小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。

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三上の初訪問(笛/三上)(大人編)。
2010年04月25日(日)

 幼稚園がある角を右に曲がって数分。









 うす寒い曇り空の早春。彼は指示通り右に曲がったところで、早咲きの桜を見つけた。
 もうじき春だ。
 何気なくそう思ったとき、薄桃色といってもさしつかえない桜の向こう側から、声がした。
「三上」
 喜びがにじむ、大人の女性の声。
 やわらかなその声で、三上は少し先で面はゆい顔をして待っている彼女を見つける。
「迷わなかった?」
 ジーンズに薄手のニットを着たいつもよりラフな三上の恋人は、ほほえみながら近づいてくる。
「や、すぐわかった」
「そう、よかった」
 駅まで迎えに行こうかと思ってたんだけど、と付け足した彩に、それは無用だと三上は頭を振る。
「むしろ車で来たかったんだけどな」
「あら、それじゃ飲めないでしょう?」
 ふふ、と笑う彼女は天候に関わらず心が上天気そうだった。
 三上にもわからなくはない。今日は、一応もう一度恋人としてやり直そうと意義なく決まってから次のデートだ。多少浮かれたところで誰の文句も出まい。
 まして、三上は一度も入ったことがない、彼女が一人暮らしをしている部屋で手料理を振る舞われるという、少し特別な日だった。
「こっちなの」
 彼女が道を指し、三上はそれに従う。
 思えば、まだ同じ学校の生徒だったときは互いに寮暮らしで、個々の部屋を訪問したことなどなかった。
 再会したときも、彼女の耳たぶに光るピアスを見て、大人になっていたことをなんとなく感じた。今の三上の心境もそれに近い。
「一応片づけはしたんだけど、何が置いてあっても気にしないでね。私ほんとはあんまり整理整頓とか得意じゃなくて、自分じゃ片づけてるつもりでもそうじゃないのかもって思ったりするのよ」
「なんだそれ」
 三上の隣を歩く彼女は、やや饒舌だった。春風に揺れる髪を、必要以上に手櫛で梳いている。
 ああそうか、緊張しているのか。
 三上のほうを見ようとしないその様子で、何となく察した。三上と同じように、彼女もまだ大人になってからのつきあいに戸惑っているのだ。
 いつも背筋を伸ばした、しっかり者の生徒会長。それが制服時代の彼女のイメージだ。
「あとうち、三上のところほど広くないから。あんまり比べないでね」
 あらかじめ先にマイナスな発言をするのは、実物を見て幻滅されないための布石。
 本当の彼女は少し怖がりで、誰かの期待に応えよう懸命に才媛として振る舞おうとしていたのだと、今の三上にはわかる。
「比べたりしねーよ」
 苦笑ぎみに破顔して、三上は隣を見る。
 目があった彩はほっとしたような、困ったような、微妙な顔をしていた。夜に外で会うときと異なる雰囲気は、初々しいという言葉を彷彿させる。
 やわらかい春の空気の匂い。瞬間的に、彩が笑った。
「そうしてくれると、うれしい」
 色香は少ない雰囲気だというのに、抱き寄せたくなるのはなぜだろう。
 歩みをやや遅くしながら、三上は少し距離があった彩の手をためらいなく握った。指はからめず、その白い手を包む。
「夕飯は楽しみにしてる」
 気恥ずかしさをこらえて、三上は彩と目を合わせたまま言った。
 目を合わせて笑う、ただつなぐための手と手。それだけでいい。そう思えた。
 いきなり手を繋がれて、とっさに驚いたような彩も、離す気のない三上の手を見て、うなずく。
「うん」
 花のように微笑んだ彩の表情を見て、自分も同じように幸せそうに笑っていることを、三上は知らない。








********************
 …なんか三上、口調まちがえた感がいなめない。
(みかみくんは基本的にバーロー口調@新一風です)
 そんな三上さん、姉さん宅に初訪問の巻。

 愛用ぽめらでがーっと寝る前(強調)に書いたので、なんか色々誤字ありだったり、文言に統一がなかったりするのはご愛敬で…。

 薫平さんのところの日記で、そういやうちのサイトも9年目ということを思い出しました。
 たまに横道にそれてはいるものの、なんだかんだで笛は青春の象徴…どころか突っ走って三十路に入るわ!!と一人ツッコミしたくなる。
 まあ笛っこたちは全年齢向けで可愛いからいいや。

