ボクの口のまわりは下から見てもグルリと黒いのである。 口のまわりだけ黒いので、ボスはボクの口のまわりの黒い部分も取 り外せるパーツだと思っているらしい。
「ゲンゾーは口のパーツを取り外せるんだよな」とボスは言う。 ボスはボクの口がウケクチなのは、口のパーツを取り外しておいた 時に間違って踏んづけたから歪んでそうなったのだと思っているら しいのだ。 ボスもたまにメガネという目のパーツを取り外しておいた時に間違 って踏んづけてパーツが歪んでしまうことがあるらしい。
でも、ボクの口は取り外しできないのである。 下から見ると本当に取り外せそうなのだが、断じて取り外し不可能 なのである。
今日は、アキコがビスケットを2個くれて「写真と同じ話を書いてね」 と言ったのでオリコウなボクは写真と同じ話を書いた。 しかし、今日アキコがくれたビスケットはいつものビスケットの半分 くらいの大きさだったような気がするのだが、気のせいだろうか。
昨日、ボクの巣が枯れた話を日記に書いたら、ボクに励ましの オタヨリをくれた人がいるのである。 とっても嬉しいのである。
そのお方は「巣は枯れたけど、ビスケットが食べやすくなって 良かったね」と言ってくれたのである。 「ビスケットが食べやすくなった」ということは、つまり「ア キコはもっとゲンゾーにビスケットをあげるべきだ」というこ となのである。
ビスケットが食べやすくなったので、アキコはもっとボクにビ スケットをくれなくてはいけないのである。
今日は写真とはまったく違う話を日記に書いてみた。 助手のアキコが撮った写真と違う話をボクが書くとアキコはと ても困るだろう。 困ったアキコがボクにビスケットをくれて「写真の話を日記に 書いてちょうだい」と言うまで、ボクは写真と違う話を日記に 書いてみようかと思っている。
この頃涼しくなって過ごしやすくなったのは嬉しいのであるが、 ボクには少し淋しいことがある。 それは、ボクの巣が枯れてしまったことである。
写真でボクの足下にあるのが、ボクの巣である。 夏の間、ボクをヒンヤリ涼しくしてくれた、あのフワフワの草 がとうとうこんな姿になってしまったのである。
少し前までこの中にビスケットを落としてしまうと、探すのが 大変だったのに、今となってはどこにビスケットを落としても 丸見えなのである。
涼しい秋は大好きなのであるが、秋は少しもの悲しい季節でも ある。 秋になってボクのテーマ曲はめっきりトタン調なのである。
訂正 by アキコ ゲンゾーの言う「トタン調」は「ト短調」です。
写真の花はベニバナボロギクという花である。 ボクの庭の隅っこに咲いていた。
アキコが「この草は若葉の時食べるとおいしいんだよ」と言っ ていた。アキコはいつでも食べる話で困ってしまう。
ボクはこの花が下を向いていることがとても気になった。 ボクの庭の花はみんな元気に上を向いて咲いてほしいのである。
この花の紅い色はとても美しいのに、名前にボロなんてつけた からいじけて下を向いているのではないだろうか。 ボクが励ましてあげた方がよいだろうか。
「そんなにきれいなんだから、上を向きなよ」 ・・・ なかなかいい台詞なので、これは花には使わずに、かわいい犬 が来た時に使うことにしよう。
最近すっかり涼しくなって、ボクの庭に秋の虫がたくさん遊びに 来るようになった。
ボクは秋の虫たちと追いかけっこをするのも大好きである。 秋の虫はピョンと大ジャンプをするヤツが多いので、とても面白 いのである。
今日、コオロギという小さいヤツと追いかけっこをしていたら、 コオロギのヤツはジャンプしてアキコの足下に隠れたのである。 ヤツが「助けて〜」という様子でアキコの足下に隠れたせいで、 ボクはアキコに「虫をいじめちゃだめだよ」としかられてしま った。
虫のくせに、アキコを味方につけるとは卑怯なヤツである。 ボクはアキコの手前、フセをしてオリコウにしていたが、ヤツが 今度ボクの近くに来たら、もっと追いかけてやるつもりである。
