プープーの罠
2004年06月29日(火)

アズカバンの電子部品

一足早い夏休みです。

すっかりぷー気分。
家中をひっくり返して
要らないモノをだいぶ捨てた。
それでもまだモノが多い。
引っ越しがしたい。

昼過ぎからハニちゃんとぷらぷらして
前に行ったカフェでお茶をして
前に行った公園に行った。
久しぶりに一緒に電車に乗った。
電車に乗るとすぐ寝ちゃう
はずのハニちゃんは
ずっとずっと喋っていて
私はずっと相槌をうっていた。
晴天、海沿いの公園は
風が強く吹き荒れていて
潮風でベタベタ

ハニちゃんに仕事の電話がきて
何だか忙しそう
そのまま
帰ろうか
と電車に乗り
そのまま
何も話さないで
手を振って別れた。


派遣会社を介さずに
前の会社から直接電話が来て
困ってるんだ

よければまた来てくれないか


 ありがとうございます
 でも今月いっぱいは
 今働いているところとの契約がある
 ので、すみません。

希望を残した言い方ができない。
今の会社は更新しない。
次を探す気もない。
せっかく声をかけてくれたのに
何がやりたいのかしらねぇ、
私は。

2004年06月26日(土)

輪郭の内側

久しぶりにアンドウさんに会う。
どれくらいぶりだ?
3年くらい。
彼女は子供も生んで、少し老け込んでいたけれど
相変わらずな感じだった。

アンドウさんは
ちゃらんぽらん
という意味不明な言葉がとてもしっくり来る人で
ギャルなんだかサーファーなんだかジッパー系なんだか
系統の特定できない意味不明な格好をしている。
けれど、この人はヒトの外見なんてまるで無視して
中身だけをすぱっと見ているようなところがあり
昔から 話してもいないのに核心をつくような
ドキリとくることを忠告されることが多かった
のですが、彼女は私を見るなり言った。

アハハ アサダちゃんちっとも変わらないね!

不思議な人。
そうか、私は変わってないのか。
彼女の言葉で私は少し安心する。
占い師になったら売れっ子だろうな
とか、余計なことも考える。


ぷらぷら買い物してすぐバテバテ
うちに帰ってぐうたらしていたら
ハニちゃんから電話があり
そうだ今日はハニちゃんのライブなのでした。

 「今日来る〜?」
 「行かないよ。」
 「そっかーじゃまたね。」

しゃべり方が戻ってる。
ハニちゃんの中で何か変化があったのは分かる。

私にもアンドウさんみたいな
ヒト ヲ ミル メ
があったら、ハニちゃんのことがもう少し
理解できるようになるのかしら。

やっぱり無理かな。
私ハニちゃんには盲目だもの。

2004年06月25日(金)

心は融解してゆく

久しぶりに
手が震えるほど
怒りが身体中を駈け巡り
血の気が引いていく
感覚を味わった。

社長の言うことは
理不尽で誘導尋問で意味が分からない。

すごくいやな感じを思い出す。
こういう感覚を持ったのは2人目だ。
もう二度とこういう思いはしたくないと思った。
そうして私は"正社員"になることを拒絶しだした。
気が狂うほど忙しいわけじゃない。
なのに何故また壊れていく?

来週から夏休みだったりする。

私は呆然としながら残業をこなし、
そんな時にハニちゃんから映画に誘われまして、
ハニちゃんは映画は一人で見るタイプなので
映画に誘ってくれたのは意外と初めてなのでした。
けれど私はまったくの モヌケの殻 状態
それを断り、ひたすら仕事をこなす。

22時過ぎにようやくカタをつけて、
つじさんと帰る道
お腹空いたねぇ
ということで、飲みに行った。
よく一緒に帰るけれど
二人だけで飲みに行くのは意外と初めてなのでした。