 日記とかブログの「前のページ」って、ほんと「前」が過去なのか、それとも最新の意味なのかわかりづらいですよねー!!(私信)
 ええ、私も同じ理由で、変更しました。

 今更ですが、トッキューを最終巻まで読みました。
 メグルくんが事故った頃から買うのやめちゃったんだよねー、と思い、残りを一気買い。
 ユリちゃんは蘭姉ちゃんと並んで、日本のザ待つ女の象徴にしたい。かわいい。空回ってるけどかわいい。
 多忙な相手を待つのって、ほんと自分で空回るのがわかるぐらい空回っちゃうから、デートの帰りとかのしょぼくれ具合がリアルで実感できて、かわいい。

 真田さんもシマさんも好きだけど、付き合うなら断然星野くんだなー連絡できる限りでマメそうだしー…、とついつい現実的な考えをしてしまいました。
 でもやっぱめんどくさい男代表みたいな真田隊長が一番好きです!

 サイト9周年を過ぎて何が変わったかって、二次元における自分の好みの年代が三十代になった、ということでした。






再録:ふじしろくんとかさいくん10(笛/藤代と笠井)。
2010年04月01日(木)

 幸せの意味なんてまだわからないけれど。










 部活帰りの公園で藤代の目がある群生した植物で止まった。
 公園の花壇から、さらに一段下がった芝生。その中にふんわりと盛り上がった緑の野草。ところどころ白く丸い花が見える。

「……お」

 ふと懐かしさに駆られ、藤代はひとりでてくてくとそれに近づいた。
 夕暮れが長くなった五月の終わりは夕凪の気配に包まれていた。肌でそれを感じながら藤代は偶然見つけたその緑の群れの前にしゃがみ込む。

「…なんつったっけ、これ」

 小さい頃、向かいの家の子がよく公園で遊んでいた草だ。
 三つに分かれた緑の葉。ほわっとした、けれどタンポポの綿毛ほど柔らかくない白い花。

「えーと」

 しゃがんで膝を抱えると、肩から斜めに掛けている鞄がずるりと地面に落ちた。しかし鞄を地面に直接置くことに慣れている藤代はそれを気にせず、じっと眉根を寄せて考えた。
 ときどき学校の中庭でも見掛ける草だ。こうしてわざわざ見つめるのは本当に久しぶりだったが、記憶にないものではない。

「…シロ…、シロツメクサ、だっけか?」

 そういえば自分の名前の一部と似ていた。それがきっかけとなり、藤代の脳裏にその名前が浮かび上がった。
 シロツメクサ。漢字でどう書くのかは忘れたが、確かそんな名前だった。

「…ってことは」

 名前と連結して思い出したことがあり、藤代は手を伸ばしてその群生の葉を掻き分けた。
 目を凝らし、一つ一つその三つに分かれた葉を確認する。
 大抵は三枚葉だ。けれど、この草はごく稀にそうでない葉もあることを彼は知っていた。
 草の中にいる小さな虫などをうっかり潰したりしないよう注意しながら、藤代は目当てのものを探すのに数分以上没頭していた。












「…で、遅くなった理由がコレか」
「そうッス」

 初夏の長い陽がほとんど落ち切ろうとしていた時間になって藤代は寮に帰った。
 学校はとっくに出たと聞いているのになかなか帰って来なかった彼に、玄関先でその理由を問い質した寮長は苦笑する。

「よくぞまあ探し当てたもんだな」
「へへー、俺、得意なんスよ、これ探すの」

 そう言いながら藤代は今日の戦利品である一つの草を右手で掲げた。
 シロツメクサ。クローバーとも呼ばれるその野草は、普通の葉は三つに分かれているが稀に四つ葉も存在する。西欧からのジンクスで、幸福の四つ葉などと呼ばれるそれである。
 今日の帰り、藤代が公園の片隅で熱心に探していたのはそれだった。

「なんかわかるんですよね、このへんに四つ葉があるって」
「俺は初めて見た。…実際にあるものだったのか」
「結構あるッスよ」

 感心したような先輩に、藤代はあっさりと言い放つ。

「渋沢先輩も今度探してみたらどうッスか」
「…いや、俺は遠慮しておく。ところでそれ、どうするんだ?」
「んー、とりあえず竹巳に見せてきます。俺いらないから、あいつにあげようと思って」

 藤代は茎を持ってひらひらと四つ葉のクローバーを振り回す。
 幸運の使者だか何だかも、藤代にかかればありがたみがない。

「いいのか? 自分の幸運を笠井にあげて」

 そう言われ、藤代はやや目を瞬かせた。あまり考えていないことだった。

「でも、幸運ってあげるとかもらうもんじゃないから」

 自分で掴むもんじゃないですか。
 けろりと、さして深く考えた様子もなく藤代はそう続けた。
 そのとても当たり前のようなことを語る口調に、渋沢は思わず納得してしまう。

