読書記録

2008年01月30日(水) 隠された帝             井沢 元彦

 天智天皇暗殺事件

いやぁ、面白かったなぁ

私もかねがね思っていたんだけれど『古事記』や『日本書記』が100%正しいわけではないと・・
だって時の権力者に指図されて時の権力者にゆかりのものが編纂して、その時の権力者がチェックを入れるものに本当のことが書けるはずがないのだから
まぁ この物語は殺人事件がからんでてミステリーだったけれど、作者の歴史観がよく出ててホント、面白かった。

日本書紀に書かれているように、中大兄皇子(天智天皇)と母を同じくする実弟は大海人皇子(天武天皇)ではなくて、誰か別の人物だった。
天武の息子である舎人親王が編集長として作った書紀に書いてある大海人皇子というのは、天武の即位を正当化するためにデッチ上げられた人物だというのだ。
天智天皇暗殺計画は、新羅国が立案し、天武が実行部隊の指示を取り、栗隈王の協力によって成功した。動機は当時の国際関係の緊張によるもの、いわば百済と新羅の、日本における代理戦争だったんだ。そして一度は親新羅派の天武王朝ができるが、皇族の減少と藤原氏の謀略により、現百済派の天智王朝が復活する。平安京を開いた桓武の母が百済系につながることはけっして偶然ではない。むしろ百済系であるからこそ、天武━親新羅系の他戸親王を押しのけて天皇になることができたのだ。

歴史好きの作者のお陰でこうして歴史の謎に挑戦できる・・
ありがたいことだ!


















2008年01月19日(土) 影踏み            横山 秀夫



『ノビカベ』と呼ばれている真壁修一は泥棒稼業をしている
15年前に双子の片割れである弟の啓二が大学受験に失敗してから万引きで警察に捕まって、そのことに悩んだ母親が弟を道連れに心中を図り両親と弟が死んでしまった
発見された遺体の一部が炭化されていたのに、それでもなお火葬場で焼かれることに反発した真壁はそれ以後、泥棒稼業を始めた
生きたまま焼かれたであろう弟を思い、何気に世間をすねて生きている

それにしてもあっちの世界へ行ってしまった弟と心の声なのか、それとも魂の声なのか、会話が成立していることが面白い
まったくの作者の想像の世界なのだろうけれど、双子ゆえの発想か・・?
啓二ではなく、修一を選んだ保母の安西久子の存在が悲しいなぁ・・

タイトルの『影踏み』という意味を思ったとき、私が読み終えたあとで感じたのは、自分の影は絶対に自分では踏めない、ということだ
  










2008年01月13日(日) 幾世の橋               澤田 ふじ子


 足を痛めた父親の仕事を手伝っていた10歳の重松は仕事先で知り合った庭師の銕蔵の仕事に魅せられ庭師になろうと決意する
それは武家の渡り中間をしていた重松の本当の親が借金を理由に心中して、孤児となった重松を本当の子供のように慈しんで育ててくれた今の親に楽な暮らしをさせたいと思う気持ちからだった
そして同じ裏長屋に住む八十吉も流しの鋏砥ぎをしている親を見て、もっとお金を稼げる有職刀剣研ぎ師になりたいと思う

親を思いながら重松たちは健気に奉公に励むが、先輩たちのいじわるやら辛抱を重ねなければならない日々の描写が続く
重松や八十吉ばかりが成長するのではなくて、周りの分をわきまえた大人たちも少年たちのひた向きさを見て自分を変えてゆく姿もあった
それを乗り越えて重松たちは一人前の職人に成長していくのだけれど、生きていくということは幾世の橋を越えていくことなのだ、と今の世の中にも充分通じることなのだと思わせている

















2008年01月05日(土) ・・・・・・・・・・・・・



秋になって
木々が色づき様を変えたら
きっと きっと・・・

冬になって
あたり一面真っ白になったら
私の心も まっさらになるかもしれない

春になって
キレイな花が咲いたら
秘めていた私の気持ちも通じるだろう

そして
夏になったら
あの灼熱の太陽が なにもかも溶かしてくれるだろう

そんな想いで過ごして
もう5年・・・











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