プープーの罠
2004年07月27日(火)

チェイン

派遣でwebをやっていた
ので、それを知っていたトールさんが
webの仕事を紹介してくれ、
とは言え、4ヶ月派遣をしていただけのこと
カジッタ、くらいの程度で
イロハを知っているようなカオはできない、
だいじょぶかしらと少し不安
私は何事にも保守的
であり、やりたがらない。

とにかく
ミキさんのオフィスを訪ねる。

ミキさんは顔見知りの知人ではありますが
あまりマトモに話をしたことはなく
私の知ってる彼女の情報は
魔女になりたい
ということくらいだ。

とりあえず一緒にお昼ご飯を、と
近くの洋食屋さんへ行きまして
私の仕事の話とか聞かれたりして

アンテナの立ってる人に
ヤル気のなさをぺらぺらと話せるほど
私の無気力に筋金は通ってはいない。

なりゆきでテケトーに働いております

なんて言えるはずもなく。
それでも当たり障りなくかいつまんで話すと
それっぽく聞こえたりする。

黒く長い髪を揺らし、へぇと
興味深そうに聞いてくれるミキさんを見て
私は何となくうつむく。
自分のしていることに 自信 も 誇り も
持っていやしないのに
そんなに熱心に聞かれたら
何だか後ろめたい気分になる。
私は、ただこなしてるだけ。

「今私のしてる仕事はね」
と、ミキさんが見せてくれたのはX社の仕事。
「あぁ、私もX社と仕事してましたよ。」
唐突に知っているところと繋がりまして
話は思わぬところで盛り上がり、
ヤル気があるなら一緒にやります?とお誘いを受け、
(ヤル気がない気味のワタクシですが)
私はX社との仕事を唯一心残りにしていたので
なかなか興味深い。

オフィスに戻り、仕事の依頼を一通り聞いて
ふと見たデスクの上、見慣れたものがありまして
「あぁ、それ今ハマってるのよ。」
「これ私のやってた仕事ですよ。」
まさに私のやっていた案件のユーザーだった。

人のつながりってすごいんだなぁ。

ミキさんのオフィスにはしましまのにゃんこがいて
始終、鳩みたいにくるくると喉を鳴らしていた。

2004年07月26日(月)

傍 楽 人

派遣会社に契約をしに行く。
引っ越したのは知っていたけれど、
働いていた会社の隣のビルでした。
そして何故か引っ越した先で
英 会 話 ス ク ー ル になっていて、
青い眼の講師らしき人にハーイ!と手を振られ、
戸惑う。

....派遣会社という業種は辞めたんですか?

奥から担当のNさんが現れ、
暑かったでしょう
と、白濁したコーヒーを差し出す。
それは、親切にミルクを入れて持ってきてくれた
わけではもちろんなく、まぁそのまんま
コーヒー牛乳である。
変わった会社だなぁ
と思う。

契約内容は前とほぼ同じ
時給が変わったくらいです。
書類に目を通してサインをする。

「ところで英会話スクールになったのですか?」
「えぇ先月から始めまして、
 そのパンフレットをT社に作ってもらったんですよ。」
T社は私が再び派遣で行く会社である。
別に前から付き合いがあったわけじゃない。

この派遣会社はもともと本社が別にあり、
事業拡大として 支社を作ったらしいのですが、
支社という割には本社のスキルを持ってきた気配はなく
そして私は、どうも
この支社の第一号登録スタッフのようでした。
....もしかして派遣スタッフは
私だけなのでしょうか。


その後会社に行って
取引先とのやりとりを完了させ
お世話になりました
と、一礼してさようならです。
4ヶ月という短い期間、
いろいろあった
けど、
楽しかったなぁ
と、思う。

2004年07月23日(金)

29階の絶景

契約は25日までですが、
営業日上、今日が最終日です。

引き継ぎを終わらせ、
机を整理して
まぁ、取引先との連絡上、
土曜と月曜日も出社なんですけどね。
しかし本当に引き継げているんだか
ちょっと不安が残る。
つじさんは相変わらず"怒られない"ことに徹していて
つまり社長が絡まなきゃ仕切らないのだ。
今一つ頼りになる人がいない。

そして今日は歓迎会。
今週は3人、新しい人が入ってきた。
営業のパートで採用された
元営業だったという主婦
は、けっこう聡明な感じでデキそうな人です
が、またもや使えなそうな人ばかり。

