読書記録

2017年09月28日(木) アンソロジー 捨てる/ < アミの会(仮) >

「捨てる」をテーマにした9人の女性作家による短編集


「箱の中身は」/大崎 梢
夕暮れの公園に箱を抱えた女の子がぽつんと座っていた。
ママに箱の中身を捨てなけば帰ってきてはいけないと言われたという・・・
これは ちょっと不思議なお話。

「蜜腺」/松村比呂美
ウツボカズラの花を遺して自殺した夫。
パート勤めをしながら先物取引に狂う姑に毎晩夕食を届けることを日課にしていた・・・
夫の遺したウツボカズラを処分するのに、色々な料理法で姑に食べさせた。

「捨ててもらっていいですか?」/福田和代
92歳で大往生した祖父の遺品を整理していると、何と70年前の陸軍の拳銃が出てきた。
対応に困った家族で弟が友人の軍事オタク青年に連絡をとる。
実際、こういうことはあり得るかも・・・と。


「forget me not」/篠田真由美
「捨てられないもの うけたまわります」の文字にひかれて古道具屋をたずねた私。
処分に困ったのは母の遺品の「忘れな壺」だった・・・

「四つの掌編」/光原百合
 戻る人形  元カノの残した人形はいくら捨てても戻って来る
 ツバメたち  王子の像の頼みで金箔などを人々にくばるツバメ
 バー・スイートメモリーへようこそ  離島へ赴任することになった医師と恋人がそれぞれバーでお酒を飲む。一番短い短編。
 夢捨て場  午後11時59分までのゴミ捨て場 いったい何を捨てる場所なのか、ゴミ捨ても怖いなぁ。

「お守り」/新津きよみ
祖母からもらった手作りのお守りは受験に合格してからその後もずっと守り神だった。
ある日、守り袋の中の薄茶色の砂の色から真っ白になっていた・・・

「ババ抜き」/永嶋恵美
嵐の夜、会社の保養所で同僚女性3人がトランプゲームをしていた。
負けた人が罰ゲームとして秘密をひとつずつ暴露することになり・・・これは殺人事件になるのか。。。

「幸せのお手本」/近藤史恵
幸せな結婚生活をしたいという小さな夢、祖母というお手本があるから叶うと信じていたのだが、最後は夫への正当防衛殺人が認められるのか、どうか・・・

「花子さんと、捨てられた白い花の冒険」柴田よしき
平成3年生まれなのに古風な名前をもつ花子の夫は二軍のプロ野球選手。
ある日、花子は段ボールでパンジーを捨てようとする男性を見かけてそれを譲ってもらう・・・それは捨てようとしていた男性の妻がDVに遭っていて救いを求めるサインだった。


私は短編集は苦手だったけれど、これは どれも とても面白かった。













2017年09月21日(木) 人生の四苦八苦/車谷 長吉

お釈迦さまが、すべての人間が逃れることが出来ない 苦しみを、大きく四つ、さらに 四つ、全部で八つに 分けて教えられたもの。

生・老・病・死

この4つの苦はよく知られている。

5、愛別離苦(あいべつりく)
  自分の愛する人と別れる苦しみのこと

6、怨憎会苦(おんぞうえく) 
  人間の心というのは大変邪なもので、人のことをすぐ恨んだり、憎んだりしてしまう。

7、求不得苦(ぐふとっく)
  求めて得られない苦しみのこと。
 
8、五陰盛苦(ごおんじょうく)
  人の体と心を構成している五つの要素から生まれる苦しみのこと。
「五陰」は人の体と精神を構成する五つの要素。
全ての物質をいう「色」、感覚をいう「受」、心の中に浮かぶ像をいう「想」、欲求をいう「行」、意識をいう「識」の五つ。
  

堅苦しい言葉ではなく、著者が障害を抱えて生きていく人生でのよもやま話。
死にたくないのに、いつかは死ななくてはならない、そてこそが業苦であるということ。









2017年09月09日(土) 女たちの避難所/垣谷 美雨

  ●椿原 福子  55歳
ろくに働きもせず、母親から小遣いをもらってパチンコ(スロット)通いする夫から逃れたいと思っていた。
家計は福子が酒屋でパートして何とか維持している。
震災で 〜 夫が死んでくれてたら・・・嬉しい。



  ★漆山 遠乃  28歳
生後6か月の息子と夫と、舅姑との5人暮らし。
舅は高校卒の遠乃を器量よしを鼻にかけていると、夫のいない時は癇癪を起して遠乃に辛く当たる。
仕切りのない避難所では、好奇な男たちの視線にさらされて授乳もままならなかった。
夫が亡くなって得た義援金も舅が管理していた。

  
  ◆山野 渚
夫のDVから逃れて離婚し、小学生の息子と故郷に帰ってきて、母と昼間は定食、夜は居酒屋をしている。
小学生の息子は母親が酒屋で働いて、男たちをたぶらかしているという理由でいじめられていた。


主人公はこの三人の女性で、それぞれが三月十一日にあの地震と津波に遭遇し、命からがら避難所に辿り着き、仕切りの無い体育館での暮らしを余儀なくなれる。
モデルにした場所はあるようだが、著者はあえて宮城県の鷗ケ浜市という架空の場所を舞台にして、避難所での暮らしぶりを生活者の目線で物語に仕上げた。
最後に三人は監視社会、男尊女卑から勇気ある決断をして、東京へ踏み出していく。






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