ボクのお気に入りの草はとうとう穂が出てガサガサの草むらに なってしまった。 意地を張って草むらの中で過ごすとガサガサのゴワゴワで何と も言えない感触なのだが、毎日そうしているうちに、背が高く なった草むらの中に埋まって過ごすのも悪くないと思うように なってきた。
最近、ボスとアキコはこの草むらのことを「ゲンゾーの巣」と 呼んでいる。 昼間はここで昼寝をし、夕飯を食べた後またボクはここに来て 秋風に吹かれながら夜空を楽しんでいるのである。
涼しい風が吹き始める夏の終わりに巣の中に寝ころんで夜空を 見上げるのは本当に気持ちがいい。 もう少し涼しくなってきたら、もっと夜空の星もきれいに見え ることだろう。 アマガキの実が色づいて、星空が輝く秋頃まで、ボクの巣が枯 れずに生えていてくれるといいと思う。
写真の白いものはミョウガの花である。 ボクの庭の裏の方にミョウガのヤブがあって、そこに咲いて いたのである。 咲いていた、と言っても花びらが開いていないので、あまり よい写真とは言えない。
いつもガンバッテ写真を撮るアキコがどうしてこんな半端な 写真を撮ったのかと言うと、蚊の大群に襲われたからなので ある。 ミョウガのヤブは庭の裏側にあって、蚊がいっぱいいるのだ。 ボクはアキコを置いて先に逃げてきたのである。
少ししてアキコが「かゆいかゆい」と言いながら帰ってきた。 顔も足も手も蚊に刺されて赤くなっていたようである。
「お花の下にあったミョウガのところは食べられるんだよ」 とミョウガの説明を始めたアキコであったが、蚊に刺された かゆみに負けて、説明もそこそこに家に入ってしまった。 ミョウガの説明は今度ゆっくり聞くことにしよう。
今日もお花の話を書いて渦巻き雲のことを忘れることにする。 写真はヤブランという花である。 蘭とは違う種類なのだが、葉っぱが蘭に似ていて、ヤブに咲く からそんな名前がついているらしい。
この花は渦巻き雲に壊された山の倉庫の陰にひっそり咲いてい たのである。 潰れた倉庫を壊しに(修理するのではなくて、もうボロすぎる から壊してしまうのだそうである)出かけたボスとアキコに連 れられて山に行ったボクが見つけたのである。 倉庫は潰れたけれど、倉庫の陰になっていたヤブランは無事に 花を咲かせることができて本当に良かった。
アキコは「ヤブランの実は黒い宝石みたいでとってもきれいな んだよ」と、何だかロマンチックなことを言っていた。 でも、そう言ったアキコの顔は「宝石よりも食べられる実の方 が好き」という顔だった。 なぜかと言うと、食べられる植物の話をする時の方が、アキコ の目はキラキラ輝いているからである。
ここのところ嫌な話ばっかりだったので、今日はきれいな花の 話を日記に書こうと思う。
写真の花はニラの花である。 お隣の畑の隅っこに咲いていた。 畑に咲いてはいるが、お隣のコイズミさんが育てている野菜で はなく、昔育てていたニラが毎年勝手に出てきて花を咲かせて いるのである。
まだ他の草が渦巻き雲の風でなぎ倒されている中で、たくさん のニラが茎をピンと伸ばして空に向かって花を咲かせたのであ る。
ボクがニラの花を観賞していると、アキコが横で「ニラの花を 塩漬けにするとおいしいらしい」と言った。 アキコは渦巻き雲にいじめられてへこんでいたはずなのに、ニ ラのきれいな花を見たとたんにまた食べる話である。 アキコの食いしん坊にも困ったものである。
渦巻き雲はおそろしいヤツだったのである。
昨日、アキコのパパとママの家を水浸しにして終わったと思って いたのだが、実はボクが昔住んでいた山にあるボロ倉庫が見事に 潰れていたのである。 ついでにピョッツという鶏が住んでいた鶏舎のトタン屋根も6枚 吹き飛ばされて空が見えていた。
ボスとアキコは山の小屋や倉庫はもうボロだから潰れたり屋根が 飛んだりしているだろうと予期していたらしいが、何も知らずに 山に出かけたボクはびっくりしてしまった。
まだボクが山に住んでいたら、ボスとアキコと一緒に倒れた木の 下敷きになっていたかもしれないと思うとおそろしい。 ボクは山を下りて暮らしていて本当に良かった。
これからボクはオリコウに暮らすので、もう渦巻き雲がボクのと ころに来ませんように。
