雑記目録
高良真常



 マーメノイド (ゲ)

マーメノイド
   エクシング



その昔、マーメノイア世界にはふたりの神がいた。
あらゆる生ありしものを創りし女神――アフロディテ。
闇と混沌に住まいし男神――マーダム。
だがいつしかマーダムは、闇にひそむ禁断の「海力(マーム)」に触れ、邪なる心に目覚めた。
そして光あふるるマーメノイアを、漆黒の混沌の世界に塗り替えようと……したのだ。
神々の戦いは、一瞬だったという――。
アフロディテの悲しみと怒りの「海力」は、マーダムを7つに引き裂き、地の底に封じた。
だが……、女神の慈悲深い心は裂かれてしまい、生あるものの中でも特に慈しまれたマーメノイドに世界の行く末を託し、いずこかへお姿を隠された。
――その時から、マーメノイドには男性種が無きものとなったという。

静かな海流に身をゆだね、深い眠りに落ちている一人のマーメノイドがいた。
やがて目覚めたその人物は、己が記憶を失っていることに気付く。なぜこのような場所にいるのか、自分はいったい何者なのか、全く思い出すことができない。
そんな不安な状況のなか、その人物は不審な物音を聞きつけて海底を泳ぎ始める。そこには、二人の兵士に囲まれている少女がいた。少女は「七色さんごの村」の「リリナ」だと名乗る。自分の事も知っているらしい少女に言われ、七色さんごの村へ行くが、やはり何も思い出せない。しかし村の者から、数日前から不審な人物がうろついていたと聞き――…。



舞台は海の中、登場人物はだいたい人魚、というゲームです。
神話に関わりが深いストーリーなので、そういうものが好きな人にもオススメ。
移動が「泳ぐ」なので、慣れるまでの操作が大変だと思いますが、慣れると自由にどこでも行けるのでちょと楽しくなったりします。
技のシステムも結構面白くて、装備できる武器によって技を覚え(しばらく使っていると覚える)、その技の中のあるひとつの技を使い続けていると「必殺技」を覚える、というシステムになっています。
攻撃も、回数に加えクリティカルが発生し、クリティカルが出るとまた数回攻撃できるようになるので、上手く発動すると凄い事になったりします(笑)。
あと……攻撃音が物凄く痛そうなゲームでもあります(笑)。剣だったらザシュザシュザシュって音がもう……;

ちなみに、マーメノイド(人魚)の他に、マーライオン(魚獅子)、マーダック(魚家鴨)、マーイーグル(魚鷹)などが出てきます。
音楽も凄く格好いいので、オススメ。サントラ出てないのが悔しいです;
ちなみに同タイトルのアニメもあるようです。(こちらは見ていないので解らないです;)










2004年08月31日(火)



 シャイニング (映)

シャイニング
   スティーブン・キング原作/キューブリック監督
  ワーナー



雪の深い山奥。
そこに立てられた立派なホテルに、ある一家がやってくる。
トランス一家は、ホテルの管理人として、住み込みで管理をする仕事を請け負ったのだ。
しかしそのホテルには、前任者が家族を殺し、自殺するという呪われた過去があった…。
少しづつ、少しづつ、ゆっくりと染み込んでくるかのように歩み寄る異変。
エレベーターから流れてくる血の海。惨殺された双子の亡霊。バスルームの腐った女。狂気を煽り立てる、ホテルの“住人”たち……。
狂気に囚われる父親と、架空の友達と話しかける息子。
張り詰めたものが溢れ出した瞬間に、恐怖は膨れ上がる……。


ジャック・トランス役のジャック・ニコルソンの迫真の演技がマヂで恐ろしい問題作。
“RED RUM”(逆さ文字で……MURDER(殺人))や斧でドアを破るシーンなど、社会現象にもなったホラー映画。史上最も恐ろしい心理ホラーと言われています。

しかし、どうやらキングはこれが気に入らなかったみたいで(苦笑)、ずっと後になって、自ら監督として指揮したドラマシリーズの「シャイニング」もあります(こっちは上下巻)。
でもね。でもよ?
私的に、ドラマシリーズはイマイチでした(苦笑)。
やはりジャック・ニコルソンを越える演技ってないし、何よりダニー(息子)役のコが、ドラマシリーズではあまり可愛くないんだこれが!(爆) トニーの表現も、最初よく解らなかったし……;