「…それもそうだな」
「じゃ、ってことで門限破りは免除ってことで!」

 失礼しまーっす、と明るく誤魔化して藤代はさっさと逃げ出した。

「あ、こら!」

 渋沢が止める声も意味がなく、藤代が慌ただしく階段を駆け上る音が聞こえる。
 全く、と部員の規則違反を咎める立場の寮長は息を吐いた。
 そしてふと、これが藤代の些細な幸運だったのだろうかと思い当たることになる。










「たーくみー、コレやるー」

 ただいまの挨拶より先に、机の上に開いていたノートの上に緑の草がぽとりと落とされた。笠井は猫のように吊った目を不思議そうにしばたたかせた。
 遅れて帰ってきた藤代はやけに嬉しそうだ。

「あ、ありがとう。…ところでこれ、なに?」

 とりあえず礼を言って、笠井は藤代が持ち帰った草をつまみ上げた。

「シロツメクサの四つ葉バージョン」
「四つ葉? …ああ、クローバーか」

 一応笠井も知識としてそのことは知っていた。
 ノートの薄い青の横線の上に葉を広げ、四つであることを確認して「へえ」と感嘆の息を吐いた。

「すごい。ちゃんと四つある」
「だろだろ? つっても俺ちっさい頃からいっぱい見つけてるからさ、今回のは竹巳にやるよ」
「え、いいの?」

 笠井の目が物珍しいものを見た感心に輝いている。
 その顔が見られたことが何気なく嬉しくて、藤代は得意になりながら言う。

「やるよ。すぐしおれちゃうかもしんないけど」
「本か何かに挟んで乾かせば保存出来るよ」
「あ、そうなんだ」

 何か手頃なのあるかな、と呟きながら笠井は机の正面にある教科書群の中から滅多に使用しない社会科の地図帳を取り出した。
 適当なページを開き、北アメリカ大陸のページに四つ葉をそっと押さえ込み、表紙を閉じてから軽く押す。押し花の要領とさして変わらない。

「…それで終わり?」
「そう。何日か経てば乾くから、そうしたら別の紙にセロハンテープか何かでくっつければおしまい」
「ふーん」

 相変わらず手先が器用なことをよく知っていると、藤代は相槌を打った。
 その顔を見ながら笠井はわざわざ手みやげを持ってきてくれた友人に笑いかけた。

「わざわざありがとう。…なんでいきなり四つ葉なのかは全然わかんないけど」
「うーん、俺も突発だからよくわかってない。でもまあ、竹巳に幸運がありますように!ってことで」
「はいはい」

 笑いながら感謝しつつ受け流し、笠井はいつもの藤代の思いつきの行動だと解釈した。
 不愉快ではないので別に構わないが、そうやって行動出来てしまうところが藤代のすごいところだと思う。


 今日も過ぎゆく少年たちの日々。












**************************
 再録…っていうか、分散してる過去のらく書きたちをひとまとめにしたいだけの気がしてきました。

 エイプリルフールですが、今年もすっかり忘れ(去年までは1〜3月は繁忙期だったため)、またしても
 「当サイトはアイマスサイト(千早メイン)になります」
 という宣言をし損ねました。
 くっ…!

 去年から書き途中の千早とあずささんネタはまたいつか出せると、いい、な…。

 引っ越し先が確定してないまま、現在引っ越し作業をやってます。
 何なのこの段取りの悪さ。
 見切り発車オッケー、猪になってゴー!!(最近のキャッチフレーズ)
 走り出したらそのまま行ってどこかにぶち当たったら止まるよ、うん。
 先のこと考えて一人で不安になってうじうじしてないで、明日が楽しくなるようわがままになればいい、あれこれ考えず思ったまま動けばいい。いつかそう言ってくれた友人のことを思い出す四月。
 基本的に自信がなく自分のことを信じない私ですが、その友人の言葉はたぶんずっと信じていられるんじゃないかと思う春。理由はよくわからないけれど、疎遠になってもその人の言葉はいつも心に寄り添っている気がする。頑固なはずの私にその人の言葉はなぜか届く。

 近い距離で一緒にいてくれる友人と、掛ける言葉で寄り添ってくれる友人と。どっちもいるって、私って結構幸せ者なんじゃないかしら、と感じる一番好きな季節。

 そういや先日友人と話していたんですが。
 毒を吐く発言をしても、不思議とやわらかでむしろ癒しにさえ聞こえる人が、たまにいる。
 そういう人っていいよね。にじみ出る品の良さっていうか。




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