2005年12月27日(火)
冬の風物詩
件の男、 年末からまた急に連絡が来るようになり 連絡が途切れた頃にちょうど 彼女が出来た のを私は知っていた。 要はあのアタックは 手当たり次第 で誰かが引っ掛かった案配。 そして最近別れたのだろう。 この人がほしいのは恋人であり そう呼べるのであればきっと
誰でもいい
のだろうなぁ。
2005年12月26日(月)
わらしべ下克上
かくして、 派遣会社とは提示された内容で契約更新、 それにくわえて、私が提示した上乗せの時給分は 業務委託の名目で会社と直接契約をすることで 正式に更新が決まった。
これなら全額 業務委託で支給 した方が手間も賃金もシンプルな気がする。 契約社員と何が違うんだ? 釈然としないものはあるけれど、 今回の昇給で、そうそう見つからない 好条件の仕事となったのは確か。
この、いくら売り手市場とはいえ、 かなりの賃上げをふっかける派遣社員の私 に対して、会社の要求は 辞めないで というそこから発展することなく丸くおさまった風情で 特にノルマが課せられたりはしなかった。
滑り込みで契約成立の後、 体制変更が発表され 私はFチームへ。 キタムラさんのチームに行きたい と言うのは、よした。 希望すれば通っただろうが、 彼のチームは、自分から希望して入る なんていう熱血風情では絶対に不利 だから。
そして、 異動になったのは私だけではない、 Cチームは解散となった。 Cチームのリーダーは実質 降格 した。
2005年12月22日(木)
派遣社員ドリーム
再び内線で呼び出され、 背中に定規でも差し込んでいる かのようなまっすぐな姿勢のキタムラさんと向かい合う。
社内規定の派遣雇用一人当りの上限まで時給を上げた とのこと、 いつまでも話をひっぱって申し訳ない とのこと、
もうひとつ、 異動先は私のAチーム ではなく、Fチームになると思います とのこと。
あぁ、先日の 非常階段で聞いた話はこういうことか。 正直なところ、 キタムラさんのチーム じゃないと知って私は 萎えた。
「ということで、 契約を考えてもらえますか?」
上限 と言った。 これ以上は上げられないということだ。
「とりあえず、 引継の期間を考えて1ヵ月は更新します が、今の時給ではそれ以上は 無理です。」
いくらならよいですか? との問いに、 提示された昇給額の3倍を答える。 本当はそこまでしなくてももう 高時給の派遣案件になっていて、 さらに昇給を要求したのは 何となく でしかなく、
けれどキタムラさんは 「分かりました。前向きに検討します。」 と言った。
キタムラさんはギャンブルをしたらダメなタイプだなぁと思う。
直接関わったことがないチームリーダーの方が白熱している状態は 何だか引っ込みがつかなくなっちゃっただけにも見える。
結局私はこの会社では大半を ヒマを持て余して過ごしてきた。 それほど評価できるほどの仕事量をこなしていない のに、この過信ぶりは 異 様 である。
2005年12月20日(火)
波のまにまに
今年の就業日数ももう 片手で数えられる くらいになったけれど、相 変わらず更新の件は頓挫したまま。
キタムラさんVS.副社長の交渉の結果、 1ヵ月単位の短期では契約社員にはできない とのことらしい。
少なくとも半年、半年続けてくれるのならば 君の出した条件は飲める。
との向こうからの提示に私はイエス とは言わなかった。
メインは「賃金」ではないのだ。 あくまで「短期」であることなのだ。 半年も先まで予定があるなんて耐えられないです。
結局、派遣で時給アップのうえ続行 という話になり、さっそく派遣会社から 「今の時給にさらに前回と同じ額をプラスするので 是非また3ヵ月更新をお願いしたいそうです!」 なんて嬉々として連絡が来た
