写真は「ノミノフスマ」という草の花である。 この花はボクの庭の隅っこにちょっこり咲いていた。
ノミノフスマとはノミの掛け布団という意味らしい。 小さい葉っぱがノミの掛け布団になりそうなので、この名前が ついたらしい。
葉っぱも小さいが、花もとっても小さくてかわいい。 真っ白で花びらに切り込みが入っていて、とても凝ったつくり をした花である。
ボクの体が、この花の花びらを掛け布団にして眠れるくらい小 さかったら、ボクはこの花びらにくるまって眠ってみたい。
今日はボクのオリコウっぷりを写真でご紹介したいと思う。
1、ボクはアキコと庭で遊んでいた。 アキコが暴れてボクを喜ばせたのでボクは興奮してワンワン 騒いでしまった。
2、そこへボスが出てくる。 オリコウなボクはボスへ挨拶することも忘れないので、ボス に挨拶に行く。
3、ボスは「静かに!」のポーズをして、ボクに「オスワリ」を 命じる。
4、ボクはきちんとオスワリする。 ボスの目を見ることも忘れない。
これがボクのオリコウ証拠である。 ほほーん。きちんとできるのであるよ。
ボクはこの草が気に入っている。 本当は「ナズナ」という名前で、ハルノナナクサの一つらしいが、 アキコはいつも「ペンペン草」と呼んでいる。
どうしてペンペン草というのかをアキコが見せてくれたことがある。 一本採って、葉の部分ちょっと引っ張ってプラプラにし、茎を持っ てクルクル回すと葉がぶつかって面白い音がするのだ。 アキコは「ペンペン言うでしょ?」と言っていたが、ボクにはペン ペンとは聞こえず「ペペペペペ」と言っているように聞こえた。
でも、勢いがあってなかなか面白い音がしたし、形も良いし、食べ ることもできる草らしい。 この草は日本中どこにでも生える春のダイヒョウテキな草らしい。 春になってこの草を見つけて、アキコのようにペンペンいわせたり 食べたりして喜ぶ人が日本中に出てくるに違いない。
今日はどんより雲って、ぱっとしないお天気である。 雨が降りそうな時は、アキコがベッドに毛布を敷いてくれないので、 ボクはのんびりお昼寝ができない。 毛布でお昼寝をしたいが仕方がない。 こんな日、ボクは何となく庭をウロウロして過ごすことにしている。
こんな日、ボクがつまらない時間を過ごしていると思う人がいるかも しれないが、実はそうでもないのである。 ウロウロしていると、いつもじっくり見ることもないようなものをじ っくり観察できるのだ。
今日は、フキノトウの花をじっくり観察してみた。 アキコが「もうトウがたってしまって食べられない」と残念そうにし ていたフキノトウにきれいな花が咲いていた。 フキノトウの花は、小さくて白くてとっても可憐な花だということが わかった。 食べられなくなるのは残念だが、こうしてきれいなフキノトウの花を 観察するのも悪くないぞ。
今日、アキコが裏庭からヘンテコな形の草を掘り起こした。 ノビルという植物らしい。 根の上が白くふくらんでいて、何だか良い香りがする。
アキコとボスはこれを食べるのが好きらしい。 生で食べるとツンと辛くて、火であぶって食べると甘くて おいしいらしいのだ。 今日は火であぶってスミソというものをつけて食べたらしい。
ボクはノビルを見せてもらったが、触ることもできなかった。 ノビルはネギやニンニクの仲間なので、犬には毒らしいのだ。 アキコはボクが届くところにあるものは何でも食いちぎって しまうと考えているらしいが、ボクはオリコウだからそんな ことはしないのだ。
毒でもいいからもう少し近くでノビルを見てみたかった。 ・・・本当はちょっとかじってみたかった。
今日は暖かくて風の強い日である。 ものすごい南風が吹いて、ボクの庭にたくさんの木の葉や木の枝を 運んできた。
アキコは「これはハルイチバンだな」と言って、ハルイチバンのお 祝いに、ボクの頭に布を巻いてくれた。 別にハルイチバンは祝うものではないらしいが、アキコはハルイチ バンのメデタイ感をアップするために、ボクに布を巻きたくなった のだそうだ。
