読書記録

2015年09月26日(土) 熊野物語            中上 紀





 熊野にまつわる伝説や神話・童話などが著者の目線で書かれた17編の短編集。
読みながら あれっ、これはだれの物語だったっけ、どこかで私も聞いたことがあるような、
これはどの伝説がベースになっているのかなと想像しながら楽しく読んだ。
どのお話も はっきりとしたオチがなくてなんだか切ない読後感が残った。

補陀落渡海など私が興味をもっていることもあったので、もう少し内容を深く掘り下げるというか、登場人物を濃く表現してほしかった。


作者は中上 健次 の長女。母も作家の紀和鏡、というから、熊野を舞台としたこういう物語はお手の物なのだろう。













2015年09月08日(火) ぼくの短歌ノート         穂村 弘



日経新聞の短歌欄の選者をしていて、文芸誌「群像」の「現代短歌ノート」の連載をしている作者の待望の単行本。
近現代の名作から今を生きる若いアマチュアの作品まで、気になる短歌を集め、「賞味期限の歌」「ドラマ化の凄すごみ」「貼紙や看板の歌」等々のテーマ別に、目から鱗のような歌が紹介されている。


人間は予感なしに病むことあり癒れば楽しなほらねばこまる  

                      斎藤茂吉


暁の薄明に死をおもふことあり除外例なき死といへるもの

                      
                      斎藤茂吉


いま死んでもいいと思える夜ありて異常に白き終電に乗る

                      錦見映理子


人みなを殺してみたき我が心その心我に神を示せり

                      中原中也


人の来て
世間話をする事が
何か腹立たしく殺し度くなりぬ

                      夢野久作



どれもこれも秀作ばかりで、今さらにわがつぶや句のお粗末さが恥ずかしい。













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