今日はボスとアキコは大変忙しい1日だった。 今朝5時すぎに電話が鳴ってから、1日中出たり入ったりバタバタ と忙しくしていた。
何やらアキコのパパとママの家がユカウエシンスイというのになっ たらしいのである。 ユカウエシンスイというのはよくわからないのだが、庭の泥水がど んどん増えてボクの小屋の中にまで入ってきてしまうようなことら しい。
ショウボウの人に「ヒナンしてクダサイ」と『ヒナンカンコク』を 受けたパパとママが電話をかけてきて、アキコが助けに出かけて、 3人で石けんの工房にヒナンしていたらしい・・・。 お昼すぎに水が引いてからはボス、アキコ、パパ、ママが一緒に、 田んぼの泥水が入った家の中を掃除していて夕方になってしまった らしい・・・。
・・・ボクにはどんなことが起こったのかさっぱりわからなかった のだが、とにかく大変な1日だったらしい。 アキコがパパとママを助けに行った時の話を教えてくれたが、パパ とママは腿の深さまである泥水の中を歩いて逃げて来たらしい。 アキコも膝の上まである泥水の中を歩いてドキドキしたらしい。
それもこれも全部、大きな渦巻き雲の仕業らしいのである。 渦巻き雲は本当におそろしいヤツだったのである。
今日もアキコは写真を撮っている場合ではなかったので、アキコか ら聞いた話をボクが絵にしてみた。 今日あった出来事はだいたいこんなことだったらしいのである。
ボクのところに近づきつつある今度の大きな渦巻き雲(台風)は 大変強いヤツだったのである。
夜になるとだんだん雨が強くなってきて、小屋の中で丸くなって いても風がゴウゴウと空気を振るわせるのがヒゲの先まで伝わっ てきた。
夜中になるとますます風が強くなってきて、お隣のタカナシさん の郵便受けがボクのすぐそばまで飛んで来た。 ボスがたき火をする時に使うイットカンも飛んできた。 どこかで折れた木の枝も飛んできたし、どこかにあった空き缶や 米の袋も飛んできた。 とにかくいろんなものが飛んで来た。
ボスもアキコも眠れずにときどきボクや鶏たちの様子を見に来て くれた。 何かあるとすぐに写真を撮るアキコが今日は写真を撮らなかった ので、今日の日記には写真がついていないのである。 でも、本当に大変な時は写真など撮らないのだということがわか って、ボクはまたひとつオリコウな犬になった。
またまた大きな渦巻き雲(台風)が近づいているらしい。 そのおかげで今日はとても涼しい。 でも、今日はボスがボクの庭の片づけをしていないので、何 かを渦巻き雲に持って行かれる心配はまだないらしい。
ところで、ボクの散歩道にはホソガイサンというおじさんの 小さな畑があるのだが、そこに生えるシソが巨大に育った。 もとは小さなシソだったのに、びっくりするほどの大きさで ある。
シソの茂みは暗い赤紫色をしていてちょっぴり気持ちが悪い。 ボクは散歩の時、シソの茂みの横を通るのがちょっぴり苦手 である。 暗い赤紫色の茂みから何かがぬうーっと出てきそうな気がす るのである。 ボクはこのシソの茂みを通りすぎる時は、注意しながら足早 に通り過ぎることにしているのである。
ボクの大好きな草の様子がこの頃ちょっとおかしい。 ボクが毎日上で昼寝をしすぎたせいなのか、それとも大きく なりすぎたせいなのか、ゴツゴツと固くなってしまった。
柔らかかった時は、ボクが上に寝ても次の日にはぴんと上に 伸びていたのだが、この頃、次の日になっても寝たままにな っていることが多い。
これを刈ってしまえばまた根元からフワフワの草が生えてく るかもしれないが、今までアキコに「触るな」と意思表示を し続けていただけに今さら「刈ってくれ」とは言いづらい。 刈ってほしいと気が変わっても、まだまだ意地を張るのが 男らしいのである。
それにしても、この草がゴツゴツになってしまって一番困る のは、もらったビスケットを草の中に落としてしまった時で ある。 ゴツゴツした草にまぎれて、なかなか落としたビスケットが 見つからないのである。 でも、男は弱音を吐いてはいけない。 ボクは男らしく平気なフリをしつづけるつもりである。
昨日、庭の裏の方でゴトゴト音がしていると思ったら、裏の田んぼ の稲がすっかり刈り終わってあった。 つい昨日の散歩の時までは重そうに垂れた稲穂がたくさん風に吹か れていたのだが、今日は根元だけ残してすっかり何もない。