いつになく真面目〜な話をしまして、
会社のこれからのおはなし。
先週一人辞めて
来週一人辞めて
森君が辞めたがっていて
私が契約更新をしないで。

 つじさんはどうするんですか。
 あんなにウマの合わない人と
 やってかなくても大丈夫でしょう。
 自分の会社だってあるんだし。
 私達をかばおうとしなくたっていいのですよ。
 それをつじさんの弱味として
 社長はそこを攻撃してくるんですから。

 オレ
 いつ辞めてやろうか
 って、けっこう投げやりになってた
 んだけどさ、
 浅田がいると仕事楽しいよ。
 夏休み入ってそのまま来なくなるなよな。

 来ますよ。
 契約期限まではね。


今のうちの会社はまるで砂のお城
見た目は立派なのに
手をかければかけるほど
ばらばらと崩れていく。
みんながみんなを思いやっている。
こんな環境はそうは出会わないだろう。

それが崩れていくのを黙って見てる。

終電での帰り道
自分のキャラが 支離滅裂
に なってきてることに気づき
情緒不安定も甚だしい次第。
つじさんにはハスッパすぎるし
オオサトさんにはぶっちゃけすぎるし
森君には辛辣すぎるし
ハニちゃんには自我なんて見せてないに等しい。

本物の私は一体どれなんだろうか
と、少し考え込む。
多分どれも私じゃない。
本当の私はきっと
もう死んでいるんだ。

2004年06月24日(木)

君が笑うと嬉しくて

この前の休日出勤の代休
炎天下、原宿、代々木体育館
ラルクアンシエルを見てきました。
1年くらいぶり。

平日の原宿は空いてますね。
仮装行列がいないだけでも幾分マシな街に見えます。

ライブはステキステキ。
オオゴショ相手に言うことでもないですが
彼等ライブ上手くなったなぁ
と、しみじみ思います。
青春時代に見ていた彼等は
華があって浮き世離れしていて
曲の世界観は独特で、
いまだに私の中で ラルク以上
に のめりこめるくらいの
存 在 感
を持ったミュージシャンはいない
くらい、夢中でした
が、確かに昔のライブプレーは
ひ ど か っ た 。

もうすぐファンになって10年です。

アリーナ席の真ん中くらいで
はしゃぎ回ってしまったのでした。

2004年06月23日(水)

着信アリ

昨日はすいませんね
と、森君とご飯を食べる。
ただ黙って黙々と食べる。
話題がないというか
割といつものことではある。
けれど、森君の心が
すでにどこか遠くへ飛んでるのは分かる。

仕事辞めてこれからどうする
んでしょうね。
私には分からない。
多分森君本人もね。

家に帰ると携帯の不在着信に気付き、
それはオオサトさんからでした。
折り返しかけてみましたが留守電だった
ので、急用ならまた連絡下さい
と、メールをいれておく
と、ほどなくして携帯が鳴り、
オオサトさんは言う。

 用事はないですよ。
 飲んでるのかなと思って。
 浅田は知ってるかな、
 隣の部署の人。
 と、飲んでました。
 浅田も来るかな、と思って
 連絡したんだけど。
 あ、今お開きにしたんだけど。

 今から飲み行こうか。
 もう遅いか。
 そっか。

 ねぇ、
 また飲みに行こうか。






そうですね。



またいつか。

2004年06月22日(火)

嬉しい時に会いたい人、悲しい時に会いたい人

森君が辞表を出したらしい。

とりあえず
 ご飯でも食べながら話を聞こうか
と、そこにハニちゃんからメール、

『お茶でもどうです?』

ワタクシソッコーでお電話。
 へー行くんだ、行っちゃうんだ
森君を置き去りにして
私はハニちゃんに会いにゆきます。

指定された場所に行くと
ハニちゃんはひょろりと長い手をひらひら〜とふって
ぴょこぴょこと走って寄ってくる。
 何食べたい?
と聞くと
 もうご飯食べたからおなかいっぱい
とか言う。
じゃなんで私を呼んだのかしら。