先週入った派遣はまさに"猫の手"
むしろ「いない方がマシだった?」
くらいの、ツカエナイ派遣であり、
まぁ入って間もないですし
と、生温く見守ろう
な雰囲気だったんですが、
飲みの席での出しゃばりっぷり
或いは 空気の読めなさ
えらく下品で
「アテシはぁ〜週6回なんです!」
みんなどん引き。

なんですか?
サルですか?発情期ですか?
アナタ週6は結構ですが
そのイキオイで週5の仕事きっちりやりなさいよ。
なんて声に出しては言わないです
が。

2時間ほどで解散、
さて2次会だ、とゾロゾロ大移動
社長がいるのでたらたらと歩き
さり気なくフェードアウト
しようと企んでいた。
気がつけばオオサトさんが隣を歩いていて
手をつなぐ。
私はそれを振り払い
それでもまたつないでいて、

この人は、何を考えているのだろう
本当に。

「また浅田さんが酔っぱらってオオサトさんに絡んでる〜。」
経理の女の子が笑う。
彼女はさっき、酒の肴にオオサトさんの
結婚のエピソードを話していた。

 付き合って長かったもんね、
 やっと!って感じだったよね。

「酔ってないですよ。」
実際そんなに飲んではいなかった
けれど、私は酔った
ような足取りでとんちんかんな方へ歩き、
危ないから、と引き寄せようとするオオサトさんを躱し
隙を窺い、森君と走って逃げた。

うちにつく頃、
オオサトさんからメールが届き
『帰った?
これから行くから。』

『来ないでください。』


こうして
私の業務委託はおしまいとなります。

2004年07月21日(水)

star baby

トムたちが来日しているらしく、
yさんのバーでまた飲み会とのこと。
トールさんから連絡をもらい、
メンツを聞いてみれば
ハニちゃんはもちろんいて、
しかしあれ以来ハニちゃんは
まったくの音信不通です。

彼の中でも いい加減
私に見切りがついた
のでしょうか。

それならそれも
有りだと思います。

ともかく、飲み会に行く
つもりだったのですが、
仕事が片付かなくて断念。

人身事故でダイヤが狂った
電車にのろのろと揺られ、
妙な寂しさを覚えながら
家へと帰ったのでした。


夏が来ました。
虜ローラーを聴くと
何かを思い出します。
そしてまた
髪を伸ばそう
と思いました。

2004年07月18日(日)

闇 雲

土曜も日曜も仕事である。

前の会社の希望は
『できれば長期で』
とのことで、
『長期は無理です
が、3ヶ月でいいなら
派遣会社を通してご連絡ください』
と返す。

個人契約は懲りました。
マージンをとられようが
間に第三者が入った方が
スムーズでやりやすいから。

すぐに派遣会社から連絡が入り、
『3ヶ月契約でまた来てほしいとのことですが』

『時給あげてもらえるならいいですよ』
と時給を上げ

派遣契約は成立。
まだまだ不況と言われる世の中ですが、
今のところ私は売り手市場でやっております。

2004年07月16日(金)

キガトーク

金曜のミーティングはいつも長く長く、
こなすべき仕事がはかどらない。
その後げっそりしながらも
続けてX社の人と打ち合わせをし、
それから終わりの見えない作業を傍目に
とりあえずオオサトさんと腹ごしらえに行く。

行く店行く店混んでいて、
そうだ今日は金曜日ですね、
とアルコール抜きでカレーを頬張る。

仕事を辞めることが正式に決まってから
オオサトさんは仕事の話を一切しなくなった。
私はもう部外者なのです。

仕事はまだ山のように残っています。

2004年07月14日(水)

社長に契約更新について話す
と、意外とあっさり
承諾
彼と会話すると相当体力を使う
ので覚悟していた分 拍子抜け。
ともあれ私は予定通り
25日で業務委託契約が終了となる。

異常なほどに仕事が詰まっている。

入れ替わり立ち代わり打ち合わせ
やっと席に戻って作業だ
と、そこに社長が歩みより
「浅田さん朝頼んだ仕事どうなってます?」
「えぇ、打ち合わせが終わったのでこれから...」

 浅田さんあなた業務委託なんですから
 バイトとは違うんですよ。
 もう辞めるからって浮かれてるのか知りませんが
 委託された業務をこなせないなら
 会社は 訴 え る こ と も で き る んですよ。
 まぁ、僕はそんなことしません
 けどね。


本当に愉快な人だなぁこの人は。

浮かれてなんていませんよ。
辞めたところで私に未来があるわけではないのですもの。
仕事するのは好きですから。手を抜くつもりもありません。
これでもうアナタの顔を見なくてよくなるのですから
むしろはりきっちゃうくらいですよ。

