プープーの罠
2006年11月16日(木)

サブレの味

福田さんは結局
契約までに時間がかかり、私より後に契約社員になった

が、それから半年で辞めてしまった。
忙しくていやになったらしい。


しばらくして彼女に飲みに誘われ、お酒があるなら
と、ふらふらと参加する。

メンツは福田さんと現役のはえぬきルーキー社員君と
先日退職したプログラマとシステムエンジニアと私の5人。

現役はルーキー君と私の2人で、
彼らの在職中には、同じ会社とはいえ
一緒に仕事をする機会もなかった不思議な組み合わせ
と思ったら、あとあと気づいたのだが、
福田さんはこのプログラマと付き合っているらしい。

同じ会社つながり な だけあり
会話の内容はやはり
ビジネスライク
になってしまうけれど、
専門分野がバラバラなのでとても興味深い。

個人で仕事を受けるにあたり、私の分野はデザインですが、
クライアントはそんな分類をいちいちするわけはなく、
システムやインフラやプログラムやらを一緒くたにオーダーされることもしばしば。
専門分野のつてが無いので、そうなると
「そこはできません」と断るしかなく、
むしろ"できない"の方が多くて
それがネックになることも少なくなかったので、
この飲み会は思わぬ収穫だった。

「このメンツで何かやれば、何でもできるんじゃないの?」
なんて大盛り上がりでその場はお開きとなった。

以来、福田さんはすっかりクリエイター気取りで、
誰よりもその輪の中心にいてみんなで仕事をする
つもりになっていて

辞めた人達をコーディネートして飲み会の機会を開いては、
「私たちと組もうぜ」的に声を掛けて回っているご様子。

が、
私が用があるのはプログラマとシステムエンジニアであり、
同じ分野で自分より劣る人にわざわざ
自分の仕事を渡す気はないし、
私ができることの手は探してはいない。

そして彼女はそうやって声をかけたOGの一人から
ひとつ仕事をもらった
だ け で
クリエイター気取りにチェックメイトです。
フリーでやっていける!
とのあまい見解を出した。

この子のこの甘ったれなところが
嫌いだ。

2006年11月02日(木)

river

1ヵ月ほど前に、見知らぬ電話番号から立て続けに連絡があり、
最初は無視していたのですが、間違えやイタズラでもなさそうなので出たところ
昔働いていた会社の上司だった。

とても小さな会社だったので
私が働いていた頃も仕事が立て込んでくると
以前働いていた人に連絡して
(その多くは結婚を機に辞めたり、独立したり)
勝手知ったる即戦力として手伝いをお願い
していたりしたので、そういう類のことかと身構えた

けれど、内容は予想外のものだった。

会社は去年、解散したこと。
理由は、社長が亡くなったから。

「11月で1周忌だから、みんなで飲もうと思ってね。」

そういうことで、
仕事上がりに飲み会という名の追悼会へ向かった。

私はあまりいい辞め方ではなかったので
意外と覚悟がいることだった。
何せ葬式にも呼ばれなかったのだ。

けれど、
辞めて以来久しぶりに見た社長の遺族は
変わらぬ笑顔で再会を喜んでくれ、
奥様も娘さんも実に気丈でとても彼ららしかった。
そして思っていたよりずっと、子供がでっかくなっててびっくりした。
時間の経過が目に見える形で表れている。


そして数年ぶりに聞いたそれぞれの近況は
思っていたよりだいぶ壮絶な感じで、

私が最後にちょっとだけ面倒を見た新人君は、
入って半年ほど過ぎた頃、
自分のペースが遅くて残業になっていたことすら
すべて会社のせいにして訴訟を起こし
相当な賠償金なるものをもらって辞めたそうだ。

上司は会社解散後、そのまま鬱になり仕事をしていないらしい。
奥さんは今まで一度も働いたことがない箱入りの人で
ちいさな子供が二人いる。

 ともあれ皆が集まって嬉しいよ。

と、子供のようにはしゃぐ上司を見ているといたたまれなくなる。
これからどうやって生きていくのだろうか。


解散後、先輩方とお茶をして
先輩と言っても同じ時期に働いていたことはないので
顔は知っている
くらいの関係ですが、小さい会社ゆえに、
彼女達は辞めてもちょこちょこと来ていたし
私には同性の同僚がいなくて、
先輩はストーカー化、
後輩は恋人化
していたので、日常で女性に接する機会が乏しかったので
けっこうな親しみを感じていたりする。


彼女達は結婚をしていてそれぞれ
旦 那 が 鬱
だったりして、家に籠っているので
一家の大黒柱は彼女達であったりする。
実際けっこう深刻なのだろうが
少なくとも表面上は
ケロリとしているタフな彼女達を見て、
一方、自分の弱さにほとほと参る。
ケロリとしていられる状態ではないだろうに
それを感じさせないようにできるところが本当にタフだ。
逃げないでまるごと受けとめているところも。

些細なことで手を放し失ったものの大きさを思い知る。
一体あと何年後悔したら忘れられるのだろうか。

2006年11月01日(水)

古賀さん

基本的に古賀さんと私は折り合いが悪い。

同じところに打ち合わせに行くにもなぜか現地集合
なんてこともある。
まぁ彼は忙しい人なので、その前に
別の打ち合わせがあったとか
電話中で席を外せなかったとか
そういう理由もあったりしますが、
そんなのは始めから慣れっこなので
私の方もそういうものだと分かっていて
基本的には「先に行きます。」
ちょっとでも押しそうなら「現地で。」
と言うようにしている

けれど、ごくたまに
「もうちょっとかかるので(先に戻りますよね)」
と言うと
「じゃあ待ってます。」
などと言われ一緒に帰社したり、
「用があるからおつかいに来てください。」
と呼ばれて行けば単に
待ち合わせて一緒に帰社する
だけだったりする。

そういう時の古賀さんはとてもよくしゃべり、
些細な日常会話がしたかったのだなと思う。

出向者は私含め何人かいるけれど、
たいていの人は週に何度かは戻って社内で働いているし、
私も会社に席はないけれど毎日、日を開けても1日置きくらいに
何かと用があり、戻ったりする。
彼は今までずっと単身
出っぱなし
なのだ。

Suicaペンギンがほしくてビューカード申し込んじゃったよ
などとケラケラと話す
この人もそういうことがあるんだなぁ
と思うと
誰でもいいから話し相手を探している時のその
"誰か"
に私がなれるってのは何だか
いいなぁ
と思ったりするのです。

索引
「プープーの罠」 written by 浅田

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