ホラー映画好きなら、見て損はない代表作。










2004年08月30日(月)



 ディオダディ館の夜 (本)

ディオダディ館の夜
    井上雅彦
  トクマノベルズ



内容(「BOOK」データベースより)
霧深き美晴沢高原、深夜の衝突事故。気がついた〈彼女〉は、自分の名前さえも思いだせなかった。突然の記憶喪失が襲いかかる。しかも、運ばれた先は恐ろしい治療をするサナトリウムだった。そこに自分の夫だと名乗る男、芹沢龍弘があらわれた。芹沢は〈彼女〉を湖のほとりの白い館、ディオダディ館へと招きいれた。蔦のからまる荘厳な館に待ちうけていたのは、旧家に伝わるあやしい儀式と殺人…。


井上雅彦の小説の中でも、不思議な色を持つ小説だと思います。
結構、耽美…というか、あまりドロドロしてませんので、ホラーが苦手な方でも大丈夫。
館の妖しさ、夜の昏さ、曖昧な記憶と不自然な顔。
殺人事件が起こる、というより、誰かの仕組んだ舞台に入り込んだような感覚。
続けざまに開かれる真実。
次々と返される事実……。

最後に意外な結末が待っている、呪われた館の話。



※ディオダディ館とは、ホラーマニアには密かに有名な館の名前です。そこで“ディオダディ館の幽霊会議”という事件があり、そこにはメアリー・シェリーやDr.ポリドリが実際に立ち会っていました。二人はその事件をキッカケに、かの小説を書き上げたのだそうです。
かの小説とは、『フランケンシュタイン』と『吸血鬼』――…。










2004年08月29日(日)



 転校生 (本)

転校生
  森真沙子
 角川ホラー文庫



プロローグ / 理科室―少年は虹を渡る― /
美術室―樹下遊楽図屏風― /
音楽室―みんな集まって来るよ― /
図書室―堕ちる鳩― / 寄宿舎―女友だち― /
エピローグ 


学校には、そこに巣食う暗闇がある。暗闇には、誰も知らない住人がいる。ふとしたきっかけでその世界に入ってしまった者は、そこに囚われて――……
親の都合で転校を繰り返す美貌の主人公、有本咲子。
彼女は次々と移り変わる学校で、そこに巣食う闇と闇に囚われた人とに出会う……。


怖い小説です。
連作とも言えないこともない短編集で、それぞれの共通点は、主人公が「有本咲子」であるということ、それが「学校」で起こるということ……。
特に音楽室の話は、夜一人では読めないくらいです。
とにかく怖い話なので、暑さに悩んでる人にオススメ。

ちなみに続刊が出ています。

続刊⇒ 「真夜中の時間割〜転校生2〜」 「水域 アクアリウム〜転校生3〜」









2004年08月28日(土)



 THE WATER GARDEN (音)

THE WATER GARDEN
   KOJUN
  東芝EMI




1.Parade / 2.Lady with chainese Parasol
3.Gate of market / 4.The water garden
5.Vessel with torch / 6.Ravine
7.Dancing in the lotus garden / 8.Parade(オルタネイティヴ・ヴァージョン)



沖縄の持つ熱帯と雰囲気をインストゥルメンタルでつづるアーティストの代表アルバム。これ以前に、『水中庭園』というアルバムが出ていますが、こちらは廃盤。
『水中庭園』と『THE WATER GARDE』、同じ意味を持つアルバムなので、曲目はあまり変わりません。ただ、『THE WATER GARDE』のほうは少しリミックスがあるような……?
賑やかな市場を思い出させるような一曲目の『Parade』、どこかアジアを思い出す『Lady with chainese Parasol』、地元の天気予報のBGMにも使われていた(笑)『Gate of market』、そして、廃園にただ水の音だけが聞こえてくるような情景を思わせる『The water garden』……。
近いようで遠いような、別の『アジア』を彷彿とさせるアルバム。











2004年08月27日(金)



 ステップファザー・ステップ (本)