歩く道すがら、喫茶店の席に着いても
ハニちゃんは今日の出来事をとめどなく喋り
とにかく今日は楽しかったみたい。
この前とはうって変わって
やけに はしゃいでいて、
可愛いったらない。

今ごはん食べたばっかり!
とハニちゃんはコーラを頼み
私は軽めにご飯を頼み、
私がご飯を食べてるところを
頬杖をついて眺めてるハニちゃん。
眺め返すと何よと口をとがらせ
コーラをちまちまと飲む。
彼の、目をあわせるとドギマギするところが好きだ。

見ればちょっとオシャレしていて
だからわざわざ会おうと言った
のかしらと思ったら
何だか すごく幸せな気分
になってしまいました。

2004年06月20日(日)

モニカテンプルは頬を赤らめ

昨日は特に何をしたわけでもない
のに、普段動かない分
やはり体力は消耗していて
一日中けだるく、だらだらとしていた。
仕事終わりのみーこさんから電話がきて
久しぶりに飲みに行く。

みーこさんはあれから彼と別れたらしく、
 「じゃあ今はやりたいことに専念してるのね」
 「それが、実は新しい人が...」
ふたりとも特にモテるわけではない
のですが、一区切り 終わりがきても
特に探さずとも すぐに次はある。
まぁ、そういうお年頃なのでしょうかね
と、アボカドのサラダをつつきながら笑う。

 これから付き合う人
 とは、どうしても
 結婚を考えてしまうし
 これから引っ越す時は
 一人暮らしではなくなる
 だろうと思ってしまう。

私は頬杖をつき
ふぅんと相槌を打ちながら

"ミライガナイ"から
ハニちゃんから手を放した
はずなのに、私はいまだにそこから
離れることができずにいる。

そういえば
今日は父の日だ
と親不孝者なふたりは今さら気づき、
その場でお互い 父親に電話をし

 いつもお世話かけます
 ホントありがとうございます
 これからもお元気で

と、いつか
 今までお世話になりました
なんて言う時が来るのかしら
などと、ぼんやりと思ったのでした。

2004年06月19日(土)

くろまるみっつ

夜通し
腹を割って話しながら 楽しく 飲み明かし、
今日はみんなに慕われながら
女子社員に囲まれて 楽しく
ディズニーランドを歩き回っていた
のでしょう
社長のプラス思考シミュレーションでは
きっと。

2日目、自由行動 現地解散
誰一人として社長には寄り付かず、
腫れ物に触るように、
むしろ触らないように
めいめいに遊びにくり出し、
独り 残された社長は
ホテルからそのまま直帰した
らしい。

私は森君とぶらぶらして、
つじさんのお子さんとも対面してみたり。
土曜日のディズニーランドは
台風すらも無視してやたら混んでいて
私達は乗り物に乗るのは放棄し、
何か食べてるか電車でぐるぐるしているか。

当たり前ですが カップル だらけ。
愛 あふれる様子にあてられて
トゥーンタウンでお茶をしながら私はずっと
ハニちゃんの話をぺらぺらと喋り、
森君に「もう終わってるんだからサー」
と あきれられる。

ふっきれちゃったんですよ、私。
片想いって楽しいものですよ。
世界で一番ハニちゃんが好き
なのさ。

こうして
この研修は 社長の仁徳のなさ を露呈させ
私はハニちゃんにミッキーの耳をつけたい!
と、心に誓い
幕を閉じたのでした。

2004年06月18日(金)

正直しんどい

今日明日は会社の社員研修
で、ディズニーリゾートです。
ミラコスタで一泊です。

全体的にみんな戸惑い気味。

泊まりがけの旅行は
会社創立以来はじめてのことらしく
というか
男性社員が圧倒的に多いうちの会社、
よりによって
大のオトコがオトコだけで群れて歩く
のは明らかにナシ
デ イ ト ス ポ ッ ト だからです。
箱根の温泉にでもしとけばいいものを。

