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2002年10月24日(木) 関西人のイメージ(後編)

というわけで、前回の日記に楽しいメールをちょうだいしました。
「大阪人はいらち多し」を裏付ける証言もちらほら。電話オペレーターをしておられる方によると、「大阪の人は電話を保留にしたら、半数の人が切ってしまうけど、神戸、和歌山あたりのお客様だとのんきに待っていてくださる方がほとんど」だそう。
いや、わかります、わかります。私も仕事で客電を受けますが、「お調べいたします。少々お待ちください」と言おうものなら、「ほなええわ(ガチャン)」。これ、しょっちゅうですもん。
それでは、今日はいただいたメールの中からいくつかをご紹介。

まずは、関西ならではの言い回しに関する疑問編。

関西人は飴のことを『あめちゃん』って言いますよね?なぜ「ちゃん」付けなんでしょう。(Nokkoさん)


決してブリッコをしているわけではないのですが、「あめちゃん」が自然に出てくる女性は多いと思います。私もふつうに「あめちゃん食べる?」と言いますねえ。どうしてなんだろう。
そういえば、こちらでは物に対して「ちゃん」「さん」をつけることが少なくないです。「お豆さん」「お粥さん」「おイモさん」「おいなりさん(いなり寿司)」など。あと、私は生協のことを「コープさん」と言いますが、これは神戸(生協発祥の地)出身だからでしょうか。

大阪出身の友人が「当たり前、当然だ」と言うとき、いつも「あたりきしゃりき、けつの穴ブリキ」と言います。すごく品がないように思うのですが、関西では日常語なのでしょうか。(あっきーさん)


おお、懐かしい。中学時代の国語の女性教師の口癖がこれだったんですよねえ。
「先生、宿題忘れました」
「罰として、イスの上に正座」
「ええ〜〜」
「あたりきしゃりき、けつの穴ブリキや!」
という具合に。男の子も女の子もばんばん使っていました。さすがに年頃になってからは「あたりきしゃりき」まででストップするようになりましたが、心の中では最後まで唱えてました(途中で止められない)。
「あたりまえだのクラッカー」と言う人もいましたが、私はこのCMを見た記憶がないので、「けつの穴ブリキ」派でした。って、文字にすると救いようなく品がないですね。

続いては、関西人のイメージに関する疑問編。

関西の女の子はお茶に誘うと、『そんなお腹にたまらんもんより、うどんがええわ〜』という子が多いというのは事実なんでしょうか?(ふじぽんさん)


これなんかもう、「がめつい」イメージそのまんまですね。
そんなまじめに「事実でしょうか」て。んなワケないでしょ〜。いくらなんでもそこまであつかましくはないと思うわ……。
想像するに、「うどんのほうがええわ」は断る口実ではないかと。まあ、えらい安上がりですけど。
そんなとき、私だったら「お茶よりカラオケにしよ〜」と言いだしそうです。ええ、カラオケは行きずりの人とでもオッケーなくらい好きなもので(もののたとえです。行ったことはありません)。
それにしても、この問いで関西人がどういう生き物だと思われているかよくわかります。

大阪出身の元同僚が言っていたのですが、「今朝、駅の階段で転んだのに東京の人は誰も突っ込んでくれないから恥ずかしかったわー」って、大阪では本当に転んでる見知らぬ人に「なにコケとんねん」とか言うんですか?東京人からすると突っ込まれたほうがよほど恥ずかしいんだけど。(No.6さん)


これもむちゃむちゃやな〜。言うわけない、ない!
たしかに、あまりの居たたまれなさに「お願い、誰か笑って……」と思うときはあります。でもだからって、本当に見知らぬ人から「自分、なにコケとんねん」とかつっこまれたらコワイです。あたりきしゃりき、けつの穴ブリキです。

番外編。東京にお住まいの大阪出身の方から、「どんな話にもオチを期待されて困る」というぼやきが届きました。
「なんでもかんでもオチなんかあるかー!オチのない話かってするわいやー!」とのことです。
関西圏外の方にお願い。私たち、「いつボケよ」「いつつっこんだろ」と考えながら生きてるわけじゃないです。ふつうの人間です。つまんない話いっぱいします。オチなくてもどうか許したってください。

【あとがき】
「初対面の相手に『自分、出身は?』と訊かれたとき、そんなこと知るか!と思いました」というのもありました。なるほど。いまでこそダウンタウンやナイナイが「自分、ええ加減にしとけよ」とか言っているので、二人称としても使うということは認知されているけど、もし知らなかったら「はあ?」ですよね。「私があなたの出身地を知ってるわけないでしょ!」と。
そういえば、関西人でも女性が誰かに「自分」と言うのはあまり聞きませんね。行儀のよい言葉ではないし、きつい印象を与えるからでしょう。私はですね、慎もうと思いつつ、親しみが湧いてくるとつい口から飛び出してしまうんですよね。


2002年10月22日(火) 関西人のイメージ(前編)