この布はマメシボリのテヌグイというものらしい。 これでボクもメデタイ感じになっただろうか。 アキコは「とても似合う」と言っていたが、本当だろうか。
ボクは犬のくせに洋服を着ているヤツは大嫌いだが、このマメシボリ のテヌグイというやつは、なかなかしっくり体に馴染む感じがする。 今日は風も強いことだし、これを巻いてすごそうと思う。
「マテ」の時はきちんとボスの目を見る、というのがボスとボク とのキマリゴトである。 だから「マテ」と言われたら、鼻先にビスケットを出されても、 ボクはボスの顔を見なければいけないのである。
ボクはオリコウな犬だから、ビスケットを鼻先に出されても、き ちんとボスの顔を見ることができる・・・・・・つもりだった。
が、しかし、写真を見てみると、どう見てもビスケットを見てい るように見える。 いや、確かにボスの顔を見ているはずなのだが・・・・。 ビスケットを見ているように見える・・・・かもしれない。
これは、ボクが悪いのではなく、ボクの目が悪いのである。 ボクはオリコウなのだが、ボクの目がダメなのである。
昨日から、カエルが鳴き始めた。 カジカガエルというカエルで、鈴を転がしたような良い声で 鳴くカエルである。
しかし、まだノドの調子が今ひとつなのか、どう聞いても 「ウフフフフ、ウフフフフ、ウフフフフ」 と笑っているように聞こえる。 カエルは暖かくなって1匹鳴き始めると、次の日には4匹、次は 10匹・・・・そして数えられないくらいの数のカエルが大合唱 を始めるのである。 こんな笑い声のカエルが増えてきたら、夜中誰かに笑われている ような気がして眠れないので困る。 早くノドの調子を整えて、良い声の合唱を聞かせてほしいものだ。
ちなみに写真は「ホトケノザ」という花である。 カエルの写真はちょっぴり気持ちが悪いのでやめたのである。 (このホトケノザはハルノナナクサのホトケノザではないらしいが その話はまた今度にしようと思う。)
今朝、うるさいくらいのトリの声が聞こえてきた。 どこかでたくさんのトリたちがおしゃべりをしている声だ。
いったいどこから聞こえてくるのかと思って見てみると、 てっぺん杉の近くの木にたくさんのトリがとまっているのが 見えた。 トリたちはみんなで盛んにおしゃべりをしているようだった。 何を話しているのかは、ボクにはわからなかった。
この木は、寒くなってから葉っぱが落ち、裸になって、淋し そうにしていた木である。 葉っぱのない木にとまるたくさんのトリは、まるで木の実の ようである。 たくさんのおしゃべりな実をつけて、急ににぎやかになった ことを木も喜んでいるに違いない。
今朝早く、雪が降った。 明るくなると雪は雨に変わってしまったけれど、ボクの ベッドに雪がうっすら積もった。
ボクは雪が大好きである。 ボクは嬉しくて、さっそくベッドの上を歩いて、雪に足 あとをつけてみた。
雨が降って、ボクの足あとはだんだん消えてしまったが、 なかなか芸術的な足あとだった。 雪のすばらしいところは、こうしてつけたボクの足あとも 時間とともに消えてしまうところだ。 はかないものは美しいのである。
ボクの庭に最近よく白黒の野良猫が来る。 ボスとアキコはヤツのことを「パンダムスメ」と呼んでいる。 野良猫のくせに名前があるなんて生意気であるからして、ボク は「ノラネコ」と呼ぶことにしている。
ヤツは「パンダ」という猫の娘らしい。 ヤツの親「パンダ」というのは、アキコの話によると、犬に ケンカを売るような凶悪な猫だったらしいが、「パンダムスメ」 の方はいたっておとなしい猫である。
今日も何やらアマガキの木の下で、ぼんやり景色を眺めていた。 ボクがワンワンと吠えたらこっちを向いて、しばらくだまって ボクを見ていた。 そして、そのままノソノソとどこかへ行ってしまった。 ボクが吠えたら驚いて走り去ってほしいものだが、ケンカを売 られるのも怖いので、去ってくれて良かったと思う。
