2001年09月18日(火) |
食卓のない家 円地 文子 |
鬼童子信之は、過激派の同志虐殺と、<八ヶ岳山荘事件>に連座して獄中にいる長男・乙彦に面会することも、進んで弁護士をつけることもしない。信之は、息子には息子の、自分には自分の生き方があるという信念を貫き、職を辞すこともなく、マスコミの取材も拒否した。きわめて日本的な糾弾として、息子が残酷な過激派になったのは、両親の育て方に責任があるとする考え方から、抗議の電話がかかり、父親の会社での地位はあやうくなり、母は耐えられず発狂し、妹の縁談はこわれてしまう。そういう変動のさなかにひとり平然としているのは、大学浪人の弟だけである。このばらばらになってしまった家庭を象徴するのが表題でもある「食卓のない家」なのだろう。 別な事件のハイジャック犯人の要求に屈した政府が、超法規命令によって乙彦を釈放し、乙彦が国外に去ったあと、信之は乙彦に隠し子があると知って八方探索して捜しだし北海道の牧場にいる母子を訪ねる。
これは小説だとはわかっているが、文中にある<八ヶ岳山荘事件>は あの浅間山荘事件に題材を求めたことは容易にわかる。だとすると これは私たちが知らないだけでモデルもいるのだろうか・・。 私は今、母という立場にいるがこの乙彦の母のように発狂するまでに至るだろうか。さっさと引越しして世間に背を向けてひっそり生きていくと思う。実際にこの事件が起きたころなら乙彦の妹の立場を理解するだろうか。 ただ信之のように自分には自分の生き方があると、しっかり自分を見つめることは出来ない、それだけは はっきりしている。
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