心が歪んでいく感じがする。
世界でたった独り
取り残されたような気分。
ハニちゃんにメール
してみても返事は
無い。

帰ってメールチェックをすると
前に派遣されていた会社から
『正式にまたお誘いしたい』
とのこと、
探さずとも仕事は決まる。

そうして私は
探したいもの
探すべきもの
を、見失っていくのだろう。

2004年07月13日(火)

大人は判っている

同じグループ系列会社の営業のKさんと
新案件の打ち合わせで取引先のX社に出向く。
X社のAさんは何度か打ち合わせで会ったことがあった
のですが、系列会社とはいえ身内の方が初対面な状態。

Kさんはうちの会社とX社に付き合いがあることを知っていながら
社長が首を突っ込むとやっかいなことになるから、と
コネクションを使わず体当たりで営業をかけたところ、
あぁじゃ一応浅田さん同席なら、という流れになったらしく、

Aさんもまた社長が絡むとめんどくさいから
体裁上、私を混ぜ込んだご様子。
社内ならまだしも クライアントにも、
それほど接する機会のない系列会社の社員にまでも、
うちの会社の社長は評判が悪いのだ。

独占欲が強くてやりたがりで
すぐ首を突っ込んでかき回し、
気が済んだら忘れる。

みんなちゃんと知ってるんだ。
知ってる上で、涼しい顔をして
波風立てずにやり過ごしているのか。

正直に生きてたらダメなんだなぁと思った。

2004年07月10日(土)

わたしの青い空

2時過ぎ
半ば 強引にオオサトさんはやって来て
私は駅まで迎えに行き、それから
商店街を横切り、遅くまでやっている
居酒屋を探して入る。

すでに酔いの回った
彼は饒舌に喋る。

 さっき乗ったタクシーの運転手が
 おもしろい人でねぇ、
 今日カノジョの誕生日なんだって。
 だから仕事が終わったら会う約束をしてるんだけど
 その時にプロポーズしたいんだって。
 「上手くいきますかねぇ」
 って楽しそうに言ってるの。
 70過ぎの老人だよ。

 聞いてるカンジじゃ
 多分女の子は"お店の子"みたいだった
 けど、何か凄いなぁと思って
 俺もいつまでもそんな若くいられるかなぁってさ。

 「俺もこれから女の子に会いに行くんですよ
 本当に来てくれるか分かんないんですけどね。」
 て言ったら、がんばってくださいよって
 タクシー代安くしてくれたの。

彼はニッと笑って言う。

 ホントは今日
 浅田 来てくれないと思った。

 来ますよ。
 お話ししたいことたくさんありますもの。

それから
さっきまで飲んでいた時のコトを一通り話し、
タミオくんはどうにか思いとどまらせたようで、
「つじさんもタミオも浅田が必要だって言ってたよ。」
と、結局辿り着くところはこれだ。
私もまた、説得されている人物の一人 なのである。

 だからもうちょっと続けようよ。

私は、この1週間の違和感を端から吐き出す。

 私は今"仕事をする"ことにプライドはない
 けれど、納得のいかない方針に従うつもりはない。
 体制を変えるといっても
 ちっとも改善には向かってはいない
 むしろ悪くなっている。
 ヤル気のない者を引き止めても
 モチベーションが上がることはないし
 成長することもないし
 得るものもない
 無駄な労力なのだから、
 それで逃げられて引き継ぎもままならず
 みんなが些細なことで右往左往するよりは、
 さっさと新しい人を入れて完全に引き継いで
 可能性を育てるべきでしょう。
 少なくとも今の会社にとって
 私は使える人間ではない筈です。

 私は今、
 "生活するには収入が必要"
 だから働いているのです。
 会社全体を改善していこう
 なんてゆうバイタリティがあったら
 とっくに正社員になってるか
 自分で会社を起こします。
 やりがいやスキルアップを求めてはいないし
 高収入を求めているわけでもない。
 効率良く稼げるから派遣を選択するのです。



それは 批判 にもならない、
ただの 愚痴 であり
非常に 無責任 であり
しかし、オオサトさんに返す言葉はない。
理詰めで押している私はまるで社長と変わらない。
彼は一点を見つめて聞いている。
諦めのような空気がそこに見える。

彼は判っているのでしょう。
この会社の中身のなさを。
説得するにも、決して納得のいくような
筋の通ったことが言えないことを。

彼は諦めているのでしょう。
みんな 辞めたがる だけで
良くしていこう なんて
微塵も思っていないことを。
この会社を誰も愛してはいないことを。

そして私は、
この解決しない問題の
改善すべき点を指摘する
だけで何も対処はしない
ということの繰り返しに虚しさを感じる。
オオサトさんにぶつけて何になる?
まったくもって生産性のない
これこそ無駄な労力だ
と思う。


