今日、ボクはボスとアキコと一緒に今年最後のお日さまが山に沈むのを眺 めた。 みんなが「初日の出」を大切にするように、ボクたちは「最後の日の入り」 も大切にするのだ。
今年はボスもアキコもボクも元気でしあわせな1年を過ごすことができた。 こうして最後のお日さまが無事に山の向こう側に落ちていくのを眺めなが ら今年1年を振り返って、たくさんの自然や人や動物に感謝したのだ。
今年は戌年なので、犬のボクはガンバッた。 こうしてガンバれたのも、みなさんのおかげなのだ。 今年1年、どうもありがとうゴザイマシタ。
来年はさぼらずに日記を書くぞ、と言いたいところなのだが、オリコウな ボクは無理なことは宣言しない。 来年も時々さぼりながら書くことにするのだ。
夕陽が山に沈むと、月が明るく輝き始めた。 来年も良い年になりそうである。 みなさま、どうぞ良い年をお迎えクダサイ。 来年もみなさまにとって良い年になりますように!
実は今日、ボクは生まれてこの方一番すごいプレゼントをもらってしまったのだ。 それは、ボクがモデルの絵なのである。
絵をくれたのはプロの絵描きさんの「ムラタユキトシ」さんなのだ。 アキコはこのムラタさんの大ファンらしい。 もちろん、ボクも大大の大ファンなのだ!
絵の中のボクは色は違うけれど、体つきが間違いなくボクなのだ。 すごいのだ!(シッポもちゃんと右巻きである!)
ムラタさんの絵はどの絵も、1枚の絵からたくさんの物語を想像することができる。 ボクがもらったこの絵も、とても不思議で物語めいているのだ。 何の音もしないような気もするし、波の音や電子音が聞こえてくるような気もする。 今日、ボクは錆びたロボットから受け取った「HELLO」の信号が一体何を言おうと していたのかを考えながら眠ることにするのだ。
ムラタさんのブログ「青葉胡桃堂」にはもっとたくさんの絵や物語が載っているらしい。 「青葉胡桃堂」を見たら、誰でも不思議な世界へ旅立つことができるのだ。
ボクはムラタさんの物語の中で「TUBE」という物語が一番好きなのだ。
今日、ボクは裏庭でまたまた大好きなグルグルを見つけた。 このグルグルはカラスウリのグルグルなのだ。 とても長くて立派なグルグルであった。
これを見たアキコが「ゲンゾー、これは電話のジュワキというのに繋がっ ているグルグルだよ」と言った。 「これを使うと好きな人と話ができるんだよ」と。
ボクはカラスウリにそんなすごい力があるのかと感心して、グルグルの先 に向かって「メリークリスマス!」と言ってみたが、向こう側から何の声 も聞こえて来なかった。 もしや本物の三太クロースがボクの声に答えてくれるのではないかと思っ たのだが、ダメであった。 三太はきっと今忙しいのだ。
明日はひとつ、長谷川平蔵に話しかけてみることにしよう。 平蔵殿も今の季節は火付けの見まわりで忙しいだろうか。
下の写真はボクの新しい芸「ハンセイ」の様子なのだ。 昔、この芸でイッセイをフウビしたサルがいたそうなので、これでボクも イッセイをフウビしてしまうこと間違いなし!