今日、田んぼの水たまりを覗き込んで見ると田んぼの中に青い 空があって、白い雲がフワフワ浮いていた。
いつもボクは空の雲をつかまえてみたいと思っていたのだが、 今日はその最大のチャンスだった。 いつも遠くの空に浮かんでいる雲が、今日はボクのすぐ足もと に浮いていたのである。
散歩の時ボクが田んぼに入ろうとしたら、ボスにオサンポヒモ をぐいっと引っ張られて、どうしても田んぼに入ることができ なかった。 ボクがぐいぐい引っ張ったら、ボスが厳しい目をしてボクを見 たので、雲をつかまえることを断念するしかなかった。
アキコと一緒に散歩に出ていれば、ボクは世界で初めて雲をつ かまえた犬になれるはずだったのに、とても残念なことである。 今度アキコと散歩に出たら、必ず雲をつかまえてやるのである。
最近、ボクは自分のシッポが気になって仕方がない。 夏、アキコに短く毛を刈られた時に、ボクのシッポはムーミン 風のチャームなシッポにしてもらっていたのだが、最近、少し チャームじゃなくなってきたのである。
伸びて長い毛もあれば、伸びずに短いままの毛もある。 こんな言い方はしたくないのだが、どう見てもこのシッポは 「ボサボサ」という言葉が似合うのである。
アキコはボクのシッポを見て「ムーミンじゃなく、今度はエノ コログサみたいになった」と喜んでいるのだが、オシャレなボ クは、どうもこのボサボサが気になるのである。
アキコがビスケットをくれる時に、ボクは嬉しくてシッポを振 るのだが、振ったシッポが視界に入ると、シッポのことを思い 出して少し沈んだ気持ちになってしまう。 シッポがボサボサなことを気にするのは男らしくないだろうか。
アキコはまた日記をさぼったのである。 ・・・が、男らしいボクはやさしく許してあげることにする。 --------------------------------------------------------
今日は「秋分の日」という日だそうである。 昼の長さと夜の長さが同じなのだそうである。 今日からは少しずつ夜の方が長くなるのだそうだ。 アキコが得意な「コヨミノウエ」の話である。
「コヨミノウエ」でなく「ブッキョウヨウゴ」で言うと、今日 は「オヒガン」という日らしい。 細かく言うと「オヒガンのチュウニチ」と言わなければならな いらしいが、ボクは犬だから「オヒガン」が言えればよいだろ う、とアキコが言っていた。
ボクの散歩道に突然あらわれた真っ赤な火花のような写真の花 も、名前をヒガンバナというらしい。 毎年決まってオヒガンに咲く花だからそんな名前がついている そうである。 本名は「マンジュシャゲ」と言うらしい。 漢字で書くと「曼珠沙華」と書くらしいのだが、とても難しい 名前なので「ヒガンバナ」の方が親しみやすい。
このヒガンバナは、どんなに暑い年でも、どんなに寒い年でも 決まってオヒガンの頃に咲くのだそうである。 ボクはまだ秋のオヒガンを2回しか経験していないが、確かに 去年も今頃この花が咲いていたような気がする。 とても不思議な感じがするが、きっとヒガンバナもアキコと同 じで「コヨミノウエ」が好きな花なのだろうとボクは思う。
今日、ボクはボスとアキコと一緒に山へ行って来た。 久しぶりの山は秋の香りがしていた。
アキコと散歩に出かけると、野原に金色のフサフサがいっぱい 風に揺れていた。 この草は「キンノエノコロ」という草だそうである。 犬のシッポのエノコログサ(ネコジャラシではないのだ)の金色 バージョンである。 金色の犬のシッポとは、なんとステキな草なのだろうか。
ボクは嬉しくてシッポをプリプリ振りながら、キンノエノコロ の中をぐんぐん歩いた。 お日さまが当たってボクのシッポも金色に輝いた。 アキコが「キンノエノコロが1本増えた」と喜んだ。
今日、ボクはアキコに「ゲンゾーショー」を見せようと張り切って いたのだが、アキコは全然庭に出てこなかった。
