今日ボクがダラダラしていたら、アキコが庭に出てきて「写真を撮るよ」 と言った。 そして「今日はひとつ、格好いいポーズで写真を撮ってみよう」と言い出 したのだ。
ボクが普通にオスワリをしていたら、アキコは「もう少しこっち向いて」 「左足を前に」「アゴを引いて」とボクの座り方にたくさん注文をつけた。 ボクはただオスワリをしているだけでもカッコイイ犬なのに、こんなに注 文をつけるとはわがままなカメラマンなのだ。
でも、アキコに言われた通りにポーズを決めて撮った写真はなかなか格好 良い写真であった。 こうして見ると、ボクもなかなかの犬っぷりなのだ。
でもアキコがこの写真につけたタイトルは「チクチク大王」だった。 せっかく格好良くキメたのに、体にチクチクがたくさんついたままなのは 失敗であった。
2006年11月29日(水) |
セイタカアワダチソウ |
毎年秋になると必ずあちこちに咲くので日記に書くまでもない花の代表 がこのセイタカアワダチソウなのだ。 この草は根っこから他の植物の生長を邪魔するブッシツを出して、自分 たちだけ勢力を伸ばそうとするズルいヤツなので、ボクはあまり好きで はないのだ。
この草はアメリカからやって来た草らしい。 来たばかりの頃は黄色くてきれいな花が咲くというので、喜んで植えた 人もたくさんいたらしいのだ。 この草がたくさん咲いている土手は確かに黄色に埋め尽くされてとても きれいである。 近くで見てもなかなかかわいい花なのは間違いないのだ。 でもやっぱり他の植物を邪魔するブッシツを出すというのが何だかイヤ である。
こんなものがアメリカから入って来て・・・と快く思っていない日本人 もいるらしい。 でも、日本からアメリカに行った「クズ」もアメリカ人から相当嫌われ ているらしい。 クズがアメリカに渡った最初の頃はアメリカでも「崖崩れを防ぐ草」と してクズが喜んで植えられたらしいのだ。 でもまわりの木も覆い尽くすほど強いクズの生命力にアメリカは閉口し ているらしい。
もともと自分たちのまわりにない植物が海を渡って繁殖するというのは 自然ではないことなのでよくないとボクはいつも思っているのだ。 セイタカアワダチソウもクズも、自然を無視したことのバチなのだ。
昨日の夜、庭にカエルくんが遊びに来てくれたのに、朝になったら少し 寒くなっていてまたカエルくんはどこかに行ってしまった。 せっかく出てきたのにボクとおいかけっこもしないでいなくなってしま うとは冷たいカエルくんなのだ。
仕方がないので今日ボクはどこかにまだカエルくんが残っていないかと 探し回った。 カエルくんは見つからなかったが、ヤブの中でヤブマメの実がなってい るのを見つけた。
ヤブマメの実は表面に血管が浮いたような模様がついていて、少しだけ 気持ちが悪かった。 でも、ボクの好きなクルクルのツルから小さな実がぶら下がっている様 子はなかなかかわいかった。
この豆が落ちたら、また来年もここにヤブマメが生えるだろうか。 ヤブマメの花は薄紫で小さい素敵な花なので、来年は花の時期に見つけ て日記に書きたい。
ここのところ寒くなってきたと思っていたら、今日は夕方からなま暖か い風が吹いてきて、空気がぬるくなった。
ボクが雨の中で遊んでいたらアキコが戸を開けて「寒いから雨に当たっ ちゃだめだよ」と言った後、「あれ、寒くないね。でも外で遊んじゃだ めだよ」と言って家に引っ込んだ。 寒くても寒くなくてもボクは雨の中で遊んではいけないらしい。 オリコウなボクはアキコの前ではきちんと屋根の下に入るのだが、アキ コが引っ込んだ後はまた外に出て遊ぶのだ。
だって、暖かい雨が降り始めたら庭にカエルが遊びに来たのだ。 1匹ではなく、何匹もである。 カエルくんたちはきっと土の中で眠っていたところに暖かい雨が降った ので、春が来たと思ったのだろう。