・・・と言いたいところなのだが、実はこれはボクがイタズラをしている ところの証拠写真なのだ。 アキコのポケットの中からビスケットのニオイがするのに、ポケットをガ リガリやっても鼻先を突っ込んでもちっともビスケットに辿り着かないの でボクがやけをおこしているところの写真なのである。
アキコはいつもポケットにボクのビスケットを入れているが、その日着て いる服によってポケットの具合が少しずつ違う。 毛糸のカーディガンというやつを着ている時は、ボクが前足でポケットを ぐいとやると簡単に鼻先がビスケットに辿り着くのだが、このジャンバー というやつはボクがどんなにがんばっても、まったくビスケットに辿り着 くことができないのだ。
寒くなってからアキコは外に出る時いつもこのジャンバーというやっかい な服を着ているのだ。 早く暖かくなってアキコがカーディガンで外に出てくるようにならないか な。
2006年12月20日(水) |
それでも地球は回っている |
今日ボクは大変な事実に気が付いてしまった。 それはアキコと遊んでいる自分の写真を見た時であった。
オリコウなボクは地球が回っているということをガリレオ先生から学んで 知っているのだが、なんと地球はボクを中心にまわっていたのである。 しかも地球はものすごい早さで回っていたのである。 今までどうして気が付かなかったのか、とても不思議である。
大変な事実に気が付いてしまったので、ボクは次の満月に開かれるこの辺 りの野良猫の集会に参加して、この事実を伝えようかと思っている。 最近ボクは猫が歩いていても吠えずにのんびりお昼寝をしているので、猫 たちもきっと集会にボクが参加するのを許してくれると思うのだ。
この写真を証拠写真として提出したら、カンキョウ問題猫学会の幹部も、 テンタイカンソク猫学会の幹部も納得してくれるだろう。 この事実を野良猫の集会で発表したら、ボクはこの辺りの野良猫の尊敬を 受けてしまうこと間違いなしなのだ。
昨日、日記をさぼってしまったので今日(20日)になってから書いて いるのだ。
昨日の夜は寒かった。 あまりの寒さにアキコもガラス戸の向こうからボクを見ているだけで戸 を開けないし、ボクもアキコが外に出てくるまでは小屋から一歩も出な いぞ、と決めたら一歩も出る機会がないまま1日が過ぎてしまったくら いである。
昨日の夜、小屋の奥に丸くなって眠ったらボクは昨日の昼間に何があっ たのかもすっかり忘れてしまった。 昨日の寒さでボクの脳みそ電池が冷えすぎて、記憶メモリに何も書き込 まれないまま終わってしまったのかもしれない。
アキコに「昨日の日記を書いて」と言われたボクは何も思い出せなくて 少し固まってしまったのだので今日の日記は「固まったボク」の写真つ きで載せてもらうことにしよう。
今日は久しぶりに晴れてポカポカとても気持ちがいい日だった。 ボクは久しぶりにベッドにごろんと寝転がってひなたぼっこを楽しんだ。
久しぶりに暖かくて気持ちがいいので、この辺りに住んでいる野良猫たち も今日は居心地のいいひなたぼっこポイントを探してうろうろと歩き回っ ているようだった。
今日だけでも3匹の違う野良猫がボクの庭をうろうろしていたが、ボクは ひなたぼっこをしたまま静かに小春日和を楽しむことに決めたので猫たち が歩き回っても気にしないのだ。
猫がどかどか歩くような動物だったらボクのひなたぼっこが邪魔されるか もしれないが、猫たちはまるで足音を立てずに歩くので、ボクのひなたぼ っこの邪魔にはならないのだ。
猫がうろうろしていても気にしない犬というのは、何だか余裕のある賢い 犬のように見えないだろうか。 猫たちも少しはボクのことを尊敬しただろうか。
今日ボクは散歩の途中でとてもかわいらしい木を見つけた。 それはとても小さな「万両」の木なのだ。