アキコが庭に出てこないとつまらない。 シーワールドというところでいろんな動物を見たアキコには普通の 犬のボクでは物足りないのであろうか・・・。 ボクはそんなことを考えながら庭でダラダラ過ごしていた。
だが、今日は何となく背中に気配を感じるのである。 それも頻繁にである。
何だろうと思っていたら、実は今日アキコはずっと「普通のボク」 をガラス戸の中からこっそり観察していたらしいのである。 ダラダラしているボクの写真もたくさん撮影していたらしい。
「動物は自然の姿を観察するのが一番面白い」とアキコは言った。 ボクのプライベートを隠し撮りするとはけしからんアキコである。 明日からはアキコがこっそりボクを観察していないかどうか、気 をつけて暮らさなければなるまい。
今日、アキコはボスとボクを放っておいて「鴨川シーワールド」と いうところへ遊びに行ってきたらしい。 今、アキコのお姉ちゃんがジッカに遊びに来ているので、一緒に行 ってきたらしいのである。
帰ってきたアキコは「とっても楽しかった」と言って、ボクにいろ いろな生き物の写真を見せてくれた。 魚のような形の生き物がジャンプしている写真や、人を背中に乗せ て泳いでいる大きな生き物の写真もあった。 「いろんなショーをやっていて楽しいんだよ」とアキコは言ってい たが、ボクが見たこともないような大きくて怖ろしい形の生き物が たくさん写っていて、ボクはとても怖かった。
ボクが特に怖かったのは写真の生き物である。 白くてブヨブヨしていて、何だかちょっと笑っているところがとて も怖ろしい。これは水の中の生き物ではなく、怪獣に違いない。 名前を「ベルーガ」というらしい。さすが、怖ろしそうな名前だ。
だが、アキコは「ベルーガが一番かわいかった」と言っていた。 「とっても賢い生き物なんだよ」とアキコは言っていた。 ボクというものがありながら、こんなブヨブヨを賢いと言うなんて、 アキコはひどい女である。 こんなブヨブヨよりもボクの方がずっとオリコウな犬だということ を証明するために、明日からボクはアキコにゲンゾーショーを見せ て、ボクといる方がずっと楽しいことをアピールする必要がありそ うである。
昨日、アキコがボクに絵本を読んでくれた。 本当は、昔好きだった絵本が本棚から出てきたので、それを庭で 読んでみたかっただけらしいのだが、一人で読むのは淋しいだろ うと、ボクがつきあってあげたのである。
アキコが読んでくれたのは「ぐるんぱのようちえん」という話だ った。 ゾウという大きな動物が大きなものをどんどん作るというような 話だったのだが、ボクにはよくわからなかった。
話はボクには難しかったのだが、絵はとても楽しかった。 きれいな色がたくさん塗ってあって、いろんな形も描いてあった。
今日はよくわからないままだったが、あと3回くらい読んでもら えれば、ボクにもこの本のすばらしさがわかりそうな気がする。 ボクが絵本の良さもわかるオリコウな犬になる日も近いのである。
ちなみにボクにも大きなゾウが大きなビスケットを作った、とい うところはわかった。 食べきれないほどの大きなビスケット・・・このお話は夢のよう なお話に違いないのである。
写真のポヤポヤした穂をつけた草は「アキノエノコログサ」と いう草である。ボクの庭のへりにたくさん生えている。
エノコロというのは漢字で「狗尾」と書く。 子犬のシッポという意味だそうである。 アキノエノコログサは、秋に生える子犬のシッポに似た草なの である。 ボクはこの草の穂がかわいいので、とても気に入っている。 ボクのシッポに似て、キュートな草なのだ。 この草の名前が犬のシッポから付けられたと知って、とても嬉 しい。
ただ、気になるのは、この草の別名である。 別名を「ネコジャラシ」というらしいのだ。 この草の穂をネコの前でチョロチョロ動かすと、ネコが飛びつ いてくるというネコのオモチャに似ているからそう言うらしい のだが、悔しいことに、この草を「エノコログサ」と知ってい る人が少ないらしい。 みんな「ネコジャラシ」と呼んでいるらしいのである。
