三歳から六歳までの『春日』という女の子の視点で見た大人の姿が書かれている 自分勝手でご都合主義の大人のその場その場の醜い姿ばかりだ 三歳から六歳となっているが、主人公の春日は大人を実によく見ている だが六歳までの子供がこんなにも文章力のあるはずはないだろうから、やはり作者の子供時代の実体験でとても記憶力がよかったということなのだろうか・・ とすると タイトルは『背く子』となっているが、『背かされる子』か『背かざるをえない子』となるように思う
以前 『母原病』なる言葉が流行ったことがある 子供の異常は母親が原因で、その母親の異常は父親である夫の異常だというものだったと思う 威圧的で妻をセックス付きの家政婦のように扱っている夫は、潜在的に妻を蝕んでいるのだ そんな母親の異常はどうしても子供に向けられるのだ
私の子供時代の両親のことをチラチラと思い出しながら、息子や娘のことも強く感じながら読んだ
お母さん、お母さんっていいにおい、卵焼きのにおいだね。━そんな歌を習ったとき、春日は、家に帰って母親の匂いを嗅いでみたが、卵焼きの匂いなんかしなかった。無臭だった。 母さんお肩をたたきましょう。タントンタントンタントントン。 母さんは夜なべをして手ぶくろ編んでくれた。 雨雨ふれふれ母さんが、じゃのめでおむかえうれしいな、ピッチピッチチャップチャップランランラン。 そんなふうに、いくつも、「お母さん」に関する歌を習ったが、どれも自分の母親にはあてはまらなかった。
私の母はクレゾールの匂いがした。 薬用石鹸に満足できずにクレゾールに手を浸していたのだ。
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