久しぶりにカエルくんたちと再会したので、ボクはおいかけっこをしよ うと待っていたのだが、カエルくんたちはまだ寝ぼけているのか、あま り活発ではなかった。 そのうち暗くなってしまったので、今日はおいかけっこをすることはで きずに終わってしまったのだ。 明日も暖かかったらカエルくんたちと遊びたい。 カエルくんたちがまだ眠らないでいてくれるといいな。
今日ボクはヤブの中でヤマノイモのムカゴを見つけた。 最初は何か気持ち悪いものが茎にくっついていると思ったのだが、アキコ が「ムカゴだ!」と目を光らせたのでこれが食べられるものだということ を知ったのだ。
このムカゴは「むかごご飯」というものにして食べるのだそうである。 今日はとことんムカゴを見つけて大量の「むかごご飯」を作るのかと思っ たのだが「今日は忙しいからムカゴ探しができない」とアキコはとても残 念そうであった。 ボクもぜひ「むかごご飯」を食べて、ボクの好物リストにむかごご飯を入 れてみたかったのだが、食べられなくて残念なのだ。
それにしてもアキコが食べられる野草を見つけた時の目の輝きはすごい。 いつもボクにビスケットを見せるとボクの目が光る、とアキコは言ってい るが、食べられる野草を見つけた時には自分の目だって光っているのだ。 アキコの前に食べられる野草を吊して歩けば、夜の散歩だってできてしま うのではないかとボクは想像しているのだ。
今日は暖かくて気持ちのいいお昼寝日和であった。 ボクはポカポカのお日さまと仲良くなって、ベッドの上でお昼寝を満喫 した。
この頃ボクはお昼寝から目覚めたら山の色を楽しむことにしているのだ。 夏の間は空の色や雲を楽しんだが、今は山の色を楽しむのが一番面白い。 お日さまが当たる角度によっても山の色が違って見えるので、1日の間 でもお昼寝から目覚める度に山の色は変わって見える。
ボクはお昼寝から目覚める度に「ああ、山がきれいだな」と思い、また 山を眺めている間に眠りに誘われることを繰り返して1日を過ごすのだ。 今日も1日、山を眺めたり眠ったりしながらボクは楽しく過ごすことが できた。
明日もまた今日とは少し違う山の色を楽しみながら過ごすことにしよう。 明日も暖かくて良い天気になりそうだとアキコが言っていた。 この頃「キンロウの日」が続いているらしいボスとアキコも明日は一緒 に山を眺めて過ごすことができたらいいな。
今日は雨の予報が出ていたらしいが、午前中から日が射して気持ちのいい 1日だった。
昨日「キンロウの日」で忙しかったボクは、今日はゆっくりお昼寝を楽し んだ。 庭のベッドにごろんと横になって暖かいおひさまを楽しんでいたら、庭の ボケの花が咲いているのを見つけた。 このボケの花は年中、決まった時季に咲くのではなく、気が向くといつで も花を咲かせる「四季咲き」の花なのだ。 (四季咲きだからと言って「四季ボケ」と呼ぶと「色ボケ」と間違われて 可愛そうなので、「四季ボケ」と呼ぶのはやめておこう。)
この木は今年の春、桜と同じ時期に花を咲かせて失敗した木である。 桜と一緒に咲いてみたら華やかな桜と比較されて、自分が脇役くらいにし かなれないことを悟ったのだろう。 今までずっと「どうしたら自分が花形になれるか」を考えていたのかもし れない。 今回は花が少なくなったこの時季にきれいな花を咲かせて見事にボクを喜 ばせてくれた。
ボケの作戦は大成功である。 春に咲いた時は「地味だ」と思ったが、こうして見るとなかなかステキな 花だと気づく。 白から薄紅色に変わっていく花びらの感じがとても良いのだ。 せっかく四季咲きのナイスなヤツなのだから、これからも花の少ないこん な時季を狙って花を咲かせてほしいものである。