この万両はまだこんなに小さくて葉っぱも3枚しかないのに、立派に実を つけていたのだ。 まだまだ万両にはほど遠い「二両」だが、小さい体なのに大きな木と同じ 大きさの実をつけていた。
こんな植物を見つけるとボクはとても勇気がわいてくる。 ボクも「中型犬の小サイズ」と言われているが、大きな犬にも負けないく らい頑張れる気がするのだ。
この小さい万両には頑張って大きく育ってほしい。 ボクは散歩に来るたびにこの万両を応援することにするのだ。
今日ボクは散歩の時、久しぶりにヤブの中に入ってみた。 少し前までヤブはものすごくガサガサしていて、緑のツルや枯れた枝など がゴソゴソと絡みついていたものだが、今日はツルや枝が減ったためか、 何となく歩きやすいヤブになっていた。
スカスカ風通しの良いヤブの中を歩いていたら、いつぞや花が咲いたのを 見たバラの木に実がなっているのを見つけた。 バラの実はきれいな朱色のとてもかわいい丸い実だった。
ボクが近くに寄ってみると、バラの実たちは「いや〜ん」とかわいい声を 出して恥ずかしそうに寄り添った。 小さくて紅くてかわいい実だな、と思ったとたん、アキコがバラの実を摘 んでしまった。 せっかく実ったバラの実を摘んでしまうとはひどいアキコである。
アキコは最近、お引っ越しをして大きな庭ができたお友達のために野草の 種を集めているらしい。バラの種もそのお友達に送るのだそうである。 でも、ボクは心配である。 アキコが集めた野草の種はモジャモジャのツルだったり、トゲトゲのバラ だったり、庭に咲いて嬉しいものとも言い難いのだ。 お友達はアキコにもらった種を撒く時は気をつけた方がいいのだ。 そのまま撒くと、きっとボクの散歩道みたいにガサガサの庭になってしま うのだから。
今日は雨がぱらつく1日だった。 アキコとママはカツウラというところの朝市に行って来たらしいが、ボク へのお土産はなかった。 ボクは朝市のお魚は食べないのでお土産がなくても別に寂しくないのだ。
それよりボクは、庭に生えている柿の最後の1個がとても気になっている のである。 この柿は鳥専用の柿の実で、鳥たちが代わる代わる食べに来ているのだが、 いよいよ最後の1個も残り半分になってしまったのだ。
柿の木に来る鳥たちは、残り半分の柿を奪い合ってガツガツ食べるのかと 思っていたのだが、どの鳥も自分の食べたい分だけをつついては満足して 飛び去って行く。 ボクなら誰にも取られないように、柿の横で番をするところなのだが、鳥 たちはトモダチの分の柿をきちんと残して去って行くのでとても偉い。
ボクもトモダチが遊びに来たら、ボクの分のビスケットを少し分けてあげ られるくらい余裕のある犬になってみたい。 しかし、ビスケットは誰にもあげたくないのだ。
そういえば今日はアキコのお姉ちゃんのサチコさんのお誕生日なのだ。 サチコさん、お誕生日オメデトウ! サチコさんにならボクのビスケットを少し分けてあげようかな。
2日も日記をさぼってしまったのはアキコのせいなのである。 12日にボスとアキコはまたボクを置いて、アキコの生まれ故郷のいわき に行って来たらしいのだ。 その後、アキコは「疲れたっぺよ〜」と言ったまま日記をさぼっていたの である。
ボスとアキコはいわきのオトモダチがやっている「Zitti」という雑貨屋 さんに行って来たらしい。 今度、そこで石けんを売ってもらうのだそうである。 ボスもアキコもこの「Zitti」さんのお店の居心地がよすぎて夜遅くまで 楽しんでしまったらしい。
アキコは「Zittiさんには面白い雑貨がたくさんあっでぇ〜、薪ストーブ があっでぇ〜、ストーブの前にかわいい猫がたくさん寝てるんだっぺ〜」 と言っていた。
