プープーの罠
2005年03月10日(木)

盛って削って研磨して

ドイツから戻りました。

氷点下、薄いガラスのような空気の中、
時の流れを無視して後ろも前も向かず
ただ ただ 暮らす 生活は
私にとってとても有意義であったように思う。


なぜドイツなのか
と言うと、友達が住んでいてちょうど
大学が春休みだったから
でありしかし
ロンドンでもカナダでも台湾でも中国でもなくドイツ
を選んだのは
八木君が愛した国だから。

未練がある

かといえばきっとそうではないと思う。
私の身体の最終形状記憶が八木君である限り
その型にぴったり嵌まっていたものを私は思い出し続ける
ただそれだけのことである。

街を歩き、彼のルーツを感じ、なぞり
そうやってせいぜい彼の残骸を拾い集めては
思い出にない過去の彼を新たに補完する。
そして、今の私と同い年、あるいは
少し年下の八木君を抱き締めて眠る。
昔から変わらないであろう
甘い汗の匂いと高い体温
まだ刺青のない背中。
私の知らない人だ。

これ以上彼を好きになる接点はない
けれど、嫌いになる契機すらもすでに探し出せない
ただそれだけのことである。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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