ボクの散歩道にはたくさん鳥がいる。 写真の鳥はハクセキレイという鳥らしい。 いつも地面をたたくように尾をプリプリ振っている。
今日、散歩道にいたヤツはボクとアキコが近づいても気にせず 同じくらいの間隔をあけて同じ方にしばらく歩いていた。 ボクたちが急に走り出したりしないかとキョロキョロしながら、 尾をプリプリ動かして機嫌よさそうに歩いていた。 ボクはオリコウな犬なので、鳥を脅かしたりしないのだ。
ヤツは虫を食べるらしいので、暖かくなって虫がたくさん出て きたのが嬉しいのだろう。 春らしくなってきたのを喜んでいるのはボクだけじゃないのだ と知って、ボクは何だか嬉しい気分になった。 ハクセキレイくん、また一緒に散歩してやってもいいよ。
今日は一日中雨が降っていた。 ボクの庭にもたくさん水たまりができて、たまった水に雨が パシャパシャ落ちてきた。
せっかく暖かくなってきて、春の小さな草花を楽しめるように なったと思ったのに、今日からしばらくは雨が降るらしくて残 念である。
雨の日は、ひなたぼっこもできないし、大好きなお散歩も早足 ですぐに終わってしまうのでつまらないことが多い。 でも、水たまりにポタポタ落ちてくる雨が丸い輪を作るのをぼ んやり眺めるのも悪くない。 今日からしばらくは雨が作る丸い輪を見て過ごすことにしよう。
今日、アキコと軽トラというクルマに乗ってお出かけした。 軽トラというクルマは、窓が大きくて外がよく見える。 軽トラはぐんぐんすごいスピードで走った。
道沿いには、たくさんの菜の花が咲いていた。 軽トラがぐんぐん走ると、葉の花がぐんぐんすごいスピード で後ろに消えていった。 スピードが速くなると、たくさんの菜の花は黄色い毛布のよ うになった。 毛布のような菜の花畑はどこまでも続いているように見えた。
あの黄色い毛布の上でお昼寝をしたらきっときっと気持ちが いいに違いない。 一度あの上でお昼寝してみたいものである。
よくわからないが今日はチョコレートというものに関係のある日らしい。 でも、ボスもアキコもボクもチョコレートというものとはまったく関係の ない1日を過ごした。
ボクはそんなことよりも空を飛ぶ鳥の方が気になるのである。 今日は風が強かったが、空のずうっと高いところに鳥が飛んでいた。 本当に高い、遠いところを飛んでいるので、鳥が点のように小さく見えた。
ボスから聞いた話だが、鳥は「トリ目」という特別な目を持っているらしい。 トリ目というのはどんな目のことなのだろう。 もしかしたら、トリ目とは何でも見えてしまう目のことなのかもしれない。 そうだとするとあの鳥たちはあんな高いところからボクの脳みそまで見てい るのかもしれない。 そう思うと何だか怖ろしい。 ボクの庭にイソウロウしている鶏のアイツもトリ目を持っているはずである。 アイツに脳みそを覗かれないように、これからは十分注意しようと思う。
今日はアキコと散歩に出かけて、梅の木の下で一休みした。 トミヤマのコウバイも見事だったが、ボクの散歩道に咲いてい る白い梅もなかなか見事である。 暖かい日差しの中で、アキコとのんびり梅を見るのも悪くない。
一休みしながらボクとアキコはいろいろな話をした。 今日、ボスはボクが毎日飲んでいる山水の水源をきれいに掃除 するために近くの男たちと一緒に山の上に出かけているらしい こと、今日はある人のタンジョウビであること、タンジョウビ とはその人が生まれた記念日のことだということ、その他いろ いろな話をアキコはした。 ボクはたくさんの話を一度にされて、全部覚えきれなかったが、 一休みする間にたくさんのことを学んでかなりオリコウな犬に なった。
タンジョウビというのはお正月と同じくらいメデタイ日なので、 「オタンジョウビオメデトウ」と言って祝うのだそうである。 ボクも祝ってみようと思う。 オタンジョウビオメデトウ!
