暑い夏は、涼しい部屋での読書が好きだ。 仕事の合間、電車の待ち時間、日常生活から自分を 遠ざけるために、読みふける。
仕事帰りに、本屋に行き、三島「小説家の休暇」を手にとる。 最初にページの日記はうだるような夏にふさわしい記述だ
「夏という観念は、二つの相反した観念へ私をみちびく。 ひとつは生であり、活力であり、、健康であり、ひとつは 退廃ではり、腐敗であり、死である。
1945年から47,8年にかけて、いつも夏がつづいていたような 錯覚がある。
あの時代には、骨の髄まで因習のしみこんだ男にも、お先真っ暗な 解放感がつきまとていた筈だ。あれは実に官能的な時代だった。 倦怠の影もなく、明日は不確定であり、およそ官能がときずまされる 条件がそなわっていたあの時代。
私はあのころ、実生活の上では何ひとつ出来なかったけれども、 心のうちには、悪徳への共感と期待がうずまき、何もしないで いながら、あの時代とまさに「一緒に寝て」いた。」
時代とともに寝る官能。
結婚という、確立された輝かしい未来に官能はない 先が予想できない関係のガラス細工のような深淵に 人間は、導かれていくのだろう
永遠を否定する女でありたい
2008年07月22日(火) |
Te me souviens? |
仕事帰りに、ワインを買いに。 フレンチレストラン1日講座に参加して、 シェフが、ニース風サラダにロゼワインをあわせて 海風にあたりながら、裸で食べる。これが最高なんだよね。 と聞き、どうしても自分でも試したくなってロゼを買いに でも、結局、ボジョーレにした。 ほどよい軽さと重さでいい。
オゾンの「ふたりの5つの別れ路」を見た。 離婚するシーンから始まり、 彼女らの亀裂、結婚、出会いと走馬灯のように 映像がすすんでいく。 別れる運命でも、誰でも、愛しあった時代がある 輝ける時代を 美しい海辺の夕焼けとともに、小さな黒点の二人のシルエットが 悲しみをそそる。 誰もいない海は、ずるい。 すべてを物語る力がある。
記憶。 深い香りは、過去への道しるべ。 漂う時間に酔いしれようではないか。 ボードレールも言っている。
Enivrez-vous
Mais de quoi? De vin,de poesie ou de vertu a votre guise. Mais Enivrez-vous. 何に 酒にでも、詩にでも美徳にでも お好きなように だがとにかく酔いたまえ
そして、白秋。 いろいろなものがつながっていく。
接吻
臭い(におい)のふかき女にて 身体(からだ)も熱くすりよりぬ そのときそばの車百合 赤く逆上(のぼ)せて、きらきらと 蜻蛉動かず風吹かず 後退(あとし)ざりつつ恐るれば 汗ばみし手はまた強く つと抱き上げて接吻(くちづ)けぬ くるしさ、つらさ、なつかしさ 草は萎れて、きりぎりす 暑き夕日にはねかえる
「悪徳の栄え」サドを再読。 とんでもない作品だと以前は途中で投げ出したけど フランス文学の土台ができた今は、楽しめる。
悪徳も美徳も荊の道なら、悪徳の道を進もうではないか
なんてくだりは、ぞくぞくする。
悪徳、美徳つながりで、三島「美徳のよろめき」を再読。
美徳の不幸はいかなるものかを考えさせられる。
美徳の鎧をかぶった節子は、悪徳である愛の証の後、 自然の定理か、戒めかのように何度も身ごもる。
痛みの代価に幸せを感じるなんて、カトリックみたいだ。 ある意味、殉教小説のよう。
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