今日は「キンロウカンシャの日」でみんなお休みだったらしい。 「キンロウカンシャの日」というのは「勤労を尊び、生産を祝い、国民 が互いに感謝しあう日」ということらしい。 ボスとアキコはお休みではないどころか、いつもよりも忙しそうにして いたので、今日は「勤労しろ!」の「キンロウの日」だったようである。
キンロウをたっとぶ生産祝いの国民犬のボクは互いに感謝しあいながら どこかに遊びに行きたいと思っていたのだが、あいにくの冷たい雨でど こにも出かけることができなかった。
今日の雨は特別に冷たい雨だった。 風も強くて、散り始めた木の葉がボクの庭にもたくさん飛んできた。 風で枯れ葉が飛んで来る度に庭の鶏たちが驚いてギャーギャー騒いだ。 鶏が騒ぐ度に番犬のボクは何かあったのかと外に出てみたのだが、野良 犬が来たわけでも何でもなく、ただ枯れ葉が舞い飛んでいるだけなので ある。
おやすみ犬のはずだったボクも、強風と雨のせいで今日はゆっくり小屋 でお昼寝をすることができなかった。 今日はボクにも「勤労しろ!」の「キンロウの日」だったのだ。
ボクの庭の隅にツツジやボケの木があってよく見えないのだが、最近お 隣の畑の隅にきれいな紫色のものがちらちら見えていた。 ボクは紫色のものに気づいてからずっと、あの紫色は一体何なのかがと ても気になっていたのだ。
今日、ようやくアキコがそれに気づいて「あれ、何か紫色のものがある」 と散歩の時に脇道にそれてくれた。 お隣の畑の隅に咲いていたのは写真のノコンギクであった。
ノコンギクというのは野に咲く紺色の菊のこと、つまりはそのまま名前 の通りの菊である。 この季節、この辺りではどこにでも菊の花が咲いているので、ボクは気 になっていた紫色のものが菊の花であったことに正直少しがっかりして しまった。
でもよく見たらこのノコンギクはとてもきれいな色であった。 ノコンギクには色の薄いのから濃いのまでいろいろあるが、この花たち は特別に濃い色をしていて、お花屋さんで売っている花にも負けないく らいきれいである。 この菊たちはボクを見て「なんだ、犬か」と思っていないような顔をし ている。 お日さまの方を向いて笑っているような菊たちをほんの少しでも「また 菊か」と思ってしまったボクは自分が恥ずかしいのだ。 ボクもこの菊たちを見習ってもっとヨイコにならなければ。
今日は晴れてとても気持ちがいい日だった。 ボクが庭のベッドの上で気持ちよくひなたぼっこをしていると、アキコが 野草を見に行こうとボクを誘ったので、ボクは大喜びで散歩に出かけた。
いつもとは違う山沿いの道を歩いていたら、ヤブの入り口でヤマユリの種 を見つけた。 ヤマユリは枝分かれしてたくさん花を咲かせるので、種もたくさんついて いた。
ヤマユリの種は熟れて入れ物が割れ、レースのようなものが見えていた。 太ったアキコがレースのついた洋服を着たらこんな風になりそうである。 入れ物を上から覗いてみたら、中に驚くほどびっしり種が詰まっていた。 風で入れ物が揺れると中から種が少しずつ飛び出す仕組みなのだ。
ヤマユリがこんなにたくさん種をつくる植物だとは知らなかった。 これだけたくさんの種が落ちたら、もっともっとヤマユリがたくさん生え てヤマユリ畑ができそうなのに、ヤマユリ畑ができないのはなぜだろう。
アキコはこの種を採って、庭にヤマユリ畑を作るのだと言っていた。 ボクの庭がヤマユリ畑になったら嬉しいけれど、果たしてヤマユリ畑はで きるのだろうか。
降っていた雨が止んで、今日は久しぶりに太陽が顔を出した。 昨日から冷たい雨が降っていたので、庭の草たちがみんな枯れてしまう のではないかとボクは心配していたのだが、庭の草たちはこのくらいの 冷たい雨で枯れてしまうようなことはなかった。
寒くなってきてもボクの庭のクローバーはまだどんどん新しい葉っぱを 出している。 そういえば真冬に雪が積もった時だって、このクローバーたちは雪の間 から顔を出していたのだ。