この草は犬のシッポに似ているのである! 今日からみなさん、この草は「エノコログサ」と呼ぶように、 ボクからお願い申し上げマス。
昨日、アキコはボクの日記をアップするのをすっかり忘れていた らしいのである。 日記は毎日きちんとアップしないとダメなのであるが、細かいこ とを言うのは男らしくないので気にせず黙っていることにする。
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昨日、ボクは庭の裏に栗のイガイガが落ちているのを見つけた。 庭の裏に栗の木があるなんて、ボクは今まで気が付かなかった。 鶏の番犬をするまでは、庭の裏には行かせてもらえなかったせ いだろう。
裏の栗は小さな木で、イガも小さなイガだった。 「中味も小さいよ」とアキコが言っていた。 アキコが喜んで栗を拾うかと思ったら拾わなかったので、本当 に小さくておいしくない栗なのだろう。
もう少しすると、近所のおばあちゃんが自分の家で採れた栗を 道ばたに並べて売り始める。 あのおばあちゃんちの栗はミカンと同じでとてもおいしいらし いので、きっとアキコはおばあちゃんのところの栗を楽しみに しているのだろう。
ボクの散歩道にあるシソの畑に花が咲いた。 シソの花は、とても小さな薄紫色の花である。 葉っぱと同じ紫系の色なのだ。
茎から長い花穂がにょっきり伸びたと思ったら、先から順番に 花が咲き始めた。 クズの花が下から咲いていったので、シソも下から順番に咲く のかと思ったら、シソはてっぺんから咲くのである。
シソの茂みは薄暗くて何となく嫌いだったが、花が咲いたらと ても華やかになったのでボクは嬉しい。 シソに花が咲いたら、薄暗いシソの畑も怖くなくなった。
・・・いや、もともと怖くなんかなかったのだった。 怖いなんて言ったら男らしくないのであった。
今日、アキコが早起きしてクルマでどこかへ出かけて来た。 「カツウラのアサイチ」というものに行って来たらしい。 「勝浦の朝市は日本の三大朝市の一つなんだよ」とアキコが言って いたが、何のことなのかボクにはわからない。
アキコはすごく魚のニオイがする袋をたくさん持って帰ってきた。 何やらたくさん魚を買い込んで来たらしいのだが、ボクには魚を見 せてくれなかった。 ボクが魚に噛みつくと思ったのだろうか。
その代わり、アキコはボクにヘンテコな形の野菜を見せてくれた。 写真がそれである。 「おもちゃカボチャ」というもので、食べられないものらしい。 アキコが食べられないものを買ってくるとは珍しいのだが、それら はものすごくヘンテコで、ボクも一つ欲しくなった。 1つが10センチくらいの小さいカボチャで、黄色や緑のヘンテコ な模様なのである。
ボクにも一つくれないかと期待したのだが、アキコは「一つは来年 種を撒くためのもの、残りの2つはお友達にあげるためのものだか らゲンゾーの分はないの」と言ってボクをがっかりさせた。
もらえないとなると、すごく欲しくなるのが犬というものである。 あのおもちゃカボチャをかじって遊んだら、どんな歯触りなのだろ うと考えるだけで、ボクは眠れなくなりそうである。
今日、散歩道で赤いトンボを見つけた。トウガラシかと思うくらい 赤いトンボだった。
アキコに聞いたらそのまんま「赤トンボ」と呼ばれているトンボだ と言っていた。 本当は赤いトンボが30種類くらいいるらしいが、アキコは区別が つかないので「赤トンボ」と呼んでいるらしい。
赤トンボは竹の棒の先にとまっていた。 アキコが「トンボがすぐに飛び立つかどうかは、羽の角度でわかる」 と言っていた。 トンボは何かにとまっている時、羽が2段階に動くのだそうだ。 まずは普通にとまって、その後、居心地がよくて飛び立つ気がなく なるともう一段階羽をぐいっと前に倒すらしい。 写真の赤トンボは2段階目の「飛び立つ気なし」の姿勢である。 この赤トンボはこの竹の棒がひどく気に入ったのだろう。 この後しばらく、この竹の棒の先でのんびり過ごしていた。