ステップファザー・ステップ
    宮部みゆき
   講談社



泥棒家業の“俺”は、ある夜、巨額の遺産を相続した若い独身女性の家に侵入するが、とんだドジを踏んでしまって落下、気絶してしまう。
子供の声に眼を覚ますと、そこにはサラウンド喋りの双子がいて、“俺”にある提案を持ちかけてきた。
それは、“俺”を警察に通報しないかわりに、自分たちの父親のフリをしてほしいという、常識はずれな提案で―…。
何でも、双子の両親は、それぞれ別の人と駆け落ちをしたというのだ。勿論両親はお互いが子供たちの面倒を見ていると思っているようで……。
仕方なく双子の父親役を引き受ける“俺”。
破天荒な双子と即席のステップファザー(継父)の奇妙で暖かい生活とは――。


笑いあり、ドタバタあり、ちゃんとストーリー構造もしっかりしていて、後でじーんとくる、そんな連作短編集。双子にほだされていく泥棒と、仲良くなっちゃってるヤミ系の住人が面白オカシイです(笑)。
最終話には、しっかり未来への道があって……、とにかく可愛らしい話。
ファミリーものだと、私はそう思います。










2004年08月26日(木)



 迷宮物語 (ア)

迷宮物語
  アトラス



「ラビリンス・ラビリントス」、「走る男」、「工事中止命令」の三編からなる短編アニメ。
「ラビリンス・ラビリントス」はこの迷宮物語の表題作品のようなもので、奇妙な世界に入り込んでしまった猫と少女の道行きを描く話。昭和初期のレトロな雰囲気と不気味さが印象的。監督はりんたろう。
「走る男」は、過酷なレースに耐え続けた男の肉体と精神の崩壊を臨場感満点で描く。監督は川尻善昭。
「工事中止命令」は、3K職の工事を全てロボットに任せたために起こるロボットの暴走と、それを止めるために派遣された男の皮肉を描く。監督は大友克洋。

それぞれ異色な雰囲気を持つ、奇妙なアニメ作品集。



余談ですが、某ビデオ屋でこれを借りたところ、中身が何と「迷宮物件」という別物だったことがありました; それはそれで面白かったんですが……店員、間違いをそのままにしておくなよ;











2004年08月25日(水)



 THE RACE OF A THOUSAND CAMELS (音)

THE RACE OF A THOUSAND CAMELS
Boa
ポリスター


1.FOOL / 2.TWILIGHT / 3.DUVET
4.RAIN / 5.ELEPHANT / 6.SCORING
7.DEEPLY / 8.ONE DAY / 9.WELCOME
10.FOR JASMINE / 11.ANNA MARIA


serial experiments lainのOPテーマ曲『DUVET』をキッカケで買ったアルバム。
実は『DUVET』はアルバムの中でも異色な曲で、全体的にはロックな感じがします。
どこか気だるげな歌い方が魅力的。
しかも、ボーカルのジャスミン・ロジャースとギターのスティーヴ・ロジャースは、かのポール・ロジャースと日本人女性の子供たちだったりするので、アジア的な印象もあります。
どうにもこうにも“ボア”というと韓国のボアを思い出しがちですが(苦笑)、こっちも聞いて広く知ってもらいたい、オススメの一枚。

ちなみに輸入版で、ほぼ曲目の変わらない『TWILIGHT』というアルバムもあり、serial experiments lainがアニメ文化賞を受賞した記念に編集された『TALL SNAKE EP』というミニアルバムも出ています。
『TALL SNAKE EP』はジャケットもserial experiments lainの絵柄なので、ファンなら必須です♪




TALL SNAKE EP

1.デューベイ(オリジナル・ヴァージョン)
2.デューベイ(CYBERIA MIX BY DJ WASEI)
3.デューベイ(アコースティック・ヴァージョン)
4.TWO STEPS
5.LITTLE MISS










2004年08月24日(火)



 アベンジャーズ (映)

アベンジャーズ
   ジェレマイア・S・チェチック監督




狂気の科学者により異常気象に襲われたイギリス。
諜報機関のエージェント、ジョン・スティードはその調査を依頼され、さっそくかつて気象シールドを開発した気象学博士のエマ・ピールに連絡を取る。しかし、彼女に犯行の容疑がかけられたため、エマ・ピールとスティードは協力して真犯人を捜し出そうとするが……。