寒い時季に備えてクローバーたちにも特殊肥料を施しておいた方がいい かもしれない、とボクが後ろ足を上げたらアキコが「いやだよ!」とボ クを制した。 そういえばボクの特殊肥料はかけた後葉っぱがみんな枯れてしまうのだ った。
クローバーにはもっともっと元気になってほしいが、ボクはおとなしく 見守るだけにしておこう。
今日は1日冷たい雨が降っていた。 冷たい雨が降る時でもボクは元気に庭をうろうろするのだ。 てっぺん杉の近くの小さな杉の木に近づいた時だった。 ボクはセミの忘れ形見を見つけたのである。 この抜け殻は冷たい雨の中でも、まだ生きているようにしっかり枝に つかまっていた。
この抜け殻の主はもうこの世にはいないに違いないのに、こうして抜け 殻だけがしっかりと枝につかまってこの世に残っているというのはとて も不思議なものである。 たいていのセミの抜け殻はもう落ちて跡形もなくなっているというのに この抜け殻の主はよほど強情なセミだったのだろうか。
いや、きっとこれはこのセミがこの世に生きた証なのだろう。 枝にしっかりつかまってこんな寒い季節にまで残るくらいの抜け殻の主 だ、きっと一生懸命生きたセミに違いない。 久しぶりにセミの抜け殻を見つけたので食べてしまおうかとも思ったが、 こんな季節にまで残っているのを食べてしまうのは少し気がひけたので、 ボクはこのままセミの忘れ形見として抜け殻の力が尽きるまでここに残 しておくことにした。
ボクは植物が何かにぐるぐる巻き付いた形が大好きである。 アキコも植物のぐるぐるが大好きだそうだ。 散歩の途中に植物のぐるぐるがあると、アキコとボクは立ち止まって ぐるぐるを楽しむことにしているのだ。
今日は川のそばでアケビとスイカズラがぐるぐるを作っているのを見 つけた。 アケビがスイカズラに巻き付いているのか、それとも逆なのかはよく わからなかったが、今日見つけたぐるぐるはとても美しいぐるぐるで あった。 どちらもぐるぐるが得意な植物なので、こんなに見事なぐるぐるを作 ることができたのだろうか。
そういえば昔、アキコのママに「シッポが左巻きの犬は賢い犬だ」と 言われて、アキコがボクのシッポを確かめたら見事に右巻きだったこ とがあった。(右巻きだってオリコウなのだ。) 今日見つけたぐるぐるは左巻きだからきっと賢い植物だな。
アキコがいつも「工房に行く途中の家にゲンゾーによく似た犬がいる」 と言っているので、ボクは一度会ってみたかった。 今日はアキコが「車の中から写真を撮ってきたよ!」というので、ボク はわくわくしながら写真を覗き込んだ。 ところが、写真に写っていた犬はボクにちっとも似ていないのである。
口のまわりは確かに黒いが、それ以外はちっとも似ていない。 似ていない、とにかく似ていないのだ。 写真とボクを見比べたアキコも「あれ、あんまり似てないね」と急に意 見をひるがえした。
ボクの顔と写真の犬の顔を比べてみたら、顔の縦と横のバランス、耳の 角度、口元、どれをとっても写真の犬の方が少しボクより男らしい顔を しているように思うのだが、これは気のせいだろうか。 ボクも眉間にシワを寄せ、口をきちんと閉じていればもう少し男らしい 顔になるだろうか。
そんなことを考えていたら、アキコが「ゲンゾーの方がかわいい顔だっ たよ」と言ったのでボクはとても嬉しかった。 明日から無理をして眉間にシワを寄せたり、無理に口を閉じたりしなく ても大丈夫だとわかって、ボクはとてもほっとした。
今日はぽかぽかと暖かくて気持ちのいい1日だった。 今日は珍しくボスがボクにおいしいものをくれた。 ガリガリするハミガキおやつなのだ。
ボクはビスケットをもらった時は目の前でバリバリ食べてしまうのだが、 食べ終わるまでに時間がかかりそうなものは草むらに持って行ってのん びり楽しむことにしている。 日のあたる草むらに隠れておいしいものをガリガリ食べるのはとても幸 せなのだ。
