ひだまりのなか綾菜とお散歩
「これなあに?」
これはね大根さん、こっちがほうれん草
ほらほらブロッコリ−ももうすぐだね。
ご近所の菜園がとても気に入っているようだ。
瞳をきらきら輝かしながらいろんな発見をする。
トトロのかさは里芋の大きな葉だと知っている。
「おっきいね、あやちゃんもほしい」
「そうだね、こんど畑のおばちゃんにお願いしよう」
おしゃべりの花を咲かせながらふたりで歩くあるく
お大師堂についたらおおきな声で
「おだいしさん、あやちゃんが来たよ〜」って
木魚をおもちゃみたいにしてたたくと
ちいさな手のひらをあわせて「もったい」ってする。
ほんわかほんわかひだまりをぜんぶ綾菜にあげたい。
なんておだやかなひと時なのだろうっていつもおもう。
川沿いにひっそりと栴檀の木
仰ぎ見ればオリ−ブ色の実が空に映る
曇り空がきれいだと思った朝のひととき
小鳥が飛び立っていくはるかはるかと
川面を横切って水に姿を映しては
ことりはことりの朝をたのしんでいる
お大師堂の日捲りをそっと千切った
ただそれだけのことで心が清々しくなる
ここにいる生きているとたしかめるように
ろうそくの炎がゆらゆら川風の声がきこえた
手のひらのあたたかさは命のありかをおしえる
消してしまえばすべてが終わるなんて決めはしない
老い始めたススキの穂をともだちのように思って
どんなふうに微笑んでいるのかと空にきいてみる
どんなふうに生きているのかと風にきいてみる
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