今日は小雨が降って、涼しい日である。 田んぼの稲もなくなって茶色い地面を出し、涼しい風が吹き始める ともうすぐ秋である。 コヨミノウエではもう秋だとアキコは言っていたが、やっぱりこう やって田んぼの稲がなくならないと秋の感じはしないのである。
秋になると日に日に気温が下がってきて、いろんな虫や動物が冬に 備えて慌ただしく動き始める。 ボクはそんな秋が大好きである。 ボスは「まだまだ暑いぞ」と言っていたが、これから日に日に秋が 近づいてくるのをボクは感じている。
今日、庭の鶏が1羽、初めて玉子を産んだ。 鶏にエサをやっていたボスが見つけてアキコを呼んだ。 アキコも家から飛び出してきた。
アキコがボクにも初めての玉子を見せてくれた。 玉子はとっても小さくてピカピカ光っていた。
4月1日生まれの鶏が玉子を産むのは少し早すぎるらしい。 ボスとアキコが昔飼っていた鶏は早くても5ヶ月経たないと玉子 を産まなかったらしい。
それにしてもボスもアキコも玉子を取り合うようにして眺め回し て、とても嬉しそうである。 こんなに喜んでくれるなら、ボクも一度くらい玉子を産んでみた いものである。
写真の花は「コマツナギ」という小さな花である。 ボクの散歩道の田んぼのヘリにたくさん咲いている。
コマ<駒(馬)>をつないでおけるくらい丈夫な茎をしている からコマツナギという名前がついているらしい。 本当はこの植物は「草」ではなく「木」の仲間だそうである。
アキコが「今使っているオサンポヒモがボロになったら、これ でゲンゾーのオサンポヒモを作ろう」と言っていた。 今使っているオサンポヒモは赤くて女の子みたいなのでボクは あまり好きではない。 コマツナギで作ったオサンポヒモはきっと格好いいに違いない。
今日からボクは散歩の時、今よりもたくさん草むらのガサガサ を歩いてオサンポヒモをボロにしてみたい。
ボクの毛が短くなってから、アキコはしょっちゅう庭に出て 来て、ボクの体を触るようになった。 毛を短くしたら、固い毛がなくなってフワフワの産毛の手触 りになったらしいのだ。 アキコが「フワフワで気持ちいい!」とほめてくれる。 たくさん撫でてもらうとボクも気持ちがいい。
しかし、ボクの毛を刈るという目標を達成したアキコが次に 目標とするのはボクの大好きな草をむしることに違いない。 ボクは毛が短くなって涼しくなったので草にオナカをつけな くても快適に過ごせるのであるが、それでもやっぱりこの草 の感触は捨てがたい。
アキコが次の目標を達成することがないように、ボクはまだ 草の見張りを続けなければなるまい。
今日、ボクはとうとう毛を刈られてしまった。 アキコがブーブー音のするデンドウバリカンというやつを持って きた時はどうなることかと思ったが、毛を刈ってもらうのはなか なか気持ちがよかった。 アキコが手を動かすたびにボクの毛がどんどん地面に落ちて、体 がとっても軽くなった。
シッポも「ムーミン風」にしてもらった。 ムーミンというのはよくわからないが、アキコが「とってもチャ ームなシッポになったよ」と言ってくれたのでボクは大満足であ る。
ボスは「すごいトラガリだ!」と笑っていたが、とっても涼しく なったので、ボクはとても気に入っている。 アキコに聞いたら、ボスもケッコンイライ、アキコにデンドウバ リカンで髪の毛を刈ってもらっているらしい。ボクを刈ったバリ カンもボスのお下がりだと言っていた。 アキコはボクの毛を刈るためにずっとボスの髪の毛で練習してい てくれたのに違いない。
ボクが昔暮らしていた山のすぐそばに「オオヤマセンマイダ」と いう棚田がある。 漢字で書くと「大山千枚田」で、大山にあるたくさんの棚田のこ とらしい。 誰が数えたのか知らないが、棚田の数は375枚あるらしい。 とにかくたくさんの棚田である。
今日はボスとアキコと一緒に千枚田に行ってみた。 千枚田の稲はもう実がなって、重そうに頭を垂れていた。
今日、ボクは初めて知ったのだが、稲の実は「米」と言って、 「ハジメチョロチョロナカパッパ」という魔法をかけるとボクが 大好きな、あの「ゴハン」になるらしい。