今日もボスとアキコは工房というところへ出かけて行ったが、ボクには おいしいガリガリとポカポカお日さまがあるのでちっとも淋しくなかっ た。 今日はポカポカ、ガリガリ楽しく過ごした。
おいしいガリガリを食べながら庭の草むらを眺めたら、草むらもだいぶ 茶色に変わってきているようだ。 まだまだこうしてポカポカのお日さまを浴びて過ごしたいので、冬にな るのをもう少し待ってくれるといいな。
夕方、空が紅いと思って見上げたら雲が紅く染まっていた。 アキコが空の写真を撮ったが、実際に見る色と違って面白くないと言っ ていた。
アキコは何でもすぐ写真に撮るが、ボクは写真には写らないものは世の 中には多いと思う。 アキコとボクでこの空を見上げた時に頬をなでて通り過ぎた風の感触も どこからか聞こえてきた鳥の声も、アキコのポケットの中から漂ってき たビスケットのニオイもこの写真には写っていないのだ。
紅く染まって流れていく雲を見ながらアキコが「今晩は寒くなりそうだ から暖かくして寝るんだよ」と言ってボクの頭をなでてくれた手の感触、 家の中からお腹をすかせたボスが「今日の夕飯は何かな」と言う低くて 優しい声、庭の鶏たちがとまり木にくっつきあって寝支度を始める様子、 みんなみんなボクの小さな幸せなのだ。
紅く染まる雲の下で、人も動物もみんなボクのように小さい幸せを感じ て暮らしているのだろうか。 また明日も晴れるといいな。
今年はイノコヅチに勢力争いで負けたらしいが、秋になるといつもチク チクの実をボクにいっぱいつけてボクとアキコを悩ませるこの草はコセ ンダングサである。
黄色くて小さい花をたくさんつけたな、と思っていると花がいつの間に かチクチクに成長して、草むらを歩くボクにたくさんの実をつけるのだ。 この実が体につくと先の尖った部分が体にチクチク刺さって痛いので、 ボクはこの実があまり好きではないのだ。
コセンダングサという名前は、小さいセンダングサだから「小」をつけ て「小栴檀草」というらしい。 これの名前のもとになったセンダングサは、葉っぱがセンダンの木の葉 に似ているからそんな名前らしい。 センダン→センダングサ→コセンダングサという順番で名前がついたら しいのだ。
こんなに特徴のある実をつけるというのに、葉っぱがセンダンに似てい るからコセンダングサだなんてあまり名前のセンスがよくないのだ。 ボクが名前をつけるならこの草の名前は「チクチク太郎」だ。 こっちの方がずっと親しみのわくステキな名前だと思う。
今日ボクは山へ行って、棚田の向こう側にある山を眺めた。 ボクの住んでいるところは冬でも暖かい土地らしいが、それでもこの頃 は朝晩ぐっと寒くなるようになった。 ついこの前まで緑色をしていた山が少しずつ秋の色に衣替えするのも、 朝晩の寒さと関係があるらしい。
ボクは山の色が少しずつ秋色に変わっていくこの季節が大好きである。 目に見えて何かが動いているわけではないのだが、この季節になると何 となく小さな生き物たちが忙しく動き回っている気配がするのだ。 きっと山に住む動物たちが寒い冬に備えて活動しているのに違いない。
ボクは山を見ながら耳をすましてみたが、今日は風の音しか聞こえなか った。 でも、風の音すら暖かかった季節とは違ってどこか乾いた音がする。 小さな動物たちは音をたてないようにこっそりと冬支度をしているのだ ろうか。
そういえば山の影も夏に比べてだいぶ長くなった。 今年の冬は寒くなるのかな。
昨夜はとても寒かったが、朝になって日が昇ったら暖かくて気持ちの良 いお天気になった。 空が青いなと思って上を見たら、庭の柿が橙色の実をたくさんぶら下げ ているのが見えた。
この柿の実は甘くてとてもおいしいらしい。 高い枝の柿は鳥たち専用になっているので、毎日鳥たちが遊びに来ては 柿の実をつついていく。 鳥たちはどの実が一番おいしく熟れているかをちゃんと知っているらし い。いつも赤く熟れた柿を選んで食べているようだ。