何やらアキコはいわきに帰って「いわき弁」というのを習得してきたらし い。アキコはもともと「いわき弁」だったから、習得ではなく「ぶり返し」 とでも言った方が良いのだろうか。 アキコが「ゲンゾーもいわき弁で日記を書いだらいいべよ」と言っていた が、ボクはチバの犬なのでいわき弁は難しいのだ。 アキコがいわき弁で話をする時は、写真のようにじっくり聞き耳をたてな いと聞き取れないのだが、ボクも「いわき弁」を習得して世界初の「チバ 弁といわき弁を話す犬」になってみようかな。
「Zitti」さんはいわき市の泉にアリマス。 いわきの人はぜひ行ってみてクダサイ。
ボクの散歩道もだいぶ冬の景色になってきた。 この時季は農家の人たちが田んぼのまわりを草刈りしてきれいにするの で道ばたに生えていたススキやセイタカアワダチソウも姿を消して冬の 土が顔を出し始めるのだ。
それでも田んぼの中に稲刈りの後生えてきた小さな稲の二番穂はそのま ま残っている。 これを目当てにたくさんの小鳥が集まって来るのを見るのは楽しいのだ。
今日も散歩の途中でたくさんの鳥たちに会った。 一番大きいのはアオサギくん、一番小さいのはスズメくんだった。 中くらいの名前を知らない鳥たちもたくさん集まっていた。 アキコは「鳥の写真を撮ろうと思ったのに、ゲンゾーがいるからみんな 逃げちゃう」と悔しそうであった。
アキコはすぐに写真の話をするのでイヤになってしまう。 鳥の写真を取り損ねた代わりに今度はボクに鳥の変装をさせやしないか と少し心配である。
今日、ボクは散歩道で写真のふわふわを見つけた。 これはノゲシのふわふわなのだ。 この辺りのノゲシは今花も咲いているが、ボクは花よりもこのふわふわ と葉っぱの形に夢中になった。
このふわふわは雨に濡れるのが大嫌いなふわふわらしいのだ。 大きな葉っぱを傘にして傘の下にちょこんと綿毛を広げていたのだ。 なんとも上手に傘をさしたものである。
これを見たアキコは「シェーだ!」と言った。 それを聞いたボスも「本当だ、シェーだ!」と言った。 ボクには何のことかさっぱりわからない。 ボスの話によると「シェー」とは「おフランスかぶれの出っ歯で変なヒ ゲの男」の名セリフらしい。
それにしてもこの男、フランスかぶれなのに一人称が「ミー」らしい。 フランス語で「私」は「ジュ」だ、とボスもアキコも言っているので、 この男は「シェー」を言うよりも「ジュ」の練習をした方が良いのだ。
この前、三太クロースの変装をさせられた時はちょっと大変だったが、 三太のヒゲはとても気に入った。 ヒゲをつけた「ヒゲンゾー」の写真を見たいというオトモダチがいるの で、今日もボクはお気に入りのヒゲをつけて写真を撮ってもらった。
他の変装の時、ボクは頭をブルブル振って変装を全部取ってしまうのだ が、ヒゲの場合は別である。 このヒゲは格好いいだけじゃなく暖かいので、いつまでつけていても良 いと思っているのだ。
今日も冷たい雨が降って寒い1日だったが、ヒゲをつけたヒゲンゾーは 寒さも平気なのだ。 水たまりができそうな濡れた土の上でだって、平気でオスワリできてし まう。 残念ながら写真撮影の後、アキコが「ヒゲが汚れるから」とボクのヒゲ を取ってしまったが、汚してもいいなら冬の間ずっとヒゲをつけたヒゲ ンゾーのまま暮らしたい。
今日は冷たい雨が降っていてとても寒いのだ。 でも、雨にも寒さにも負けないオリコウな犬を目指しているボクは、こ んな日でも精一杯遊ぶ。
今日も「おさびし顔」の練習をしながらオルスバンをしていたボクは、 庭の隅に菊の花が咲いているのを見つけた。 この季節は数え切れないほどの菊がどこにでも咲く。 菊の種類もたくさんあるので、もうこの菊が何という菊なのかもわから ないのだ。
でも、雨に濡れた菊はとてもきれいだった。 菊の花びらがこんなに雨をはじくものだとは知らなかった。 細かい雨粒が花びらに落ちては大きな水滴を作って落ちていくのを見る のは飽きなかったので、ボクは「おさびし顔」の練習も忘れてしばし菊 の花に見入ってしまったほどである。