関西の人が「オレら、関西人はさあ」と前置きして、本当は一般的でもなんでもないことをあたかも関西の常識であるかのように話すのを耳にすることがある。そんなとき、私はいつも白けた気分になる。
百貨店でも値切るだの、ふたり寄ると漫才が始まるだの、夕食にはお鍋のように一家でタコ焼き焼き器を囲むだの。そんなこと全然ないじゃないかと。
ナンパをするときの常套句が「ネーチャン、茶しばこ」だなんて得々と語っているのを聞いたときは、「嘘をつけ、嘘を!」と叫びたくなった。そんなフレーズ、私はたったの一度しか聞いたことがない(聞いたことがあるのは認める。道頓堀のひっかけ橋で)。
「がめつい」「やかましい」「ガラ悪い」といった関西人のイメージをさらにパワーアップさせ、コテコテの関西人を演じようとしているのを見るとこちらが恥ずかしくなる。
「大阪人vs.東京人」「関西vs.関東」のような東西比較本もやたら出回っているが、読んでいるとたいてい途中で胸やけがしてくる。「こう見せたい」という著者の思惑が見え見えなのだ。
実物大の文化や風俗なら知りたいと思うが、書かれてあるそれらはあまりにもステレオタイプ。両者の突出した部分ばかりを掬いあげ、無理やり典型をつくろうとしているのでつまらない。
というわけで、「関西ちゅうとこは」「大阪人ちゅうのは」とひとくくりにする物言いが好きではないのだが、そんな私でも認めざるを得ないのが「大阪にはせっかちが多い」という点だ。
先日、東京の街を歩いていて、私はとても驚いた。みんな信号を守っているのだ。ほんの五メートルほどの小さな横断歩道でも、青信号に変わるのをちゃんと待っている。車道を横切る人もほとんど見られない。
私は思わず「すごい……」とつぶやいた。

大阪(といっても私の生活圏の話だが)の歩行者の交通マナーはあまりよろしくない。
横断歩道でないところでも平気で渡るし、何車線もあるような大きな道路ではとりあえず半分渡り、センターラインで車が途切れるのを待つ。信号無視はありふれた光景で、車両用の信号が赤に変わるやいなや歩きはじめる“フライング”にいたっては当たり前とさえ言えそうだ。
かく言う私も信号待ちが苦手である。時間がもったいない気がしてならないのだ。あたりに子どもの姿がなかったら、つい渡ってしまう。
梅田や難波にある、あと何秒で青信号に変わるかを教えてくれる歩行者用信号は有名である。いらちな大阪の歩行者の心を落ち着かせるためのものだが、十秒前の表示が出るとみんな一斉に渡りはじめるため、フライングを諌める効果はなさそうだ。
ちなみに、ひと頃話題になった『大阪学』の著者によると、信号が青になるまでちゃんと待つ人は東京では47.3%、大阪は10.5%なのだそう。「大阪人にとって黄信号は『まだ行ける』、赤は『気ィつけて行こ』である」なんて皮肉にもうなだれるしかない。
これは近鉄難波駅にある「高速運転するエスカレーター」であるが、これは他の都市にも存在するのだろうか。さらなるスピードアップを図るため、多くの人が歩いていることは言うまでもない。
大阪人の歩行速度は秒速1.61m。足速で有名なニューヨーカーも香港人もびっくりの堂々の世界一なのだそうだ。ちなみに、二位は東京(1.56m)。このワンツーフィニッシュを「たいしたもんだ」と言っていいものかわからないが。
また、ラブホテルの「御休憩」。関東は二時間いくらだが、関西は一時間だ(そうだ)。関西人はそちらのほうも早いのか。

いろいろな地域にお住まいの方がお読みくださっていると思います。
「お好み焼きをおかずに白いごはん食べるって聞いたけど……」
「客にお釣りを返すとき、店のおばちゃんが『ハイ、300万え〜ん』って言うって本当?」
と以前まじめに訊かれたことがありますが、こういった関西についてのイメージや疑問をお寄せください(次回の日記で紹介させていただく可能性があります)。もしあなたが関西の方なら、「信号無視なんてサイテー」「オレは早ないぞ!」など情報や反論、大歓迎です。

【あとがき】
エスカレーターや動く歩道。ひとりのときは私も必ず歩きます。じーっと立っていられないんですよね。そんなに急いでどこへ行く、とは思うんですが。香港人は歩くのもすっごく速いけど(突進してくる)、驚いたのが駅構内のエスカレーターのスピード。あまりにも速いので、「こんなのお年寄りは乗ったり降りたりできるの?」と思いました。あれぐらい速かったら私も歩かないんだけどな。


2002年10月06日(日) ビデの謎

アンニョンハセヨ〜!
というわけで、週末はソウルへ。韓国は三回目の私だけれど、はじめての経験がいろいろできて楽しい旅となった。
骨まで黒い烏骨鶏のサムゲタン(見た目がとっても悪い)に挑戦したり、ソウルタワーから不夜城と呼ばれるソウルの夜景を眺めたり。しかしながら、今回もっともインパクトのあった初体験はこれだ。