この辺りにはたくさんの柿の木があるが、鳥たちはどの家のどの木の実 が一番おいしいのかも知っているのだろうか。 ボクも空を飛ぶことができたら、あちこちの柿の木に行って、どの柿の 実がおいしいかを調べて歩くのだが、ボクは飛べないのでこうして鳥た ちが来るのを見てお昼寝をするしかないのだ。
今日はオリコウな犬らしく、「どうして犬は飛べないのか」について考 えながらお昼寝をすることにしよう。 いや、「ボクがもし飛べたら何をするか」について考えた方が楽しそう である。 いや、「空を飛んでいる時に眠くなったらどうするか」についても考え ておいた方が良いかもしれない。 こんなポカポカ気持ちのいい日にはやっぱりお昼寝が一番気持ちいいの かもしれない。 ボクはきっと空を飛べてもお昼寝をするに違いない。 ・・・ということでお昼寝をすることにしよう。
今日、ボスとアキコは朝からイケブクロというところへ出かけて行った。 今日はボスとアキコが昔通っていたダイガクというところで、オンシや センパイやコウハイの人々との集まりがあったらしい。
ボクは1日お留守番であった。 こういう時はいつも留守番ばかりでつまらないので、今日はオリコウに しているのをやめようかとも思ったのだが、ワルイコにする理由もない ので1日ダラダラ過ごした。
帰って来たアキコの話によると、集まりはとても楽しかったらしい。 ダイガクというところにはダイガクセイという若者がたくさんいて、と ても活気があったらしい。 自分たちはおじさんとおばさんなのに、若い頃過ごした場所で、その頃 一緒に過ごした人々と話をするととても楽しくて若い頃に戻ったようだ と言っていた。
ボクはまだ4才なので「若い頃の気分」というのはよくわからない。 でも、ボクもいつか「あの頃はワシも若かったわい」などと言う日が来 るのだろうか。 そんな日のためにボクは1日1日を大切に過ごすことにしよう。 そして、ボスにもアキコにも「今も昔もゲンゾーはオリコウな犬だ」と 言ってもらえるようにガンバルのだ。
アキコの話によると、コウハイのイシイクンという男性がボクの日記を 見てくれているらしい。 イシイクン、見てくれてありがとうゴザイマス。 イシイクンはきっとオリコウな男性に違いないのだ。
ボクはアメリカイヌホオズキを見つけてからずっと日本のイヌホオズキを 探していた。 ボクは日本の犬なので、タンポポだってイヌホオズキだって、日本のもの を応援したいのだ。 そして今日ボクはとうとう日本のイヌホオズキを見つけたのだ。
と思っていたら、前に見つけた方が日本のイヌホオズキだったらしい。
<イヌホオズキ> <アメリカイヌホオズキ> 実の大きさ 大きい 小さい 実がつく枝 何カ所からか枝分かれ 一カ所から枝分かれ 茎 根元が太く角張る 細い 葉 丸みがある 細長い 実の光沢 光沢なし 光沢あり
と区別するらしい。
実はアキコが日本のイヌホオズキとアメリカイヌホオズキをまったく逆に 覚えていたらしい。 前に書いた日記を見た方、ゴメンナサイ。
今日ボクは散歩道のヤブのところで枯れたアジサイの花を見つけた。 枯れたと言ってもこのアジサイは最近まで咲いていたような様子である。 こんな時季にアジサイが咲くこともあるらしい。
アキコは「アジサイのミイラだ。きれい!」と喜んで写真を撮っていたが ボクは枯れた花よりも咲いている花の方が好きである。 それよりもミイラの後ろにあるツブツブからツノが2本ずつ出ていること の方がずっと気になる。
これは枯れたアジサイなどではなく、宇宙人を運んできた新型の乗り物な のではないだろうか。 後ろにたくさんいる2本のツノを生やしたのは、みんなアジサイ星人に違 いない。 枯れたミイラのところはきっと乗り物の機関部なのだ。