着いてまず ディズニーシー
来たからには乗り物乗らなきゃ
な、雰囲気、
必然的に全員で行動、
非常に気持ちが悪いかんじ、
集団行動のフットワークの悪さは
ストレスになります。

それからブライダルサロンを借り切り
研修という名のもとに、
何故かSPIテストをやる。

以前
採用する人材があまりにも アレ なので
 面接でうまくいかないなら筆記試験でもしたらどうです?
というようなことを社長に言ったことがあるのですが
その結果が何故か社員に対して適正検査ですよ。
どこまで陳腐なのかしらこの人は。

その結果を各自に配り、自分の特徴、長所、短所の分析です。
それを基にこれからの自分の仕事のやり方をまとめて発表しなさい、と。
自己啓発セミナーかしらこれは。

 まぁ統計的なことなので
 外れていることももちろんあるし、
 悪いことが書いてあっても
 真に受けて落ち込まないように。

社長はそう言った夜、
オールナイトで
社員を咎めた。

 「分析結果ではこう出てるのに お前は全然違うじゃないか。」

社長は
もしかして 問い詰める ことでしか
人とはコミュニケーションが取れない
のではないか。
知り合いが多い とよく吹聴している
けれど、彼がお近づきになる人は皆
お金になりそう
という打算からであり、
彼にお近づきになる人もまた
お金になりそう
だからだ。
少しでも失脚したら
彼の周りには誰も残らない
だろう。

とぼんやりと思い
この巨体のお子様がどうしようもなく
哀れな気がしてきて
かわいそうな人だな、と気づいた。

哀れ。

私は 一番の問題児にも関わらず その難は逃れ、
つじさんや森君とゲームして遊び、
そのあと
酔った勢いのまま
ハニちゃんとメールを交わしていて

『今ディズニーランド。来る?』
『○○くんと2年前から約束してるのにまだ行ってないや。』
「…。」  ※○○くん="好きな人"
『元気?』
『元気。』
『じゃいいや。君が幸せならいいや。』
『ごめん。』

会話になってない
てか、
なんで







ジブン!
朝起きて自分で見返して凹んだ。

2004年06月14日(月)

距離をゼロにはしない。

みんなで飲みに行く。
最近飲む度に朝日を見るので
今日は早く帰ろう
と、言っていたのにやはり飲みすぎる
オオサトさんとふたり。

私はオオサトさんの愚痴を聞き、
会社のこれからを一緒に考える。
けれど、私の見ている会社のビジョンに
私自身はいない。

「いつも他人事みたいに話すよね。」
「他人事だから客観的に冷静に見てるんですよ。」
「そりゃそうだね。」

私は業務委託を更新するつもりがない
ということはオオサトさんに言っている。
それまでに後ガマを探してください
という、せめてもの誠意だ。
私のモチベーションの低さに比例せず
私の肩に乗っているモノは意外と大きい。

 なぁ
 浅田はどうしたい?
 どうしたら辞めない?
 給料あげたらいいの?
 社長を辞めさせることはオレには無理だよ。
 でも口を出さないように説得することはできる。
 そしたら浅田も
 かなり大変になる
 と思うけど。
 浅田が本気で仕事するとこ見てみたいし
 ヤル気になったらいくらでもやりやすい環境作るから。

私はグラグラします。
彼以上に力になってくれる上司
に、これから先 果たして
巡り合えるのでしょうか。

けれど、彼が 尊敬できる人 であればあるだけ
自分が見えていない中途半端な状態のまま
仕事に本腰を入れたくはないのです。
迷惑をかけるのも
失望されるのも
嫌われるのも
嫌なのです。