ホテルに着き、ベルボーイに案内されて部屋の中へ。
「こ、ここ……?」
「はい。スイートルームでございます」
私たちが泊まることになっていた部屋の清掃が済んでいなかったとかで、お詫びに部屋をグレードアップしてくれたらしい。大きなソファ三点セットに、絵ハガキを書くにはもってこいの明るいライトのついた広いデスク、奥にはキングサイズのベッドがどどーん。なんてラッキーなんだろう!
小躍りしながら、バスルームのドアを開ける。床も壁も大理石張りのそれはうちの寝室よりずっと広かったのだが、便器までふたつ並んでいるのには驚いた。
思わず夫を呼ぶ。
「いくらスイートっていったってさすがに便器はひとつでいいよねえ。ふたり仲良く並んでどうぞって?ヤダー」
が、照れながら便器をのぞき込んで……あれ?
どちらも真っ白な陶器でできており、一見お揃いのようだが、手前と奥のは少し形が違っている。
「そうか、もしかしてこれ……」
思い出した。この便器状の物体は、これまでも海外で何度となく見てきた。洋式便器からフタと便座を取り除き、流水レバーのかわりに蛇口をつけたものを想像していただきたい。蛇口をひねると、駅や公園にある水飲みのように下から小さな噴水が湧き起こるようになっている。
これがなにであるか。シンガポールのホテルではじめてお目にかかったときは友人とさんざん首をひねった。
「わかった。ここで果物を冷やすんだよ」
「でもお湯も出るようになってるから、違うんじゃないの」
「じゃあ下着の洗濯をするとか?」
「それなら洗面台で間に合うやん。外から帰ってきたら手を洗うみたいに、こっちでは足を洗う習慣があるんとちゃう。ホラ、ちょうどいい高さ」
「便器の隣りにあって穴もない。こっちの人は大のときと小のときと便器を使い分けてるんだよ。で、これはきっと小便器」
この正体が判明したのは、一昨年のイタリア旅行で。荷物を運んでくれたベルボーイに無邪気に尋ね、はじめてこれがビデであることを知ったのである。口ごもる彼に使い方を教えろとはさすがに言えなかったが、私はいつか試してみたいと思っていたのだ。

日本のウォシュレットにも、ビデはついている。ピンクの縁取りの中に女性のマーク。おしり洗浄とは別の、女性専用機能であることは明らかだ。私は使用したことがないけれど、腰掛けてボタンを押せばああなるんだろうなということは察しがつく。
しかし、この独立型のビデはどうやって使えばいいのだろう。扉対面式のトイレに慣れている外国人は和式便器で用を足すときもつい金隠し(前方についた半円状のあれ。この名称まんますぎ!)を背にしゃがんでしまうと聞くが、私もビデを前にはたと考え込む。
やはり洋式便器と同じように、壁を背にして構えるのだろうか。しかし、蛇口は後ろについている。座ってから体を後ろにひねるのはとてもやりにくそうだ。姿勢的には蛇口に向かってまたがるほうが自然である。だが、これにはズボンのとき、全部脱がねばならないという不具合がある。どうしたものか。
そうだ、この部屋にはパソコンもついていたのだ。
早速調べてみると、「バスやトイレが当たり前になかった頃、欧州の女性たちがセックスの後、デリケートな部分を清潔に保つためにそれを利用していたのが起源」とある。その習慣はいまなお健在で、各家庭にはもちろん、部屋にシャワーやトイレのない安ホテルでも、ビデだけはしっかり設置されているのだそうだ(ゆえに、シングルの部屋にはついていない)。
具体的な使用方法まで教えてくれるサイトは見つからなかったが、夫がサウナに出かけた隙に試してみることにする。
とりあえず洋式便器と同じように腰掛けて、蛇口をひねる。キャー、冷たい!お湯、お湯!
うーん、こんな使い方で合っているのだろうか。
ウォシュレットと違って乾燥機能がないため、それ専用のタオルが備え付けられているのだが、なんとなく気が進まない。もしこれを使ったとして、そのタオルはどうしたらいいのだろう。まさか何事もなかったように、またフックにかけるのではあるまいな……。
というわけで、私はトイレットペーパーを使用したのだけれど、便器の向こうのそれをどうやってたぐり寄せたかはご想像におまかせします(っていうか、そんなもん想像しないでください!)。
次回の旅行までに、あれのちゃんとした使い方を知っておきたい。もしご存知の方がいらしたら教えてください。
(あ、次は中国だった。じゃあとりあえずは必要ないか……)

【あとがき】
上記の日記を読んで、ある方が情報を提供してくださいました。あれは水を貯めて使うのだそうです。ということは、おしりを浸すんでしょうか。
また、脇に備えつけられたタオルは使用後、次に使う人のために周囲に飛び散ったしずくを拭き取るためのものとのこと。私は自分自身を拭くためのものだとばかり思っておりました……。
ひとつ賢くなりました。この日記を読んで、私の友人のようにあの中で果物を冷やしたり足を洗ったりしようとする愉快な日本人が一人でも減りますように。ありがとうございました。