私の苦手な短編集。
だけど 人間の心に巣くう嫉妬というか、人を妬む気持ちの物語ばかり。 復讐というか仕返しのような敵討ちもあって 面白かった。
例えば 表題の『逆髪』 丈なす黒髪が美しさの基準だったその昔、蕨かゼンマイのようにくるくると巻いてしまった髪。この髪ゆえの、初姫の苦悩は一切の縁談をあきらめ、家臣の男をを愛してしまったが、男は、見事な黒髪の腰元と夫婦同然の仲だった。そして、姫を髪の縮れあがった化け物と・・・男と腰元の話を盗み聞きしてからは密かに復讐を企てる。 今のように縮毛矯正パーマなんてないものね、昔のクセ毛の女の人はそれだけで引け目だったんだ。
そして 『奴刑された女たち』 それにしても奴刑とは・・。 不義密通や心中の果ての女にだけ科せられた罪状。 女牢に閉じこめる代わりに、籤で引き渡された吉原の遊女屋で一生働きさせられる刑罰とか。 所詮 男が考えた刑罰だと作者は言う。
かぎりなく遠きあづまに隅田川 おなじ流れをいつまでか酌む
2008年11月11日(火) |
枝豆そら豆 梓澤 要 |
上下2部作で上巻は あだ名は空豆と枝豆という大店の紙屋の一人娘と小間使の娘の人間の運命のおかしみと、二人が同じ人を好きになってしまった恋物語。 そして 下巻は秋津藩の若殿の危機、お家の危急を救うべく、「おなつおその東海道旅日記」とでも名づけたいような痛快な物語になっていた。
この物語の作者は私の好きな作家のひとりであるけれど、時代物でもこんなテレビドラマのような物語を書いていたことには少々驚いた。 おそのとおなつを通して作者の人間観のようなものを感じるので、心に残った文を書き記しておこう。
他人の好意や善意を素直に受け入れられるのは、その人間もまた善意の持ち主であるからだと気づかされた。
上りより下りのほうが、はるかにきつい。おまけに上り下りの連続が腰と膝にこたえる。 まるで人の一生みたいだと、おそのは思った。上りはつらい。だけども楽に思える下りのほうが、実はずっと厳しい。大事なものを見失い、心を置き忘れる。上り下りを何度もくり返し、人間はやっとそれを知る。それを知るために生きるのかもしれない。
自分の心の底を省みることなど、日常生活の中ではほとんどない。毎日時間に追われ、生活に追われて、のんびり考えている暇なんかありゃしないのである。 無心に歩いていると、それができる。これまでの自分自身のこしかた、これからのこと、子どもたちの将来、考えたいことは山ほどある。
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