けれど、私はそれも保留した。
現状の仕事状況といえば、 他チームにまで聞いて回らなければいけない うえに回ったところでたいしてもらえない ほどに私は仕事が枯渇していてまるで 社内失業者 といった風情、この状態で冷静に考えたら きっと私でなくても継続しようなんて思わないだろうし、 本当に私を引き留めたい のか信じられない。
定時まで時間を潰し、 日報に「今日もヒマでした」 とイヤミを書いて退社する。
忙しすぎて余裕がなくなっていた 正社員時代も自己嫌悪がひどかったけれど ヒマすぎてイライラしている 今の自分にもやっぱり腹が立つ。
翌日、出社してメールチェックをしたら Fチームのリーダーからメールが来ていて 『ヒマがいやなら仕事は山ほどあります』 とのこと。 今までも時々、Fチームの仕事を手伝っていたので 今日はひとまず救われたとばかりに さっそく用事を聞きに行こうかとしたところ、 非常階段でばったり出くわす。 「あ、今から打ち合わせで出かけるんだけど、」 リーダーはそのまま続けて話し出す。
1月からけっこう大きな仕事が始まります。 2件は確実で、どっちも3月〆切のタイトなやつです。 それを浅田にもやってもらうつもり、です。
何故、今、急いでまで来年のハナシを? 私の契約はまだ宙に浮いている。 はぁ…と気の抜けた反応しかできなかった。 その後リーダーはダッシュして階段をかけ降りてゆき、 私は結局その日もヒマだった。
2005年12月16日(金)
社会 的 信用のおふだ
カード会社からゴールドカードへの切替案内が届いた。 昔働いていたところで社長から自慢されたやつだ。 自分とは一生縁のないものだと思っていた。
調べてみれば20代用のライトなもの というのがあるらしく それは 安定した収入があれば 比較的 誰でも作れるものらしい。 とはいえ私には定職はなく、年に何ヵ月かは働かない。
そういえば正社員という定職についていた数年目の頃 私はビデオ屋のレンタル会員証 にくっついてるクレジットカードの審査に 落 ち た ことがある。
2005年12月09日(金)
切り札ネゴシエイト
1週間の猶予を過ごし、 私の考えは継続・終了 どっちでもよくなっていて、 続けたい理由もないけれど 辞めたくて仕方がないような原因もないのだ。
答えを決めないまま 約束の日にキタムラさんの元へ行き、 キタムラさんが私を見つけるなり話を中断して会議室へ向かう 姿にフロアの気配が逆立った。 それくらいキタムラさんは脅威の存在なのだ。
広い広い会議室で向かい合って座り、 満面の笑みでこちらを見据える彼に
「お断わりいたします」
と応えたのは "来週こそは忙しくなるから" と言ったCチームリーダーの言葉がやっぱり出任せだったから。
しかしそんな返事は見越していたように、 あっそう、と流され、理由も何も聞かれず キタムラさんは雇用条件の向上を提示してきた。
あまりに説得されそうであれば いつものようにオカネノハナシで解決しよう と思っていたので向こうからあっさり それが出てきたのは意外だった。
それでは派遣契約はこれで終了としよう そして契約社員として直接雇用にしないか。 今、派遣会社を通して君がいくらもらっているのかは知らないが、 今、うちの会社から派遣会社に払っている金額を君に直接支払う。 今月分の金額を参考価格として、 それをこれから毎月月額で払うのはどうか。
今月は残業がなかったので、時給労働としては最低金額だった けれど、そこに派遣会社の取り分である数十パーセントが上乗せになる。 ざっと換算してディレクタークラスの月給。 それは私がふっかけてみようと思っていた金額 を遥かに上回っていた。
こ、断わる理由がなくないか? 契約更新の説得を怯ませるためにオカネノハナシをする筈が 自分が怯んでどうする…!
