思い通りにならないのが人生だから。 新しい仕事が決まった時その人は悲しそうに言った。 その顔が忘れられない。 悲しみや不安を隠して精一杯明るくふるまっているように見えるその人が痛々しくみえた。 これが最後だから俺はいつもより彼女と話をした。 励ましてあげたかったんだ。
「新しい仕事はむいていると思うよ。」って言ったらうつむいてしまって少し震えているみたいに見えた。 心の内を押さえきれなくなったかのように。 彼女の不安が俺にまで伝わってきた・・・ような気がした。
仕事って大変だからね。 特に彼女のように周りに気ばかりつかっている人は。 守ってあげられるものなら守ってあげたいけどそれは俺の役目じゃない。 悲しいけど俺の出番はないんだよななんてぼんやり考えていたら彼女が突然・・・ 俺も驚いたけどまわりも驚いた。 まわりの唖然とした顔をみて余計に焦った。
俺は理性を捨てて感情で恋に走れる人間じゃない。 ほんの一瞬の気の迷いだとは思うけど彼女も俺のことを好きになってくれたのかもしれない。 俺はもとより彼女のことは大好きだ。 でもどんなに好きでも先に進めない恋ってあるよね。
彼女にありきたりな別れの言葉を述べて家路に着く時泣きそうになった。 彼女の俺の言葉を待つ真剣な顔が脳裏に焼きついて離れない。
でもこれでよかったんだ。 きっとね。 わかっているのに辛いんだ。
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