千枚田に実った米に全部魔法をかけたら、どのくらいの量のゴハ ンができるのだろうか。 考えただけでヨダレが出そうである。
写真の貝のようなものは、カタツムリである。 アキコが調べてみたら「コハクオナジマイマイ」という名前の カタツムリらしい。 もとは外国から来たカタツムリで、九州にしかいなかったのに、 最近ボクの住んでいるチバケンでもたくさん見つかっているら しい。
が、たくさん見つかっているらしい、どころではない。 ボクの庭だけでもこのカタツムリは30匹はいる。 草のニオイを嗅ごうとして顔を近づけると必ずと言っていいほ ど草にくっついている。
でも、ボクはカタツムリは好きである。 いつも自前の殻に隠れて、控えめなところがなかなかよろしい。 ときどきボクはカタツムリが「こんにちは」と顔を出さないか と思って待っているのだが、カタツムリはなかなか顔を出さな いのである。
今日、ボクは鶏舎の横の草むらで茶色っぽくて虫の形をした 面白いものを見つけた。 虫の形の中味はからっぽなのに、それは、足で草にギュっと しがみついて、ボクが鼻でつついてもびくともしなかった。
ボスに聞いたら、これはセミの抜け殻らしい。 セミは大人になるとこの殻を脱いで、羽根を広げ、空に飛び 立って行くのだそうだ。
だとすると、ボクの庭で鳴いているセミの1匹は、この抜け 殻の主かもしれない。 脱ぎ捨てて行ったのだから、セミはもうこの殻はいらないの だろう。 おいしそうなので、ボクが食べておくことにしよう。
ボクが本当にこれを食べたら、アキコが「やめろやめろ」と 大騒ぎした。でも、パリパリしておいしかったのである。
今日、ボスと散歩に行こうとしたら、後ろからアキコがやって来て、 「今のうちにゲンゾーの写真を撮っておく」と言った。
ボクは世界一元気で不治の病にかかっている様子はないので「今の うちに」というのは、やっぱり「ボクの毛が長いうちに」という意 味なのだろうか。
ボクはぞっとして一目散に逃げ出した。 急いで散歩に出かけるフリをしたが、本当は写真を撮られないよう にするためである。
「今のうち」の写真を撮られずにいれば、まだまだ毛を刈る予定が 長引くかもしれない。 ボクはあきらめのいい犬ではないので、最後の最後まで毛を刈られ ることに抵抗してみようと思っている。
今日、アキコの妹のヒロコさんが遊びに来た。 ヒロコさんはオボンヤスミというのになって、パパとママが 住む家にサトガエリしてきたらしい。 「オボンヤスミ」も「サトガエリ」もよくわからないが、き っとパパとママの家に行くとギュウニュウをたくさんもらえ るからやって来たのだろう。
ヒロコさんは運動がとても得意らしい。 スポーツクラブに行けないから少し運動がしたいというので、 今日はヒロコさんも一緒に散歩に行ってきた。
スポーツクラブというのは部屋の中で運動をすることができ るところのことらしいが、散歩に出かけたヒロコさんは、田 んぼの稲にも小さな花にも空の色にまで感激している様子だ った。 部屋の中で運動などせずに、毎日ボクと散歩に出かけたら、 毎日気持ちよく運動することができるのに、とボクは思う。
写真の花はムクゲという花である。八重咲きの種類である。 散歩に行ったヒロコさんがきれいな花だとしきりに誉めた。
暑い中、みなさまが元気に過ごせるようにご挨拶をするよう ボスとアキコから申しつかったので、今日はご挨拶いたす。
ザンショお見舞い申し上げマス
ボクは暑い時のご挨拶もできるオリコウな犬になった。 みなさまが涼しくなるように、助手のアキコが金魚の絵をつけ てくれた。
写真の花はユウガギクという花である。 ボクの散歩道にかわいい花を咲かせている。
ユウガギクというのは漢字で「柚香菊」と書くのだそうだ。 柚の香りがする菊だからそんな名前がついているそうだが、人に はほとんど感じないくらいの香りらしい。 ボクがニオイを嗅いでみたら、なかなかいい香りのする菊だった。
この形の花は、秋になるとたくさん咲く花である。 アキコに聞いたらお祭りがあった日が立秋という日で、コヨミノ ウエではもう秋になっているそうである。 コヨミノウエというのがいつもよくわからないが、もう秋になっ たのでこの花も咲いたのだろう。
