読書記録

2010年07月26日(月) 親鸞            五木 寛之

 上巻は電子書籍で読んだ。
期間限定とはいえ まぁ何と太っ腹な無料配信であることよ。

そうなれば下巻を読みたくなるのは当たり前のことで図書館で予約をした。
20人待ちということで約3週間ほどかかっただろうか。


 物語は、平安末期、貴族の一族に生まれた幼い親鸞が河原の聖や悪童たちの頭目ら、社会の底辺に生きる人々と出会い、彼らの活力を知ることから幕を開ける。
 成長して比叡山の僧となり、厳しい修行に励みながらも、仏の姿が見えない親鸞。
やがて山を下り、念仏を唱えることで悪人も救われるという法然の教えに出会う――。
そして 承元元年(1207)専修念仏禁止の弾圧によって、師法然は土佐へ親鸞は越後国府へ流罪となる。親鸞35歳であった。
ここで物語は終わっていた。


配所では藤井善信という俗名を名乗り「僧に非ず俗に非ず」という生活を送り子供も生したようだ。
宗教本ってことはないけれど、とても読みやすかったので満89歳まで生きたというその後の親鸞を読みたいものだ。
そして 私の実家が浄土真宗だから、親鸞はその祖ということになるわけだ。

それにしても・・・どんな悪人でも念仏を唱えれば往生できると言うけれど、私なんどは死後の世界よりもどんな死に方をするのだろうか、とそのことかりが気にかかる。
ピンピンコロリの極楽往生を切に切に願うのみだ!!







    おやをおもわば ゆうひをおがめ
    おやはゆうひのまんなかに
    にしのそらみて なむあみだぶつ
    みだはゆうひのそのさきに









  





2010年07月17日(土) 天風の彩王  藤原不比等       黒岩重吾


645年の乙巳のクーデターの黒幕だった中臣鎌足の二男として生まれ、持統・文武・元明・元正の各天皇の厚い信任を得て、娘二人を入内させて天皇の外祖父や皇后の父となり、天皇家の外戚としての位置を確保していった。

最高峰に座るよりも、その下あたりにいるのが一番心地が良い

天武は人間的な面で鎌足に好意を抱いていなかった。自分が策略家だけに、天武は鎌足の胸中が読め、鼻についてならなかったのであろう。
史に魅せられ、彼を登用したのは天武の皇后だった女帝・持統天皇である。
もし女帝が天武よりの早く亡くなっていたなら、史があそこまで出世し、藤原氏繁栄の基盤が、あの時代に築かれたかどうかは疑わしい。

障害があればあるほど闘志も燃える。生の充実感を味わえるというものだ。
山を登り頂上を極めるには汗を流さねばならない。岩を超え、生い繁る樹林をかいくぐってこそ汗も流れるし、喜びの大きい。それでこそ更に高い頂きに挑戦できるのである。
それが史の人生観だった。



 不比等 と 妻になった三千代との関係が面白い。
二人がそれぞれの立場で最高の地位につくためにお互いを上手く利用しただけだと今までは思っていたが、この物語では心から愛し合ったことがわかる。
どちらも強い男、賢い女を求めていて正に理想の相手を見つけたということなのだ。






2010年07月03日(土) 山梔(くちなし)         野溝 七生子

 聡明な主人公が知的優越ゆえに、無理解な周囲の人たちとくり返し衝突を重ね、ぼろぼろに傷ついてついには家を出ることになる。
主人公(阿字子)の設定には作者自身の体験がかなり織り込まれているようだ。
軍職にある父は継母に冷たく育てられたかからなのか子供には、特に主人公の阿字子には折檻することでしか親の存在を示せなかったようだ。
やさしいけれどそんな父には従うしかなかった母と姉、妹そして同じく軍職についた兄がいた。
その兄が結婚して嫂となる人の登場によって阿字子は家族の中でも孤立感を深めていく。


私にも多少は覚えがあるのだけれど、いわゆる少女時代の身体も気持も揺れ動く頃の自分でもどうしようもない感情の激しさに自分自身の存在すらを呪ってしまう・・・
そんな作者の気持そのままの文章というか物語だったように感じる。
それにしても、何と硬い文章だったことか。

・・・そして 作者がタイトルに山梔(くちなし) とした理由と、阿字子という少し変わった名前を主人公につけた訳を知りたいと思うのだ。。。







私は、もう駄目だ。汚れてしまっている。人間は、どうして生れたままの魂を持ち続けてゆくことが出来ないのか。
もし、悪いことを知っても、知ったということに止めておけば好いのではないか。知ったということが、行ったということになるほど、人間は、悪い事を行おうとしている。こうして、悪い意志ばかりが、どんどん、殖え充ちて行くのだ。

人の世に、復活ということが許されて居なかったものとすれば、それは、どんなに、寂しく悲しく、物狂わしいものであったろう。
もう一度無垢の眸を上げて、物を見直して行きたい。もう一度、初めから人生を、播き直して見たい。













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