とりあえず、 時給制がいい 長期更新はしない という、ただのワガママ でしかなくなった条件を提示し、 それをキタムラさんから副社長に交渉してくれるとのこと。
この時点で、 この会社の本気度を実感。 まだしばらく辞められないことを悟る。
2005年12月03日(土)
ジュラスのこども
またもや八木君晴れ舞台。
会場の出入り口がステージの真横にある のは知っていたので、始まる前に入ってしまおう という根暗な魂胆が裏目に出て、 開演前にDJをするべく八木君が一人 客電も落ちていない明るいステージにいて ドアを開けた途端、ご対面。
逃げるように対角あたりの隙間に滑り込み 居心地悪く耳を傾けてみれば、 私が好きな曲かけてる。
彼、この曲好きだったのか。
ふと、 少し離れたところに立っている女の子が こちらをじぃと見ているのに気付き、
そちらに顔を向けないように 少し俯きがちに髪で横顔を隠すと 女の子が隣まで寄って来たのが分かった。
私はファン としては明らかに浮いているのだろう。 (主に年齢的に)
そして私にも分かる。 『ゲスト』じゃない 『関係者』の女の子。
彼女はそのまま私と少し距離をとった隣に留まり、 近くにいる仲間らしき集団と きゃあきゃあとはしゃいでいて時々 八木君の名前を呼ぶ声だけが私の耳にさわる。
そのうち開演の時刻、 彼は袖に捌け、客電は落ち、 対バンらしき、見たことのない人 が、ぞろぞろとステージに出てきて、 何だ、始まってから来た方がよかったんじゃないか。
ぼんやりとステージを眺めていたら不意に 出番ではない八木君がフロアをうろうろしていたらしく 目の前を横切り、通り過ぎ ようとしたところにまんまと隣の女の子は声をかけ、 八木君はするりと 女の子 と 私 の間におさまった。
会話の感じからして、そう親しいわけではなさそう で、多分他のメンバーの友達とかなのだろう。 けれど、女の子が八木君に好意を抱いているのは あからさま で、私はいやな気分になった。 とてもいやな気分。
会話が一段落して途切れ、ステージの方に顔を向けた ような気配とともに彼の空気が急にそわそわしだし、 あぁ、私に気付いたのだと思った けれど私は相変わらず髪で横顔を隠し、 そちらを一度も見なかった。 彼からは声をかけて来なかった。 私も無視を通した。
彼の出番はまだまだらしく、 彼はそこから動かなかった。 しばらく並んで立っていた。 お互いに壁を立てて。
たまんなくなってそのまま帰ってきた。 彼の出番も見ずに。 馬鹿だ、私。
誘われるのは多分きっとこれが最後になるだろう。 もしあるとしても ほんとほんと、 もう行くのやめよう。
2005年12月02日(金)
Hi,heel
ヒマだから早めにお昼ごはん食べに行
っちゃおうかなぁ〜なんて最大限にぼんやりして いた午前中に突然、副社長に声をかけられ、 会議室に連れていかれた。 本当に留めるつもりなのか、と私は腹を据え、
予想外だったのはキタムラさんが同席したことだった。 キタムラさんは社内で一番恐い と言われているAチームのリーダーである。
どこの会社もお決まりの文句で引き留めようとするし 私も言い慣れたイイワケを暗記したようにすらすらと返す。
長期間、同じところで働く気はない 正社員になる気はない ヒマなのがガマンできない
「そういうスタンスだというのは 前にEチームのリーダーからも聞きましたが、」 副社長は続けた。
「契約を延長してキタムラさんのチームに入ってほしい。」
目の前でキタムラさんが笑顔をつくる。 キタムラさんは、仕事はできるけれどとにかく威圧的、独裁的で、 社員の間では密やかに"北の人"と異名をとるような この会社の悪役だ。 直接関わったことはないけれど、 近くを通りかかればたいてい怒鳴り声が聞こえる。
それを引き留めるための材料に持ってくるのか?!
「 あなたが日報に書くことは的を得てるし それに早急な対応ができないのも ヒマを持て余しているのも 非常に申し訳なく思っています。 キタムラさんのチームなら あなたのモチベーションを崩さないで すぐに何らかのレスポンスができるし 希望に応えられると思います。 」
多分、 私はキタムラさんの思い描いている理想の部下 とは対極だと思う。 楽に効率よくこなすことに長けているだけで そして不満を隠しこんで穏便に暮らそうという気もない。 イケメンで単に世渡り上手でリーダーの座につき "率いる"と言うよりはその場しのぎに ただ仕事を垂れ流す今のリーダーを批判するのは 自分が仕事をやりにくいから。 会社を改善しようなんて微塵も思ってはいない。 どう思われたって構わない。 だってどうせ長くやるつもりはないんだもの。
要は投げやりなのだ。
けれど、この打診には少しぐらりと来ました。 彼のチームは厳しいだろう。
ノルアドレナリンがざわざわします。
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