2018年05月27日(日) |
老いてわかった!人生の恵み/沖藤 典子 |
夫婦の沙汰は、禍福の縄!
正に、正に!!
学生結婚で子供が出来たからには、相思相愛のラブラブな二人かと思いきや、長年の確執があったようだ。 56年間の結婚生活、たくさんの涙、かなわなかった願い、それらを「禍」が、歳月を経て思いもかけぬ「福」と言えるまでの日々。 夫が亡くなったからこそ書けるさまざまの思い。
2018年05月22日(火) |
サイレント・ブレス/南 杏子 |
大学病院の総合診療科の医師、水戸倫子は丁寧な診察で、午前の診察時間をいつもオーバーしていた。 十年目のタイミングで教授から、関連の訪問クリニックへの移動を打診された。 左遷だと思った倫子だが、これからの高齢化社会に向けて、医師の勉強は大学を離れてから始まるものだ、と諭されて異動が決まった。
ブレス1 スピリチュアル・ペイン 45才の乳がんの患者。 引き継いだ時点で余命半年と診断されていて、緩和治療が中心。
ブレス2 イノバン 22才の男性、筋ジストロフィー患者。 同居の母親がどうやら介護拒否しているようで、訪問看護とボランティアで生活を繋いでいる。
ブレス3 エンバーミング 84才の女性、老衰性の変化で日常の活動が著しく低下している。 長男の意向で本当は本人が望まない胃瘻手術をする。
ブレス4 ケシャンビョウ 推定10才と思われる身元不明の女児。 発見された高尾山の土産物店の老夫婦が面倒をみていた。 女の子は実際は12才で約3週間コンテナに押し込められて、日本で客を取るために中国からの人身売買で送りこまれてきていた。
ブレス5 ロンダターム・サバイバー 倫子の母校、新宿医大病院の72才、名誉教授。 膵臓癌で死ぬために自宅に帰った。 在職中は数多くの手術を手掛けてきたのに、自分は診療拒否をしたのだ。
ブレス6 サイレント・ブレス 脳梗塞の後遺症で意識が戻らない倫子の父は 、この半年毎月のように誤嚥性肺炎を起こし入退院を繰り返している。 薬剤師だった父は延命措置拒否の手紙を残していたが、母は父を失いたくないからとそれを倫子に言わないでいた。 でも最後は母を説き伏せ、倫子は父の点滴ラインを閉じた。
私が今一番興味のある終末期医療がテーマだった。 この本に限らずカタカナというか英単語は分からないから、それだけが少々心残り。
2018年05月11日(金) |
下流老人/藤田 孝典 |
一億総老後崩壊の衝撃
下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と作者は定義する。
下流老人は、いまや至るところに存在する。日に一度しか食事をとれず、スーパーで見切り品の惣菜だけを持ってレジに並ぶ老人。生活の苦しさから万引きを犯し、店員や警察官に叱責される老人。医療費が払えないため、病気を治療できずに自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかす老人。そして、誰にも看取られることなく、独り静かに死を迎える老人……。
12年間、下流老人を含めた生活困窮者支援を行うNPO法人の活動に携わってきた著者ならではの、これからの超高齢化社会に向けた警鐘の書。
年収400万円以下だと、将来「下流老人」になる確率が高いという。 約600万人が一人暮らし、うち半数は生活保護レベル、これは今の日本の現状。 そして団塊の世代が高齢者になる近い将来は老後崩壊が待っている。
さらに日本では高齢者に限らず、貧困が広がり続けている。下流老人の問題は、その一部分を表しているに過ぎない。子どもの貧困や若者の貧困、女性やシングルマザーの貧困も看過できるようなレベルにはもはやないという。
2018年05月08日(火) |
最後の皇后/王 慶祥 (ワン チン シャン) |
映画『ラストエンペラー』は 観た。 愛新覚羅溥儀の弟である溥傑の夫人が日本人だったから、その人が主人公のドラマも観た覚えがある。
でもその清朝最後の皇帝で時代に翻弄された溥儀の妻たちのことはほとんど知らなかった。
ー婉容ー 名門出身で絶世の美女。皇后の地位にありながら、第二皇后文繍との葛藤の中で猜疑心と嫉妬心にさいなまれ、アヘンに犯され廃人として41才の生涯を閉じた。
ー分繍ー 婉容の横暴の下で「天はなぜこれほどに残酷に扱うか」と嘆き、度重なる自殺をはかる。 宮廷から逃亡、法廷に離婚を提訴し「妃の革命」を叫んで勝訴する。
ー譚玉齢ー 溥儀が、婉容おこらしめるためにと迎えた貴族出身の愛妾。 「満州国」皇帝の継承をめぐって関東軍の謀略の犠牲となり、毒殺されたといわれる悲劇の女性。
ー李玉琴ー 溥儀の「御用掛」吉岡高級参謀が皇帝の玩具として強要し、迎えられた貧家出身の女性。恐るべき21か条の「証文」に泣く。
ー李淑賢ー 大戦後の囚人から勤労者となった溥儀に初めて人間の愛をもたらし、最後の皇帝の死を見とった女性。
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