アジサイ星人がこぼれ落ちて、来年の梅雨の頃にはきっとこの辺りにたく さんのアジサイ星人花が咲くかもしれない。 ボクはアジサイ星人に地球が乗っ取られないようにきちんと見張っていな ければ。
今日ボクは散歩道でセンニンソウの種を見つけた。 センニンソウというのは「仙人草」と書く植物で、この種が仙人のモジャ モジャしたヒゲや髪の毛に見えることからそんな名前がついているらしい。
ボクが見つけたセンニンソウの種は、仙人にそっくりらしい。 ボクは仙人に会ったことがないのでわからないのだが、これを見たアキコ が「仙人にそっくりだね」と言っていたので間違いないのだろう。 (アキコが本物の仙人に会ったことがあるのかどうかはわからないが、ボ クはアキコの言うことは尊重することにしているのだ。)
センニンソウの種たちは、モジャモジャしたヒゲを風になびかせながら 揺れていた。 仙人たちが集まってお酒を飲んだらきっとこんな風に白いヒゲを揺らしな がらアハハと笑って話をするのかもしれない。 自分のヒゲが一番立派だと自慢しあっているのかな。
今日、ボスとアキコがボクに新しいベッドを作ってくれた。 角材の上に厚い板を置いただけのベッドだが、これがあるだけでボクは 暑い日には涼しく、寒い日には暖かく過ごせるのだ。
新しいベッドは木の香りがしてとても気持ちがいい。 これでこの冬もボクは暖かいお日さまの光を浴びてお昼寝ができるとい うものである。
新しいベッドを作ってもらって嬉しかったので、今日のボクはとてもオ リコウにしていた。 アキコが新しいベッドの記念写真を撮るのでボクに「ストップ」をかけ たので、アキコが後ろに回り込んでもボクはきちんとストップしていた のだ。
ストップをかけたアキコが「ゲンゾー、こっち向いて」と言った時には 首がねじれすぎて痛かったのだが、オリコウなボクはストップと言われ たら動かない犬なので痛いのも我慢なのだ。
2006年11月06日(月) |
チクチク・イノコヅチ |
最近ボクが散歩に行くたびに体にいっぱいつけてくるチクチクする実は イノコヅチという植物の実なのだ。
イノコヅチという名前は、山を歩く動物(特にイノシシ)に種がくっつ いて広がることから「猪の子つき」と呼ばれていたものが「猪子槌(イ ノコヅチ)」になったということである。 ちょっと無理矢理つけた感じもするが、そうらしいのだ。
毎年コセンダングサという草の実がボクによくつくのだが、今年はイノ コヅチの実がたくさんボクにくっつく。 来年はイノシシ年だということなので、張り切ったイノコヅチが来年に 向けてたくさん種をばらまいているのかもしれない。
名前の由来からして、山を歩いているイノシシにもボクと同じようにた くさんのチクチクがついているようだが、来年はイノシシの年らしいか ら、イノシシくんはチクチクをきちんと取っておめかししてから年を迎 えた方がいいだろう。 イノシシくんがチクチクをたくさんつけて歩いていたら、チクチクを取 ってあげるようにアキコに頼んでみよう。
今日ボクは庭でイヌホオズキの実を観察した。 名前にイヌというコトバが入っているのでボクは親近感を抱いているの だが、毒のある草だからあまり近づいてはダメだとアキコに言われてい る草である。
イヌホオズキの実は緑色をしていたが、最近きれいな黒紫色になってき てとてもきれいなのだ。 こんなきれいな実に毒があるなんて信じられないので、ボクが見てない 間にこっそりアキコが採って食べるのではないかと疑っていたが、採っ て食べている様子はないので本当に毒なのかもしれない。
イヌホオズキにはもともと日本にあるイヌホオズキと、アメリカイヌホ オズキという種類があるらしいが、このイヌホオズキは残念ながらアメ リカの方なのだ。 日本のイヌホオズキはもっと実に光沢があって、実がつく枝も一カ所か ら枝分かれしているらしい。 ボクは日本の犬なので日本のイヌホオズキを探して挨拶をしなければと 思っているのだが、日本のイヌホオズキはなかなか見つからないのだ。