今日、散歩をしていたら道に白と桃色のまだら模様のツバキの花が 落ちて来た。 ツバキの花は、きれいな花のままボタンと落ちるので面白い。 上を見てみると、ツバキの木があって、白と桃色のきれいなツバキ の花が咲いていた。
いつも下ばかり見ていたから、こんな高いところにこんなにきれい なツバキの花が咲いているなんてまったく気がつかなかった。 濃い桃色のツバキもきれいだが、まだら模様のツバキも見事である。
よく見てみると、ブンブン音をたてて黄色と黒のシマシマの虫が飛 びまわってはツバキの花に顔をうずめていた。 アキコに聞いたところによると、ヤツはアブという虫らしい。 甘いツバキの花の蜜を舐めているらしいのだ。
春になるとヤツらくらいの大きさのブンブン飛ぶ虫がたくさん出て くる。ヤツらのブンブンいう音もまた春の音なのだろう。
昨日も今日も春のような暖かさである。 今日はアキコと散歩に出たら、土手に、今にも開きそうな桜の つぼみを見つけた。 他の桜のつぼみはまだ固いというのに、ずいぶん気の早い桜で ある。
でも、この桜の気持ちもわかる。 昨日と今日の暖かさでは、もう春が来たと思うに決まっている。 ボクだって、もう春が来たと確信している。
暖かいお日さまの下で、アキコと一緒に小さな花たちを見たり、 草のニオイをかいだりしながら散歩をするのは最高である。 散歩はやっぱり春が一番楽しい。
そろそろ田んぼの土の中からカジカガエルという茶色いカエルが ごっそり出てきてクルルルル、クルルルルと合唱を始める頃である。 早くカエルたちの合唱が始まらないか、楽しみである。
前にも書いたことがあるが、ボクはギュウニュウが大好きである。 温かいゴハンも一気に食べるが、ギュウニュウもやはり一気に飲む のが一番おいしい。そして、男らしい。
写真はボクが一気にギュウニュウを飲み干した時の顔である。 息もせず一気に飲み干したので、プハーっと鼻から息をした瞬間だ。 ギュウニュウを飲み干して、最初に鼻から息を吸い込んだ時のギュウ ニュウの香りがいっぱいする空気がたまらなくおいしいと思う。
写真を見るまで気が付かなかったが、ギュウニュウを飲んだ後の ボクの口にもやはりギュウニュウがついていたらしい。 そういえば、いつもアキコはボクを見て笑っていた。
でも、ゴハンつぶがついているよりもギュウニュウがついている方 が白いヒゲが生えたみたいで格好いいと思う。 ギュウニュウのひげは男らしい感じがする。 今さら舐めて取るのも恥ずかしいのでこのままつけておこう。
ボクの庭からクルマで5分くらい走るとトミヤマという町になる。 そこにきれいな桃色の並木があるので、それの写真を撮ろう、とアキコが言った。 「ボクも日記に書くから連れて言ってくれ」と言ったら、ボスは「イヤだ」といじわるを言ったが、アキコがボクも一緒に連れていってくれた。
クルマで坂を上って、下りになるとすぐにきれいな桃色の並木があった。 この並木はコウバイという梅の並木らしい。 そこでアキコとボクはクルマから降りて、並木沿いを散歩した。
コウバイの並木はすごい桃色のかたまりだが、近くで見るとそれぞれの木が違う顔をした花を咲かせている。 花びらが5枚のもの、花びらが豪華なもの、色の濃いもの、薄いもの。 このいろいろなコウバイが重なって、見事な桃色の並木になっていた。 すばらしかった。
それから、ボクはこのコウバイの枝にミノムシも見つけた。 ミノムシは梅の枝で作った丈夫そうな着物を着ていた。 ヤツはときどき顔を出して、見事なコウバイの並木を楽しんでいるに違いない。 とてもいい場所をねぐらに決めたものだ。 ボクの小屋もしばらくの間、ここに置いてほしいくらいである。
今日は1日雨が降っていてつまらない。 でも、今日はボスが一緒に遊んでくれた。
ボスがボクと遊んでくれることなんて滅多にない。 ボクはすごく嬉しくて、興奮してしまった。
アキコがボクがボスと一緒に遊んでいる写真を撮ろうとしたが、 ボクとボスの動きがあまり早いのでちゃんと写真に撮れない、 と嘆いていた。
だが、男の遊びは写真に撮れるような速度ではいけないのだ。 写真に撮れないほどのスピードで遊ぶからこそ面白いのである。 ボスは早く動いて疲れた、と言っていたが、また一緒に遊んで ほしい。
ボクは寝相が悪いらしい。 ときどき夜目が覚めて目を開けると、逆さまになったアキコが 見えることがある。 アキコが逆さまになっているのではない。 ボクが逆さまに寝ているのだ。
アキコはどうも逆さまに寝ているボクの写真を撮ろうと企んで いるらしい。 今日も夜になってから、小屋の中のボクの写真を撮りに来た。