赤いトンボが飛び始めるともういよいよ秋である。 暑い日も今日までで、明日からは涼しくなるみたいだよ、とアキコ が言っていた。 ああ、もう秋なのである。
写真の花は、ゲンノショウコという花である。 洗濯物を干していたアキコが庭で見つけて写真を撮っていた。
この花は下痢などに効くらしい。 飲むとすぐに結果が出るから「現の証拠」という名前がついて いるらしい。すごい名前である。 でも、こんなにかわいらしい花なのだから、花を愛でる名前を つけてあげたかった気がする。
この花は、日本の東の方では白い花だが、西の方では桃色の花 が多いらしい。 ボクは桃色の花を見たことがないので、桃色の花もぜひ見てみ たい。
ちなみにアキコが洗濯物を干すのを後回しにして花の写真を撮 っていたために、今日の洗濯物を見ると、何となくボスのシャ ツがシワっぽい。 明日ボスが着るシャツがシワっぽいのは、ゲンノショウコのせ いである。
写真の草はアオガヤツリという草である。 小さくて丸い緑のボンボンが目印だ。
この草を踏むととてもいいニオイがする。 ボクはこのアオガヤツリのニオイが大好きである。 こんな緑の草なのに、スミレやスイカズラのお花のように甘くて 何とも言えないいいニオイがするのである。
アキコもこの草のニオイが大好きだと言っていた。 アキコは散歩の時にこれを見つけるとしゃがみこんで必ず手に取 るのである。 丸いボンボンをつぶして鼻に当て「どんな香水よりもいい香り!」 と言っていつまでもそのニオイを嗅いでいる。
ボクは散歩の時にこの草を見つけると必ずアキコに教えてやる、 アキコ思いのオリコウな犬なのである。
写真の花はクズの花である。 桃色や赤紫色のとてもきれいな花なのである。
クズというのは根にとても栄養があって、カッコントウという 風邪の薬になったり、お菓子の材料になったりするらしい。
でも、このクズは花の美しさに似合わず、ものすごい生命力な のである。 放っておくとどんどん伸びてあちこちにどんどん根を張り、ク ズ同士が絡まって、どんなにガンバってもはずすことができな いチエノワみたいになってしまうのである。
ボスとアキコは昔、このクズがはびこる荒れ地を開拓したこと があるらしい。 二人ともクズを見ると、その時のことを思い出すらしい。 「とにかく大変だったんだよ」とアキコが言っていた。 しかしボクには何が大変だったのか、想像もつかないのである。
ボクはオリコウな犬なので、何をしていても「ストップ!」と 言われたらそのまま動きを止めることができる。
今日、ボクが首のあたりをカユイカユイしていたら、急にアキ コが「ストップ!」と言ったのでとてもまいった。
今日のボクの写真がとっても変てこなのは、かゆいのを我慢し てストップしているからなのである。 右足で気持ちよく首を掻いていたのに、急にストップをかけら れて、首のかゆさを必死に我慢しているところなのである。
アキコはボクがかゆいのを我慢するとどんな顔になるのかを写 真に撮りたかったらしいのだが、大変に迷惑な話である。
でも、この後、アキコがボクのかゆいところを掻いてくれた。 それを見たボスが「犬のかゆいところを掻いてやるなんて・・」 とあきれているようだったが、これだけかゆいのを我慢したの だから、掻いてもらってもバチは当たらないのである。
ボスはときどきボクを強制的に鶏小屋のところへ連れていって ボクと鶏ににらめっこをさせることがある。
ボクが金網のそばに行くと、オスの鶏たちがすごく怖い顔をし てボクをにらむのである。 いつもボクが鶏たちの番犬をしてやっているというのに、まる でボクが悪者のような顔をしてにらむ。 ボクはいつもそれを見るとつい目をそらしたくなってしまうの である。