答えを見出せない私の
左手をウーロンハイのグラスごとぐっと握り、
 まぁいいや。仕事以外の話をしようか。
 せっかく二人で飲んでるんだしね。
彼は笑顔を見せ、私の手からウーロンハイを奪って飲み干す
と、
テーブルに置いていたオオサトさんのケータイ
がメール着信を知らせ
明るく光る小窓に名前が見える。

奥さんの名前。

彼は少しケータイを持ち上げ
それを確認して
そのまま開かずにまたテーブルに置き直す。
私はそれと同時に立ち上がる。

「じゃ、帰りましょうか。仕事の話も済みましたしね。」

外はまだ暗かった。
少し飲み過ぎた気配、
手をつないでプラプラ歩き、
ふとオオサトさんが立ち止まり、
おいでと引き寄せられて
それが無闇に慣れているかんじ、
スムーズに抱き締められる。

鼻と鼻が触れるくらいの距離
オオサトさんは無感情な顔つきで
土曜日の浅田とデートしたかったなぁと呟き、
私はそれを無視して
少し目線をずらすと
頬を撫でるように顔を向き直される。
彼は目が合うことにまったく怯まない
目をそらさない。

 なぁ
 どうしたら付き合ってくれる?
 離婚したらいいの?
 でも独身だったらこうはいかないんでしょ?
 それなら今の方がマシかなぁ。
 何か納得いかないわ。
 なぁ、どうしたらいい?

仕事の話をする口調と何も変わらない。

そして私も
自分のことにしろ仕事のことにしろ
何一つマトモに答えられやしない。

クラクラする。
これはもう飲み過ぎだわ。
ぼんやりと至近距離にあるカオを眺めてみる。
ちっとも ドキ ドキ しやしない。
ハニちゃんはもう寝ちゃったかしら
とか、考えながら

こういうのはこれで最後にしましょうか
と言う。

空が黒味を失い
徐々に明るく浮かび上がっていく。

その薄い色の目は
闇のように感情を覆い隠していて
何を考えているのかわからない。
まるで黒猫のような人だと思った。

2004年06月13日(日)

恋はアンチョビの味

『仕事終わりで新宿にいるんだけど ご飯でもどうですか?』

今日はハニちゃんとごはんを食べに行ったのでした。
ハニちゃんから誘ってくれて
私は浮かれて家を飛び出し

待ち合わせ場所をやり取りする
メールは妙に攻撃的
いざ落ち合えば 完全に人見知り、
目を合わせないどころか
こっちをまったく見やしない。
並んで歩くにも
怯えたように 逃げるように 距離を取る
横断歩道の はし と はし
みたいな。

誘ったのはあなたですよ?
というかんじなのですが、
私はかえって微笑ましい気分になる。

昔のかんじを思い出す。
かつて
"みんな"の中の顔見知り
から
ふたりだけで会う
ようになった時も
彼はこうだった。
自分の意思とは裏腹に
どうしても人見知りして
"会う"だけでイッパイイッパイ
になっちゃうらしい。

ぷらぷらぷらぷらしながら店を探す
"いつも"行き当たりばったり
 ここ一回入ったコトあるね
 ここもあるね
 ここは美味しかったね
 ここは....

一度も入ったことのないお店を選び、
アルコールは無しです
サラダとパスタとピザを半分こして食べる。
食事中は努めて目を見て話してくれました。
慣れた のか 思い出した のか
まぁそんなことはどっちでもいいのですが

彼の人生は私を欠いても正常に進んでいて、
私は私で どこかふっきれている自分 に気付き、

けれど、今だにハニちゃんのこと
考えただけで指先まで痺れる
ような感覚があるのは確かです。

とりあえず深く考えるのはやめよう。
そしたら寂しくなるから。
寂しくなったらきっとまた
私はそれを壊すから。

2004年06月12日(土)

スカート

お仕事。
新しいソフトを森君とテストすることになっていて、
前から森君に見せたかった
誕生日に買ったイタリアのブーツ
に合わせてスカート穿いてみたりして、
普段は仕事にスカートでは行かないのです
イスの上で胡座をかくから。

