読書記録

2018年04月30日(月) カレジの決断/アイビーン・ワイマン

 現代アメリカで18世紀そのままの生活を営むアーミッシュの人々。
ペンシルバニア州の美しい自然が舞台で、主人公のカレジはは小学校8年生。
温かい家族に囲まれて育ったアレジだが、大人に近づくにつれ、アーミッシュのしきたりに疑問を持ち始める。

アーミッシュにもいろいろなグループがあるらしいが、現代社会において電気も電話も車もない生活が続けられるものだろうか。
もちろんラジオもテレビもないし、移動も馬車で、牛や馬をつかって広大な畑を耕す。
弟が病気になっても医者にもかからない生活はカレジにとって不思議で仕方なかった。
アーミッシュの教えと、自分の意志の間で揺れ動き、ついにカレジはアーミッシュを離れて行った叔父の元に行く決断をする。


それにしても主人公のアレジの強さには感心してしまう。
真夜中に熱を出した弟を何とか助けたいと、暗闇の道を馬車で街に向かう。
結局 弟は亡くなってしまったけれど、それが かえってカレジに決断する力となっていくのだ。






2018年04月21日(土) 心にナイフをしのばせて/奥野 修司

 
 被害者家族の実情と言うか現状を書いた執念のルポルタージュ。
 
神戸で「酒鬼薔薇」事件が起こったのが1997年。
その28年前、そっくりな事件が東京近郊であった。
同級生を殺し、その首を切断した加害者は、当時15歳の少年。
未成年 ”少年A”として司法に守られて犯人は立派に更生し、なんと弁護士として成功をおさめていた。

一方、被害者の母は息子を失って廃人のように生き、妹は兄ではなく自分が死ねば良かったと思い、父は残された妻と娘を守るため自分を捨てて生きた。

被害者の少年の死から40年近く経ったいまも、残された家族は事件を重く引きずっている。
歳月は、遺族を癒さないのだ。
そして、犯人の父は、約束の賠償金をほとんど払わぬまま死亡。

事件の背景にはイジメがあったようだが、一見 平和に見えている日本社会が抱えている闇が書かれている。






2018年04月09日(月) 宮尾登美子 遅咲きの人生/大島 信三


 ジャーナリストが見た 宮尾登美子の幼少時代から亡くなるまでの、その波乱万丈の記録。

宮尾登美子が生きたそれぞれの年代に起きた社会現象や時の総理大臣も書きこんだ丁寧な年表物語。

『櫂』 や 『鬼龍院花子の生涯』 や 『序の舞』といった映画化や舞台化されたものの、主演女優たちとのちょっとしたエピソードも面白い。

私は約10年前に 宮尾登美子の『朱夏』を いろんな想いで読んだ。
それから
『天璋院篤姫』
『湿地帯』
『寒椿』
『天涯の花』 と、読んでいる。

 四国の剣山を舞台に孤児の女性の物語である『天涯の花』が一番好きだ。

若い頃は なかなか文章に纏められなかったようだけれど、晩年は勢いが増してたくさんの物語を書いておられる。

雑誌などで拝見する著者は 着物をすきっと着こなしてなかなか美しい女性だ。
まだ読んでいない物語がたくさんあるので図書館に予約をかけようと改めて思った。













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fuu [MAIL]