夜通し何を話してるんだか、
理由が判らなくなってきた頃、
お店が閉店の時間を迎え
外に出てみれば完全な朝日、
気温はじわりと暑くなってくる。
帰りましょうか、と
手をつないだまま
使ったことのない沿線の駅まで歩く。


オオサトさんは眠そうな目で
うすぼんやりとこっちを見ながら

 なぁ、一緒に働こう。

私は首を横に振るだけ。

改札で手を振って別れる。
これが本当に最後だろう
引き留められるのも
二人で飲むのも。

そこからうちまで
歩いて戻る30分、
これがハニちゃんだったらどんなによかったか
などと考え、

オオサトさんとハニちゃんを
比べてはそれを打ち消す。

2004年07月09日(金)

静かな喧噪の中で

 今日飲みに行くんですよ
 つじさんとオオサトさんと。

と、タミオくんが言った。
珍しいオトコ3人組だねと言うと
まぁ、浅田さんは察しがつくと思いますが
彼は苦く笑顔を見せる。

タミオくんはアルバイトだ。
入りたい会社の長い長い採用試験を受けている
間の生活費稼ぎでうちの会社で働いている。
22、3なのにさくさくとプログラムが組めて、仕事が早い
だけのことはあり、試験も一次二次と進み、
一方ではそんな人材を手放したくないのが上司の立場、
つじさんとオオサトさんで説得にかかるわけだ。

ほんとだグルになってる。
つじさんは直属の上司だし
オオサトさんは総括なのでタッグを組んでもおかしくはない
のだけど、今までのうちの会社では ない ことだった。
まぁがんばって
と私は家に帰る。
その意味はなかなか複雑である。

激動の1週間
だったのに、その状況の異常さを
誰にも話さないまま1週間が終わってしまった
ことに対していささか消化不良感を抱きながらも
来週には私は契約終了の旨を社長に伝える。


1時過ぎ
ハニちゃんからメールが来て

『今 家。しそ焼酎がおいしいよ。』

ハニちゃんは焼酎が飲めない。
いつも私が飲んでいるのをちびりと味見しては
アルコールランプの味がする
と言って日本酒を飲んでいた。

それは、
来いと誘ってるのかい?

ハニちゃんは気づいているだろう
私がまだ好きなことを。
だから、私から行動する
わけにはいかない。
都合が良い存在になる
わけにはいかない。

会いたいなら、会いたい
って言えばいいのに。

『飲みすぎに気を付けて。おやすみ』と返信
少し突き放したみたいになっちゃったかしら
と思った時、電話が鳴り、
私は飛び付くように出た
けれどそれはオオサトさんからでした。

 今まで飲んでたのですけど
 終電ないし、みんな会社に戻るって言うから
 俺は帰るってみんなと別れてきたんだけど

 これから飲み行こうか。


 今からそっちの駅まで行くから。

2004年07月08日(木)

タンタン♪

社長が出張にでかけ
オオサトさんが夏休みに入り

鬼 の いぬ 間 状態
だったけれど
誰一人 のびのびとする
わけでもなく
早く仕事を終わらせて飲みに行く
わけでもなく
淡々と時が過ぎていったのでした。

2004年07月06日(火)

蜘蛛の子

オオサトさんが髪を染めていた。

オオサトさんの社員証には25才の彼が写っていて
うっすらと赤い髪の毛がかわいらしいカンジ、
 それに比べて今は
 老けましたねー
 白髪までありますよ
なんて言っていたのですが
昔に戻ったかのように
すこし赤い髪。
昔なんて知らないんだけど

そういえば先週はオオサトさんの誕生日で
「年取ったのに若返りましたね。」
とからかうと
「うるさいよ。」
と29才の彼は笑う。


森君は再び 気をとり直して
オオサトさんに「辞めたい」と言い、
それから私に言った。

つじさんもグルだ、と。

次から次へと途切れなく
辞表を突きつけてくるのを
その度に説得し続ける事態に
オオサトさんも耐え切れなくなり、
つじさんに相談を始めたのか、
森君がオオサトさんに言ったこと
が、つじさんに筒抜けだったらしく、

そうだ、オオサトさんに森君が説得されたことを、
私はつじさんから聞いていた。

私もグルか?


