思い出の貝殻をお気に入りの小瓶に詰めたら・・・
耳に近づけてそっと・・振ってみてください
懐かしい音が聴こえて来ませんか!?
ため息 ・・・積もらない雪
はらはらと
わたしの心 湿らせながら
真白な雪が降る
まるで終わりを知らないように
どれほどの
瞬間(とき)が積まれたのか
どれほどの
愛を積んだのか
ずっと
そばにいたのに
ずっと
見ていたのに
あなたの深いため息を聴く
そのときはじめて
あなたの中の孤独を知った
はらはらと
湿った積もらない雪が
わたしの心の中だけに
いつまでも
いつまでも 降り続ける
041
雪のように・・・
冷たい・・・
この凍りそうな冷たさを
あなたに伝えたい
あなたがいるところは
どんな冬ですか
あなたはいま
何をしてますか
わたしが
冷たい手を差し出したら
何も言わないで
そっと両手で包んでくれますか
そしたら
窓に積もる雪のように
わたしはあなたで
すっぽり埋もれることでしょう
一時間だけ
あなたの腕の中で
過ごさせてくれますか
そしたら
わたしの心は
淡雪のように
溶けてしまうことでしょう
わたし いま
雪のように 冷たい
わたし いま
あなたのそばに
ゆきたい
040
おはよう
冷気に包まれて
今朝一番の陽射しが
窓越しに
君を照らす
君は
深く息を吸い込んで
それから
ゆっくりした動作で
首を持ち上げる
紅いくちびるから
最上の笑みがこぼれ
可憐な顔を
こちらへ向けた
おはよう
おはよう ジュリエット
*******
ある朝、黄色のジュリエット(蘭)が花を開きました
去年の冬はあんなに厳しい環境を耐えただけに
今年はもう会えないと思っていたのに・・・ごめんね
それなのにいつも以上の美しい姿を見せてくれたのです
中央の紅い花弁が可憐です039
伝えたい
あなたがいてくれたから
わたし いま
この空を胸いっぱい
味わっています
息をするのもいけないと感じた
あの漆黒の闇を
そっと照らしてくれたから
咽ぶような暗い霧の中で
迷子のように耳を塞いで
怯えていたわたしを
そっと包んでくれたから
いつか
あなたが教えてくれた
海に行ったなら
銀色の波に浮かぶ
小船の安全祈りましょう
いつか
あなたが愛した町に行ったなら
川にかかる橋の上で
鳥たちの
小さな幸せ祈りましょう
あなたがいてくれたから
わたし いま
この空を見上げ
思いっきり
息をすることができる
もしも
あなたに逢えたなら
わたし
涙でいっぱいの目で
ありがとうって伝えましょう
038
一月の風
今日の風
甘い匂いがするね
この風は
吹くたびに違うけど
感じるたびに違うけど
今日のこの風
懐かしい
甘い匂いがするよ
遠い日のあの匂い
思い出すだけで
胸がきゅんってなる
今日のこの風
とても好きだよ
甘い匂いが
すごく好きだよ
037
ありがとう
研ぎ澄まされた空気を
体中に感じて目覚める朝
蒼く凍る光を
唇に受ける
頬を撫でる風が耳たぶに
あなたの温もりを伝え
静寂(しじま)に昇る朝陽が
あなたの姿を瞼に映し出す
おはよう 小鳥
おはよう 白く浮き上がるビルの群れ
おはよう 遠く光る海影
もう心配しないで
これまで
あなたの優しさ
いっぱいもらったから
わたしもう
だいじょうぶ
だから
今日から
自分の力で歩いていける
きっと
ひとりで歩いていける
036
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