「伝説的失敗作」と呼ばれるこの映画ですが、私は大好きです(笑)。
登場人物の服装はイギリスらしくお洒落だし、ヒロイン・エマ役のユマ・サーマンがすごくカッコイイですしv
悪の組織が悪の集会を開いてるとこなんか、顔が見られないように覆面……ならまだしも、全員クマの着ぐるみを着てる所なんかも妙にラブリーですし(笑)、エマに皮のブーツをはかせてるとことか、なんかやらしーです(笑)。
全体的に「ボケ感」な感じで、ツッコミ役がいないのもまた好き(笑)。

「ネムキ」こと「眠れぬ夜の奇妙な話」という漫画雑誌の映画レビューに載っていたのをキッカケに観たのですが、やはりヘンな話が好きな人にはオススメです。










2004年08月23日(月)



 悪童日記 (本)

悪童日記
  アゴタ・クリストフ
 早川書房



「ぼくら」は母に連れられて、戦禍を逃れ、祖母の家に預けられる。
祖母は「ぼくら」を決して可愛がらず、必要なものもろくに与えない。
そんな中でも「ぼくら」は生きること、それに必要とされるものを己で習得するために、どれだけ手酷い扱いをされても優しく笑っている。
街へ行く。人々の反応を見る。
ありったけの罵詈雑言を被る。それらに慣れて心の痛みを無くす。
「ぼくら」は己で動き、蓄え、学習する。淡々と。
出来事を日記に綴る。交互に書く。常に一緒に行動している「ぼくら」の日常に、相違は全く無い。



「ぼくら」の綴る日記、それこそがこの本の内容です。
地名も人名も出てこず、見たことだけを書き記す双子の日記には、彼らの心境などは一切書かれておらず、無邪気を越えた空恐ろしさにぞっとする。
淡々としたその語り口の中に、物凄く深い意味を抱えている小説です。

最後でどんでん返しの小説ってのはあるけれど、この本は、“最後の一行”で世界をひっくり返す小説だと思います。あのラストは絶対予想不可能。
一度はこの衝撃を体験あれ。


ちなみにこれは全三部作の第一部に当たる物語で、後に『ふたりの証拠』『第三の嘘』と続きます。
三部作、全てにおいて衝撃を受けた、本当に私の読書人生で一番衝撃的な本です。









2004年08月21日(土)



 野ばら (本)

野ばら
  長野まゆみ
   河出書房新社




水の音で、月彦は眠りから覚める。
かすかなミシンの音。中庭の夜合樹。静かな講堂。名前の思い出せない級友たち。無機質な理科教師。赤い紅い石榴と、野ばらの匂い……。
目覚めるたびにまた深く落ちる月彦の夢と現。
目的の解らない二人の少年、黒蜜糖と銀色。同じ名前の2匹の猫。
野ばらのつるに絡み取られた操り人形のように、何も見えないままに深淵に沈む夢。

「僕は野ばらの垣の外へ出たいんだ」……



長野まゆみ作品の中でも1・2を争うほどの質の高い話だと思います。心地よい悪夢のような、不思議な世界にひたれる1冊。








2004年08月20日(金)



 暗闇の囁き (本)

暗闇の囁き
  綾辻行人
 祥伝社ノンポシェット / ¥560



十年ぶりに伯父の持つ烏裂野の別荘に来た悠木拓也は、そこで円城寺実矢と麻堵という幼いが美しい兄弟と知り合う。ひとつ違いの兄弟だが双子のように似ている二人に懐かれた拓也は、彼らの家庭教師が黒髪を切り取られ変死する事件を知り、更には兄弟の兄、「あっちゃん」と呼ばれる少年が、家の者からその存在を隠されているらしい事実を知って興味を抱く。だが、拓也が独自に調べていくうちに、事件は思わぬ方へ進んでいき…。


ミステリ・ホラーの大家である綾辻さんの手掛けるこの『囁き』シリーズは、他作品より耽美色の強いものとなっている。美しいホラー、という通りに幻想的かつ奇妙に展開する今作ですが、それでも話は素晴らしい完成度でできてます。
それと…この話を読む前後に、同作家の『殺人鬼』という小説を読んでおくのがオススメです。この作中では語られなかった謎が解けますヨ。








2004年08月19日(木)



