私は格闘技は大嫌いといってもいいくらいなのに、先日突然に現役引退を発表した格闘家の書いた本を読もうと思ったのは、高血圧の薬を処方してもらっている主治医の薦めによる。 主治医が彼のことを格闘家というよりは哲学者だと褒めちぎったからだ そして何より今の私の最大のあこがれでもある四国へんろを果たしていることの興味もあった。 「格闘なんて、勝っても愚劣、負けても愚劣」という彼の言い分は、K−1に代表されるような格闘を戦った者ゆえの思いだろうか。 格闘技界から引退しても「本当の戦いは自分の内側にある。退却ではなく違った方向への進軍」と、リング外への戦いに舞台を移すそうだ。「バックパッカーとして世界中を回ってみたい。環境問題を勉強したい」と、引退後は“旅人”に転身するのだそうだ 今年の春先に予定する最初の行き先としては「古代マヤ文明にひかれている」と、突然の引退発表の日の入場シーンで表現したマヤ文明が眠るメキシコを挙げた。 帰ってきたらまた彼の感じたいろんな思いを本にしてくれるのだろう。
自分に自信があって、自分の強さを信じることが出来る人は、あえて闘う必要もない。そして、そういう人こそ最強の人なのだろう。そういう意味では、僕はまだ最強の境地には至っていない。だから、僕は闘いをつづけていくのだろう。そしていずれは戦わない日が来るだろう。
迷故三界域 悟故十方空 本来無東西 何処有南北 (迷いがあるから壁に囲まれ自分のものに執着するが、悟りを開けばすべて十方は空だ。もともと東も西もない。どこに南や北があるというのか。)
2007年01月18日(木) |
子麻呂が奔る 黒岩 重吾 |
斑鳩宮で犯罪調査の職についている官人、調首子麻呂(つぎのおびとねまろ)の物語 今でいうところの捜査一課の刑事だろう そんな子麻呂が家庭問題に悩んだり、女性の誘惑に負けたりといった日々の仕事ぶりが物語りになっているけれど、私には何故か(・・?・・)読みにくい本だった
時代設定としては厩戸皇子が冠位十二階を定めて後、小野妹子が遣隋使に決まった頃の話になっている 推古女帝のいる明日香と厩戸皇子のいた斑鳩宮とが対立していたのだ 蘇我氏が厩戸皇子をおとしめようとしていたんだ・・ (そういえば少し後で蘇我入鹿が厩戸皇子の子どもである山背大兄皇子を攻めてたなぁ) 厩戸皇子のことはあんまり興味がないので知らなかったけれど(でもこの作家の紅蓮の女王という推古女帝の物語を読んでるはず・・)、まぁ人にはそれぞれの立場でしか分らないいろんな苦悩があるわけで・・
2007年01月15日(月) |
・・・・・・・・・・ |
沈丁花
ふくいくと 母のかおりの 沈丁花 その淡き色 我をなぐさむ
忘れじの 母のかおりの 沈丁花 花の盛りに 旅立ちし母
やさしきは 母のかおりの 沈丁花 母を想いて 私も生きる
安房小湊の漁師の子善日丸は子ども時代から怜悧な美少年であったが世の中の矛盾を痛感して出家する その後 薬王麿、蓮長、日蓮と名を変えて衆生済度を目指し、権力と時流に対抗し法華経こそ釈尊の教えなりと辻説法に挺身していく
日蓮の想いは純粋であったろうけれど、今に伝わる日蓮宗はどうであろうか 南無妙法蓮華経に代表される某宗教団体は、私の目には与党と野党の間をフラフラする浮遊物にしか映らない(言いすぎだろうか・・・) でも やはり文中には人間革命とか祈伏とかいったその宗教団体のきまり文句が時折出てくるのだ
以前TVで見た北条時宗の物語で、鎌倉で辻説法する日蓮に石つぶてが投げられて額から血を流す俳優の顔がふと思い出された
2007年01月05日(金) |
天皇陵伝説 八木 荘司 |
日本の古代史を覆す仁徳天皇陵の秘宝が朝鮮半島から帰ってきた。アメリカに流出した出土品とあわせ、「仁徳天皇陵・奇跡の秘宝展」開催で爆発的ブームをもくろむ新聞社の事業部員権藤と高宮の二人。そして館長秘書の里見あずさ。だが 秘宝は開幕直前、ある右翼団体によって仁徳陵に埋め戻されてしまう。窮地に立つ二人のまえに現れたのが、「北」の秘密指令を受けた工作員だった。さらに主催者のひとりである大仙歴史博物館館長が拉致されたうえに殺害されてしまった。 そして最終的に「奇跡の秘宝展」は開催を中止したのだ。
北朝鮮による一般人の拉致もヒントにしながら、最終的に外貨獲得をもくろんだ北を悪者にしたてた作品になっている。 私は 朝鮮半島からの秘宝とされる瑠璃碗のことは、秋に見た正倉院展に展示されていた美しい緑色の瑠璃碗を想像している。 さらに興味を注がれるのは、一般人の誰も足を踏み入れたことのない世界最大の前方後円墳といわれる仁徳天皇陵の描写が 面白い。
そして 最後はまるでどんでん返しのように権藤と里見あずさが結婚して、北へ向かうのだ。 またしても題名にひかれて読んだ本だったけれど、これはミステリーだったのだ。この本を読むまではこの作者を知らなかったけれど、日本の古代を書いた物語も多いようでなかなかに面白い歴史の解釈を教えてくれそうだ。
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