りえるの日記

2008年07月26日(土) 時代と寝る

暑い夏は、涼しい部屋での読書が好きだ。
仕事の合間、電車の待ち時間、日常生活から自分を
遠ざけるために、読みふける。

仕事帰りに、本屋に行き、三島「小説家の休暇」を手にとる。
最初にページの日記はうだるような夏にふさわしい記述だ

「夏という観念は、二つの相反した観念へ私をみちびく。
ひとつは生であり、活力であり、、健康であり、ひとつは
退廃ではり、腐敗であり、死である。

1945年から47,8年にかけて、いつも夏がつづいていたような
錯覚がある。

あの時代には、骨の髄まで因習のしみこんだ男にも、お先真っ暗な
解放感がつきまとていた筈だ。あれは実に官能的な時代だった。
倦怠の影もなく、明日は不確定であり、およそ官能がときずまされる
条件がそなわっていたあの時代。

私はあのころ、実生活の上では何ひとつ出来なかったけれども、
心のうちには、悪徳への共感と期待がうずまき、何もしないで
いながら、あの時代とまさに「一緒に寝て」いた。」


時代とともに寝る官能。

結婚という、確立された輝かしい未来に官能はない
先が予想できない関係のガラス細工のような深淵に
人間は、導かれていくのだろう

永遠を否定する女でありたい



2008年07月22日(火) Te me souviens?

仕事帰りに、ワインを買いに。
フレンチレストラン1日講座に参加して、
シェフが、ニース風サラダにロゼワインをあわせて
海風にあたりながら、裸で食べる。これが最高なんだよね。
と聞き、どうしても自分でも試したくなってロゼを買いに
でも、結局、ボジョーレにした。
ほどよい軽さと重さでいい。

オゾンの「ふたりの5つの別れ路」を見た。
離婚するシーンから始まり、
彼女らの亀裂、結婚、出会いと走馬灯のように
映像がすすんでいく。
別れる運命でも、誰でも、愛しあった時代がある
輝ける時代を
美しい海辺の夕焼けとともに、小さな黒点の二人のシルエットが
悲しみをそそる。
誰もいない海は、ずるい。
すべてを物語る力がある。



2008年07月13日(日) 北原白秋 接吻

記憶。
深い香りは、過去への道しるべ。
漂う時間に酔いしれようではないか。
ボードレールも言っている。

Enivrez-vous

Mais de quoi? De vin,de poesie ou de vertu
a votre guise. Mais Enivrez-vous.
何に 酒にでも、詩にでも美徳にでも
お好きなように だがとにかく酔いたまえ

そして、白秋。
いろいろなものがつながっていく。


  接吻

臭い(におい)のふかき女にて
身体(からだ)も熱くすりよりぬ
そのときそばの車百合
赤く逆上(のぼ)せて、きらきらと
蜻蛉動かず風吹かず
後退(あとし)ざりつつ恐るれば
汗ばみし手はまた強く
つと抱き上げて接吻(くちづ)けぬ
くるしさ、つらさ、なつかしさ
草は萎れて、きりぎりす
暑き夕日にはねかえる



2008年07月10日(木) 悪徳と美徳

「悪徳の栄え」サドを再読。
とんでもない作品だと以前は途中で投げ出したけど
フランス文学の土台ができた今は、楽しめる。

悪徳も美徳も荊の道なら、悪徳の道を進もうではないか

なんてくだりは、ぞくぞくする。

悪徳、美徳つながりで、三島「美徳のよろめき」を再読。

美徳の不幸はいかなるものかを考えさせられる。

美徳の鎧をかぶった節子は、悪徳である愛の証の後、
自然の定理か、戒めかのように何度も身ごもる。

痛みの代価に幸せを感じるなんて、カトリックみたいだ。
ある意味、殉教小説のよう。


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