 銀河鉄道の夜 (ア)

銀河鉄道の夜
   宮沢賢治
  販売元: PIASM /¥4,935



病気の母と暮らし、帰らない父を待つ少年ジョバンニ。星祭りの夜、丘の上で一人空を見上げていたジョバンニのもとへ、鉄道が到着する。乗り込むとそこには親友カムパネルラがいた。2人は永遠の友情を確認するかのように旅立つが、やがて別れのときが訪れる。
友情、自己犠牲、そして、ほんとうの幸せとは何か……。

美しさに満ち、優しさと哀しみに溢れる至高の長編アニメーション。



私が、世界でいちばん綺麗だと思っているアニメです。力では辿りつけない世界。そこを垣間見せてくれる、そんな話。
どちらかというと、DVDで見ることをお勧めします。何故かというと、このアニメは全体的に「夜と硝子の硬質」な雰囲気のアニメなので、テープが少し古かったりすると黒につぶれてしまう可能性があるのです;
ストーリーは、原作に少し手を加えて、不思議さと深さをより映像化した、そんな話に出来上がっています。原案・キャラクターデザインはますむらひろし。監督に杉井ギサブロー、劇作家の別役実脚本、そして音楽が細野晴臣。
この音楽がまた素晴らしく、テイチクエンタテインメントさんより発売のサントラも必聴です。








2004年08月18日(水)



 オイディプスの刃 (本)

オイディプスの刃
      赤江瀑
 (旧)角川文庫 /¥420(昭和54年当時) / (新)ハルキ文庫/¥760



彼は、少し苦しいと言い、苦しいことはおれは好きだ、と言った――
ある晴れた日、大迫家の庭で。刀研師の秋浜泰邦が、赤いハンモックの上で名刀「次吉」に貫かれ、息絶えていた。
続く母の自殺。父は全ての罪を被るため、割腹自殺をして果てた。
ひとりの死が引き起こした惨劇は、残る三人の異母兄弟の運命を大きく変えることとなる。
そして、それから十二年後。散り散りになってしまった兄弟の道が再び交わる時、刻は動き出した――



映画化もされた、赤江文学の代表でもあります。カバー文には『名刀次吉に魅入られた者たちの行き着く果てを描く、――』とありますが、どうも私はこの話、ただ次吉だけが引き起こしたものだけではないのだと思います。次吉にも確かに毒はあるのですが、もっと他に、何か。
例えばラベンダーの香りに。母の香子に。それに向けられる思慕に。人の知り得ぬ運命の指に。
話は兄弟の中でひとり異端の位置にある、次男・駿平を軸に進んで行きます。逸れてしまった兄弟の、現在。行方不明だった弟が不意に姿を表す。そして、ただひとつの過去の、空白……。
ラストの駿平の微笑みは安らかで、安らかだからこそ、あの夏の日が遠い。
残されたものを守ろうと、身を穿って全ての罪を被った父の覚悟が、ただひどく哀しさを覚えるのです…









2004年08月17日(火)



 異形博覧会 (本)

異形博覧会
    井上雅彦
   角川ホラー文庫  /  ¥800



(収録作)
脱ぎ捨てる場所 / エイプリル・グール / 
潮招く祭 / 四角い魔術師 / よけいなものが / 
天井桟敷 / ロマンチスト / 俺たちを消すな! /
魔女の巣箱 / 使者の待つ公園 / 消防車が遅れて / 
舞台恐怖症 / レッドキングの復讐 / シネマハウスで逢おう /
残されていた文字 / 死霊見物 / 象のいる夜会 / 
傀儡座 / カフェ・ド・メトロ / おどろ湯の事件 / 
十月の動物園 / とうにハロウィーンを過ぎて / 海魔の吼える夜

ホラーものの短編・中篇を集めた作品集。
収録された作品は、どれも恐ろしいながら何処か哀しい。『よけいなものが』や『残されていた文字』のように後から背筋に寒気が走ってくる、他では見られない実験的な話もあって、とっても読みごたえがあります。
短編・中篇集ですので、長いのが苦手な方などはどうぞ。ただし、グロやエロの表現も多々に含んでおりますので、苦手な方は注意。