それにしても秋になったにしては毎日暑い。 早く涼しくなってくれないと、ボクは丸坊主にされそうで怖いの で早く涼しくなってほしいものである。
今のところボクは毛を刈られずに済んでいる。 アキコがボクの毛を刈るのではないかと勝手に思っただけで、 もしかしたらアキコは最初からボクの毛を刈るつもりはない のかもしれない。
しかし、アキコはボクの隙を狙って庭の草をむしることはあ きらめていないらしい。 今日もボクが気持ちよく小屋で昼寝をしている最中にボクの 大切な草をむしろうとしたのである。 間一髪ボクがすべりこんだので草は無事であったが、油断な らないのである。
今日は昼寝の途中で飛び起きたので、草の見張りをしている 間もあくびばかり出てまいってしまった。 明日からは小屋で昼寝などせずに、明るいうちはずっと草の ところで昼寝をすることにしよう。
ボスとアキコが石けんを作るために借りている家のお隣は「アミー ハウス」というペットのお店らしい。 お客さんの犬や猫をシャンプーをしたり、毛を切ったり、泊めてあ げたりするお店らしい。
そこの飼い猫が夏の暑さ対策のため、頭と前足を除いて丸坊主に毛 を刈られていたらしいのである。 アキコが写真を撮ってきたのを見たら、前足だけナガグツを履いた ような不気味な姿をした猫であったが、アキコは「めちゃめちゃか わいい!」と大騒ぎであった。
毛を短く刈ると涼しい上に抜け毛が飛び散らないのでイッセキニチ ョウだ、とアキコは言っていた。 イッセキニチョウというのはよくわからないが、そう言ったアキコ の視線はボクに熱く注がれていた。
ボクはとても嫌な予感がする。 アキコはいつもボクをいかに涼しくするかを真剣に考えているらし いが、まさかボクも頭と足を除いて丸坊主にしようと企んでいるの ではないだろうか。 あんな丸坊主になったら恥ずかしくて散歩にも行けないのである。 今、ボクの一番の願いはアキコがボクを丸坊主にすることを思いと どまってくれることである。
昨日のお祭りが嘘のように、今日はボクの地区に平和が訪れた。 静かになった散歩道は気持ちがいいので、今日はちょっと遠く まで散歩に出かけてみた。 散歩道を遠回りした先の生け垣に、ユリが満開であった。
右の写真でどんな感じかわかるかもしれないが、写真に写らな いずっと先まで50メートルはこのユリの花が続いていた。 ユリがどこまで続いているか見てみようとアキコが言ったので ユリの終わりまで行ってみたが、歩いても歩いてもユリの花が 咲いていて、同じ所をグルグル回っているような気分になった。
今日、ユリの前を行って帰ってきたので、アキコとボクは全部 で300本くらいのユリの花を見ることができた。 ボクはユリの香りでオナカいっぱいになって、とっても幸せで ある。
今日はボクの住んでいる地区のお祭りだった。 朝早くからたくさんの男たちがオミコシという木でできた小屋の ようなものを担いで笛や鐘の音とともにすごい騒ぎで練り歩いて いった。
夕方からはたくさんの人が、笛や太鼓の音とともにダシという大 きな小屋のようなものを引き回して練り歩いていった。 ダシという小屋のようなものにはチョウチンという灯りがたくさ んついていて、暗い中に色とりどりの光が輝いていてとてもきれ いだった。
でも、たくさんの人がガヤガヤと楽しそうに歩き回って、花火と いう大きな音の出る火花を空に向かってたくさん上げたので、ボ クはとても怖かった。 いつもは静かな地区が今日はまったく違う場所になってしまった ようだった。
人はみんな楽しそうだったが、この辺りに住んでいる動物たちも ボクと同じようにびっくりしたに違いない。 明日の朝、ボスが近くの男たちと一緒にお祭りの後かたづけをす ると言っていた。 後かたづけが済んだら、また静かな地区に戻るだろうか。
今日、ボクは鶏舎のそばの草にオシッコをかけてボスに怒られた。 鶏舎のそばの草は鶏が食べる草だから、オシッコをかけてはダメ だと言われていたのであるが、ついやってしまったのである。
1. ボス「こっちに来て座れ」 ボク「はい。すいません。ついなんです。出来心なんです。」
2. ボス「どうしてダメだと言ったのに・・・」 ボク『に・・・逃げろ』
3. ボス「おい、ゲンゾー!」 ボク『コソコソ』
