のことしか考えていないが、医師から見たら大勢の中の一患者にしか過ぎない。
医師の死亡率は他の職業の約1・3倍とか。 本当に過重労働、過重責任、そして物語にあるような過度な承認欲求をする患者はいるのだろうか。 だとしたら・・・私なんて模範患者だわ(笑)
それにしても医療訴訟を抱えていた先輩医師の自死は残念なことだった。
2018年06月03日(日) |
笑顔のママと僕と息子の973日間/清水 健 |
シングルファーザーは今日も奮闘中
読売テレビ、夕方の報道番組 ”ten " のメインキャスターをしていて、まさに脂ののった時期、結婚して長男を授かるも、112日目に奥様を亡くされた。
その後、一般社団法人清水健基金を設立して、代表理事となるも講演会や表題のシングルファーザーと多忙な日々の中で、読売テレビを退社された。 これは本当に 通称シミケンの奮闘記ではあるけれど、私は今もひよっとしたらゲストなどで ”ten " に出演されるかもしれないと、期待を込めてチャンネルを合わせている。
去年に私の住んでいる市でも講演会があったのだが、私はひどい体調不良のため行くことが出来なかった。
直接 頑張れ!! と 伝えることもできないけれど、この本は奥様がさぞかし心を残して亡くなられたであろう息子さんが大きくなった時に宝物となることだろう。
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