今日は土曜日ですしね。
デニムスカートにパーカーな
コンビニファッション
どうせ森君しかいないし

そしたらオオサトさんがいて、
私を見て目を細め
 ところでそれ、いいじゃないですか。
静かに笑顔で言う。

とっさのことに上手い切り返しが思いつかず、
 あ、ありがとございます。
と、そそくさと席に座る。

森君はブーツの値段を聞いて高ぇ!と叫んだ。

2004年06月11日(金)

大音量に耳栓は無意味

森君が前々から
元・部長テンヨウさんと飲みに行く
約束をしていて、それが今日だったわけですが
森君体調不良でお休み。
窓口が欠けたのでお流れかしらと
思いつつ残業で22時、
けろりとテンヨウさんから電話が来て
「軽くゴハンだけでも食べまっしょ〜
じゃ、和民で待ってるから!」
結局飲みに行く。

 今の会社はヌルイよ〜
 5時に終わっちゃうからね。
きゃっきゃと笑うテンヨウさん。
先に抜けた者は気楽である。

また今月末2人辞めることになっていて、
そのうちの一人が今日一緒に飲みに来たオームラさんだ。
彼は数少ない正社員であり、
影が薄くて仕事が遅く、アタマの硬い人だなぁと
常日頃 思っていたりしたのですが、
ここ最近は実に明るくなっていて
飲みに誘えばついてくるようになった。
まぁ、お酒が全く飲めない人なので
あんまり誘うこともなかったのですが。
今までマトモに話したことはなかったのですが
こうして時間を持って話すと
夢あふれる青年、
アルコールなしのテンション
とはとても思えないくらい
たのしかったです。

私の評価ですら上記のようなかんじなのですから
極端思考の社長から見れば それはもう
どうしようもなく仕事のできない人
という位置付け、
まぁ彼を面接して採ったのは社長本人なんですが。
それはそれはヒドイ扱いで

社長は、まるで
スピーカーのついたハリボテ
立ち向かうことすらバカらしい。
社長のすべては お金 であり 利益 であり、
アコギだろうがやっつけだろうが
儲かるのであれば何だっていいのだ。
そんなこだわりもプライドもない
金の亡者に見当違いの暴言だけをぶつけられて、
誰がついていくと思う?

オームラさんは見切った瞬間から
ひとりそれを抱え込み、
飛ぶ鳥 後を濁さず
的に、周りとの接触を断ったようでした。

もっと早くにこういう時間が持てたならば
彼は辞めていなかったのかも知れない、
けれど彼のこの明るさもまた
辞めるから である
だろうところが、実に悲しいところです。

結局 始発まで飲む。

2004年06月09日(水)

ラスベガスのアスパラガス

昨日 残業していた時に
社長に飲みに誘われました
が、私はもんじゃの約束があり
第一 残業中 だったので
お断りしまして
そしたら今日行くことになってしまいました。

かなり乗り気じゃない。
ワタクシ、会社付き合いの飲みというのは
むしろ得意な方なのですが
この社長と飲むのはいやだ。

残業が、あるんですけども。
と、お断りしようかと思いましたら
社長はそんなことは聞く耳なしに
「じゃ、みんな待ってるよ!」と意気揚々
会社を後にする。

そのまま残業でブッチできるかしら
と淡い期待を持ったのも つかの間、
オオサトさんに「ほら行くよ。」と呼ばれる。
昨日マンツーマンで誘われたからには
私は参加がマストなのである。
つじさんは「がんばれ」と追い払うように手をふっている。
森君もさっさと帰ったし
他の誰もが行く気がない。

オオサトさんとふたり、飲み屋に向かう道
いつもより少し口調がきつい
見れば総括のカオをしていて、
かと思えば色の薄い目を細め、
 この前、酔ってたわけじゃないから。

あぁ、そうですか。

合流した時にはすでに社長はデキあがっていて、

 ところで浅田さん、
 最近表情がやさしくなってきたねぇ、
 女らしくていいねぇ、
 カレシと何かイイコトあった?

