思い出の貝殻をお気に入りの小瓶に詰めたら・・・
耳に近づけてそっと・・振ってみてください
懐かしい音が聴こえて来ませんか!?
小船の感傷
風の色が見えた
暮秋の昼下がり
水鳥は湖畔に遊び
わたしも
ゆるやかな時間
青い湖に
小船を浮かべてみる
薄く彩づくユーカリの下
水際の木漏れ日を浴びながら
ただ流れのまま
何かの音がする・・・
時に水音 魚が跳ね
時に風音 木の葉が擦れる
時に誰かの声 あなた
目を閉じてみる・・・
あなたの面影と湖の景色が
一枚の絵として映される
小さなパレットから
少しづつ色を重ねる
透明な色
不透明な色
虚ろな花びらが
次々と
落ちては浮かぶ湖のように
あなたとの思い出に
ひとつずつ色を乗せる
小船は
静かな午後の陽射しを映しながら
漂い続ける
あなたが呼ぶ声が聴こえ
確かな感覚でわたしに響き
あなたの姿が浮かび
確かにわたし
あなたを愛していると感じる
016
見えない君に届けたい / 風よ
風よ
その人が居るところへ
この歌を届けておくれ
木々が落とした美しい葉に
この文字を乗せて・・・
小鳥たちの残した優しい羽根に
この歌を乗せて・・・
風よ
その聡明な耳元で
そぉっと 歌っておくれ
その崇高な肩を
そぉっとほぐしておくれ
その人は
きっと驚いたように振り返るだろうね
そして
誰もいないことに気付いたら
不思議そうな顔で・・
いつまでもこの空を見上げるだろうね
風よ
今度吹いてくるときには
その人の優しい笑みを
きっと
運んで来ておくれ
待っているから わたし
いつまでも 待っているから・・・
015
今宵月の下に
風が走る丘
泡沫の夢が
駆け抜ける
南の国の姫たちが
声をたてながら
白き砂の上で戯れ
色とりどりの衣( が
風に舞う
眩しいほどの月神( が
姫たちに目を細める
この夜の光景を
焼き付けるように
青く大きな瞳が
優しく瞬く
白く澄んだ声が
誰もいない丘に響く
少し湿った風が
姫たちの長い髪を濡らす
集まれ 光たち 月神のもと
この丘の上に 絶えない夢を
そして 今宵
姫たちを
優しく照らし続けておくれ
014
***
鳥取砂丘の夢
旅愁
永遠の愛が降り注ぐ
コバルトに輝く海
深く遠く彷徨う小鳥
夢見がちな羽が
あなたの光を目指して
美しい流線を描く
月光を射しながら 白く続く砂丘
この夜を永遠の旅へといざなう
あの神話の世界までも 旅は続き
心を洗いながら 神の里へ帆を立てる
あなたの優しい目が
一瞬、鋭さを見せた
ふと そんな錯覚を
研ぎ澄ました心が覚える
旅の終わりを見たくない小鳥
どこまでも遠く眼差しを投げる
あなたのその愛が 心を虜にし
あなたのその愛が 体を埋め尽くす
この旅の向こうに
ふたりの永遠は見えるのですか
あなたの中に
私の永遠はあるのですか
013
***
山陰の旅に思いを馳せて
はじめましての音
懐かしい
とても懐かしい調べ
初めて出逢ったはずなのに
このドキドキはどうしてだろう
ひとつの音が
ゆっくりと水音に変わっていく
その音がまた次の音を叩き
続いてわたしの心を叩く
わたしの心を揺らし
わたしの心をを奪うもの
音たちのダンス
空に溶けてストリングスを爪弾き
海に溶けてキーを叩く
新しくも懐かしい調べ
いつまでも絶えることなく
海のように流れを伝えてほしい
空のようにおおらかさを歌ってほしい
012
***
Ayuさんの 新曲を耳にして・・
るこう草の不思議・・・どちら?
るこう草
小さく揺れるバルコニー
紅き星型
朝の風を魅了する
ずっと昔
同じ景色・・・
君とふたりの蜃気楼
あの時聴いた音楽は
何だったのだろう
今朝のラジオと同じボサノバ
コンガの音色
リズムを刻む君の横顔
涼しく輝いていただろうか
目は 鼻は 口は
どんな表情を見せていたのだろう
紅い星型見ていると
透明の風が吹いてきて
小さな花が微笑んで問いかける
思い出そうとしているの
忘れようとしているの
るこう草が 静かに揺れる
紅い星型が 小さく揺れる
***
今年もベランダに
赤い星型の るこう草が咲く
011
月影ほろ酔い
月に影射す
美し筋雲
幾千の星光れども
誰があなたに勝てましょう
青く研ぎ澄まされた冷気
ただ秋の終わりなき夜を渡る
この世界のどこに
ここ以上の極上を見出せましょう
どこまでも遠し
どこまでも美し
どこまでも蒼し
今宵 万葉人になれましょう
しばし唐衣纏いましょ
今宵 天上人になれましょう
しばし羽衣纏いましょ
*******
名月を見上げて
010
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