読書記録

2014年09月22日(月) 長女たち            篠田 節子


 決して落胆ではないがタイトルから想像していた物語とは違って、それぞれの物語の主人公たちが長女だということ。
これを長女ではなくて、主人公を長男たちとしても面白いだろうと思う。


<家守娘>

離婚歴ありの四十女に六つ年下の三十男がずっと言い寄っていたが、ずっと断り続けていたのは母の介護があったから。でも結婚が現実化して母のことを告げたら別れが告げられた。骨粗鬆症と認知症を患う母との生活は母の見る幻影「ユキ」との闘いでもあった。
同じように義父の介護をしている男性と知り合ったとき、母の妨害だと思えたその男性宅への放火事件。
それはその男性の正体を暴いたうえに、母の幻影は直美の娘「ユキ」ではなくて、幼くして亡くなった母の妹だった。この展開はまさにミステリだった。


<ミッション>
親の反対を押し切って勤めていた会社を辞め、国立大学の医学部に入り、奨学金返済せずにずむ僻地勤務をした頼子。母の担当医だった園田の影響を受けて、インドの山奥ヒマラヤの麓で医療に携わる。
話の展開も以外だったけれど、この地方での医療の現実というか西洋の医学を拒む原住民との軋轢が妙に納得できた。

<ファーストレディ>
糖尿病を患っているのに、娘の言うことを全くきかずに甘いものを貪ろうとする母。姑と小姑から受けたいじめが母から自制心を奪ってしまっていた。
そんな母に代わって、病院長を務める父のいわゆるファーストレディ役を務めていたが、そこから逃げ出そうと思うところで物語は終わっていた。





薬や食べ物など西洋医学を持ち込まれて、寿命が延びた生活に関して、インドの奥地の薬草医は言う。

村人は目立って長生きするようになった。それで得られた寿命が二か月半か十年か、わからない。いずれにしても長生きした。それは事実だ。特に州の役人や外国人はそういう数字で、物事を判断する。デリーやムンバイや、ヨーロッパなどから医者は国際援助団体の人間が視察にやってきた。そして無邪気に、マトゥ村の園田の試みを褒め称えた。しかし実際のところ病いは減らずに逆に増えていったのだ。この世に少しだけ長く留まることになった代わりに、村人は病いを得た。長生きはできるようになったが、健康なまま死ぬことは叶わず、病いに苦しむようになった」


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