実に光沢があって、実がつく枝が一カ所から枝分かれしている方がアメ リカイヌホオズキでした。 こちらが日本のイヌホオズキです。 間違っていてごめんなさい。
今日ボクは散歩道のヤブの中で写真の実を見つけた。 これは「万両」の実らしい。
万両は真っ赤な実をたくさんつける小さな木だと思っていたが、この万両 の実はまだまだ熟れていないらしく、薄緑色であった。 (でも、柄のところはもう赤くなっているのだ。) これからじわじわと熟れてお正月を迎える頃に真っ赤な実になるらしい。
万両という名前は江戸時代からあるらしい。 お正月頃に真っ赤な赤い実をつけるので、「万両」という景気のいい名前 をつけて縁起物として年末の市で売られたことかららしいのだ。
万両の他に、千両、百両、十両、一両というのもあるらしい。 万両は千両よりもたくさん実がつくので、万両というらしい。 ボクの散歩道に生えているのは万両だから、一番高値の名前がついている。 なかなか景気がいいぞと喜んでいたら、ヤブから出た後ボクの体にも景気 よくたくさんチクチクがついてた。
今日、アキコは近所の直売所で写真の果物を見つけて買ったらしい。 名前を「フィジョア」というらしい。
アキコも知らなかったらしいが、これはオーストラリアあたりで作られ ているのが有名な南国の果物らしいのだ。 ボクには食べさせてくれなかったが、アキコはうまいうまいと大絶賛で あった。
どんな味なのかと聞いたら、梨のような、キウイのような、パイナップ ルのような・・・甘くて酸っぱくておいしい味らしい。 何よりも香りがすごくいいのだ、とアキコが言っていた。
インターネットというものでこのフィジョアなる果物を調べてみたアキ コは急に「うおー」という声を出した。 アキコが買った鴨川産のフィジョアは20個入って250円だったのに、 インターネットで見つけたフィジョアは8〜9個で3500円だったら しいのだ。 フィジョアを食べたい人は、鴨川の直売所に来るといいのだ。
今日ボクは散歩道で写真の実を見つけた。 これはウツギという木の実らしい。
ウツギというのは木の幹の真ん中が空洞だから「空木」と書いてウツギ というらしい。 ウツギは別名をウノハナといって、こっちの方が「夏は来ぬ」という歌 に出てくるので有名らしい。 「卯の花の匂う垣根に、ホトトギス早も来鳴きて、忍音(しのびね) もらす、夏は来ぬ」 という歌らしい。 (アキコはこの歌が大好きだと言って、聞きたくないのに最後まで歌っ て聞かされたが、オリコウなボクは最後まで聞いたのだ。)
このウツギの実はドングリにも似ているが、いつだったかボスがボクを 驚かそうとして目の前でグルグル回して見せたコマというものによく似 ている。 幹の真ん中が空洞なら、実の真ん中はどうなのだろうか。 今日は実を調べてみなかったので、今度は実を採ってきて調べてみたい。
今日は11月1日。 ワンワン、ワンで「犬の日」らしいが、今日はあえて違う話を日記に 書いてしまうのだ。
写真の建物はボスとアキコが石けんを作っている工房なのだ。 これは裏側の写真らしいが、この建物は何かが少し変である。 どこが変なのか、写真でわかるだろうか。
実はこの建物、2階に出口の扉があるのである。 この扉は誰のためについている扉なのだろうか。
ボスに聞いたら誰のための扉でもないらしい。 2階の窓も扉も全部開けておくと風が吹き抜けてとても気持ちがいい、 とアキコも言っていた。 ボスもアキコも変な建物で石けんを作っているものである。
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