花びらについた水滴を舐めてみたら、とてもおいしい水だった。 この菊の下にボクの水皿を置いておいたら、菊の風味のおいしい水が飲 めるかもしれない。 雨の日はここに水皿を置いてくれるようにアキコに頼んでみよう。
ボクは番犬の他に、ボスとアキコがやっている石けん屋の営業部長もして いるのだが、今日の部長の仕事はキツかった。 朝から仕事のためにさんざんバカな格好をさせられてしまったのだ。
ボクは日本の犬なのに、ヒゲをつけられて三太クロースというものにさせ られたり、トナ飼いにさせられたりしたのだ。 特にこの三太クロースは赤い服を着ていないといけないというので、体に 赤い変てこりんな服を巻き付けられて大変苦労した。
ボクは異国の祭りの格好をするのは本意ではないのだ。 この写真を撮る時も、ボクは心の中は「遠山の金さん」であった。 巻き付けられた赤い服から肩を出し、眉間にシワを入れて「この桜吹雪を 散らせるものなら散らしてみぃ〜!」と足を前に出しているつもりなのだ。 三太クロースよりも遠山の金さんの方がずっとカッコイイのだ。
でも、この白いヒゲは結構気に入っている。 写真を撮り終わった後、服も帽子もすぐに振り落としてしまったが、ヒゲ はしばらくの間つけたまま過ごしていたのだ。
今日、アキコはボクを置いて写真撮影に行ったらしい。 昨日出かけた時に野生のサルの写真を取り損ねたのをボクのせいだと思っ ているらしく「ゲンゾーがいると野生動物が驚くから今日はオルスバン」 と早くもオルスバンを命じられてしまったのだ。 (また「おさびし顔」の練習をしなければ・・・。)
今日ボスとアキコはアタゴ山という山へ行ったらしい。 アタゴ山へ行ったと言っても、昔ボクたちが住んでいた山の土地から少し 上へ行くともうアタゴ山だから、わざわざ出かけたというほどのことでも ないのだ。
チバケンというところには高い山がないらしい。 チバで一番高い山がこのアタゴ山で、ヒョウコウは408メートルなのだ。 アタゴ山が一番高い山だとしたら、ボクが昔住んでいた場所もチバの中で はかなり高いところになるのだ。 もしかしたらボクはチバで一番高いところに住んでいる犬だったかもしれ ないのに、ジタクに下りてきて残念なことをしたのだ。
アタゴ山の大部分はジエイタイの基地の敷地らしいので、てっぺんまでは 行けないらしい。 でも、てっぺんまで行かなくても写真のようにカモガワが見渡せるのだ。 カモガワは山と田んぼばっかりであるが、ボクはこんなところが大好きな のだ。
昨日の「おさびし顔」がきいたのか、今日はアキコが遠くの写真撮影に ボクを誘ってくれた。 15分くらい車で走った後、アキコが車を停めた場所はモミジがたくさ ん生えた道の横だった。道の下に川が流れていた。
アキコが「川に下りてみよう」と言うので、ボクとアキコはそろそろと 川へ下りたのが、川の流れを見たボクはびっくりした。 川の中にきれいなモミジの葉がたくさん流れていて、川が赤や黄色の葉 で飾られていたのである。
川の水はとても澄んでいて、川の底にたまったモミジの葉っぱもとても きれいに見えた。 ボクは嬉しくて赤や黄色の葉っぱが流れる川の横をぐるぐる走り回った。
きれいな色をしたモミジの木はとてもきれいだが、こうして落ちた葉が 流れる川の方がずっときれいなのだ。 こんなにステキなところに連れて来てもらえるのなら、ボクはまた練習 を積んでとびきりの「おさびし顔」をして見せることにしよう。
この頃ボスもアキコも忙しい。 ボクは毎日オルスバンばかりでつまらないのだ。
最近ボクはオルスバンをしながら寂しい顔を練習している。 ボクはアゴが出ているので「笑い顔」も得意だが、目が三角なので「寂し い顔」も得意中の得意なのだ。 アキコが出かける時にとびきりの「おさびし顔」をしたら、アキコはきっ と出かけるのをやめてボクと遊んでくれるに違いない、と確信しているボ クは毎日独りで「おさびし顔」の練習をしていたのだ。
