熊野にまつわる伝説や神話・童話などが著者の目線で書かれた17編の短編集。 読みながら あれっ、これはだれの物語だったっけ、どこかで私も聞いたことがあるような、 これはどの伝説がベースになっているのかなと想像しながら楽しく読んだ。 どのお話も はっきりとしたオチがなくてなんだか切ない読後感が残った。
補陀落渡海など私が興味をもっていることもあったので、もう少し内容を深く掘り下げるというか、登場人物を濃く表現してほしかった。
作者は中上 健次 の長女。母も作家の紀和鏡、というから、熊野を舞台としたこういう物語はお手の物なのだろう。
2015年09月08日(火) |
ぼくの短歌ノート 穂村 弘 |
日経新聞の短歌欄の選者をしていて、文芸誌「群像」の「現代短歌ノート」の連載をしている作者の待望の単行本。 近現代の名作から今を生きる若いアマチュアの作品まで、気になる短歌を集め、「賞味期限の歌」「ドラマ化の凄すごみ」「貼紙や看板の歌」等々のテーマ別に、目から鱗のような歌が紹介されている。
人間は予感なしに病むことあり癒れば楽しなほらねばこまる
斎藤茂吉
暁の薄明に死をおもふことあり除外例なき死といへるもの
斎藤茂吉
いま死んでもいいと思える夜ありて異常に白き終電に乗る
錦見映理子
人みなを殺してみたき我が心その心我に神を示せり
中原中也
人の来て 世間話をする事が 何か腹立たしく殺し度くなりぬ
夢野久作
どれもこれも秀作ばかりで、今さらにわがつぶや句のお粗末さが恥ずかしい。
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