今日は余裕のあるところを見せようとアカンベをしてみせたの だが「目をそらしたからゲンゾーの負けだ」とボスは言った。 強制的ににらめっこをさせておいて、ちょっと目をそらしたか らといって負けと決めつけるとはひどいボスである。
ボクは負けてなんかいないのである。 ボクは鶏たちのことをちっとも怖くなんかないのである。 ただ、ちょっとオスの怖ろしい目と見つめ合うのが苦手なだけ なのである。
今日、アキコが「日記に使うから何かポーズして」というので ボクはガンバってポーズを取った。 するとけしからんことにアキコは「あはは、色っぽーい!」と 言って大笑いしたのである。
ボクとしては「しなやかな男、ゲンゾー」のポーズだったのだ が、アキコは「たたきに寝ころぶ裸犬(らけん)」とタイトル をつけた。 毛を刈られる前は、ボクには黒いフサフサのマフラーがあって 迫力のある男前の犬だったのに、毛を刈ったら白っぽくなって 迫力がなくなったばかりか「果物と裸婦」みたいなタイトルを つけられるほどになってしまったとは悲しい。
涼しくなったことだし、食べたものの栄養をすべて毛がフサフ サになることに使うように気合いを入れて暮らそうと思う。 気合いを入れたら毛が伸びるのかどうかわからないのだが、で きることならもっと黒い毛がたくさん伸びてくれるといい。 毛を伸ばすためにも、毎日たくさんビスケットをもらうことに しよう。
ボクの庭のアップルミントの花が咲いた。 写真の花がそれである。
アキコは夏中、このミントの葉っぱが入った氷を作ったり、茎 ごとお茶にしたりして涼しい飲み物を楽しんだらしい。 アキコがたくさん葉っぱを採ったが、アップルミントは平気だ ったようである。 とても丈夫な草なのだ。
アップルミントは花が咲いている時、葉っぱも一番良い香りが するらしい。 いつも収穫していたのに、花が咲いたのを見つけたアキコは 「お、収穫の時期が来た!」と目を輝かせて喜んだ。 アキコがボクにもこのミントを茎ごと1本くれたが、本当にリ ンゴみたいでとっても良い香りがした。
ボクはアキコに取られないように、もらった茎を小屋の中に隠 しておいた。 今夜はアップルミントの香りを嗅ぎながら眠るつもりである。
2005年09月06日(火) |
大きな渦巻き雲ふたたび |
ボクの住んでいるところは今日はまだ雨も降っていない。 しかし、大きな渦巻き雲がまた日本の西の方にやってきて、大変な 悪さをしているらしいのだ。
ボスの話によると、今度の大きな渦巻き雲は、この前ボクの庭にや ってきたヤツよりもずっと大きくて、ものすごい目をしているらし いのだ。 この前、ボクは渦巻き雲を見ることができなかったが、ものすごい 目をした渦巻き雲というのは一体どんなヤツなのだろうか。
ボスはボクを怖がらせようとして、怖ろしい渦巻き雲の話をどんど んして聞かせた。 ボクはボスの話の途中で、怖くなって小屋に逃げようかと思ったく らいである。
ボクの住んでいるところには今度のすごいヤツは来ないらしいのだ が、渦巻き雲が来る地方のみなさん、どうぞ無事でいてクダサイ。 ボクは渦巻き雲をやっつけてあげることはできないので、小屋の中 からみなさんの無事をお祈りいたす。
写真の花はタマスダレという花である。 ボクの庭に毎年きれいな花を咲かせる。 ボスとアキコがこの家に来るずっと前にここに住んでいたおばあ ちゃんがこの庭に植えたものらしい。
この花は、日当たりが良いと花びらをぱーっと開くらしいのだが、 ボクの庭のタマスダレは日陰に生えているので花びらは半開きで ある。 だが、ボクはぱーっと開くよりもこのくらいの半開きの方が、こ の花はきれいなのではないかと思っている。 上から見ても横から見ても、清楚でなかなか美しい花なのだ。
タマスダレは雨が降るたびに土から突然ニョッキリと茎を伸ばし て花を咲かせるのである。 ある日、突然白い花が咲いたと思うと、その後雨が降るたびに花 が増えていくのである。 この頃、大雨が多くて嫌なのだが、雨のたびにタマスダレの花が 増えていくのは小さな喜びである。