今日ボスとアキコが出かける時、アキコがボクの写真を撮ろうとしたので ボクはここのところ練習を積んだとびきりの「おさびし顔」をしてみせた。
ボクの作戦は大成功! 出かけようとしていたアキコは「ゲンゾー、どうしたの?」とビスケット を持ってまたこちらへやって来たのである。
しかし、ビスケットを見たボクの目は輝き、喜びのあまりシッポもちぎれ るほどに振ってしまった。 アキコはボクに追加のビスケットを1つくれると「オルスバンがんばって ね」と言って出かけてしまった。
「おさびし顔」は完璧だったのに、その後がよくなかった。 今度はビスケットを見ても寂しい表情を続けられるくらいの精神力を持て るようにオルスバンの間ガンバルことにしよう。
ボクの庭の入り口にスイセンの花が咲いた。 スイセンはとても香りの強い花なので、咲いたとたんにどこかでスイセ ンが咲いたことがわかるのだ。 ボクの住んでいるところでは、冬になるとどこにでもスイセンが咲いて 春先まで楽しめるのである。
ところで、スイセンは中近東あたりが原産らしい。 中近東あたりがどんなところなのかボクは知らないが、アキコが「意外 だわね」と言っていた。 スイセンは原産地からシルクロードを通って中国に渡り、そこから日本 に入って来たらしいのだ。
スイセンの名前は水辺に咲く気品のある姿を「水辺の仙人」に例えてそ んな名前がついているらしい。 ボクは仙人がセンニンソウのモジャモジャみたいな姿だとばかり思って いたのだが、気品のある姿を仙人に例えることもあるのだと感心した。
「水辺に咲く気品のある花」なのに、アキコはスイセンの花を見ると とあるペンギンのキャラクターが「フェッフェー」と言いながら口をラ ッパのように尖らせたところを想像するらしい。 確かにラッパを吹き鳴らしているように見えなくもないのだ。
今日ボクはボスとアキコと一緒に山へ出かけた。 昨日の夜は風も強くてとても寒かったが、今日はポカポカと暖かくて本当 に気持ちのいい日である。
いつものようにボクがガサガサの草むらを歩いていると、地面の上に赤く てきれいな実がなっているのを見つけた。 これはボクがよく知っているフユイチゴの実なのだ。 ボクがこの山に住んでいた頃、冬になるとよくアキコと一緒にこれを採っ て食べたのである。
フユイチゴは心臓型のようなゴソゴソした葉っぱをつけたツルが地面の上 を這うように伸びるのだ。 だいたいのイチゴは春から夏に実がなるのに、これは寒い時季に実がなる イチゴである。 暖かい間は地面すれすれのところでぐったりしているのに、冬になると急 に元気になって赤くてきれいな実をたくさんつけるのである。
この実は甘くておいしい実なのだ。 さっそく・・・と思ったらカメラを構えたアキコにぐいと押されてしまっ た。何でもまずは写真に撮らないと気がすまないアキコには本当に困って しまう。
今日、夜になってから納屋からゴソゴソと音が聞こえてきた。 「納屋にネズミがいるんじゃないか」と不安になったボスとアキコが 廊下のガラス窓から納屋の中を覗き込んでみたら、写真の猫が暖かそ うに納屋の特等席を陣取って眠っていたらしい。
「納屋で野良猫が寝ているぞ!」と言ってアキコはカメラを持ち出し、 窓ごしにまぶしいフラッシュまで焚いて写真を撮ったが、猫は1ミリ も動かなかったらしい。 少しだけ目を開いて「うるさいな」という顔をして、またそのまま眠 ってしまったそうである。
アキコに写真を見せてもらったボクはこの猫を納屋から追い出すべき かどうか悩んでいる。 この寒空の下にこの猫を追い出してしまうのはあまりにもかわいそう なので良識派のボクは迷うのである。
今日は特別に猫をこのまま眠らせてあげよう。 こんな寒い夜はボクだって暖かい小屋の中で眠るのが一番幸せなのだ。
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