社長が言うとどんな言葉でも セクハラ くさく聞こえる。
森君がこの場にいたら鼻で笑っただろう。
今だ ハニちゃんにココロふりまわされ、
"たかが恋愛"に淀んだ私を
らしくない と叱咤しているのだから。

オオサトさんが割って入る。
 いやいや、浅田はオンナノコですよ、
 気が強いように見えるけど。

私はますます苦笑いをするしかない。

さらに遅れてつじさん登場、
来ないと言っていたのに来たので嬉しくなってしまった。
「よく来ましたね」と耳打ちすると
「オトナだからね。」とつじさんはニカリと笑い、
私が焼酎を飲むのに付き合ってくれる。

 どれがいいです?この前の美味しかったですよね
 あーそうね、あれないの?

「この前って何?
つじさんと浅田さんて付き合ってるの?」
社長はいちいちセクハラくさい。
ちょっと話すとすぐひやかす。
中学生並みだ。
すべての男性社員とそう言われた。
しかし、オオサトさんとは
言われたことがない。

オオサトさんが老けて見えるひとつとして
性的欲求 がまるで なさそう だからだ。
それは同性から見てもそう見えるのだろう。
手をつなぐ件にしても
あれだけ堂々とつないでくるのに
結局"酔った浅田に絡まれた被害者"
的 解釈で収まるのである。


それから、社長お馴染コースなのでしょうか、
働く前にも連れていかれたバーで
社長はお得意の夢を語りだし、
オオサトさんは考え込むようにそれを聞いている。

社長の理想論はこうして聞くと
とても夢にあふれ、素敵なものに聞こえる
けれど、いざ実現に向かうと
とても簡単にボロが出るハリボテのような中身のなさ、
つじさんは聞く耳ナシに寝ていて、
私はマッカランを飲みながら聞き流す。
ずっとオオサトさんと膝があたっている。

2時を回った頃、
社長は思い出したように立ち上がり
一人タクシーで帰り、
つじさんはいつも徹夜で帰れないときに泊まるホテルへ、
またオオサトさんとふたり残され、
 今日の酒は飲んだ気がしない
 飲みなおそうか
と、通りかかった店に入る。
やはり、手をつないでいる。

 表情が明るくなった
 って言われてたね


オオサトさんは嬉しそうに言う。
ハニちゃんとはもうどうにもならない
ことを彼は知っている。

「気のせいですよ。」
「そう?」

彼は実にストレート。
「ねぇ俺と付き合って」
と言う。
はっきり言う分
こっちもはっきり言える、
まだハニちゃん以外は
まったく 恋愛対象 にならないし
こうしてハシゴに付き合う
のもあなたが 結婚 しているからだ
と。

 悲しいこと言うね。
 冷たいよね。
 でもほんとに浅田のこと好きよ。
 そういうとこホント好きだわ。

アルコールが私をクラクラさせる。

店を出る頃にはすでに日が昇っていた。
タクシーをつかまえて並んで乗り込み、
私は外を眺める。

「手をつなぐのはいいの?」

気付けばまた
手をつないでいる。
私は答えに困って手を引っ込める。
オオサトさんはまた手をつないでくる。
それがごく自然であるかのように。
何も話さないまま手だけが触れ合っている。

家に着くなり短い時間を泥のように眠り、
いつもと変わらない時間に起きて
オオサトさんからモーニングコールがくる。
やわらかな空気が流れている。

表情がやさしく、ねぇ。
外れてはいない
のかも知れない。

2004年06月08日(火)