今日、ボスが庭の鶏の巣箱を作った。 巣箱というのは、鶏が玉子を産むときに入る箱のことである。
ボスが板を切ったり釘を打ったりしている間、ボクはイタズラを してやろうと思っていたのだが、ボクが近づいた時のボスの視線 がとても厳しかったのでやめた。 ボスがあの目をしている時に近づいてイタズラをすると、とても 怒られるのである。
仕方がないので、ボクは完成までおとなしく観察することにした。 ノコギリで板を切っている時、ボスはとても暑そうだったが、み るみるうちに巣箱は完成した。
ボスに冷たい水を運んで来た以外はただの見学者だったアキコの 仕事は完成した巣箱の記念写真を撮ることだけだった。 ボクの仕事は完成記念写真のモデルだけだった。 今日はボスの見事な働きで巣箱が完成したのである。 ボクはボスにお疲れさまを言いに行こうと思ったのだが、ボスが まだ厳しい目をしていたのでそれもやめておいた。
写真の花はタカサブロウという花である。 白くて小さい花と緑色のボンボンがチャームポイントである。
タカサブロウという漢字は「高三郎」と書く。 名前の由来は不明らしい。 アキコがありとあらゆるものを調べてみたのだが、どこを調べ ても「名前の由来は不明」となっていて謎なのだ。
タカサブロウという名前は武士みたいで格好いい。 他の花はそのまま呼び捨てにしても気にならないが、この花は こんな名前をしているので「タカサブロウ殿」と呼びたくなる。
「タカサブロウ殿!」と声を掛けたら「おー、ゲンゾー殿か。 今日は良いお天気でござるな。」と答えてくれそうな気がする。 タカサブロウと話をすることができたら、ボクとタカサブロウ はきっと仲良くなれるにちがいない。
写真の花はキツネノマゴという花である。 ボクはこの花が大好きである。 緑色の花序にちょこちょこと小さい桃色の花が咲いて、とてもか わいらしいのである。
どうしてこの花の名前がキツネノマゴなのかはわからないらしい。 イヌと同じでキツネという名前のついた花もたくさんあるらしい。 春に見たツクシは「キツネノロウソク」とか「キツネノフデ」と いう名前もあるらしいし、もうすぐ咲く彼岸花は「キツネノカミ ソリ」という名前もあるらしい。
でも「イヌ = 役立たず」のような使われ方ではなく、「いかにも キツネが使いそう」という身近な動物としての親しみからついた 名前が多いようである。 犬の方がずっと役に立つし親しみやすいのに、どうして犬ではな くキツネなのだろうか。 この花だって、「キツネノマゴ」よりも「イヌノマゴ」の方がず っと素敵な名前だとボクは思う。
キツネノマゴの名前は花序と花を「キツネのシッポ(花序)の間 からちょこちょこ顔を覗かせている孫キツネ(花)」に見立てた 名前だという説がユウリョクだそうであるが、この他にもいろい ろあるらしい。 他の名前の由来もぜひ知りたいものである。
ここのところ、秋の風が吹いてとても涼しい。 夏の暑い日は散歩に出かけるとノドが乾いて一目散に家に帰って 来ていたボクであるが、最近は涼しいので散歩道をゆっくり眺め て楽しんでいるのだ。
写真の花はセンニンソウという花である。 ボクの散歩道で長い蔓を垂れて、たくさんの白い花をつけている。 センニンソウというのは漢字で「仙人草」と書くのだ。 この花が終わると仙人のひげのような白いフワフワがたくさんで きるのだそうである。 ボクは仙人というのを知らないが、白いフワフワのヒゲをした人 のことのようである。
センニンソウの花の中に例のカタツムリも見つけた。 ボクが見るカタツムリはみんな殻の中に隠れているが、さすがの カタツムリもセンニンソウの美しさにつられて出てきたらしい。 このカタツムリはセンニンソウの花に囲まれて、どっちを向いて もきれいな白い花を眺められる位置にいる。 すてきな隠れ場所を見つけたものである。
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