でも、ボクは逆さまに寝ていなかった。 だって、まだ日記を書いてないから、ビスケットをもらってい なかったのだ。 もう日記を書いたし、ビスケットももらったから、これで安心 して逆さまに眠れるというものである。
ボクはアキコのひざでカリカリを食べるのが大好きである。
アキコはボクがカリカリを残していると「どうして食べないの?」と 言って、ひざにボクを乗せて手でカリカリを食べさせてくれる。 アキコのひざも手のひらも温かくてやわらかい。 お皿に乗っているカリカリを1人で食べるよりもアキコのひざでカリ カリを食べる方がずっとおいしいのだ。
ボスは時々それを見て「俺の女房のひざで飯を食いやがって。」と言う。 ボスはひざでカリカリを食べさせてもらったことはないらしい。
ボクはアキコのひざでカリカリを食べるために、時々おなかがすいて も我慢してアキコが「どうしたの?」と言ってくれるのを待っている のだ。 この我慢なくしておひざでカリカリは食べられないのである。
ボクの散歩道に大きな木の切り株があって、そこにすごく大きな キノコが生えている。 このキノコはすごく固い。 そして、真ん中に木の枝が刺さっている。 木の枝はボクがひっぱっても全然抜けない。
ボスもアキコもこのキノコが何なのか知らないらしい。 ボスやアキコがジタクに来た時からずっとこの木の切り株に生え ていて、その時からずっと木の枝も刺さっていたのだそうである。
アキコが「このキノコはゲンゾーよりもずっと年上なんだよ」と 言っていた。 キノコのくせにボクよりも年上なんて生意気なのだが、木の枝に 噛みついて放さないようなキノコはちょっと怖いので、あまり近 づかないようにしようと思っている。
今日、ボクはフキノトウを見つけた。 ボクがボスとアキコのところにもらわれて来たのも、この フキノトウの季節だった。 散歩に出かけた山の道でフキノトウを見つけてアキコに教 えてやったら、アキコがたいそう喜んでボクをすごく褒め てくれたのを覚えている。
フキノトウを見つけるとアキコが喜ぶので、ボクはいつも 散歩のたびにフキノトウを見つけてやったものだ。 ボクはフキノトウを見つける天才なのだ。
今日もボクがフキノトウを見つけてやると、アキコはたい そう喜んだ。 フキノトウは天ぷらというものにするとおいしいらしい。 油だからボクは食べられないそうで、とても残念である。
聞くところによると、フキノトウは春の味がするらしい。 春の味とはどういうものなのか、ボクも知りたいものであ る。
今日は「セツブン」という日らしい。 セツブンの「セツ」が季節のことで、「ブン」が分けることらし い。季節を分けるからセツブンといって、コヨミノウエでは今日 までが冬で、明日から春になるのだそうだ。 「コヨミノウエ」というのがよくわからないが、とにかく季節が 分かれて、明日からは春になるのだ。
今日はポカポカ暖かくて、気持ちのいい1日だった。 まぶしいほどの日差しがボクを照りつけて、最高に幸せな気分に なった。
アキコは明日から春だと言ったが、今日はもう十分春だった。 きっとアキコは日付を1日間違えたのだな。
ボスもアキコもなんだか忙しそうだが、そんな時こそ散歩に 出かけてリフレシュしなければならないのだ。
ボクはオリコウな犬なので、アキコに聞いて「リフレシュ」と いう言葉も知っている。 そしてボスとアキコ思いの番犬なので、毎日かかさずボスや アキコを散歩に連れていってやっているのだ。
今日はボスと一緒にツバキの花を観賞した。 ツバキの花は木にいっぱいに咲いて、みんなボクを見ていた。
いや、何だかみんな横にいるボスではなく、下にいるボクを 見ているような気がしたのだが、あれは気のせいだったのだ ろうか・・・。
アキコがボクの写真をいじって、変な顔の写真を作った。 片方はクマ、もう片方はウサギになった、と言ってアキコは喜んでいたが、 ボクの顔で遊ぶなんてけしからんのだ。
ボクはクマがどんなものか知らないが、写真を見る限り格好いいものだとは 思えない。こんな顔をした動物には会いたくないものである。 ウサギは山で時々見たので知っているが、耳が長いだけで、あんな弱そうな ヤツにボクは似ていないのだ。
でも、写真を見てわかったことがある。 クマやウサギに似ているというボクの顔よりも、本物のボクの顔の方が格好 いいということは、犬はクマよりもウサギよりも格好いい動物なのだ。 犬に生まれてきて良かったと思う。
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