土手の向こう側

森君がもんじゃを食べたことがない
と言うので、仕事帰り
つじさん達も誘って5人で食べに行くことになり、
私は仕事がおしてしまい遅れて参加
行った時にはすでにみんな食べ終えていて
私はみんなの話に耳を傾けながら
つじさんが鉄板でめちゃくちゃ
にかき回しているもんじゃを食べる。

最近一人でご飯を食べる
ことができなくなっていることに気付く。

2004年06月07日(月)

東京タワーも雨に浸り

打ち合わせのためオオサトさんと会社を出て、
早く終わった分だけお茶をしていた。

アルコールを抜きにして話すこの前の続き、
私の言った仕事に関する戯言を
彼は現実にしようとしていて
でも実際にそう 突き付けられると
私は尻ごむ。
今の私には責任感がまるでないのだから。

「オオサトさんがこの会社を、社長から乗っ取れるのなら
私はついていきますよ。」

ただ
漠然とこの人とは
生涯の友達になれる
のではないかと感じた。

むせ上がるような嗚咽を
私はすべて飲み込み、そして腹を括る。

もう一度 時を動かしてみようか。

闇雲に暗く
視界の利かなかった私の世界に
うすぼんやりではありますが
光が差し込もうとしている
のは、分かる。

2004年06月05日(土)

オー

突然オオサトさんから電話がかかってきて
仕事のトラブルかと思いきや
メシでもどうかと誘われる。
終電も過ぎた土曜の深夜のこと。

この前のことを思い出す。

 「もう帰っちゃうの?」
 「もう3時過ぎですよ。まだ週中だし、明日会社なんだから。」
 「じゃ土曜日ならいい?」
 「そういう問題じゃないでしょ。」


あれは本気だったのか。
完全にやばいじゃないの。
私は少し動揺しながらそれを断る。
オオサトさん自身よりむしろ
奥さんの方が私には気に懸かる。

着信履歴からハニちゃんの名前が消えた。
こうやって少しずつ
なくなっていくのだろうか。

2004年06月04日(金)

水平の空

STERNE3回目。

田中フミヤだからすんごい混んでいる
かと思っていたら
かなり空いていた。

床ちゃんは明らかに
オトコ探しをしていて、
落ち着きなくウロウロしたがり、
むしろ はぐれたがり、
彼女が一人になったら
私もまた一人になるわけで
でも 私は出会いなんて求めていない
ので、ひたすら困る。

何時に終わるか知ってる?
よく来るの?
卓球好きなの?電気ファン?

みんな示し合わせたかのように
同じこと言う。
フロア自体も今日もイマイチ。
めんどくさいし、
もう行くのやめようと思った。

2004年06月03日(木)

鳴る

会社に行くと
いつも通りの日々が始まる。

いつも通り打ち合わせがあり
いつも通りメンツはオオサトさんと私

会議室に向かう途中、
オオサトさんはいつもの口調でさらりと
昨日はすいませんでした
と言い、私は
いいえ、気にしてませんよ
と言う。

少しホッとする。

2004年06月02日(水)

蛍光オレンジのタバコの先

平日ど真ん中、みんなで飲みに行き
やはりオオサトさんと手をつなぎ、
ハシゴハシゴ
していくうちに
オオサトさんと私のふたりきりになっていて
それほど酔っていたわけでもない
けれど、
向かい合って座った席
手をなぞり
髪を撫でられ
何だかやばいじゃないの。

空が薄ら明るくなりそうな時間
店を出てタクシーを探す私と
それを邪魔するオオサトさんと。
つないだ手は柔らかく背中にまわり、
頬を引き寄せられ、
この人も 男 なんだなぁと漠然と思い、

既婚であろうが独身であろうが
やはり手をつなぐべきではなかったのだった。
私は何も考えていなかった。

彼が独身であればまた違ったのでしょう
が、そもそも彼が独身だったら
私はハナから壁を立てていただろう。

人に好かれることはやはり苦手である。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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