4. ボス「おい、聞いてるのか」 ボク「はい、聞いてます」
2005年08月05日(金) |
正しいニオイの嗅ぎ方 |
今日はみなさんに、正しいニオイの嗅ぎ方を伝授しようと思う。
「アキコの腕のニオイ」を例にご説明いたそう。 「腕のニオイなんてどうでもいい」と思っている方がいるかもし れないが、腕のニオイだって嗅いでおけば、いつそれが役に立つ かわからないのである。 大切な人のニオイはきちんと嗅いで覚えておくのが良いのである。
さて正しいニオイの嗅ぎ方であるが、この場合、腕のニオイと言 ってもその対象が女性であるからして、鼻を腕にべったりつけて ニオイを嗅いだりしてはいけないのである。
写真のボクのニオイの嗅ぎ方が正しいニオイの嗅ぎ方である。 鼻がつきそうでつかないギリギリのところでニオイを嗅ぐのが正 しい。 紳士は婦女子の腕に鼻をつけたりしてはいけないのである。
ボクが庭の草に寝ころんで昼寝をするのが好きだということは 前にも書いた。 写真の草は、今ボクが一番気に入っている草である。 この草にオナカを乗せて寝ころぶと暑い日でもヒンヤリして、 とっても気持ちがいいのである。
ところが、アキコが最近、「庭が草でボーボーになってきたか ら、少し草むしりをする」と言い出したのである。 そして、ボクの大好きな草をむしろうとするのである。
この草はボクのお気に入りの草だから、草むしり禁止である。 ボクはアキコが草に近づくとこうやって「草むしり禁止」を 訴えることにしたのである。
ボスは時々、ボクの小屋の後ろに住んでいるアイツをボクの庭に 放すことがある。 アイツというのは片方の翼がないオス鶏で、ボスとアキコが一番 最初に鶏を飼い始めた時からかわいがられている5才の鶏である。
ボクはオリコウな犬なので、アイツがウロウロしていても吠えた りしないのだが、犬のボクが近くにいるのだから、アイツも少し くらいボクを怖がってほしいものである。 アイツはボクのことなどまったく気にせずに、ボクのベッドの上 を歩いたり、ボクの大切な草を食べたりした。
その後、庭の鶏舎に近寄って、小さいオスたちを威嚇して驚かせ ていた。 ボクは鶏の番犬なので、鶏を驚かせるヤツはやっつけなくてはい けないのだが、鶏を驚かせているのが鶏の場合には、どうしたら よいのだろうか。
ボスとアキコは、ボクやアイツや鶏舎の鶏たちの様子を見て、楽 しそうに「あはははは」と笑っていたが、ボクには大変迷惑な話 である。
ここのところ、とても暑い日が続いている。 今日も朝からひどい暑さだったが、「今日のおやつはギュウ ニュウに違いない」という予感がボクにはあった。
思った通り、10時すぎにアキコがギュウニュウを持って庭 に現れた。 ボクは暑さも忘れてアキコに駆け寄り、とびきりオリコウな 顔でオスワリとオテをした。 アキコがギュウニュウを持っている時は、すぐにオスワリと オテをすることにしているのだ。
ボクはあまり暑い日が好きではないが、暑い日にはアキコが おやつにギュウニュウをくれることが多いので、そんな時は 暑いことに感謝する。 こんな暑い日に一気に飲み干すギュウニュウほどおいしいも のはない。
今日、ボクはアキコと一緒にヤギを見に行って来た。 ボクは散歩の時にウシを見たことはあるが、ウシは大きくて とても怖かった。 でも、ヤギは大きくないと言うので見に行くことにしたのだ。
ボクはクルマに乗って窓の外を見ているうちに、ヤギのこと など忘れてしまっていた。 クルマを降りて草がたくさん生えている道を歩いていると、 散歩を楽しんでいるような気分になった。
ボクは知らない道の散歩でとてもご機嫌だったのだが、草む らから急にヤギが顔を出したので、とてもびっくりしてしま った。本当に突然草むらからヤギが出てきたのである。
アキコはヤギのことを勝手に「ヤギオ〜!」と呼んでいた。 これはアキコが勝手につけた名前である。 ヤギオはボクに気づいて、こっちに出て来なかったが、顔を 見るとニコっと笑っていた。
アキコは「ゲンゾーもヤギオも笑ってる!」とご機嫌だった が、ボクにはわかる。 ボクもヤギオもお互いとても怖かったのである。
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