私は『脱ぎ捨てる場所』と『よけいなものが』と『象のいる夜会』が好きです。特に『よけいなものが』では本当、舌を巻いたですよ…。



ちなみに、第二集や第三集も出てます。
           ⇒『恐怖感主人』 『怪物晩餐会』








2004年08月16日(月)



 悲しみの時計少女 (本)

悲しみの時計少女
    谷山浩子
  サンリオ / ¥1400



カチカチカチカチカチ。私は日に何度でも時間を確かめてしまう時計中毒者。しかし、今日に限って腕時計を忘れてきてしまった。こんな日に。今日は、浩司――付き合っていた、でも別れを告げられた彼――の新しい彼女を見せてもらう日。
落ち着かない気持ちで待つ私。しかし、待ち合わせ場所に来たのは、見知らぬ男だった。男は自分を浩司だと言い、彼女を紹介する。が、その少女は、顔がなく、顔のあるべき所に、時計がある…時計少女だったのだ。
少女の住んでいるという時計屋敷に招待され、私たちは歩きだした。
途中で様々な時計たちに会いながら――…



“時計”が一種のキーポイントになっている長編小説。内容はやはり谷山さんらしく、不思議少女さと一種不気味な暗さが混ざりあっている。またこの話は、綾辻行人さんの『時計館の殺人』という本と兄妹作に当たるらしく、共通点が多々存在します。読み比べてみるのも面白いかも。ちなみにこの本と同じタイトルの曲もあり、アルバム『歪んだ王国』に収録されています。(同CDには『時計館の殺人』という曲も。)







2004年08月15日(日)



 亜州黄龍伝奇 (本)

亜州黄龍伝奇
   狩野あざみ
  徳間書店ノベルズ / 全6巻(番外編一巻)




亜州黄龍伝奇 / 爆風摩天楼  /  西蔵大脱走(上下)
乾坤大戦記(上下) /  (番外編)隋唐陽炎賦



中国人の祖母の血を引く日本人大学生・工藤秋生(くどうあきお)は、曽祖父に会うために香港へ訪れる。遠縁の親戚だという美少女・セシリアに出迎えられ、胸をときめかせるもつかの間、来た早々に災難に合い、何故かその後もゴタゴタが尽きない。
そんな折に、秋生はホテルで偶然知り合った美女に結婚を強要されるハメに。逃げ出すもまた騒動が持ち上がる。
味方だと名乗る黒社会の男、高名な青年実業家、そして彼らと対等に付き合うセシリアに救われる秋生だが、次第に彼らにも不信感を抱く。
戸惑うばかりの秋生を尻目に、世界を手にする事が出来るという“黄龍”の争奪戦は更に激化していくが……。


香港映画好きなら見て損はなし、の人気シリーズ。とにかく登場人物が個性的で、むしろ個性大暴走で楽しいです(笑)。
勝気で口も喧嘩も強いセシリア、黒社会の人間だが大らかで派手なアクションと料理が得意のヘンリー(ちなみに厳つい顔)、いつでも冷静沈着・金と力にモノ言わせたる、な美青年のビンセント、船上生活者で、いつも飄々としている老人のユンミン。間に挟まれ主人公である秋生がやけに地味に見えるほど(笑) だけど埋もれる所かかえって存在が際立っている秋生もまた凄い(笑)
この秋生がね、主人公の癖に何でこいつは…と思うほど、普通の性格してるんですよ。人が良くて、美人に弱くて、喧嘩があまり得意でない。好奇心旺盛で実はバイク好き? しかし結構頑固な一面も。
この秋生に対する、セシリアやヘンリーの『どうしようもねえな(でもつい世話を焼いてしまう)』っていう態度も面白いですが、秋生・命な態度を隠そうともしないビンセントがまた素敵です(笑)
風水や四聖に興味のある方も、読んでみたら面白いかも。








2004年08月14日(土)



 アンダルシア幻花祭 (本)

アンダルシア幻花祭
   赤江 瀑 
  講談社文庫 / \390(昭和62年当時)



(収録作) 
アンダルシア幻花祭 / 刀花の鏡 / 五月の鎧
音楽室の岬 / 獣心譜



白い家、パティオ、咲き乱れる花に注ぐ熱い陽光――
スペイン地方アンダルシアに魅せられ、踊り手をめざした日本人青年は、恋人すら捨てて旅立つ。
そして数年後、恋人に成り代わった女性が青年の後を追ってスペインへ。彼女が見た美しい風景と酷薄な現実とは?
   (カバー文より)