つじさんは電話の予告を実践しているのか
"社長に怒られない"ことに
全神経を注ぎ始めていて
言われたことを咀嚼もせずに
丸飲み にしていく。
それじゃ本末転倒であり、
その姿は
先頭に立ってみんなを引っ張りまとめていくリーダー
というよりは
主人の言う通りにヒツジを追いかけ回す牧羊犬
のよう。

命令を聞いていたら
何も意味がないのよ。

信頼しようがなくなってしまうのである。

みんながみんなに疑心暗鬼、
腹の探り合い、
だれを信じていいのか分からない、
休んでいた1週間の間に
完全に単体レベルまで
ば ら ば ら に 離 散
してしまった。

2004年07月05日(月)

時計仕掛けのオレンジ

9日間の夏休みを終えて
私はまた働きはじめる。

体制変更で制作部が二つに分離し
企画コンサルティング室と
開発デザイン室となるらしい。

とはいえ、それぞれの持っている仕事があるので
急にピタリと変わるのは現実的にムリであり
徐々に、という話ではあった
けれど、多分うまくいかないであろう。

私はデザイナーとして雇われながら
企画に配置され、
今まで私がやっていた制作部長の座
には つじさん がついた。
つじさんは開発である。
つじさんも仕事ができる人
ではあるけれど
デザイナーが仕切った方が円滑に行く
のは、目に見えたことなのに
つじさんなのである。
技術職の人間を
専 門 分 野 以 外 に配置する。

私がこの会社に来てから
これで3回目の体制変更である。
1ヶ月に1度は変えている案配。
結果が出ないうちに
「この体制は失敗だった」
と、また変更する。
みんなが
新しい体制に順応しよう
としている途中に
また変更があるのだ。

くわえて人事の入れ代わりが激しい。
働いてるスタッフですら
常に体制が固まっていないあやふやな状態に
右も左も分からない人が入ってきても
みんなで右往左往するだけ。

先週から新しく入ったという人は
意外なことに正社員だった。
前はバイトがやっていた雑務である。
今日から入った人は派遣だ。
人手が足りなくてできなかった仕事とはいえ、
サルでもできるような仕事である。
即戦力ではなく、 猫 の 手 を派遣でまかない、
森君はじめ技術職をバイトで雇い
正社員のようにノルマと成果を求めるのだ。
技術職をなんだと思っているのだろう。


そして、確かに何かが変わっていた。
みんながみんな、それぞれがそれぞれに
何だかぴりぴりしている。

姿をそのままにして
中身がすっかり別のものに
入れ替わってしまった
かのように。

2004年07月03日(土)

波のまにまに

特に何もせずにのんびりと過ごす毎日。
久しぶりに 一人 を満喫する。
余裕があるというのはとても良いことだ。


夜中に、つじさんから電話があり、
 生きてる?
 今会社帰りで
 飲んでるんだ
 どうしてるかなと思ってサ!
何だかゴキゲンな様子で
私が休んでいる間に会社であったこと
を話してくれる。

話すのがあまり得意ではない
普段 無口なつじさんは
それでもコト細かに教えてくれて、
一人新人さんが入ったこと、
来週からもう一人入ること、
仕事の体制がまた変更になること。

そんなに目まぐるしかったのですか。

そして森君はオオサトさんに説得され
辞表はなかったことになり、
つじさんは社長とケンカ
何かと正反対のふたりですから
珍しいことではないのですが
社長はこう言ったらしい。

 最近たくさん辞めていきますけど
 つじさんはそれについてどう思いますか?
 隠すのはフェアじゃないので言いますが
 みんなつじさんが嫌で辞めてくんです。

…嫌がられてるのは社長!アナタですから!残念!

つじさんは続けて言う。

 とりあえず 俺は9月まで
 という話になったんだけど、
 あの会社のことを考えると言いづらいけど
 俺 個人として
 浅田と もっと仕事したいから
 できる限り 守るから
 そのために今週いろいろ画策して
 社長が口出ししないようにケンカしたんだけど。
 だから、無理にとは言わないけど
 ちょっと考えておいて。
 せっかくの休みの時に
 仕事のこと思い出させて悪いけど、
 来週、またいろいろあるだろうから
 先に伝えておこうと思って。

私は生返事をして
 おやすみなさい
と電話を切る。

何故みんな全力で守ってくれる?

正社員で働いていたとき
私は辞めたいと言ってからさらに2年半働いた。
社長はなかなか手放してはくれなかった。
それは
新しい人を探す手間や
育てる手間を考えたら
慣れた者をつなぎとめる方が
簡 単 だから。

会社が必要としていたのは 私個人 ではなく、
ただの 働き手 であった。

索引
「プープーの罠」 written by 浅田

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