白い光に灼かれた瞬間、わたしは深い眩暈を感じた。
やってきてしまったのだ、と。もう引き返せないのだと、そう感じた。
深い眩暈に眩み続けるわたしの元へ、一人の青年が声をかけてくる。彼は、西野優一郎の代理だとわたしを出迎えた。
西野優一郎――わたしは、彼に会うためにこの国まで来てしまった。アンダルシアへ。禁忌の国へ。
会うか、会わぬか。その狭間で揺れ続ける心を抱えたまま、わたしはアンダルシアの美しさに酔いしれる。
そして、彼に会う日が、来る――…


赤江瀑、というと、日本的な伝統美や狂気の深淵を描く事で知られている作家さんなので、最初は(読む前は)アンダルシアの眩しい原色のイメージと何処かミスマッチな感を抱いてましたが……読んで、やはりこれは赤江だと、そう思いました。凝固した血液の色のイメージだった彼の“殺し蜜狂い蜜”の文体ですが、その毒は原色ならば原色で、眩しいなら光に満ちて、幾重にも変化するのだと。









2004年08月13日(金)



 ストレイシープ (ゲ)

ストレイシープ ポーとメリーの大冒険
   フジテレビ/ ロボット / ¥5,800




ポーはカモミールの花が好きなストレイシープ(迷い子羊)。ある日、カモミールの花畑で黒羊の女の子・メリーと出会い、友達になる。
一方、「世界の果て」と呼ばれる場所では、ヴォルヴス(人狼)の女王・ヴォルが謎の奇病に悩んでいた。その奇病とは、体の体毛がどんどん抜けていくという病気だった。常より己の美しい体毛を誇っていたヴォルにとって、それは絶望の病。しかし、その病には黒羊の涙が効くと知り、部下のドルとバルに黒羊狩りを命じる。
突然現れた三日月の飛行船にメリーをさらわれたポーは、メリーを助けるためにひとり旅立つが……。



「手に汗にぎらない、ほのぼのアドベンチャー」というゲーム。実際画面でちょこちょこ歩き回るポーを見ているだけでもう降参するくらい癒されまくります。
ミニゲームも、苦手な人のためのズルルールというものがあり、それを使うと簡単にクリアできちゃいます。てか、このゲームが結構難しいんですよ、また……。
ストーリーも凄くほのぼのとしていて、でもほのぼのの中に小さな哀愁が漂う、独特の雰囲気を持つお話です。
クリア後のおまけもあって、ミニゲームや音楽の視聴、ビデオクリップなんかもあります。このミニゲームが、本編のゲームを更にレベル分けしたもので……未だに全クリアできてません; ミニゲームをクリアすると、おまけも更に増えるという、長く遊べるゲームになっています。

そして、参加している声優の豪華なこと!
ポー役に原マスミ、メリー役に遊佐未森、ヴォルにさねよしいさ子、そしてドル・バル・ギルには「たま」の知久寿焼・石川浩司・滝本晃司という顔ぶれ。
とにかく可愛さではNo,1です。お気に入りはゾウアザラアシのセサミv









2004年08月12日(木)



 くますけと一緒に (本)

くますけと一緒に
   新井素子
  新潮文庫 / ¥400



小学4年生になってもぬいぐるみの“くますけ”から離れられない成美は、突然の交通事故でパパとママを亡くし、ママの親友の裕子さんに引き取られる事になった。
裕子さんは優しくて、パパとママすら解ってくれなかったくますけと成美の関係も解ってくれる。でもだからこそ、大好きだからこそ、裕子さんにも言えない秘密が、悩みが、成美にはあった。
それは、ぬいぐるみのくますけがパパとママを殺したんじゃないのかってこと…


孤独ゆえに大人になってしまった成美と、成美の親友のくますけ。くますけは喋れるのだけれど、成美以外には喋らない。
成美を誰よりも大事にしてくれるくますけだからこそ、もし成美のためにパパとママを殺したのだとしたらどうしよう――…。
幻想と現実の狭間で揺れ動く世界。成美の不安、裕子さん、そしてくますけ…。
ひとつの家族の物語。








2004年08月11日(水)



 寡黙な死骸 みだらな弔い (本)

寡黙な死骸 みだらな弔い
     小川洋子
   実業之日本社 / ¥1500



(収録作)
洋菓子屋の午後 / 果汁 / 老婆J / 眠りの森
白衣 / 心臓の仮縫い / 拷問博物館へようこそ
ギブスを売る人 / ベンガル虎の臨終 / トマトと満月
満月



天気のいい日曜日、私はケーキを買いに洋菓子屋へ来た。ケーキはイチゴのショートケーキをふたつ。
今日は息子の誕生日なのだ。彼は六つ。十二年前、冷蔵庫の中で死んでから、ずっと六つ…。(洋菓子屋の午後)



淡々と乾いた、でも何処かおかしな彼等の日常。死んだ息子のためにケーキを買う母。手の形の人参が取れる畑。疑心暗鬼に捕らわれ、原稿を手放さなかった女流小説家。僅かな、時には確かな繋がりで続いていく短編集。









2004年08月10日(火)



 serial experiments lain (ゲ)

serial experiments lain
   パイオニアLDC / ¥5,176
     ※グロテクス表現の注意アリ



同タイトルのアニメのゲーム化……というには異様な作品。
ゲームを起動すると、そのゲーム自体のかりそめの場所=ワイヤードに接続する形となり、そのワイヤードに散らばっている玲音の情報を集めるのが主な目的となっております。
情報のファイルは様々な種類があり、月日の古い順から番号が振られています。



岩倉玲音のカウンセリングの内容。
カウンセリングのファイル。
玲音を担当する精神科医・柊子の日記。
「誰かが」撮った玲音のビデオ。
玲音の日記。
柊子がインタビューした、玲音の友人たちの声。
そして、ボールが当たった時に再生される、謎のファイル……。



ビデオだけはアニメ、他は音声のファイルとなっており、それもこのゲームの特異性を高めている要素だと思います。(玲音の声はアニメと同じ声優さん)
ファイルは幾つものレイヤーに散らばっており、順番も種類もまるでバラバラだったりします。それを聴き、見て、己で考えて導く。そういうゲームです。
そのせいで、ハマる人と全然ダメな人がカッキリ分かれそうなところはアニメ以上かも(苦笑)。
しかし精神心理学や哲学的にかなり深い作品となっており、クオリティは物凄く高いです。
救いのない、暗い結末が待ち構えていますが、その解釈すら己次第で180度変わってくるような……そんな内容。アニメのストーリーとは全く別物と考えていいでしょう。
音声ファイルをイヤホンで聞いていると、物凄く怖くなってきます。追い詰められた人間の心理が、耳を通してひたひたと近寄っているようで……。

そんな中の唯一の謎の癒し(?)。ポリタンというデータがあります。それを全部集めてディスク2に行くと、謎な事が起こります(笑)。

ちなみに数事態が物凄く少ないようなので、入手がちょっと困難です。lainのアニメが好きで、幸運にも売っているのを見かけたら、即買いましょう!








2004年08月09日(月)



 serial experiments lain (ア)

serial experiments lain
    パイオニアLDC / ¥5,775



「私って、だれ……?」

内向的な少女・岩倉玲音。
ある日、玲音の元に、自殺を遂げた同級生からのメールが届く。
“ここには、神様がいるの……”

インターネットという“仮面”を媒介して変貌する人間達。錯綜する本質。
自分探しというにはあまりにも深いリアル。
そして、“本当のレイン”とは……。



とにかく訴えかけてくるものが凄いです。ストーリーは、最初は無機質なほど静かに、僅かな機械音が流れてくるくらいの“日常”ですが、それが変化する時に、玲音の幾重にも絡まった『顔』が見えてきて……。
賛否両論別れる、好き嫌いがハッキリするアニメらしいですが、ハマる人はOPだけでいきなりハマります(笑)。boaの曲(Duvet)とアニメーションが凄くハマってて、本当いいんです……!
ついついboaのアルバムまで買ってしまいました(笑)。
アニメファンを自認する人は、一見は必見!です。









2004年08月08日(日)



 テスト

テストですがな

2004年08月01日(日)
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